<リプレイ>
●荒れる鳥 「凶暴化して食い荒らす……何ともシンプルだが、一番質悪ぃな」 魚にとってはいい迷惑だろうと言う家出してきたウェイター・ネス(a28091)に、薄明を渡る疾風・トラップ(a52495)も「不自然なものには納得できそうもない」と変異体退治に意気込んでいる様子を見せていた。 「特殊能力で仲間を作るとはねぇ、ガンでも仲間が恋しくなるのかねぇ?」 小さく首を傾げる萌芽・ヴィギ(a38589)。彼らの言うように冒険者たちは突然変異のガンを退治するために、問題の池へと向かっているところだった。その変異ガンは普通のガンを凶暴化させ、池の魚を貪っているという話らしい。 「この船が使えるかしら?」 池に浮かべられていた小船を見つけて灰被り・シンデレラ(a43439)と瑠璃の太公望・アリア(a57701)が乗り込んでゆく。池の周辺にはバサバサと水鳥がまばらに居る様子ではあったが、問題のガンの群れはまだ現れては居なかった。二人は小船の上から餌を撒いて魚を集め始める。 「嘴しか見分ける方法が無いというのは難儀なことですね……でも、頑張りますよっ」 バンバンバンビーノ・シルクロード(a55488)や月射す静夜・クローバー(a17873)は岸から水辺に向けて餌を撒き始める。ばちゃばちゃと魚たちが集まり始め……やがて遠目に無数の羽ばたきが見え始め、それは次第に大きくなり……次々に近づいてくるのであった。
「ここいらで俺らが何とかしてやらんとな……」 アビスフィールドを発動させるネイ。周囲に薄暗い闇が広がっていく中で、シンデレラはスーパースポットライトを輝かせる! 眩い光に麻痺したガンはボチャボチャと池に落ちてゆき、麻痺の効果を受けなかったガンはシンデレラに向かって群がってゆく。 「普通のガンと混ざってると難しいな」 アリアは変異ガンの特徴である嘴が見えないか注意を払いながら、眠りの歌でシンデレラに向かって来るガンたちを眠らせていった。それから二人で協力して、池や船上に落ちたガンをロープで捕まえてゆく。 「……多いな」 岸からは昏黒紺碧・ライカ(a25264)の粘り蜘蛛糸が飛び、次々に集まってくるガンたちを絡め取っていた。 「よーし、ガンの皆さん、覚悟するがいいですよ〜」 舟の周りにばかり集まらないように、シルクロードもスーパースポットライトを発動させてガンの注目を集めてゆく。しかし麻痺しなかった何羽ものガンが、シルクロードを嘴で突付いて来る! 「弱肉強食とは良く言ったもんだがな」 鋼糸で振り払うようにして、嘴の攻撃をガードするトラップ。シルクロードを守るようにクローバーも踏み込み、紅蓮の咆哮を浴びせ掛けてゆく。 「……見つけて、目印……つける、なぁ〜ん」 早く変異体を見つけるように呼びかけるクローバー。その言葉を待たずにヴィギは、片っ端から麻痺して地面に落ちているガンにロープを結わえ、嘴を調べて変異体が居ないかどうかチェックしていた。そうやって変異体を探すと共に、ひとまず縛って行動可能なガンの数を減らしていこうというのだ。
「集めますよっ!」 再びシルクロードが光を放つ。スーパースポットライトに照らされてガンは麻痺して落ち、或いはシルクロードに注目して向かって来る。 「……纏めて拘束する」 その向かって来たガンをライカが粘り蜘蛛糸で一気に絡め取ってゆく。そうして二人が落としたガンたちをトラップとネスが嘴にラインが無いか一羽ずつチェックして、普通のガンと確認すれば、一時動けないようにして神凪巫子・ロディ(a47769)とヴィギがロープで縛って戦闘の巻き添えを食わないように少し離れた場所へと運び出していった。 「……ご愁傷様……はまだ早いかしら?」 船の上でシンデレラはイリュージョンステップの構えを取り、集まってくるガンたちの嘴を紙一重でかわしていた。こちらでもガンを集めているお陰で適度に群れが分散され、冒険者たちの負担も軽くなっているようだった。 「仲間を信じてボクは歌い続けるね」 アリアも続けて眠りの歌を奏でてゆく。しかし人数の多い岸に比べ、船の上の二人はガンの拘束と捕縛、変異体の確認とを行うには少々手が足りなくなり始めていた。 ばさっ、と白い糸が降りかかる。クローバーが二人の様子に気付いて池側に向かい粘り蜘蛛糸を放ったのだ。その隙にアリアは体勢を立て直し、急いで網で動けないガンたちを捕まえていった。
この騒動の原因となっている変異ガンを探す冒険者たちだったが、未だにその姿は見つかっていない。 手分けして嘴をチェックしているものの数が多く、一匹一匹しらみ潰しに探してゆくしかない現状では時間がいくらあっても足りないようにさえ思えた。 バサバサと無数の羽音が響く。ネスは飛び掛かって来るガンの群れから逃れるように後退った。 「悪いね!」 光がガンを貫いて、地面に落ちる。ヴィギの放った閃光は慈悲の聖槍なので、この攻撃でガンが死亡することは無い。その一撃にガンたちも驚いたように一瞬だけバサバサと距離を取って飛び立ってゆく。 「こいつは……!?」 その羽ばたきに混じって、トラップが声を上げた。指差す先にちらりと一瞬、赤いラインの嘴が見え隠れしながら無数の羽ばたきの中に埋もれてゆく。クローバーは急いでそちらへ向かい、ライカも飛燕連撃を投げ放った。 だが変異ガンは普通のガンを盾にするようにしながら旋回し、気の刃から身をかわしてゆく。 「普通のは任せてくださいっ!」 シルクロードがスーパースポットライトで普通のガンを麻痺させてゆく。シンデレラも船上から眩い光を解き放ち、変異ガンを隠す普通のガンたちを引き寄せていった。 「これ以上騒ぎを大きくする訳にはいかないね」 眠りの歌を奏でながら、変異ガンを攻撃するしかないのかとアリアは悲しげに呟いていた。 眩い輝きに、絡みつく糸に、眠りに落ちる旋律に、普通のガンが空から落ちてゆく。 そうして僅かに残った数匹と、赤いラインの嘴を持つガンが空を舞っていた。変異体を見据えて意を決し、シルクロードは魔道書を開く。 「攻撃しますっ!」 獅子、山羊、蛇を象る炎が変異ガンへと襲い掛かる。バサリと羽を動かして避けようとする変異ガンだが、スキュラフレイムは右の翼を掠めて大きく体勢を崩していた。その攻撃の間にシルクロードの方へ近づいてくるガンたちは、クローバーが紅蓮の咆哮で近づく前に麻痺させている。 「……世話焼かすなよ……」 ネスはヒーリングウェーブで仲間達の体力を回復させていた。それを受けながらトラップやロディは動きを封じられている普通のガンが冒険者たちの邪魔にならないように、戦闘の被害を受けないように急いで抱え、離れた場所へと避難させていった。 「……往生際が悪いわね」 狭い船上でも軽く身を捻り、普通のガンの突撃を回避するシンデレラ。そのまま流れるような動きで達人の刀を振り抜き、ソニックウェーブの衝撃波を撃ち出した! 放たれた音速の衝撃に羽を貫かれ、変異ガンは真っ逆さまに地面へと落ちてゆく。その影をヴィギの慈悲の聖槍が貫き、びくんと大きく揺るがした。
しかし『慈悲』の効果で死亡してはおらず、変異ガンは地面の上でピクピクと身を震わせていた。 周囲の様子を窺っても……未だに普通のガンの凶暴化は収まっていない。やはり、その効果を消すにはトドメを刺すしかないようだ。 「悪いが、大人しくやられてくれ」 ざっ! ライカの放つ気の刃が、幾つも叩き付けられてゆく。
羽が舞い、変異ガンが動かなくなれば……バサバサと普通のガンたちで動いていたものは、逃げるように飛び去ってゆくのだった。
●旅する翼 「縛ったり、傷つけたりしてごめんね」 アリアの高らかな凱歌が響き渡る。冒険者たちのアビリティによって麻痺したり拘束されたりしていた普通のガンたちを順次解放し、獣達の歌で謝りながら放しているのだった。トラップやネスも順番にロープや網で捕獲したガンたちを解いてあげている。獣達の歌を皆が活性していた訳では無いが、できるだけ傷つけないようにしていたことは伝わったのか、ガンたちは解放されると同時にバサバサと元気良く羽ばたいて去ってゆく。ロディも安心した様子でその姿を見送っていた。 「他のガンさんたちにはごめんなんさいですね」 せめてものお詫びにと餌を置いているのはシルクロードだった。飛び立つ前に何匹かのガンがそれを食べて行くのを見て、嬉しそうに小さく微笑む。 「……冷え込むわね……焚き火で暖を取りましょう」 水辺での戦闘で体が濡れてしまった者も居るだろうと、シンデレラは焚き火を始めていた。ヴィギもその近くで暖まりながら、慈悲の聖槍で撃ち抜いたガンに命の抱擁を施している。 「……焼き鳥なぁ〜ん……」 変異ガンの亡骸を指して言うクローバーに、「流石に止めた方がいいだろう」とライカが制止する。結局その亡骸は近くに埋葬され、大地へと還ることとなった。
こうして冒険者達は旅立つ翼を見送りながら、変異体を倒して池の平穏を取り戻せたことに安堵の想いを抱くのであった。
(おわり)

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参加者:9人
作成日:2006/12/29
得票数:冒険活劇7
ほのぼの2
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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