【ゆ】ソラリスの滝



<オープニング>


 ランドアース大陸は広い。
 未だ知られぬ人々が村が――そして秘湯の数々が、今日も世界の何処かで冒険者達の訪れを待っている。

「『ソラリスの滝』をご存知でしょうか」
 祈らない霊査士・エリソンはマフラーの両端をもふりながら語る。
 曰く、それはとある山奥の村を流れる小さな滝川で、遥か上流では手も触れ難い熱湯だが、中流の滝壺は人肌に程好い湯を湛えた温泉になっているのだと。湯質はややとろみのある透明で軽傷に効き、湯温は滝壺から下流へ向かうに従い徐々に温く、浸かる場所によって様々な温かさが楽しめると言う。湯の滝は寒い季節には殊更の湯気を帯びて見栄えも増し、近頃は村からの湯治客も増える頃合だ。また、滝脇の湯宿『ひなたや』は地鶏料理が名物で、そちら目当てに来る客も多い。

「……ですが三日程前、その湯宿が山賊に乗っ取られてしまいました」
 賊は腕に大きな傷のある大柄な赤髭の男と、八名の手下から成る。元は山奥で旅人や狩人を襲う吝嗇な所業を行っていたが、襲った人々の口から幾度と『ひなたや』の噂を聞く内に興味を示し――果てに盗品を宿代として旅客を装って宿を訪れ、そのまま乗っ取ってしまったらしい。
「『ひなたや』はそう大きくはない宿で、従業員も十数名程度しかいません。夜半、大部屋で就寝している所を襲われ、逃げる間もなく皆囚われてしまいました」

 滝と湯宿を訪れた客は悉く追い出され、今やソラリスは賊達の根城と化している。
 従業員達は食事こそ与えられているものの皆人質として大部屋に捕えられ、身の自由を許されている者は料理長のコーズ小父と、その娘クィラの二人のみ。コーズは賊達の食事を賄う為、日に三度監視下において厨に開放され、クィラは鶏の世話をする為、やはり監視付きで朝晩の二度離れの鶏小屋に開放されている。
 そして賊達はと言えば、親玉は滝壺と湯宿を行ったり来たりのやりたい放題食っちゃ寝生活、手下達は人質の見張りが四人に親玉の護衛が二人。残る二人は湯宿の玄関から滝壷を見張っている。
「いきなり何の手筈もなく宿に踏み込めば、人質が傷付けられる危険もありますのでご注意を」

 平時ソラリスの滝にはその見栄えと湯を楽しむ人々が、そして『ひなたや』にはコーズ料理長の地鶏料理に舌鼓を打つ人々が絶えない。無事賊達の手から湯宿を奪還出来れば、冒険者達もその恩恵に預かる事が出来るだろう。
「コーズ料理長はとてもサービス精神旺盛な人です。食べたい鶏料理があれば、リクエストすればお答えしてくれると思いますよ。それでは賊の捕縛と湯宿の奪還を、宜しくお願いします」
 そう言って霊査士は頭を下げた。

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参加者
猪突妄進・スズ(a02822)
一介の衛生兵・エルム(a18957)
空色露草・ルーヤ(a46688)
エルフの武道家・チアキ(a49279)
ノソ・リン(a50852)
煌めく眼鏡は知性の証・キャニ(a53410)
武娘・リュナス(a55182)
剣より解き放たれし者・シュテ(a56385)
NPC:ヨハナ・ユディト(a90346)



<リプレイ>

●偵察
 真冬に至る風が晴天を吹き抜ける。さくさくと霜を踏んで進めば、路傍の蝋梅が揺れ香った。

「温泉♪ 温泉♪」
「おっんせっんおっんせっん♪」
 猪突妄進・スズ(a02822)の元気な声に、剣より解き放たれし者・シュテ(a56385)は、気分も絶好調と鼻歌を重ねる。『おやつは3つまで』と仲間に向け道化た咳払いをするその姿に、武人・リュナス(a55182)は、冒険者ならではの僥倖にまったりと綻びる。
「まさか平凡な村娘だった私が、温泉や豪華な食事を楽しめる機会を貰えるとは夢にも思ってませんでした」
 『豪華な食事』という言葉に文句なしとばかり、スズは快活な笑みを見せた。そんな遣り取りの傍ら、銀花小花・リン(a50852)は黙々と歩むままだが、犬尾ばかりはぱたぱたと揺らし、密かに喜びを現している。
(「……地鶏料理と温泉……」)

 荒い岩道を暫く踏み行けば、漸う仄かな鉱物質の香と湯煙に潤った空気が漂い始める。
「……酷いなぁ」
 岩場の影から遠眼鏡を覗き、エルフの武道家・チアキ(a49279)の平時明るい声が調子を落とす。漆黒の髪の下で黒い瞳が顰められた。見れば『ひなたや』厨房の開け放たれた窓の向こう、コーズ料理長が胴に縄を結われたまま大きな鍋を振るっていた。拘束が苦しげな様子はなさそうだが、宿の従業員が全て囚われているとあれば、彼一人で逃げる事は当然叶わない状況だった。
「桃源郷を占拠するなんて許せーん!!」
 人質の安否を懸念していたスズは憤慨して遠眼鏡を仕舞い、鼻息荒く小声で叫ぶ。
「他の人質の方々も、お怪我等されてないと良いのですが……」
 シュテに短剣を手渡したリュナスから厨の様子を聞き、空色露草・ルーヤ(a46688)も、優しげな声を振るわせる。
「何も悪くない宿の人を拘束して、温泉独り占めなんて許せないよね!」
 見習い救命士・エルム(a18957)が、あどけない舌で憤る。強調された後者の一節を白く大きな耳でぴくりと捉え、煌めく眼鏡は知性の証・キャニ(a53410)は「『徒党を組んで独り占め』等言語道断」と、冷やかながら聊か不思議なニュアンスの気概を見せた。
「……きっちりと懲らしめないと」
 背後の見張りから何事かを怒鳴られ、頭を下げ下げ昼餉を盛った大皿を抱えて厨を後にするコーズの姿に詰まる息を吐き、賊の背を一瞥したチアキは遠眼鏡を置く。
「キリキリ退治して温泉三昧。なぁ〜ん」
「暖かいお風呂と美味しい料理の為に頑張ろー!」
 意を共にしたらしいキャニとエルムが、軽く拳と掌を合わせた。

●潜入
「何で入れてくれないのよ!」
「ここ迄来たんじゃボケー! 温泉入れんかワレー!」
 『ひなたや』の正面玄関に堂々と押しかけ、リュナスとリンは声を張り上げて二人の見張りに詰め寄る。
「やかましいわ小娘どもがッ!」
「キンキン叫ばず散れ散れ!」
 見張りも負けず巻き舌で追い払う素振りを見せるが、彼女等も負けてはいない。
「にゃにー……」
 こめかみに怒りを浮かべたリンが、温泉セットからアヒルの玩具を取り出し、右の賊の頬に押し付ける。
「見ろこのアヒルちゃんを! 温泉を楽しみにやって来た、私の浮かれ具合が解るか!?」
「わ、わふぁるかボケェ!」
 武道家の拳から繰り出されるアヒルが頬にぐりぐりとめり込み、ひしゃげた顔で唾を撒く右の賊に、リュナスが追い討ちをかける。
「あ、貧乏人だとか見縊ってるんじゃないでしょうね?! 私のパパは大富豪なんだよっ!」
 その指々に凶器の如く光るアメジストとダイヤの指輪が、『見なさいよ』とばかりに残る片頬をも圧迫した。振り払おうにもちょこまかと避け躱し、二人は執拗に両側から賊の頬にアヒルと指輪をめり込ませ続ける。
「という訳で、その人の顔を貫通する前に許可して貰えたら助かるわ」
 ヨハナ・ユディト(a90346)が三人を示し、左の賊に頭を下げる。圧され続け瓢箪状に顔が変形した相方にも意を求められ、左の賊はリュナスの宝飾の輝きを検める。
「まぁ若い娘らが宝石差し出してせがんでるんだ。ボスも許すだろ」
 二人の見張りは目を交わして嗤い、三人の冒険者達に顎で宿内を示して奥の通路へと連れ行く。

 時を同じくして滝壺の温泉には、賊の頭領と二人の護衛達の下品な声が響いていた。
「いやぇ〜堪ンねぇなこれは何度でも」
「ボスのお肌……」
「すごく……つるつるです」
(「……」)
 姿を消したスズは、何かを堪える表情で頭領へ向けて忍び寄る。狙う標的が一人、滝の打たせ湯を目指し湯の中で身を翻した瞬間を狙い――
「なわっ?!」
 ざばり、と湯を打つ音が大きく響く。突如背後に現れた茶髪の男が放つ束縛の糸に、頭領は成す術もなく、何が起こったのかも判らない侭囚われていた。口々に頭領の安否を叫び走り来る二人の手下も、キャニの歌い上げる懐かしげな眠りの歌の旋律に誘われ、湯の中に昏倒して行く。漸く尋常ならぬと察し、糸の中で『俺の体も温泉も俺だけのものだ』等と自論を喚く毛深い大男に、スズとエルムは揃い青の眼を細めて一段低い声で脅しをかける。
「それ以上抵抗すると痛い目に合うぜ……」
「なーに、痛いのは一瞬、直ぐに意識飛ぶだろうから……ね♪」
 頭領は何故か頬を染めて大人しくなった。殴りたい心地を堪え、冒険者達は三人の賊を革のロープで巻いていく。
「……大体、温泉を独り占めしようなんていう根性がしみったれてて気に食わない。なぁ〜ん」
 後に響くは、キャニの説教。冷たい色をした眼と髪を持つ少女に醒めた声で罵倒され、タオル一枚の姿で束縛された賊は再び頬を染める。
 殴りたい心地を、再度堪えた。

●奪還
「……!」
 シュテの手元から、リュナスに預けられた短剣が消える。それを認めたルーヤとチアキは顔を見合わせ頷きを交わし、三人は宿の裏口から『ひなたや』の中へと潜り込む。
「人質は何処かな……」
 頭領達は、外の仲間がやってくれたであろう。そして人質達の元にも、三人の仲間がいる筈だ。探索の最中賊に遭遇した際の備えとして、捕縛の麻縄を携えてはいる。だが、人身の無事がかかる以上緊張は絶えない。部屋から部屋・厨房・離れと足を忍ばせて巡り、静かに覗き込みながら探り行く。

「……居た」
 三つ角を越え頭を覗かせた先、突き当たりの廊下に二人の見張りが立っていた。
「ではでは、救出作戦の始まり始まり……!」
 シュテとチアキは呼気を合わせ、眠りの歌を歌い上げる。どざりと音を立てて扉に倒れ落ちる賊達。その音に、室内から俄かざわめきと悲鳴が上がった。
「!」
 刹那、声なく三人は走る。扉を撥ね開け、中へ。
「誰だぁッ!」
 叫び振り返る室内の賊、一名。もう一人は騒音に驚いた余り、喉に詰まらせた干物を口からはみ出させたまま、既に卒倒していた。その背後で、リュナスが呼び寄せた短剣で縄を解く。自由を得たリンが、青い双眸を見開いた。一瞬の意識の逸れを突き、繰り広げる蜘蛛の糸。同時にリュナスとチアキが再び眠りの調べを響かせる。途端重なり倒れる二人の賊を、ユディトとルーヤが後ろ手に縛り上げて行く。何が起きているのか理解出来ず、十数人の人質達は硬直し、或は助けを乞うている。怯えるクィラの肩を、リュナスが支え庇った。
「もう、大丈夫ですよ」
 ルーヤは掌を軽く叩き、人質達に向けて柔らかく告げる。その背後には、四人の賊。万が一にも縄を抜けない様、後ろ手に戒めた上更に親指同士を結び合わせ、足迄も縛り柱に括り付けられていた。運があってかなくてか、縛られる最中に目覚めてしまった賊もいたが、その瞬間四方八方から当身を食らい、一呼吸の内に再び落とされた。
「秘湯を独占するとは、情緒を解さんアホタレめ」
 リンは腰に手を当てて感情の起伏に乏しい声で憮然と呟き、首を一度振るって余分に頬に掛かる白い髪を払った。

 冒険者達が味方と知り、幾分の落ち着きを取り戻した人質に話を聞けば、囚われている従業員はこの部屋に居るもので全てだと言う。幸い、軽い擦り傷や打身以上の怪我をした者もいないらしい。程なく、スズらが滝壺から頭領を含めた三人の賊を、チアキとシュテが入口に残る二人の賊を捕縛して連れ来る。大部屋に残り従業員の護衛を勤めていたルーヤは、漸く緊張が解け安堵の息を吐いた。
「皆さん、ご無事で何よりなのですっ」
 その日初めての笑みが、円らな碧の瞳に浮かんだ。

●宴
 柱に括り付けられた賊達は、目覚めるや何事かを喚き続けていたが、村の自警団を呼ぶ迄そのまま捨て置く運びとなった。
 厨に面した広い食堂に呼ばれ冒険者達が集えば、比較的疲れの浅い従業員達を中心に早い夕食の準備も整えられ、卓の上には抱える程の大きな鍋が三つ、暖かな湯気に肉と野菜が煮える音がことことと重なり、蓋の隙間から芳しい香りを運ぶ。
「とっりなっべとっりなっべ♪」
 再びシュテの声が弾む。
「えへへへ……」
 弛緩した小さな笑い声を漏らすリン。その眼前には、昆布出汁を加えたふっくらとした出汁巻き卵と、炭火で炙り塩だけを振った焼き鳥の盛り合わせが並ぶ。ひなどりの串に手を伸ばした後に、大根とはじかみのおろしを乗せた出汁巻の一切れでさっぱりと口内を改めれば、今迄の淡々とした調子が嘘の様に、ほっくりと笑みが溢れる。
「うふふふ……」
 リュナスの前には、香りの浅い葉菜を敷いた大きめの皿。高温で手早く焼き色を付けた後に低温でじっくりと焼いたローストチキンが並べられている。切れ目を入れた皮に沿い切り分けられた肉に、脂と焼き汁を煮立てたグレビーソースをかければ、更に旨味が増す。湯引きした笹身を山葵醤油と鶉の卵黄で和えた鶏山葵を箸にするユディト。
「あ、でも可能なら一通り……」
 チアキとルーヤの皿にもローストされた腿をトングで取り分け、リュナスが口元を濡れ布巾で拭って手を上げると、厨から顔を覗かせたコーズが『何でも任せな』と笑う。久々に『客』に振舞う料理となれば、小父の手も弾んだ。
「それじゃ、手羽先の唐揚げおかわりー♪」
 エルムも次いで挙手する。胡麻油で炒めた香草を入れた合わせ醤油に数時間漬け込んだ手羽先は、骨から肉を離すのも容易く香ばしい。皿の上は早くも空、エルムはそわそわと己の手羽――ではなく羽根を気にしながら、愈々ぐつぐつと香ばしい鍋の蓋を開ける。
「………♪♪♪」
 スズは黙々とお玉で鶏鍋を小皿に装う。とろりと煮えた葱と大切れの肉を頬張れば、猫尾は揺れる。果酢醤油を出汁で薄め、生姜と片栗に塩を加えたつくねを漬して口に運び、シュテはうんうんと喉で頷いて綻ぶ。

「食べ過ぎない様に注意しないとね」
 チアキは自律してそう苦笑する。が、生き生きと鍋を振るうコーズは手加減知らず、上機嫌で次々と美食を並べ冒険者達の胃に挑み続けた。

●太陽の滝
 混 浴
 その二文字が、腰にタオルの姿で呆然と立ち尽くすスズの脳内を谺する。
(「しかも、男女比一対八…………」)
 誤った認識の元、彼はどうどうと響く滝の音も他所に暫しの長考に入る。
「『湯質はややとろみのある透明で軽傷に効き、湯温は滝壺から下流へ向かうに従い徐々に温く、浸かる場所によって様々な温かさが楽しめます』……だって♪」
「はっ!」
 こちらも相変わらず謝った認識の元、胸元からタオルで覆い隠しては銀の横髪を指で揚げて能書きを読むエルム。その声に、彼岸を彷徨っていたスズの心が戻った。いかんいかんと首を数度振るうが、眼に入る女性陣の姿にはやはり怯む。
「うぅ……」
 喉で呻き『直視出来ねぇ……』と口籠り、彼は不審な挙動で湯船の隅迄じりじりと去って行く。
「? あ。……はうぅぅぅ〜!」
 ぎくしゃくと遠ざかるスズの目線を追い――エルムもまた『混浴』の事実を再確認して赤く染まる。

「水着コンテストに出た時の物で、少し恥ずかしいのですが……」
 ルーヤはタオルを巻いたチアキの傍らを歩む。自らの髪と似た淡い若草色の縞が入った、控えめなラインのビキニを着、彼女は僅か頬を紅潮させて指先を湯に浸した。その眼前を、やはり水着を着たリュナスが勢い良く泳ぎ抜ける。真冬を西に照らす飴色の日差しの中、素朴に落ち着いた色合いの赤い瞳は、いつになく生き生きとしていた。
(「のぼせる限界の一歩向こう迄、行く勢いで」)
 『これでもか』と言わんばかりに湯の流れと共に変わり行く温度を肌で堪能しながら、リュナスはひたすら、日の照り返しに染まる飛沫を上げ、泳ぎ続ける。
「うんうん……」
 チアキは岩肌に凭れ、太陽の色を映して琥珀の色に輝く滝を見上げる。
「やっぱり温泉ってこうだよね♪」
 壮麗な眺めに満悦して眼を伏せれば、水音は冴えて耳に響く。

 湯に浮かべた玩具のアヒルを追い、リンはバスタオル姿でのんびりと泳ぎ戯れる。その器用な指先に触れるか否か、湯の流れに乗った玩具は更に流れる。
「……あれ」
 湯煙の向こうを見遣ればもう一匹、玩具のアヒルが流れ来る。眼を凝らせば、軽く結わえた緑青色の長い髪をした小さな人影が朧に見えた。
「「あ」」
 救出騒動で荒れた宿内の清掃を手伝い終え、遅れ入り来たシュテだった。水着姿の彼も、自ら浮かべた玩具のアヒルが、リンのアヒルと軽くぶつかって仲良く流れ行く様子に、翠珠の瞳を一度瞬かせ、その後はこそばゆい笑みを互いに交し合った。

「……本当、変わってるなぁ〜ん?」
 ユディトに付き合い漸く宿の隅々を清め終えたキャニ。二人連れ添い脱衣籠に眼鏡を置き、バスタオルを身に纏いながら首を傾げる。女重騎士は三度目の旅を共にする彼女に、『湯浴みも禊も好きなのに、大勢で入るのはやっぱ恥ずかしいのよ』と困った様な笑みを浮かべた。
 入れ違いで出て行く仲間達と労いの挨拶を交わし、二人は暮れの滝に身を漬す。キャニは身を翻してバスタオルを解いた。
「まあこれだけ遅くなれば貸し切りみたいなものだなぁ〜ん」
 開放感に大きく四肢を伸ばし深呼吸をすれば息は白く、湯の香に潤う大気と波紋を成す湯の熱が身体にじわりと満ちる。そのまま岩場に置いた盆から、一口大に切り粗塩を振って焼いた地鶏を一摘み。酢橘を搾って食みつつ、残照を映す滝を見れば――
「……冒険者になって本当に良かったです……」
 滝壺から、茹り上がったリュナスが仰向けで流れて来た。泳ぎ疲れて尚上気した頬に『これからも頑張ります』と晴れやかな笑みを浮かべ、彼女はそのまま二人の前を流れ去る。赤茶の髪が水面に揺らめきながら、湯煙の向こうに消えて行った。
「……なぁ〜ん……」

 寒空を仰げば残照が彩る。太陽の滝の彼方を、雁の一群が飛び去って行った。
 深まる冬にひと時の温もりをと、ソラリスの湯宿は再び動き始める。


マスター:神坂晶 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2007/01/02
得票数:ほのぼの22  コメディ1  えっち1 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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