≪岩腕の王ブラキオン≫猿怪獣を追え



<オープニング>


 今日も今日とて護衛士達はバナナを集める……なぜバナナを集めるのか? と問われれば、そこにバナナがあるからさと答えるだろう。
 そのくらいの勢いでバナナを集める、集める。
「木登り、最近してないので上手く昇れるか……よいしょ、とれました!」
「ウィンスィー木登り上手なぁ〜ん♪ いつでも落としてなぁ〜ん」
 よじよじとウィンスィーがバナナの木を登り、その下でチェリがワー♪ と両手を広げる。ウィンスィーはその様子を穏やかな笑顔で見やるとバナナを落とし――
「……むぎゃっ」
 思った以上に大きかったのか、チェリはそのまま潰された。
「なぁん、大丈夫かなぁんっ!? ……チェリちゃんの尊い犠牲を胸に……」
 ピクピクと痙攣する手しか見えないが、チェリの尊い犠牲を無駄にしてはならないのだ! そんな決意を持ってメルフィがノソノソとのんびり、バナナを運ぶ……なんとなく無駄な犠牲になった気がしないでもない。
「弔い合戦です」
「死んでないなぁ〜ん……」
 そして何時の間にか木に登っていたジェビスが木を揺らす。鎧姿のままどうやって登ったのかは疑問であるが、ついでにバナナの下から聞こえた講義の声は聞こえないふりをするのがお約束だ。
「あなたの犠牲は無駄には致しませ――」
 そんなチェリに視線を奪われていたフィードの頭上に大量のバナナが落ちてきて――そしてまた一人、尊い犠牲が生まれるのだった。

「……よいしょ、よいしょっと……」
 そんな仲間達の様子を横目に真面目に働くラシェットだが、
『うきー』
 唐突に猿怪獣達が現れた! 二十体ほど。
「な――」
 猿怪獣達は吃驚するラシェットを横目に彼女が運んでいたバナナを奪いとると、そのまま走り去っていった。

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参加者
炎に輝く優しき野性・リュリュ(a13969)
デタラメフォーチュンテラー・メルフィ(a13979)
黒衣の天使・ナナ(a19038)
黄砂の女兵士・ガーベラ(a20332)
偽ノソどじぇろりまま冬将軍・フィード(a29126)
満腹を凌駕するみかん・ミスティア(a46283)
星槎の航路・ウサギ(a47579)
ノソ・リン(a50852)


<リプレイ>

 走り去る猿怪獣達を追って冒険者達は行動を開始した。
 木の上を飛ぶように移動する猿達も地面の上を走る猿も相当な速度で移動しているが、バナナを抱えている分だけ冒険者達の方に分があるのか、次第にその背中が見え始めてくる。
「見えたなぁ〜んね……数が多いなぁ〜んけど頑張ろうなぁ〜ん!」
 その姿を捉えた、黒衣の天使・ナナ(a19038)はその身に黒い炎をまといながらビシィ! と猿怪獣達を指してから仲間達が居るだろう方向を振り返る。
「皆で頑張って集めたバナナ持って行っちゃうなんて絶対に許さないのです。取るの、凄く大変なのですよ!」
 うんうんとナナの声に頷きながらやたら実感のこもった抗議をするのは、星槎の航路・ウサギ(a47579)だ。
 受け取るときに潰されたり潰されたり潰されたりと……本当に大変なのだ。そんな苦労の賜物をそうそう簡単に渡してはやれない。頑張って取り戻しますです! とグッ! と拳を握り決意を新たにする。
「よっくもわたしがこっそりと自分用にためておいたバナナを……」
 そんなウサギと同じように拳を握り締め、満腹を凌駕するみかん・ミスティア(a46283)はワナワナと震える。
「ほう」
「って何でも無いのですよ!?」
 え? と訝しげな視線を向けるウサギと、黄砂の女兵士・ガーベラ(a20332)にホントニナンデモナインデスヨとカクカクと不自然な動きで両手を振りながら前言撤回してみるミスティア。
「まぁいいさ。バナナは栄養価も高いしね。朝食べるといいさ」
 ガーベラは本気でやる気だったに違いないミスティアに軽く嘆息する……まぁ、ガーベラもバナナは好きなのだミスティアの気持ちも解らないでもないのかもしれない。
「兎に角、食べ物の恨みは怖いのです。アムネリアさんに代わってお仕置きせねば」
 不自然な動きをするミスティアと何やら頷いているガーベラから視線を移すと、ろりこん疑惑のドジぇろ将軍・フィード(a29126)は遠眼鏡を持ち猿怪獣達の先に何か怪しいものがないかと確認する。
 だが、特に変な動きがあるようでも無さそうだ……そもそも木が邪魔でそこまで遠くは見えない。

「よくもチェリとフィードが命を賭して得たバナナを……2人の為にも、断固取り戻してみせる……!」
「そうなぁ〜ん! 尊い犠牲を出して得たバナナを取り返すなぁん!」
 お空の向こうに旅立った二人の姿を思い描き、銀花小花・リン(a50852)と、どこでもヒトノソリン・メルフィ(a13979)もまたウサギと同じく決意を新たにする……いや、誰も旅立ってはいないけれど。
「ふっ、こうも早く再戦の時が来るなぁ〜んてなぁ〜ん……」
 そして再戦に燃える、炎に輝く優しき野性・リュリュ(a13969)は先日の激闘を思い出す。バナナの皮にすべり、バナナで脳天を直撃され、バナナまみれになったあの激闘……。
「バナナをしっかり取り返すなぁ〜んよっ!」
 なんだかしょっぱいものが両の目から零れてきそうな思い出を振り払うように、手を払うとその手にワイルド・インパクト・ボーンが呼び出すのだった。

 何だかんだとやっている内に猿怪獣を捕らえられる距離まで追いついた一行に、猿怪獣達が慌て始める。ウキーウキー! と威嚇したり、こそこそと何かを準備し始めたようだ。
 そんな猿怪獣達に抵抗の隙を与えないようにメルフィが体内から無数の呪われた鎖を放出し、猿怪獣達の体を鎖で拘束して行く……だが、同時にエゴを具現化した鎖の放出はメルフィ自身の体の自由をも奪いとる。
「えっちなフィードさん、援護宜しくなぁ――」
 そんなときのために打ち合わせしていた通りにメルフィはフィードの方を振り返り援護を求めるが、
「絶対領域で悩殺して、バナナを献上させるのです」
 セクシー&キュートな黒基調のミニスカメイド服で猿怪獣達の誘惑を試みていたフィードを見て愕然としたものである。
「あいた……あいたた……やっぱりノソがみさま、リュリュさんくらい魅力的でないと駄目ですかね。お仕置きタイムへ移行なのです」
 その姿を見てムキャー! と怒り出した猿怪獣達に石やバナナを投げつけられ、やっぱり無理だったかと嘆息するとフィードは仲間達を励ます高らかな歌を歌う……さりげなく名前を外されたメルフィはなんとなく不満そうだったけれど体の自由は戻った。
「泥棒さんはお仕置きなのです!」
 ウサギは足元に転がっていたバナナの皮をひょいっとかわしながらダガーを素早く振るって衝撃波を放つ。その攻撃で致命傷を与えるには至らないが、吃驚した猿怪獣は手に持っていたバナナを思わず落とした。
「……よっと」
 そして猿怪獣が落としたバナナをリンが受け止める。本当は眠りを誘う歌で猿怪獣を眠らせようと思っていたリンだったが、猿怪獣達はまったく眠る様子が無かったのだ。眠らないものはしょうがないと、リンは猿怪獣達が落としたバナナの回収を行っていた。
「あー、そこの猿怪獣さん、早くバナナを返さないとひどい目に合うのですよーっ!」
 ミスティアは猿怪獣達に向けて警告する、痛い目を見たくなければさっさと私のオヤ……皆でとったバナナを返せと……まずは言葉で警告するのがお約束だ、なぜか言葉と同時に衝撃波が猿怪獣に放たれたのは気のせいだろう。
「待つなぁ〜んっ!! バナナを返すなぁ〜んよ〜っ!」
「他人のものを盗むふとどきな猿怪獣はお縄につくなぁ〜ん!」
 リュリュが鎖をつけた大棍棒を打ち出しミスティアと同じ猿怪獣を攻撃し、ナナが術手袋を掲げ眼前に無数の黒く鋭い針を作り出すと、それらが雨のように猿怪獣達に降り注いだ。
『うきゃー!』
 猿怪獣達もただやられている訳ではない、近くにあった木の枝や石を投げつけながら、それでも走る速度を緩めずに駆け抜けてゆく。石といっても猿怪獣の大きさから放たれる石である、岩ほどにも大きいが、
「バナナ返せですこんちくしょー!」
 それらをひょいひょいと避けながらミスティアがムキャー! と猿のように追ってゆく……だんだんとエスカレートしているような気もしたが、意外と冷静に足元に転がっていたバナナの皮を避けたりして、
「フフフ、そんなトラップにこのわたしが引っかかると思う――」
 前に居た猿達が木の枝を引っ張ったまま走りさり、去り際にその枝を離す……とどうなるか?
「ひゃぁあああ!」
「なっ!? なぁぁぁあぁ〜〜んっ!!」
 引き絞られた枝が鞭のようにしなり、得意満面な顔で威張っていたミスティアとその横に居たリュリュを大きく吹き飛ばした。
「……なむなむなぁ〜ん」
 長い語尾を残して遠くに吹き飛ばされていった二人に祈りをささげるナナ……青空の向こうに二人の笑顔が見えたような気がした。
「やれやれだね」
 まんまと罠にかかった二人を見てウキャウキャと喜んでいた猿怪獣を、ガーベラストレートから緑の木の葉を飛ばして捕らえガーベラ嘆息するのだった。

「またしても……」
「尊い犠牲がでちゃったなぁ〜ん……」
 お星様になったリュリュとミスティアのためにも何とかして全てのバナナを取り返さねばならぬ! リンとメルフィは頷きあうと再び猿怪獣達を追うが、
「そろそろ、森の端ですね」
 遠眼鏡を片手にフィードがそんなことを言う。一度この場所に来ている彼には何となく解るのだろう……そして、その言葉に呼応するかのように、唐突に森が開け眼前には見渡す限りの荒野が広がった。
「まだです! 逃がしませんですよ!」
 荒野に出たといっても逃がすわけにはいかない……ダガーを振るって不可視の刃を放ちながらウサギが去る怪獣達に追いすがろうとする。
「……ここまでだね」
 だが、ガーベラがウサギの肩を掴んで止める。
「この先は岩猿が沢山いるかも……とは思っていたけどなぁん」
 足を止めたメルフィ達の視線の先に居たそれは確かにゴツゴツとした岩猿だった……ただ、他の猿達よりも少し横に……いやかなり横に広がっていたけれど。たった一体で現れたそれは、威嚇するように牙をむくと右腕を大きく振り上げて――
「なぁん!?」
 振り下ろした腕が地面に叩きつけられると同時に、鈍い音と振動を撒き散らし、そのゴツゴツした猿怪獣を中心に土煙が立ち込めた。もうもうと立ち込める土煙が消えたとき、すでに普通の猿怪獣達の姿は無く、悠然とゴツゴツとした猿怪獣が立ち去る背中だけが見えるだけだ。
「あう、覚えてやがれなのですー!」
「……大人しく引き返そう」
 ゴツゴツした猿怪獣が居た辺りが軽くへこんでいる……あの右腕の一撃をまともに食らえばどうなるか解らないだろう、このまま追っても勝てる見込みのない相手を追う必要もない。
 悔しそうに吠えるウサギを視界に納めつつリンはポツリと呟いた。

「メスでしたね」
 猿怪獣達が落としたバナナを回収しながら、フィードはそんなことを言った。
「……? 何で解るんだい?」
 そんなフィードに、バナナを担いでいたガーベラが不思議そうな顔を向ける。
「頭に花をさしていたじゃないですか」
 そんなガーベラに朗らかな笑みを浮かべてフィードは言い切ったものだ。
「よく見てるなぁ〜ん」
 伊達にミニスカブラックメイド服などを着込んでいる訳ではないらしい、視点が女性的だ。そんなフィードにナナが感心していると……、
「なぁ……なぁ〜ん、助けてなぁ〜ん」
「やられながらもバナナを回収したのですよ!」
 泣き顔のリュリュと笑顔のミスティアがバナナを手に木の枝に引っかかっていたのだった。

【おしまい】


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作成日:2007/01/09
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