≪岩腕の王ブラキオン≫周辺調査



<オープニング>


 巨石の塚……かつては七大怪獣ブラキオンが眠りについていた場所。
 今その場所はブラキオンの復活の影響で崩れ落ち、その面影さえも残ってはいない。

「ふ〜む……」
 ブラキオンが落ちた崖の下……もうもうと立ち上る煙に阻まれその先が見えない……紫猫の霊査士・アムネリア(a90272)が思わずうなると、
「何か解ったの?」
 悠久の誘い・メルフィナ(a90240)が興味津々と言った様子でアムネリアの様子を伺う。
「さっぱり……もう少し情報があれば違うと思うのだけど」
 そう言って肩を竦めるアムネリアの頭に優しく手を置いて、仕方がないね〜とメルフィナは笑う。
「でも、あんまり悠長にもしていられないから。兎に角調べなくちゃ」
 崖の下に落ちたとはいえブラキオンは健在だ、悠長に構えている暇は余り無いだろう。だが、具体的な策は無い、情報が足りない……となれば。
「取り合えず行って来い?」
「……ふ、ノープラン作戦といってくれ」
 意地悪く言うメルフィナに、アムネリアは自信満々に答えたものである……視線は逸らしていたけれど。

「そんな訳で、唸りの渓谷を調べてきてくれ」
 どんな訳だなんて突っ込みは聞こえない。
「何かの穴? のようなものが幾つかの場所に見えた。塚があった場所を中心に歩き回り地形を確認しながらこの穴のようなものの場所を探してくれ」
 簡単だろう? と、事も無げに言うアムネリアだが、
「それから……どれかの穴の近くにゴツゴツした岩のようなもので体が覆われたオスの猿怪獣が見えた」
 巨石の塚の調査に参加したものならば記憶に残ってるかもしれないあの固体だろうか? そう疑問に思っただろう何人かの護衛士にアムネリアは首を振る。
「アレとは別だな…………なんだかこう、ナヨナヨくねくねしてて、種族を問わずに男が大好きなようだ」
 つまり、アレなのだ危険がデンジャーでお子様にはあんまりよくない予感がヒシヒシと伝わってくるのだ。
「あと、モグラ怪獣もちらほら見えたけど……まぁ、気をつけてな?」
 他人事のように言うと、アムネリアは護衛士達を見送るのだった。

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参加者
赤烏・ソルティーク(a10158)
番紅花の葬送姫・ファムト(a16709)
空気は読まない・レジィ(a18041)
普通の女の子・フィオリナ(a19921)
彩士・リィ(a31270)
物語・メロス(a38133)
清浄なる茉莉花の風・エルノアーレ(a39852)
チャンピオンハート・トウガ(a42909)
NPC:悠久の誘い・メルフィナ(a90240)



<リプレイ>

 もうもうと立ち上ってくる煙と低い鳴り唸り声のような音が鳴り止まない崖に立って冒険者達は集まっている。
 
 ここはブラキオンの眠っていた場所……何かが無いか、あるいは崖の下に何かが見えないものかと、チャンピオンレッド・トウガ(a42909)は崖の下に目を凝らすが煙の中に隠れる谷底はまったく見えない。
 それどころか、ブラキオンが落ちたときに周りのものも全て落ちてしまって彼の痕跡さえ見当たらなかった。
「これは……仲間達の調査の為に、猿怪獣の群を誘き寄せようとその身を危険に晒し、戦い続けた……二人の男達とおまけの……挑戦の物語である」
 むぅと唸るトウガの後ろからプロローグを背負って、約束の剣花・メロス(a38133)が現れる。これから始まる壮大な物語の始まりに相応しいナレーションだ……壮大なのかは不明だが。
「殿方が好きな猿とはのう……じゃがまあ、妾には関係なさそうじゃし」
 メロスのナレーションにふむふむと頷き……彩士・リィ(a31270)は考える。
 十三歳でエンジェルな彼女には想像出来ないことなのかもしれないが、世の中色々な趣味の人や動物がいるのである。結局、関係無さそうだし良いかと結論付けて猿怪獣のターゲットになりそうな、赤烏・ソルティーク(a10158)に視線を向けると、
「薔薇も百合も姉妹も好きだけど、でもマッチョとか中年親父なハードなのは嫌なんです」
 ここにも一人色々な趣味の人が居た……否、むしろ色々と駄目な人間の思考のようにも見えるが、気のせいだろう。
「これが女性の皆さんを襲うというなら誰が何と言おうと殲滅させるんですけどね」
 紫色の瞳でジィ……と見つめるリィの視線に気づいたのか、やれやれと肩をすくめてそんな事を言うソルティークだが、
(「……気のせいかソルティーク殿は張り切っておるように見えるのう」)
 リィの目は誤魔化せなかったらしい。
「ウホッとかアーッな展開が待っているというのか……?」
 そんなメロスやソルティークを見て、掌にじっとりと嫌な汗が滲むのを感じる……トウガにとって護衛士としての初めての依頼なのだ。初依頼なのだし頑張るぜ! と言うやる気と、男好きだと言う猿怪獣の情報がトウガの中でグルグルと回る。
「……否ッ! 断じて否ッ!! 声を大にして断るっ!!」
 暫しの思考の後、断じて否である! との結論に至ったトウガだが、時は既に遅し、
「さぁ! はりきって行きますわよ!」
 物凄く楽しそうな、清浄なる茉莉花の風・エルノアーレ(a39852)に首根っこを捉まれて連行されていった。
 否ー! と叫ぶトウガの声が、虚しく唸りの渓谷に響き渡り……その声も、渓谷から聞こえてくる音によってすぐにかき消されて行くのだった。

 メロス達は崖に沿って歩いてゆく。
 崖の下からは相変わらず卵の腐ったような匂いを含む煙がもうもうと立ち上るが、崖の上の道程は穏やかなものだった。
「ノープラン作戦もいいところね。何か見つかるといいのだけど……」
「エテ公のブラキオン略してブラ公退治の第一歩じゃ。良い霊査材料を探さねばの」
 ブラストエンプレス・フィオリナ(a19921)が大棍棒を肩に担いでぼやくと、番紅花の姫巫女・ファムト(a16709)がまぁまぁと嗜めるように続けた。だいたいがアムネリアの立てる作戦なんてこんなもんである。そこに何かの真意があるのか無いのかすらも読みにくいものであるが。
「それもそうね」
 結局やることは変わらないのだ、ファムトの言うように霊査に使える材料または情報を手に入れる……それだけなのだから。フィオリナは頷くと正面に視線を戻し、何か出てきはしないかと意識を向けた。
「んー、地図を描くなんて初めてだなあ。なんとかなるかな?」
 黙って歩き出したフィオリナの後ろをトテトテと歩きながら紙と筆を手に持って、ほっぺたつままれた・レジィ(a18041)が唸っている。
 マッピングなんて人生のうちでそうそう経験するものでもないし、正確な地図を書くにはそれなりの経験が必要なものである。レジィの不安ももっともな事だ。
「大体で良いんじゃない?」
 だが、レジィと同じく頼まれてマッピングを担当していた、悠久の誘い・メルフィナ(a90240)はあっけらかんと言い切った。
「……なるといいなあ」
「……ならないんじゃないかなぁ」
 そんなメルフィナが描いていた地図を覗き込んで、レジィとメロスがガックリと肩を落としたものである……この地図を頼りに道を進んだら確実に谷底に落ちると言い切れるほどに大雑把な地図だったのだ。
 それから暫く歩き、青空が紺色の空になったころ。
「向こうのほうに光が見えない?」
 前方を見つめていたフィオリナがそんな事を言い、
「確かに……ほんわかと光っているように見えるのう」
 ファムトが目を細める……月明かりとは違う光……地平のあたりが僅かに……ほんの僅かに光っているような気がしたのだ。フィオリナ達は暫しの間、顔を見合わせて考え込んでいたが、
「考えてもしょうがないし、行ってみよー」
 考え込んでいてもしょうがないと歩き出したレジィに続くように、光の見える方へ歩き始めるのだった。

「……ありましたね」
 平地にいきなり現れた御椀のように大きく窪んだ場所……その中央に光の根源があった。
 それは太陽の元にあればかき消されてしまうような弱々しい光だったが、闇夜にあれば十分に目立つ光だった。
「……居ましたね」
 そしてその周りをうろうろとしているゴツゴツとした猿怪獣の姿が見て……何処か楽しそうな様子でソルティークが呟くと、
「断固拒否! きょひぃぃい!」
「キリキリ行きますわよ!」
 未だに諦めのつかないトウガを引き摺ってエルノアーレ達は生贄になるべく、猿怪獣の前に突撃する!
『……うほ♪』
 突然目の前に現れたソルティーク達に、ゴツゴツした猿怪獣は解りやすい歓喜の声を上げた。
 ヤバイ……あの目はヤバイ……男ならば直感したであろうその目! だが、それでも囮役としての使命を全うしなければならぬ! ソルティークは頭部から眩い光を発すると――猿怪獣は両手を頬に当ててクネクネと怪しい動きで腰を左右に振りながら高速でソルティークに近づくとがっしりとその体をハグした!

「なむなむ……」
「それじゃこっちも行こうかしら」
 蛙を縊り殺したような叫び声が木霊する闇夜にそっと冥福祈りを捧げるリィの肩をフィオリナ叩いて、
「早くしないとソルティークさんの貞操が危ないからね」
 メロスがうんうんと頷く……もう既に遅いかもしれないけれど、そこは気分の問題だろう。

 
 一行はソルティークの光で体の自由を奪われた普通の猿怪獣にたこ殴りにして倒すと、更に二手に分かれる予定だったが、穴は一つしかないようだそれでは分かれても意味が無いだろうということで、同じ場所を調べる。
「ふ、これでばっちりね」
 子供の落書き以下の地図にその場所を書き込んで自信満々なメルフィナから視線を逸らすと、
「穴って言うより、洞窟よね」
 フィオリナがその穴の前に立って呟く。
 冒険者が裕に十人は並んで歩けそうなくらいに広いその穴は緩やかな下り坂となって、奥へ奥へと続いている……少なくとも視界に納められる範囲には行き止まりが無いほどに深いようだ。
「任せるがよいのじゃ。六角眼鏡を掛けておればどんな小さな物でも見逃さぬ特殊能力リゼルアイを得るのじゃ!」
 シャキーン! と、謎の六角眼鏡を持ち出して、ジャキーン! と目にかけるとそんな事を言うファムト。なんとなく熊殺しの称号を得られそうな技名である。
「む! これは苔なのじゃ!」
 仰々しく発見してみた苔は光っている……これが光源なのだろう。
 ふと……それは誰でも発見できるんじゃないかなぁ? とファムトに突っ込むか迷っていたレジィの純白の羽が僅かに揺れる。
「……風?」
 僅かに聞こえる唸り声のような音ともに洞窟の奥から風が吹いてくる……何所かに抜けているのだろうか? レジィは同じく風を感じたらしいリィと二人顔を見合わせる。
「何か音が聞こえるわね」
 モグラ怪獣を警戒していたメロスが唐突にそんな事を言う……言われてみれば足元に妙な振動を感じるような気がした。そして、地面の一部がモコ! と盛り上がって、
『も――』
 ドガ!
 もぐー! まで言わせない内に、フィオリナのくまたんアタック☆粉砕君9号がモグラ怪獣の脳天を打ち砕いた!
 真っ赤な何かが周囲にばら撒かれる……ちょうどフィオリナの目の前に出現してしまったのがモグラの不幸だったのだろう。フィオリナは頬についた無数の赤い点を軽く拭い。
「何?」
 と、ハリセンを手にえぇ!? と言う顔をしているレジィと穏便に済ますつもりだったらしいリィに、ニッコリと微笑んだものだ。
「まあ、トウガ達の貞操大ピンチな気もするからそろそろ撤収した方がいいわね」
 ヌラリと糸を引く赤いものがついた大棍棒を担ぎなおしフィオリナが言うと、大きく頷いたファムトが笛を口にくわえた。

「貴様に恨みはない……だが! 俺の全細胞が貴様を否定するっ!!」
 自分に抱きつこうとしたゴツゴツした猿怪獣を全力で否定するように、爆発的な気を叩き込んでその体を吹き飛ばそうとするトウガだが、ゴツゴツした猿怪獣は吹き飛ぶどころか、ダメージを受けた様子も無くトウガを見つめると、
『うきゃ☆』
 アハン……貴方以外とやるじゃなぁい? そんな目で見つめてきた! そしてトウガとソルティークに、にじり寄って来るゴツゴツした猿怪獣……二人は思わず逃げようとするが――
 此処から先はお子様にはちょっと説明し辛い状況なので、ばっちり観察していたエルノアーレさんに解説してもらいましょう――
「あら、あららら。激しいですわね」
「うそ、そんな事しちゃうんですの?」
「えぇ、そんな事まで!?」
「ちょ、ちょっと、それは拙いんじゃありませんの……」
 ――以上、エルノアーレさんの解説でした。
「なんと申しますか……。生かさず殺さずとはこのことですわね」
 ぜぇぜぇと荒い息をつくソルティークとトウガに癒しの光を放ちながらエルノアーレはそんな事を言う……その表情は満面の笑顔だったけれど。
「く、調査はまだ終わらないんですか」
 もうそろそろ駄目かもしれないとソルティークが弱気になっていると、笛の音が三回聞こえたのだった。

「彼らの死を無駄にしないためにも、我々は進まなければならない」
「なむなむ……」
 メロスがエピローグを背負って夜空にソルティークとトウガの姿を思い浮かべると、リィがその姿に手を合わせた。
「「死んでない死んでない」」
 そんな二人に思わず突っ込みを入れる男性陣だが、
「む、何やらいたく草臥れておるのぅ。回復してやろう、聖女のちゅー♪」
「「ちゅー♪ は、いやー!」」
 癒しの聖女を呼び出して回復してあげようとしたファムトから逃げだしたのだった。

「お疲れ様でしたわ。ええ、今日見たことは、一切口外いたしませんからご安心くださいまし☆」
 そんな彼等の様子を見て、エルノアーレは微笑む。
 なぜ彼等がそんなにちゅーを恐れるのか、彼女は何を見たのか……それはエルノアーレだけが知っているのだった。

【おしまい】


マスター:八幡 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2007/01/09
得票数:冒険活劇1  ほのぼの3  コメディ34  えっち4 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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