苺の森



<オープニング>


「君達。アンデッド退治の依頼が来ているんだけど、頼めないかい?」
 ストライダーの霊査士・キーゼルは、酒場にいた冒険者達を見回すと、そう依頼について持ち掛ける。
「北の森の一角に、苺が群生している一角があってね。毎年この時期になると、近隣に暮らす人達が苺を摘みに向かうんだけど……今年は、その辺りに、アンデッドが現れているようなんだよ」
 キーゼルが言うには、そのアンデッドというのは、森で朽ち果てた動物がアンデッド化したものだという。具体的には、鹿のゾンビが一体に、狼のスケルトンが三体いるようだ。
「狼のアンデッドの方は、かなり素早いらしくて、人間を見つけるとすぐに襲い掛かってくるようだね。一撃自体の強さはそうでもないけど、素早さを生かして、連続して攻撃を繰り出してくるらしい。鹿のアンデッドの方は、そんなに素早くはないようだけど、角を利用しての体当たりによる一撃は、かなり強力らしい。どちらも気をつけないと、危ないだろうね」
 キーゼルは霊視して得た情報を元に、そう助言すると、じゃあよろしく頼むよ……と、冒険者達を送り出すのだった。

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参加者
幸せを求めし白き鷹使い・シャンナ(a00062)
微笑みの風を歌う者・メルヴィル(a02418)
緋天魔・ジゼル(a02976)
沈黙の剣士・アーネスト(a04779)
天泣・アイゼン(a05078)
エルフの医術士・ゲンマ(a05079)
風切羽・シリル(a06463)
黒き翼の使者・シェローラ(a06798)
軽やかに跳ねる靴音・リューシャ(a06839)
優しい悪魔・カノン(a07123)


<リプレイ>

●薄暗い森の中
 依頼を受けた冒険者達は、最近になってアンデッドが現れるようになったという、その苺の森へと向かっていた。
「何だって動物がアンデット化するんだろうねぇ……」
 歩きながら呟いたのは、死の絶叫・アーネスト(a04779)だ。この森に来る前に近くの村に立ち寄り、最近この辺りで何かおかしな事がなかったかを尋ねてみたが、動物達がアンデッド化した理由らしきものは、何一つ掴めていなかった。
「そうですね……でも、それ以外の情報は、いくつか得られました」
 エルフの医術士・ゲンマ(a05079)のすぐ後ろを、左右を見回して警戒しながら歩いていた、平面に吹く漆黒の臆病風・アイゼン(a05078)は、アーネストの言葉にそう返す。
 彼女同様に、森に赴く前にアンデッドに関する情報を集めていたアイゼンは、アンデッド達が現れたのは、苺の群生地よりも少し手前の場所だという事を掴んでいた。アンデッド達に襲われた者達は皆、苺を摘みに向かう途中で襲われたのだという。
「ただ、アンデッドが現れた時間は、まちまちだったそうです。時間帯はあまり関係ないようですね」
 実際に、森の中でアンデッドに襲われたという人々から話を聞いて回っていた、風切羽・シリル(a06463)は、その結果からアンデッド達が現れやすい時間についてそう話す。
 おそらく人の気配に反応し、誰かが近付く度に現れるのだろうが……なら、アンデッド達は日の光に弱い事を踏まえて、真昼に討伐に向かった方が良いと、こうして冒険者達は時間を見計らい、森の中に入っていた。
「えと、向こうのようです」
 その途中、微笑みの風を歌う者・メルヴィル(a02418)が所々で獣達の歌を使い、アンデッドがどの辺りにいるのかを教わると、奇襲などをを受けないよう注意しつつ、冒険者達は先へ進んでいく。
「苺の森……なんて魅惑的な響き……」
 カンテラを手に歩いていた、軽やかに跳ねる靴音・リューシャ(a06839)は、頑張って依頼を終わらせなければと考えながらも、気合は十分といった様子で周囲を見回す。
 森の中という事もあり、周囲は昼間でも少しだけ薄暗く感じられたが、それでもしっかりと辺りを確認し、どのように動けば、この場所や地形を生かして戦えるだろうかと、そうリューシャは考える。
(「アンデッドとは、既に死したもの……。殺せないものには、あまり興味が持てませんわね……」)
 一方で、そんな事をぼんやりと考えているのは、優しい悪魔・カノン(a07123)だ。
 死んでいる者に攻撃を重ね、それを打ち倒しても……それを『殺す』とは言わないだろう。アンデッドは既に死したもの……その、なれの果てなのだから。
(「ならば……わたくしは、皆さんをお護りしましょう」)
 殺せないアンデッドに興味を持てない以上、自分は攻撃ではなく防御を重視し、他の仲間……特に、打たれ弱い術士達を護る事にしようと、そうカノンは思う。既に死んでいるものよりも、今生きているものの方が大切だし、それに……。
「何か来るぜ」
 そんなカノンの思考は、緋天魔・ジゼル(a02976)の言葉と同時に途切れる。
 警戒の声を上げながらジゼルが睨んだ草茂みの向こう側からは、複数の何かが地面を踏みしめながら、駆けて来る音が響く。
「アンデッド……」
 その正体が判明するまで、ものの数秒しか掛からなかった。今はすっかり骨だけになった四足の獣が数体……そして、腐った肉が今にも爛れ落ちそうな、鹿だと思われる姿が一つ。
「あれだな」
 それは酒場で聞いたアンデッドの特徴に間違いない。ジゼルは剣を構えながら、敵からの攻撃に備えて、復讐者の血痕を使った。

●アンデッドとの戦い
「気高き銀狼!」
 アンデッドと対峙した冒険者達の動きは素早かった。すぐに陣形を整えると、メルヴィルが狼のアンデッドの中の一体に向けて銀狼を放ち、その拘束に動く。
「ほら……アイゼンはんも、いつまでもウチの後ろにおらんと」
 ほぼ同時に、光源代わりのフォーチュンフィールドを使い、辺りの地面をぼんやりと光らせたゲンマは、今までずっと自分の後ろにいたアイゼンを振り返る。
 彼がとても臆病な性格だという事を知っているゲンマは、この依頼を受けたという彼の事が心配で……その背中を一押しして、ちょっと手助けしてあげようと、そう考えて今回の依頼に参加していたのだ。
「はい……そうですね」
 ゲンマの言葉に頷いたアイゼンは、一歩進み出て彼女の前に出ると、そのまま気高き銀狼を放ち、メルヴィルとは別のアンデッドの拘束へと動く。
「影縫いの矢!」
 銀狼はアンデッドを組み伏せるには至らず、攻撃ののちに姿を消してしまうが、その攻撃でアンデッドが体勢を崩した所に、幸せを求めし白き鷹使い・シャンナ(a00062)の射た矢が飛び、今度は完全にその行動を封じ込む。
「――居合い斬り!」
 そこに、黒き翼の使者・シェローラ(a06798)が抜き打ちによる強烈な一撃を放つと、そのアンデッドに致命傷を負わせる。
「このまま一匹ずつ、確実に仕留めましょう」
 シェローラは、そのまま剣を構えながら、皆にそう呼びかける。
「チェインシュート!」
 それとは別の狼のアンデッドには、アーネストが放った一撃が突き刺さる。
 チェインシュートによる鎖でアンデッドを絡め捕り、その行動を阻害する事が出来れば……と考えての行動だったが、武器と共に射出された鎖は、攻撃の直後すぐに手元へと巻き戻って来る。元々、チェインシュートによる鎖には、武器を射出する為の効果しかなく、対象を拘束する為に用いる事は出来ないからだ。
 狙いは外れてしまったが……だが、アーネストにとってこれは失敗という訳でもない。アンデッドを絡め捕る事は出来なかったが、アンデッドに対する攻撃自体は命中し、少なからず打撃を与えているのだから。
「スピードラッシュ!」
 リューシャはアンデッドに肉薄すると、細身剣による素早い連続攻撃を繰り出し、次々とダメージを与える。そこにメルヴィルの放った気高き銀狼が飛び掛ると、その体を組み伏せて、動きを拘束する。
 と、それとは入れ替わるように、銀狼を振り払って拘束から逃れた別の狼アンデッドが、術士達に襲い掛かろうとする。
「だぁめ、そこまでだよ☆」
 その様子を見たカノンは、制止の為にアンデッドの前に立ちはだかると、使用しておいたライクアフェザーを用いて、飛び掛ってきたアンデッドの攻撃を避ける。その上で、自らは剛鬼投げを使って反撃に動く。
 地面に叩きつけられた衝撃で麻痺したのか、思うように身動きがとれずにいるアンデッドの姿を見ながら、カノンはにっこりと微笑む。
(「テキさんをとめるのは、うまくいったみたい。……このまま、みんなとなかよくなれたらいいなぁ。そうしたら……みんなをころせるキカイが、まわってくるかもしれないもん☆」)

 一方、冒険者達の多くが狼のアンデッドへの対処を優先した結果、鹿のアンデッドとは、ジゼルが一人で対峙する格好になっていた。
「く……」
 勢いよく突っ込むかのように、体当たりを仕掛けてくる鹿の攻撃を、出来るだけ避けるようにしながら動くジゼル。だが、それを完全に避ける事は叶わず、受けるダメージを抑えるだけで精一杯だ。
 ジゼルは決して浅くはない傷を受けながらも、力を溜めると、次の攻撃の為に備える。そんな彼を狙って、鹿アンデッドは再び体当たりによる攻撃を繰り出そうとするが……そこに、狼アンデッドを全て拘束させ終わったのを見たシャンナが、後方から影縫いの矢を射かけて、その動きを封じる。
「ヒーリングウェーブ!」
 その様子を見たゲンマは、すぐにジゼルの方へと近付いて癒しの光を放つと、彼が負った傷を癒す。その間にも後方では狼アンデッドに対する攻撃が続いている。
「スピードラッシュ!」
 シンクレアを構えたシリルは、スピードラッシュによる素早い連続攻撃を放つと、最後の一閃でアンデッドの体を両断し、そのまま敵を撃破する。
 最後に残った一体は、アイゼンが放ったカラミティエッジによる急所への一撃が命中し、そのまま地面へと崩れ落ちていく。
「加勢します」
 シェローラは狼のアンデッドが片付いたのを見ると、援護にと鹿アンデッドの方へ駆け寄り、その背に剣を振り下ろす。
「居合い斬り!」
 更にアーネストが、一旦鞘に戻した剣による抜き打ちを放ち、アンデッドの体へと叩きつける。
 アンデッドの口からは呻くような苦悶の声が上がり、森の中へと木霊する。
「――俺の愛剣、紅皇の餌食になれ!」
 そこへ、攻撃力を高めたジゼルによるファイアブレードが打ち込まれた。剣に込められた炎の闘気がアンデッドを焦がし、その体を見事に両断する。
「っ……」
 その攻撃の反動で、ジゼルの体に痺れが走り、全身の動きが封じられてしまうが……そんな彼の目の前で、アンデッドは力を失いながら、ゆっくりと地面に崩れ落ちていった。

●依頼を終えて
 戦いを終え、一息ついたアーネストは、元の屍へと戻った狼や鹿達の埋葬を始めた。無言で黙々と作業を進め、彼らの体を地中へと埋め終わると、両目を閉ざして黙祷を捧げる。
「このアンデッド達も、生きていれば一緒に、この森で苺の季節を喜び合えたのでしょうか……」
 そう呟いたシェローラも、動物達が埋められた地面の側に立つと、しばらく彼らの冥福を祈っていた。

 一方、他の多くの冒険者達は、苺が群生している一角へと足を伸ばしていた。
「苺の方は無事だったみたいですね」
 周囲を見回して苺の様子を確認していたシリルは、ホッとした様子で口にすると、食べ頃の苺を一粒だけ見繕って、ぱくんと口に運ぶ。
「ん……美味しい♪」
 味見した苺の、甘酸っぱい味が広がるのを感じながら、シリルはにっこりと微笑む。
「こっちは食べ頃……こっちの苺も、あと何日かで熟れそうですね」
 シャンナも苺を見回しながら、綺麗な赤色に染まった物を一粒口に運ぶ。
 帰れば、シリル達が旅団で育てている苺が待っている。だから、それを楽しみにしながら……食べるのは、ほんの少しだけに抑える。
「帰ったら、旅団のみんなと一緒に食べよう。……料理上手な人に、ストロベリータルトを作ってもらうのも良いかもっ」
 リューシャはルンルン気分で軽やかに歩きながら、少しだけ……と苺を摘んでいる。その近くでは、アイゼンも義娘に新鮮な苺をお土産として持ち帰ってあげようと、食べ頃そうな苺に手を伸ばす。
「この位なら、きっと大丈夫ですわね」
 カノンも採り過ぎないように気をつけながら、何粒かの苺を摘むと、持ち帰る為にそっとハンカチに包む。
「ん?」
 無事にアンデッドを片付ける事が出来たと、安堵の表情を浮かべながら苺を摘んでいたジゼルは、足元に擦り寄ってきた何かに気付いて、視線を足元に向ける。
「トパーズ! お前、いつの間に……」
 そこにいたのは、ジゼルの愛猫・トパーズだった。危険だからと置いて来たのだが、どうやらこっそり後ろをついて来ていたらしい。
「なんだ、欲しいのか? んー……なら、一粒だけだぜ?」
 すりすりと頬擦りして甘えながら、ジゼルの手にある苺を欲しそうにしているトパーズ。その様子を見たジゼルは、やれやれといった様子で苦笑しながら、トパーズに苺を分け与えると、自らの口にも一粒苺を放り込む。
「ふぅ……。えと、あとは……」
 そんな中、メルヴィルはシャベルを手に地面を掘ると、苺の苗を持参した鉢に移し替えていく。メルヴィルは予め村に立ち寄ると、人々に苺の苗を一株だけ持ち帰らせて貰えないかと頼み、彼らから快諾を得ていた。
「……これで終わりました、です」
 苗を傷つけないように気をつけながら、鉢へと移し終えたメルヴィルは、ふうと一息つくと、その苺の鉢植えを両手で大切に抱え上げる。
(「これを持って帰ったら、旅団で育てて……。そうしたら、きっと皆さんに美味しい苺を沢山お届けできると思います、です」)
 その為に頑張って、苗のお世話をしなくては……と、鉢植えを見つめていたメルヴィルの顔には、柔らかな微笑みが浮かんでいた。


マスター:七海真砂 紹介ページ
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