エンデソレイにフォーナの祝福を



<オープニング>


●とある日、エンデソレイの一室にて。
 フォーナ祭の前は、どこも忙しい。
 恋人や家族と過ごすフォーナの祭りは、誰もが楽しみにしている催しの一つである。それは、地獄へ向った者達もも同じだ。その内の一人である深緑の霊査士・ディクス(a90239)は、エンデソレイの一室から町を見下ろしていた。資料や霊査材料、緑の粉等が散乱しているのを無視するように、ディクスはただ物憂げに行く人々の姿を見つめている。
 ――エンデソレイでも、フォーナを祝いたい。勿論、護衛士だけではなく町全体で。
 そういった話が出たのは、数日前のことだった。それは良いことですねと頷きながらも、ディクスは何をどうすればいいのかと悩んでいた。
 炊き出しをするには話が急過ぎて材料を集めきれず、エンデソレイで食料を集めてパーティするには蓄えが少なすぎる。――八方塞りも良い所だ。
 一人では何も浮かばぬと、ディクスは静寂を破る刀剣・グラック(a90317)を呼び出した。そして彼を待っている間、延々と町を見続けていたのである。
 何か良い案は無いものか――むう、と小さく唸ると同時に、扉がコンコンと音を響かせる。
「よう、外なんか見て――ホームシックにでも掛かってんじゃねぇの?」
 二つノックをして部屋に足を踏み入れたグラックは、思わず笑いながら言った。そんな事ないですよ、とディクスは振り返る。
「んで、何に困ってんだよ」
「――実は、ですね」
 といってディクスは、またちらりと町へ視線を向ける。そして静かに、事情を説明し始めた。

●――エンデソレイにフォーナの祝福を。
「有志で集まって、町の広場使って歌かなんかでも披露すりゃ良いんじゃねぇ?」
 聞いたグラックは、開口一番そう言いきった。簡単に返されて、ディクスは思わず目をぱちりと瞬かせる。
 歌や芝居はディクスも好んでいるし、祭りらしいとは思えるが――今のエンデソレイに娯楽を楽しむ余裕があるようには見えなかった。
 何故、といった顔をしている彼に、グラックはにいと笑って言葉を続ける。
「歌う時に『幸せの運び手』使えば腹も膨れるし、なんたって祭りっぽいじゃん?」
「……運び手業務と変わりないじゃないですか」
「だから良いんだろ? 新しい事をやるよりゃ、馴染みやすいだろうしな」
 眉を寄せるディクスを見ながら、グラックはからりと笑う。運び手業務のでっかい版だ、と言いながら彼も窓の外へ視線を向けた。
 『幸せの運び手』とは、エンデソレイで続けている業務の一つだ。名前にもなっているアビリティ『幸せの運び手』を使用して、エンデソレイの食糧難へ応急処置を施している。暗かった町も、毎日のように溢れる歌や朗読――時には漫才などによって少しづつ明るくなり、餓死者も減っている。
 フォーナ祭。地獄に伝わっているのかすら不明な祭りでも、『幸せの運び手』の一環であれば集まりやすいのかもしれない。全員は無理でも、せめて慕ってくれている子供達だけでも集まってくれれば……。
「運び手で腹が膨れてれば、そんなに食料もいらねぇだろ。チビ達分だけでも有れば十分じゃねぇ?」
 それぐらいなら何とかなんだろ? とグラックは笑う。釣られるように笑みながら、ディクスもそうですねと一つ頷いて窓へ視線を向けた。
「――出来れば町の人全員にご飯を振舞ってあげたかったんですけどね」
 町のあちらこちらで、淡い光と共に歌声が響く。幸せの運び手は栄養と満腹感を齎すけれど、食べ物を口に入れた時の幸せ感までは齎さない。暖かいご飯、暖かい食事。せめて子供達だけにでも、その幸せを届けたい。町の様子を眺めつつ一つ頷く。
 そんじゃ、と片手を上げてグラックが椅子から立ち上がった。
 やるならば、ランドアースからも手の空いた冒険者を募ってこよう。そう言って駆け出す背を見送って、ディクスは静かに手をひらひらと振った。緑の瞳は、嬉しそうに弧を描いている。
 やることが決まれば、あとは兎に角準備をするだけだ。残り時間は少ないが、とディクスはぐっと拳を握って立ち上がる。
 ――さあ、直ぐに準備をしよう。
 集められるだけの食べ物を集め、沢山の人手を集めて――フォーナの夜に幸せを届けに。
 せめてこの夜だけは、誰もが笑っていられるように!

 ――エンデソレイにて、フォーナを祝う人手募集中。
 歌、踊り等の芸が出来る者、または菓子など食料を沢山用意出来る者、大歓迎。
 地獄の都にて、小さな幸せを配ってみませんか?

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参加者
NPC:深緑の霊査士・ディクス(a90239)



<リプレイ>


 静かな町の中が俄かに活気付いていた。
「お体の具合は、如何ですか?」
 護衛士として顔も知られているアティがフォーナの説明をすれば、子供達の嬉しそうな声が広がった。共に来ていたロゼッタが元気欲子供達を集め、フォーナの登場する童話を朗読する。聞き入る子供達の横でハーウェルは紅茶と小さなケーキを振る舞い、柔らかな微笑みを浮かべながら幸せの魔法をお裾分けしていく。大切な絆の祭、絆は家族や恋人だけじゃないのだと思いながら、彼女たちは優しい歌を紡いでいく。
「今日は初めて武具を外して歩くのね」
 常の鎧ではない赤い装束に身を包んだジニーが、自分もこの町を警戒していたのだろうかと笑う。今日はお祭りですものね、とハルは彼女に笑いかけ、一軒の扉をノックした。何時もの如く歌を紡ぎ腹を満たす。だが歌声は何時もより明るい。
 今日は広場等で祭が行われているんです、とハルが告げれば、ジニーはケーキを配り「甘いの嫌いという子にはお餅をあげやう」とそっと頭を撫でる。微笑みを絶やさず去るときは、明日の日も幸せにと祝福を交わし、バイバイと手を振った。
 静かなメロスの歌声が小さな家の窓から響く。フォーナを語る歌声の隣では、ボルチュが懸命に祭りの事を説明していた。
「あなたにもフォーナの祝福があらんことを」
 微笑みを交わしながら、二人は家から家へと渡り歩く。
 歌声は町中に広がっていた。酒場では紫煙の中で叫盟がライヴを行いかつて無い熱に包まれている。
「憤怒悲しみ嘲り上等。全部吐き出せば残るは希望、ありのままの鼓動で生きてやるわ!」
 暗い空の下に立つ民に生きる強さをと、ガマレイは嵐のような声を腹から吐き出す。オゥライト! と声を重ねるニューラも、小さな幸せで終らせずこの先楽しく生き抜けるよう、押し込まれた希望や楽しさを引き出すように音を重ねる。
 路地では子供達を集めたファミリアが女神の供を猫達とした歌を綴る。楽しい祭が毎年続くよう、毎年彼らの家族と平和に暮らせるよう、親を大事ににゃーんと歌う。
「うさリリと一緒に遊びましょー」
 と、兎キグルミ姿のリィリが子供達に声をかけた。踊ると幸せになれるから、と皆で輪を作って軽やかにステップ。地獄を知り、住む人の生活を助けられればとチグユーノも初のキグルミデビュー。本当にこのまま人前に出るのかと最初は恥かしがったものの、最後はリィリと共に可愛くポーズ。
 隣からは柔らかなシンブの歌声が聞こえてきた。歌に合わせてクルワが綺麗に包まれた可愛い人型クッキーを配っていく。祝福の言葉を紡ぎながら、二人の思いは人々の微笑みに解けていった。優しい歌声は、一つ隣の路地でも。子供達と視線、声を合わせて歌を紡ぐメイは一緒に幸せになりましょうと笑った。
「何時かは必ず、皆仲良くなれるわよね」
 理想を尊ぶ彼女らしく、澄んだ歌声が響いていく。
 上機嫌で菓子を配布しながら、ゲンマは共に来たノヴァーリスへ視線を向けた。子供達を撫でるついでに彼も撫でて、実際寂しかった! と思わず本音を告白。ゲンマへ自作の菓子配りを頼んだ彼は笑いながらブルースハープを奏でて
「こういうのもたまには良いと思いませんか?」
 華やかなパーティには無い良さがある、と優しげに微笑んだ。
 人の出会いと別れ、別れても切れぬ絆をアキュティリスは歌と人形劇で綴った。ホーリーライトの輝きに照らされ、出会いの素晴らしさを大切にと歌声は続く。
「たとえ一芸に秀でていなくても。拾うが良い!」
 とある路地では屋根の上からグラスの饅頭が降り注ぎ、踊りながら菓子を配るノリスは、南瓜ペーストやケーキを配る。言いかけた言葉達は気のせいにしよう。
「お手伝いしたいのですっ」
 ホーリーライトを照らして歌声を紡ぐのはリアンシェ。手には金平糖を沢山もって、一粒づつ子供達へ配っていく。その近くでは、ギィが少女達にクッキーを配りつつ、女性達とも楽しげに話していた。笑顔っていいよなと思いながら子供達だけでなく彼女たちにもクッキーをお裾分け。
 多くの人に幸せを。頭を撫でながらさくさくクッキーを渡していたシュウは、柔らかな幸せの風が吹く事を願い剣舞を踊る。誘ってくれた人への感謝の気持ちをも込めながら、舞は子供達の瞳に移りこんだ。
 ドロシーは雪に似た綿飴を子供達へ。ハッピーフォーナと彼女の声を真似る少女は綿飴を珍しそうに頬張った。
(「地獄って、大変なぁ〜んね」)
 町を眺めてドンは改めてそう思う。色んな場所で習った歌を明るい歌に編曲して、彼はクッキーを配りながら歌い歩く。少しでも楽しく明るくなるようにと歌声は高らかに響いた。
 お菓子が出ますヨ、と言いながらフゥが片手から花を取り出す。何処からとも無く出てきた驚きと、失敗しまシタ、というフゥの言葉に笑いと歓声が溢れた。彼らの姿を見つつシャナは笑顔で自己紹介を一つ。
「愛しい方、総ての方に感謝を致しましょう」
 柔らかな恋の歌が、恋の美しさや甘さ、切なさ素晴らしさまでを乗せて飛んでいく。手作りのキラキラ星や花を菓子と共に渡していたラスも、若い少女と共に恋の話を語ってあげた。手を取りステップを踏みながら、手を繋ぎ笑顔を。
 町外れではルイが子供達と輪を作っていた。この地で消えた姉を思いながら、武器を心を癒す歌に変えて紡いでいく。皆が笑顔になることを願ってルイ達の音は何時までも紡がれた。
 子供ばかりの住む家で、バーミリオンは声をかけ頭を撫でて菓子を配る。大切な人と過ごす祭が寂しくならないようにと、彼は自分の昔を重ね合わせていた。誰もが幸せになる権利がある。彼の思いに同意するように、カラベルクがフワリンを呼び出したり肩車などをして。「効果はかわらん」と言いながら拙く歌も紡いだ。子供達とともに歌い踊れば皆笑顔になっていく。
「戦いや調査じゃなくって護るべき人と触れ合うフォーナも良いかもね」
「たまにはかような日もあって良かろうよ」
 歌声に耳を傾けながらギーも神妙な顔のまま子供達へ菓子を渡し呟いた。
 術扇の合図を見てローは足を止めた。風のように軽く、けれど優しい歌声で幸せを願う歌を紡いでいたロレンツァが「父上」と呼びかけると、彼は菓子を渡していた婦人達に隠し子では無いと思わず断りを。
「この地に良い思い出が増えれば良いのだがな」
 手を引き街を歩きローが言うと、ロレンツァは少しだけ繋いだ手を握り返した。何を言うでもなく思いは胸の中に閉じ込めて……地獄の地を歩む。
「此処で眠っちゃダメだよ」
 二人と合流するべく歩んでいたウィーが、焼き菓子を抱くオルーガへ向き直って呟いた。団長室掃除を終えて街を歩んでいた時だ。
 半年前この地に散った人を思えば胸に悲しみが流れ込む――独りになればもう地上へ帰れないだろうと思う程に。けれど懸命に生きる人々の為、命の灯火を照らしましょうと彼女は小さく微笑む。幾つもの菓子を抱えて、ルキがすれ違う子供達へ菓子を配っていく。手渡しで微笑みながら渡せば子供達も楽しそうに笑った。この地から何かが始まるように色んな思いが溢れていく。
「白き花弁を天空より降らせし彼の女神」
 レインと共に歌を紡いでいたサフィアルスは、歌の一節を紡ぎながら皆の幸せを願った。フォーナの説明を行いながら菓子を配るレインは、この祭が定着して貰えればと懸命に『幸せを願うフォーナ』を語る。こっそり覗いていたレシュリアナも、近くの子供達を集めて皆で歌を紡ぐ。
「そらはどよどよ〜、でもね、みんないっしょでわくわく〜だからしあわせなの〜♪」
 少し拙いながらも、彼女の歌声は楽しい気持ちが詰っていた。同じぐらいの年の子らと沢山の笑顔で共に手を繋ぎながら歌を紡ぐ。
 ――彼女達の耳に広場の方から歌声が聞こえてきた。思わず広場の方へ顔を向ける。一人ではなく、幾つも重なり合った声。それはまるで、町中を覆い尽くすかのような、大きな響きを持って流れていた――。


 広場では人が集まり始めていた。中心部でルーエの用意した菓子を配りながらサリヤが歌を紡ぐ。
「この笑顔が何時までも続くといいですね」
 歌声を耳に竪琴を爪弾いて、ルーエはそっと囁く。繰り返しの多い曲と皆で歌ったあとは、グレイがすうと中心へ。
「ラルク・アン・グレイです」
 挨拶をすれば一角から黄色い声援が飛んだ。綺麗に着飾った衣装に格好つけたポーズ――堅物なイメージのある護衛士が羽目を外す様子は場の空気を温めた。
 外れて戸惑う子達に視線を合わせて金平糖等を渡したマサキが気付き、一緒に行きましょうかと手を引いてみる。同じようにニコラシカも南瓜のキャンディ片手に頭を撫でて、
「混ざりたいと思うのでしたら、自分から混ざらないと」
 と真面目な顔でポツリ。胡桃入りクッキーを配っていたフィズが気付いて、一つ笑って子供の一人を肩の上へ持ち上げた。
「これなら見えるかな?」
 笑って頷く子に少し途惑いながらもフィズは嬉しそうに微笑んだ。
 これからも一緒にお出かけしてくださいね、と耳元で囁きあって、マサキ達は子供達と共に中心へと進んでいく。フィズと同じく子供を抱き上げたマユリも舞台を見れば、丁度マイト達が舞を舞っているのが見えた。静かな舞にあわせてイオがフォーナの御伽噺をリュートで奏でる。何時か見た護りたいと思った笑顔。あの笑顔を皆に届けられればと、心を込め一音一音を奏でる。同じ歌を口ずさみマユリは抱き上げた子と手拍子をした。何時の日か総ての子供達が一緒に歌える日がくるようにと願い声を重ねていく。
 舞台の裏側では出番を待つロウランが白いストールをぎゅうと握っている。
「大丈夫デスよ」
 と声をかけたのは演奏をするコキ。誰かを幸せにすることは誰にでも出来ると言い聞かせ、共に舞台へと出た。
 白い布を舞わせ踏むステップは祖母から教わった唯一の舞。幸せを願い踊ると良い、と言われた舞をロウランが懸命踊れば、皆の胸が暖かくなっていく。
 大勢の前は初めてと少し恥かしそうにサブリナが前へ出る。紡ぐ歌は家族の愛に包まれた少女の幸せな歌。
(「わたくしの幼い頃とは大違いですわ」)
 自らの幼少の頃を思い出し真実との違いを感じながらも、未来ある子供達ならばその幸せを作り出せると信じて歌声を響かせる。
「何時もとは違った『幸せ』を届けに来たぜ!」
 声を上げて広場でクレスが声をかける。何時も共に遊んでいる子達へ笑いかけながら自信の一品を手渡し。甘いものが苦手な人にと、ヨイクは自ら釣り上げてきた魚のパイを切り分けながら皆に配っていく。コンソメやチーズ、アーモンドの香りをふわりと立たせ、広場に『幸せ』が広がっていく。
 会場の整理を行っていたルースは辺りが落ち着いたのを確認して手元のハーモニカを鳴らした。拙いながらも流れる音色に同じく広場へ人を集めていたアクアローズの歌声も重なる。
「皆様楽しそうで良かった、ですの」
 彼女の呟きに同意して子供達と絵本を読んでいたレオンハルトが頷く。硬さの抜けないままに歌声を重ねて、彼は両親を思い出していた。人を喜ばせる事の難しさを実感しながら、武骨な歌を紡ぐ。
「メリーフォーナ!」
 合間を縫ってシファが明るく声を上げ、視線を合わせクローバー型クッキー入りの袋を渡した。皆の思い出に残る一日になればいいな、とイルもお菓子配りに参加。知った顔を見つければ少年も気付いたらしくにっこり。嬉しそうに微笑みながらもイルはそっと聞いてみる。
「どうかな、このお祭」
 問いかけに子供達は満面の笑顔を咲かせて『楽しい』と答えてくれた。
 菓子配りの輪から外れてしまった子には、よしよしと頭を撫でやりながらアレグロが飴を多めに渡している。ユズリアも「今日はプレゼントがあるんだ」と子供達一人一人へ菓子を差し出して優しく微笑んだ。
「今日の祭りが幸せなものになりますように」
 綺麗な飾りに目を奪われた少女をぎゅうと抱きしめて囁く。
 人の数は次々と増えていく。宣伝効果や各所で歌ってくれた冒険者達の力もあるだろう。集まる人々の多さに目を見張りレーダは有志の冒険者達に感謝の気持ちを抱く。
「誰だ音痴のオッサン呼ばわりした奴は!」
 顔なじみの子供達と共に歌ってたナオが笑いながらそう言った。そしてふと振り返り、喉にいいからと菓子の一つを出番待ちのディクスへと差し出す。
 ぽんと背を叩いてフーリも「明るく楽しい歌、響かせよーね」と楽しげだ。
 この地獄の地で楽しい祭が出来るなんて思わなかった、とフーリは感慨深く呟いた。子供達と一緒に笛を吹いたり歌ったり――太陽の無い地獄の土地に、注ぐ陽光と同じような暖かさを持った光が幾つもの場所で広がって居るのだ。
 暖かな光は笑顔を産み笑顔は連鎖して繋がっていく。笑顔の花をまた一つ咲かせるべく、ディクス達が舞台へと足を踏み入れる。
 練習しまくったというカナタのトランペットが高らかに広がった。弾けるような明るい音が陽気に跳ね回り、フーリの笛やフルート、ハーモニカ等が折り重なって響く。そしてディクスの歌声がそっと旋律に乗せられた。
 歌詞の無い歌声が広場へと広がった。同じ旋律を繰り返せば何時しか皆が歌を覚え、沢山の歌声が折り重なっていった。
 歌い手の足りなさそうな場所を回っていたリンファ達も広場で足を止めた。集まっていた人たちの山盛りの食料を分けながら、バルメガが地獄の地にも幸せと祝福が等しくくるようにと照れながら凱歌を口ずさむ。
 楽しい祭りが無い事も、食糧難である事も知らなかったとバルメガは町を見渡し、リンファは頷き初めての地を見渡しながら幸せそうに微笑んだ。
「歌が溢れている……これほど純粋に幸せを願う歌が重なり合っている様を私は知らない」
 リンファの歌声も合唱に溶け込んでいく。歌声は皆、幸せだけを願って響く。願うだけでは続かず、掴もうと自ら働きかけなければ満たされぬ『幸せ』という物。彼らが手を伸ばし、掴もうとするように。その助力になれるようにと、歌声は高らかに響き渡る。
 収まればクララはアコーディオンを置いてフワリンを生み出し飴やクッキーなどを配る。祭りはまだ終らない。同じくフワリンを生み出していたナオが籠一杯の菓子とお茶を配っていく。フゥがアンコールの声をかければ、辺りからは釣られるように大きな拍手が広がっていった。
 地獄のフォーナ。思い合う気持ちが折り重なって幾つもの笑顔が浮かぶ。歌は連鎖し何度も何度も歌声が陰鬱な空を吹き飛ばすように登っていった。幸せそうに眺めるオキの横でカナがちょっぴり悪戯を。
 子供達が大きな欠伸をしたのを見て微笑み一つ。
「今日は良い夢が沢山見られますよ」
 暗い地ではなく、自分の住んでいた聖域のように明るく楽しい場所。夢で見るだけじゃなく、何時か現実になるように。
 幸せな日を夢見て、今日はゆっくりおやすみなさい。


マスター:流星 紹介ページ
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森淑気泉の水仕・アキュティリス(a28724)  2009年09月08日 03時  通報
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