マデリンの夢占い



<オープニング>


 エルフの霊査士・マデリン(a90181)は淑やかに一礼した。
「新年おめでとうございます。今年も皆様、どうぞよろしくお願いしますわね」

 昨年も多事多難な年であった。きっと今年も色々と難題が山積することだろう。実際に戦う事はなくても、多くの困難や災難を視なくてはならないマデリン達霊査士も、その日々は大変なのだろう。


「けれど、暗い事ばかり考えていても仕方がありませんわ。わたくし、皆様の新年を占って差し上げたいと思いますの。それも、初夢で占うのですわ」
 マデリンは胸の前で腕を組み、お目目をキラキラさせながら在らぬ方を向いている。たっぷりと時間が経った後、ようやくマデリンの視線は冒険者達へと戻ってきた。

「……えぇっと、なんでしたかしら? あ、そうですわ、初夢占いでしたわよね。わたくしがすっぱりザックリ占って差し上げます。ですから、どのような初夢をご覧になったのか仰ってくださいませ。名乗っていただくかどうかは自由ですわ。わたくし、皆様の夢とその占い結果がとても気になるのですもの」


 何かよくない本を読んだのか、誰かにそそのかされたのか、それともいにしえの図書館にでも触発されたのか……マデリンは新年早々『夢占い』にはまってしまったらしい。

 しかし、それでは夢を話した冒険者に何の利もないではないか。冒険者の1人が質問した。マデリンは軽く首を横に振る。
「えぇ、勿論視るだけではありませんわ。占いの結果に応じた開運の品を差し上げますわ。ほほほ、これで皆様、新しい年も運勢ばっちりですことよ! もう何も怖いものはありませんわ」
 何故だか勝ち誇った高笑いを浮かべ、マデリンは1人の冒険者を手招いた。

「さ、では貴方からですわ……仰いませ」
 マデリンは身を乗り出した。

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参加者
NPC:エルフの霊査士・マデリン(a90181)



<リプレイ>

 酒場から場所を変え、何故か灯りの少ない薄暗い室内。薄い白のベールをかぶったマデリンは小さなテーブル越しに最初の犠牲者を見つめた。テーブルの上にはロウソクの炎が揺らめいている。室内は2人きりなので、夢の内容が他人に聞かれることはない。
「ユリの花の様に可愛い女性の異形のモノと戯れていましたわ。花園の中で遊んでいる様な……そのような感じの夢でしたわ」
「戦っているのではなくて?」
「楽しく遊んでいましたの。うろ覚えではありますけれど……」
「おそらくは、ユリカ姫……のお心の内にもっと解放されたい、自由になりたいと言う秘められた願望があるのですわ。危険な恋への淡い憧れがあるかもしれませんわね。そんなあなたにはこちらを」
 マデリンはある品をユリカに差し出す。

「父さんの夢だったんだよ」
 アキナは懐かしい人を思い浮かべ、知らずに笑みを浮かべる。その人は本当の父より父であった。人として愛されることも愛することもその人から教えて貰った。
「父さんがね、ボクの大好きなお菓子を一杯作ってくれてたんだ。とっても嬉しくて、だから夢から醒めてしまうのがちょっとだけイヤだったんだよ」
「……どなたか身近な年上の男性から大事な助言を受けているのではないでしょうか? それをもう一度思い起こし考えてみる時期なのかもしれませんわね。今ならばアキナさんも意欲的ですから、問題なくより高みに向かって歩ける様な気がしますわ」
 アキナへもマデリンはある品を手渡す。

「夢で見たのは夜景でした」
 視線は遠い別のモノを視ているようだ。
「山間の村だったと思います。あかりもありません。そこを青紫色の光の帯が左から斜め上に向かってゆらゆらと揺れていました。これだけなんです」
「少しお疲れなのかもしれませんわね」
 言いよどんだ後マデリンは言った。
「孤独と不安……そして休息を願う気持ちを感じますわ。けれど、向上しようと言うお気持ちが留まることも休む事も許さない。張りつめてしまっては疲れてしまいますわ。時には緩めて差し上げることも良いと思いますの」
 マデリンはその人にある品を差し出した。

 リオは深刻そうな表情のまま話し始めた。
「イヤな夢でした。私の手はもう既に真っ赤でした……血に染まっていて。リインフォースも血まみれで、周りには沢山の死体がありました」
 その光景を今も視るのか、リオの目は暗い。
「私はうっとりとその血や死体をみているんです。けれど、その死体の中から誰かがやってきて、私を殺そうとしたんです……夢はそこで途切れました」
「ご心配にはいりませんわ。知らない方を殺してしまうのは自分の身代わりも同じ事。ですから、殺したことも殺されそうな事も同じ意味なのですわ。そして己の死とは、自分が完全な姿に戻る事、或いはもっと完璧な姿に変化する事を暗示しているのですわ。決して悪い夢ではありませんのよ」

 椅子に腰掛けたリムは少し緊張しているようだった。両腕はまっすぐに伸び、膝の上で2つの拳が並んでいる。
「私の初夢は……あの、お洗濯をしているんです。とても沢山。シーツとかお洋服とか。お布団も干してます。風が吹いて洗濯物がなびいて……側に子供が2人か3人いて、私はとても幸せそうでしたけれど、何を話していたのかはわかりません」
「お洗濯をする夢は何かを洗い流してしまいたいという願望を意味していると思いますわ。庭で洗濯物を干しているのは吉兆ですから……過去を洗い流し、新しい気持ちで行動すればきっと良いことが訪れる……そんな兆しがこれから現れるのではないかと思いますわ」
「過去を……洗い流す、んですか?」
「無理に洗い流す事はありませんわ。自然とそうなる……と、いうことではないかと思いますの」

「私は普段あまり夢の内容を覚えている方ではないのだが……確か初夢では宴会をしていた親しい者達が集い互いに酒を酌み交わしていた」
 ガルスタはよどみなく言った。
「楽しそうな夢ですわね」
「未成年の者やエンジェル達まで飲んでいた。その様な事は現実にはよろしくない事なのだが、夢の中では楽しかった。ずっとあの様な日々が続けば良い、そう思った」
「夢はガルスタさんが現状を多少なりとも窮屈に感じているのではないかと暗示しておりますわ。気分一新して、お酒を飲んでいた方々と更に親しくなりたいと思っていらっしゃるのではないかと」
「窮屈に……?」
 その様な事をいきなり言われても正直思い当たるかどうか。ガルスタは首を傾げた。

「俺の夢には親父がいっつも出てくるんだ。最初のは……」
「最初の?」
「豪華3本立てなんだよ。実は……」
 本当にダグザが語った夢は3つあった。1つ目は夕陽の戦場で父と雌雄を決する。2つ目は寂れた病院で患者のダグザと医師の父。最後はどこかの後宮。女のダグザとあるじである父。
「辛うじて1勝2敗だったけど、今年も奴とは良い勝負しろよってことなんかなあ 」
「そうですわね。普通、父親とは越えるべき壁、或いは年上男性からの助言などを意味しますわ。その方に憧れや安らぎ……甘えたいという願望が心のどこかにあるのかもしれませんわね」
「えーーーーマジで?」

「本名で占ってもらうよ。だってさ、仮の名前なんて急に思い浮かばないモン」
 ロゼッタは屈託無く言うとストンと椅子に腰を下ろす。
「すっげいい男にすっごい高級レストランに連れて行ってもらったわけよ。そしたらカノジョとか出て来ちゃってさ、もう超修羅場ったわけ。オマケにその女があたしの事『泥棒猫!』とか言うし」
 ロゼッタは大きな溜め息をついた。
「でさ、しょうがないから2人分のご飯、自腹で食べたったわけ。もう、目が醒めてからもムカついてたよ」
「ロゼッタさんは恋に夢見ていらっしゃるけれど、お相手の方にご自分の気持ちが伝わっていないのではないか、上手に伝えられていないのではないか……そんな風に不安を抱いていらっしゃるのではないでしょうか?」

 その人は落ち着いた口調で匿名の理由を述べた。
「……いや、旅団の奴らにバレると無法に高い壺とか俺に売りつけて、私腹を肥やそうとするもんで」
 その人はリシ川・カル男と名乗った。
「最近ずっと夢見が悪い。白くて鋭利なアレを持った白い影が俺の背後から忍び寄って来て……そして俺の首を狙っているんだ」
「……本当に?」
「どうしても身体が動かない。白いアレがなんだかわからないし、俺が狙われる理由もわからない」
「…………本当に本当ですの?」
「本当だ」
「誰かに狙われるというのは自分が責任を果たせていないのではないかという不安を示していると思いますわ。と、同時にその責任をキチンと果たさなくてはならないと思い、頑張らなくてはならないとも思っているのでしょう。何かの転機が訪れる……その機会があることも夢は暗示しておりますの。そう悪くはない夢ですわ」

「1度だけ会った方に冒険者になるよう薦めている夢でした。その方の種族、性別、名前は分からないのに、経験を積むにはどうすれば良いのか、色々とご説明させていただいているのです。これって一体何を意味しているのでしょうか」
 意味があるのかどうなのか、シーアスはマデリンに尋ねる。しばらく視線を彷徨わせた後、マデリンはシーアスへと向き直った。
「何かを伝えようとする夢は上手く伝えられなかったのではないかと言う不安な思いの裏返し、かもしれませんわね。シーアスさんの礼ですと、誰かにご自分の考えを伝えるのを苦手に思っていらっしゃるとか……それを負担におもっていらっしゃるとか……そういう事なのではないでしょうか?」
 マデリンは笑顔でシーアスにある品を差し出した。

「どのような夢でしたの?」
 マデリンはジリアンの白くと美しい羽毛とうっとり見つめつつ言った。
「私はまだ召喚獣を発現出来る程ではないのだが、夢の中でダークネスクロークとグランスティードが私の目の前で戦っていたのよ」
 マデリンは頬に指を当て考え込む。
「召喚獣の夢は恐らく……秘めた能力や才能が開花することを意味しているのではないかと思いますわ。ダークネスクロークとグランスティードが戦っているのですから、その二つが象徴する意味、防御と攻撃でしょうかしら……その2つを選べなくて困っていらっしゃる、その不安が夢となって現れたのかもしれませんわ」
「そうなのかしら……正直、まだ召喚獣の事など考えてもいないのだけれど」

 その人は『ぐね山エル子』と名乗った。
「私、格好いい殿方がとても大大大好きなのですけど、なかなかご縁が無くて……」
「それはわたくしもですわ。霊査士などしておりますと、普通にお話をする機会もなくて本当に哀しい限りで……って失礼しましたわ。どうぞお続けになって」
 ともかく……エル子さんはイケメンに囲まれていたのだが、突然空から抹茶が降ってきて咳き込んでいたらイケメンが消えて荒野になったらしいのだ。
「切ない夢でしたわ……一体どんな意味があると思います?」
「そうですわね……何かに、例えばひとりぼっちになってしまう事や置き去りにされてしまう事に不安を感じてはいらっしゃらないでしょうか? 孤独に対する恐怖にも似た不安を感じますわ。ご安心なさいませ。あなたはいつだってお一人ではありませんのよ」
 マデリンは部屋の戸口を示す。

 そこにはその人の友人が心配そうに顔を覗かせていた。ルベスーズ・フラペチーノ(仮称)だ。2人は視線を絡ませ無言ですれ違う。
「巨大なキュウリに乗って波乗りをしている、銛を持ったセイレーンに森で追いかけられている夢でした」
「なんだか壮絶そうな夢ですわね」
「えぇ……どこまでも追いかけてきて、とうとう捕まり『アンテナが回っていてよ』と髪の毛をひっぱられるのです。そこで目が覚めました」
「誰かに追いかけられて捕まってしまうのは、何か責任ある問題に直面していて、解決のきっかけが訪れることを意味していますの。その捕まえた人が現実でもあなたをきっと助けてくださいますわ」
「セイレーンがですか?」

 挨拶の後、キースは話を始めた。
「気が付くと俺は翼のある金色の狼なんだ。仲間も得物もなくて広大な森にたった1匹だけで。満ち足りた気分なんだけど、何故か太陽を目指そうとするんだ。けれど、空に暗雲が広がって突き抜けたけど雷にうたれて焦げて落ちていく……そんな夢だった。あ、絵には描かなくて良いから」
 マデリンが手元の羊皮紙に絵を描けば読み解ける事柄も迷宮に陥る。
「書きませんわ、意地悪ですのね」
 マデリンは笑ってキースを睨んだ後、急に真顔に戻った。
「孤独、誰かの怒り、今よりももっと自分の可能性を追求してより強く大きくなりたいという願望と劣等感。思うように成長出来ないでいるもどかしさ……夢が教えてくれるのはこんな様なことでしょうかしら? キースさん、焦っていらっしゃる?」

「俺は何か大事なものを持って迷路のような通路を逃げているんだ。それが何なのかはよく、覚えてないが……透明な容器の中に何かが入っていたんだ」
 ナハルの表情は固い。
「誰かに追われてました?」
「いや……けれど、急に場面が変わって火事になっている高い高い塔から、階段を駆け下り、無事に下まで下りていたんだ。あまり良くない象徴ばかりなんで、少し気になっていたんだ」
 マデリンは何かを思い出す時の様にゆっくりと話す。
「自分への不信感、先の見えない不安を感じますわ。けれど、何か新しい転機があるのではないかと思いますわ。とても手に入れることの出来ない遠い理想を追い求めるのではなく、もう少し現実的な目標へと方向転換をする事になるかもしれません。それでも困難や妨害があるかもしれませんけれど、希望はあるのだと夢が教えてくれているのですわ。あなたを励ましているのだと思います」

 その人は丁寧に一礼すると椅子に腰掛けた。
「……よろしくお願いするでござる。拙者『スズ木 イツ尾』でござる」
 旅団の人にバレると『変態!この全裸!』と罵られるのだそうだ。
「ではイツ尾さん…………し、失礼いたし、ますわ。どうにも笑いが止まらなくて……い、息が……ちょっと待って」
 マデリンは椅子を倒しながら立ち上がると、奥へと走る。戻ってきてもイツ尾氏(仮名)とは目を合わせない。
「拙者が見た初夢の内容についてでござるが……荒野のど真ん中で、全裸で正座をしている……あ、ちょ、ちょっと先生!」
 マデリンは急にテーブルに突っ伏した。笑っていた。笑いながらマデリンは手元の羊皮紙に何か書くとそれをイツ尾氏(仮名)に差し出した。

 今の自分に満足している反面、停滞し成長や意欲が見られないという事でもあります。生活習慣が乱れて体調が悪くなったり、体力が低下している事が原因かもしれません。身近な人への依存、我が儘や甘えが心の奥にあるのかもしれない……そういう夢です。開運の品は後刻お届けします

 次ぎの人物もまた匿名希望だった。ようやくマデリンの笑いも収まる。
「風船豚を丸焼きにして食べていたら……犬グドンに捕まって逆さ吊りで叩かれている夢を見たんだ」
「拷問ですわね」
「神輿を担ぐピルグリムトロウルが現れ、神輿の上にはエンジェルの霊査士がいた。手にした鞭でトロウルを何度も打っているんだ。俺に近寄ると舌で顔を嘗め回して……ってところで起きて、愛犬が俺の顔をなめていた」
 少し考えた後でマデリンは話し始めた。
「自分の行動が他の方と違うことで悩んだり、他人に嫌われたりするのではないかと不安を感じたりはしませんかしら? ずっと続けていらっしゃることで、止めたいけれど止められない事があるのではありませんか? 誰かに捕まってしまうの夢はそれを止めさせて貰いたい願望の現れかもしれませんわ。けれど、近いうちに何か良いことが起こるかもしれませんわ。それを期待していてくださいませ」

 マデリンが短くなった蝋燭の火をフッと吹き消すとほぼ同時に、戸口からそっと滑り込む小さな人影があった。
「……マデリンちゃ」
 リアンシェの声はとても小さかった。
「りあんの夢……聞いてくれるですも?」
 もう一度、マデリンは蝋燭に火を灯す。
「白い菫の花が一杯で見てたら花が消えるですも。ただ、白い菫の花が咲いていて消えて……りあん、何故あんな夢をみたのでしょう」
「菫は何か良いことが訪れる予兆の花ですのよ。白は純粋で無垢な色……きっと孤独や寂しさから解き放たれる何か良い事が起こるのではないかと思いますわ」
「そうなんですも?」
 リアンシェはすがるような目でマデリンを見つめる。
「きっと何度もそのような転機は訪れるのですわ。その度に新しい出会いがあり、新しい世界が拓けてゆくのです。どうか新しい1歩を踏み出す勇気を忘れないでくださいませ」
「……わかったんですも。りあん、勇気を忘れませんですも」


マスター:蒼紅深 紹介ページ
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