ガイの誕生日 〜北方セイレーンの女王エメラダ〜



<オープニング>


●レッグランブランド
 来たる1月15日。
 グロリオサGGに北方セイレーンの女王を招いて、レッグランブランドのファッションショーを行う事になった。
 お前達も知っての通り、1月15日は俺の誕生日。
 去年はツライ誕生会になったから、今年は派手にやろうというわけだ。
 ちなみに審査員は北方セイレーンの女王エメラダ、グロリオサGGの団長セレンと副団長のローズ。運が良ければフライドも来る。
 まぁ、フライドのヤツは北方セイレーンの女王が苦手だから、招待されても来る事がないと思うがな。
 それじゃ、念のためレッグランブランドについて説明をしておくか。
 知っているヤツもいると思うが、レッグランブランドはチキンレッグと北方セイレーンが共同で作っているブランドで鶏の足型マークが特徴だ。
 北方セイレーンと友好度を深めるためには、レッグランブランドの普及が不可欠だが、いまいち知名度がない。
 そこで今回、ファッションショーを行い、一般の冒険者達にもレッグランブランドを知ってもらおうというわけさ。
 成功するかどうかはお前達にかかっているから、よろしく頼むぜ。

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参加者
NPC:赤狼の霊査士・ガイ(a90048)



<リプレイ>

●ファッションショー
「いぇい♪ 皆さん、お元気ですかぁ〜♪」
 レッグランブランドマークの大きく入った狩衣を羽織り、梅を愛で鶯を慈しむ者・ウィード(a16252)が、円環の吟遊詩人・ロッズ(a34074)の音楽に合わせてステージの上でポーズを決めた。
 それに合わせて鶯の蛍華(雄鶏)と黒鶯の黒鋼(雌鶏)が登場し、ウィードが獣達の歌を歌ってレッグランブランドマークの入った扇子を揺らしてペットと一緒にダンス(能)を踊る。
 レッグランブランドを普及させて北方セイレーンとの友好を深めるため、赤狼の霊査士・ガイ(a90048)が女王エメラダを審査員として招き、グロリオサGG(グリモアガード)でファッションショーを行う事になった。
 グロリオサは北方セイレーンの辺境に位置するGGで、チキンレッグ領と北方セイレーン領の領海付近に浮かんでいる船である。
 その団長であるセレンはランタンヘルメットを被り、不機嫌な表情を浮かべてステージを照らす。
 そのせいか副団長のローズがウィードから狙ったリョクくん人形を抱き締め、セレンに対して生暖かい視線を送っている。
「お久しぶりです、女王様」
 北方セイレーン用に海をイメージしたパーティドレスを身に纏い、蒼く揺れる月・エクセル(a12276)がエメラダを見つめて一礼した。
 コスチュームの解説などは楽風の・ニューラ(a00126)が行っており、エメラダの護衛には斜陽受けし鋼盾・ジェフリー(a60090)が任に就いている。
「……元気そうで、何よりです」
 必要以上の事は口にせず、エメラダがクスリと笑って答えを返す。
「女王様に気に入ってもらえるといいんだけど……」
 心配した様子でエメラダを見つめ、東風の愚者・キズス(a30506)が紺色を基調としてコートを羽織って現れた。
 彼の服はチキンレッグ用に羽根が出せるように切り取ってあり、それ以外の種族が着る場合はベルトできちんと留める事が出来るようになっている。
「何だか緊張するどすなぁ〜」
 楓華風の着物の上から法被を羽織り、絢爛舞闘羽毛布団・ツバメ(a32416)がステージの上に立つ。
 頭にはレッグラン印の花簪を留めており、同じく印の入った扇子を持って、アピールを兼ねて舞踊を披露した。
「そんなに固くならないで、もっとリラックスしていいんだよ」
 ツバメに愛を囁きながら、セレンが一輪の薔薇を彼女に渡す。
 それと同時にローズの蹴りが炸裂し、セレンが壁を突き破って海に落ちた。
「何だか一気に会場がピリピリしてきたな」
 辺りが騒がしくなってきたため、死を告げる翼の射手・レグナ(a42154)が溜息を漏らす。
 しかし、ここでショーを中断させるわけには行かないため、白いロングコートを羽織ってステージに現れた。
「ただでさえファッションショーなんて初めてなのに……、ドキドキするわ」
 レグナにエスコートされ、水天一碧・ロゼッタ(a39418)がステージの上に立つ。
 彼女の衣装は水色のビスチェドレス。
 この衣装には会場に来ていた北方セイレーン達も興味津々のようだ。
「ふたりとも、すごく素敵だよ〜!」
 満面の笑みを浮かべながら、ロッズが元気よく手を振った。
「うふふふっ……、いまならセレンさんをモノに出来るチャンスですわ。ドーラさん、協力してくださいね」
 瞳をキラリと輝かせ、美白の歌姫・シュチ(a42569)がセレンの救出にむかう。
 もう少しでステージに立たなければ行けないため、迅速にミッションを遂行させなければならない。
「……何だかキナ臭くなってきたな。面倒な事にならなければいいのだが……」
 深い蒼の夜会服一揃えにレッグランブランドマークの入ったアクセサリーを身につけ、流れる白波と潮風に舞う・ハルト(a36576)がステージの上に立ってポーズを決める。
 次の瞬間、シュチ達の悲鳴が辺りに響き、ローズがセレンを引きずって現れた。
「ご愁傷様なぁ〜ん」
 同情した様子でシュチを見つめ、嵐を呼ぶ風雲児・ミミュ(a42672)がなむなむと両手を合わす。
 そんなミミュもこの騒ぎがなければ、ゴスロリ衣装でステージに立たなければならなかったため、ある意味では彼女に救われている。
「……まぁ、報酬さえ貰えば問題ない……」
 ステージ上を優雅に歩き、地獄からの復讐者・ジーフグリス(a53060)が溜息を漏らす。
 今月の部屋代を払うためにも、出演料はキッチリと貰わねばならない。
「まあな♪ しかも、俺ってカンペキじゃね? へへへ……」
 『長靴を履いた猫』をイメージした格好になり、鈍色流水撃・オドレイ(a44014)がモデル歩きで舞台の中央まで行き、一回転してケープを派手に翻し剣の柄に手を掛けて左右を警戒する仕草をする。
 その後もオドレイのアピールが続き、観客席から北方セイレーンの拍手が響く。
「それじゃ、私で最後ですね。いかがですか、女王様?」
 白い羽根の魅力を存分に発揮する事の出来る服を選び、ネタを・フラレ(a42669)が格好良くポーズを決めた。
「予想以上の出来栄えね。今後が楽しみだわ」
 含みのある笑みを浮かべながら、エメラダがフラレに答えを返す。
 審査の結果、エメラダが気に入ったのは、ギズスの服。
 高評価だった理由は、どんな種族でも着る事が出来るように考慮されていた点だった。

●ガイ
「ガイさん……、お誕生日おめでとうございます……。フライド様の姿が見えませんが……、逃げたのでしょうか……?」
 ファッションショーが終わった後、貧乳様の巫女・イチカ(a04121)の提案により、バーレルカレーをメインにした食事会が行われる事になった。
 すべてはフライドを此処に誘き寄せるための罠。
「その件ならリョクにすべて任せてある」
 気まずい様子で視線を逸らし、ガイがコホンと咳をする。
 一応、ガイはフライド達の仲が悪い理由を知っているため、あまり関わりたくないようだ。
「それなら、もう少ししたら来るかもね」
 憧れのガイに会うためセイレーン族を避け、プーカに嫌われたプーカ・オレス(a59302)が壁際の席に座る。
 オレスはセイレーン族恐怖症のため、此処に来るまで色々と苦労をしたらしい。
「そういやガイさんって、霊査士になる前は道具屋を経営していたんだな?」
 ガイの杯に並々と酒を注ぎ、輝ける蒼き星剣・カイン(a44957)がクスリと笑う。
「昔の事さ。……昔のな」
 一派に酒を飲み干し、ガイがボソリと呟いた。
「落ち込んでいたら、駄目ですよ♪」
 手土産に持って来た豪酒アカマムシを飲ませ、愛と刹那に生きる夕闇の戦乙女・リンダ(a03857)が優しくキスをする。
 それと同時に禁ドン〜良い漢悪い漢普通の漢・ルシュド(a28710)がキュピィーンと瞳を輝かせ、雄叫びを上げて強引にガイを取り戻す。
「こんな場所で、せ……、接吻なんかして……、不謹慎じゃないか」
 興奮した様子でリンダを睨みつけ、ルシュドが拳を震わせる。
「そんな事を言って、ルシュドさんだって如何わしい事を考えているんじゃないんですか? 顔に書いてありますよ。これから如何わしい事をするって!」
 ルシュドの顔をビシィッと指差し、リンダが大きく頬を膨らませる。
「な、何だかハードな展開になってますね。私はこれからヒナイさんとデートがあるので、面倒な事になる前に御暇させていただきますが……」
 レッグランブランドマークの入ったスタールビーを身につけ、高く透る星空に響く組曲の様な・ハルヒ(a31994)が深い臙脂の燕尾服姿でヒナイを捜す。
 この会場のどこかにいるはずなのだが、あまりにも人が多過ぎて見つからない。

●フライド
「……なるほどのぉ。レッグランブランドを普及させるためには、どんな種族でも気軽に着る事の出来る衣装にしなければならない……か」
 観客達からレッグランブランドに関するアンケートを取り、蒼空の歌姫・セレーネ(a40522)が溜息を漏らす。
 レッグランブランドは着実に普及しているのだが、まだまだメジャーな商品とは言い難い。
 そのため、こうやってアンケートを取って、今後の方針を決めている。
「もし良かったら、あっちの部屋で詳しい話をしないか? 僕らにとっても決して悪い話ではないはずだ」
 真っ白な歯を輝かせ、セレンが彼女の肩を抱く。
 それと同時にローズの踵落としが炸裂し、セレンがグッタリとして何処かに連れて行かれてしまう。
「何だか大変な事になっていますね」
 苦笑いを浮かべながら、哀と憂気と平禍の・ガレシア(a60221)が彼女にレモンティーを渡す。
 先程までガレシアは北方セイレーンを相手に給仕をしていたが、訳もなく口説かれていたので此処まで避難してきたようだ。
「ここの長は団長に似ていると聞いていましたが、まさかここまで似ているとは……」
 呆れた様子で頭を抱え、四天裂く白花・シャスタ(a42693)がダラリと汗を流す。
 団長の名は、憂いの聖職・エルサイド(a41993)。
 此処の団長であるセレンとは、血を分けた兄弟並によく似ている。
「噂をすれば何とやらですね。……来ましたわよ、団長さんが」
 ガレシアの持ってきたジュースを飲みながら、鳳艶の舞姫・ルービン(a51542)がクスリと笑う。
 エルサイドは逃亡を図ろうとしていたフライドを捕まえ、エメラダのいる部屋まで連れて行こうとしている最中だった。
「は、放せ! 俺の命令が聞けないのか!」
 青ざめた表情を浮かべながら、フライドが悲鳴を上げる。
 よほどエメラダに会いたくないのか、フライドも必死なようだ。
「いまさら逃げようとしたって無駄ですよ。豆料理に惹かれた本能を恨んでください」
 クールな表情を浮かべながら、エルサイドがフライドの腕を掴む。
 事前にフライド御付のシェフから彼の気に入るメニューを聞いていたため、フライドを誘き寄せるのは簡単な事だった。
「フライド様は俺に同盟本国とチキンレッグ王国が健全な関係を築ける為のパイプ役として、この七色鶏冠章を拝受しましたっす。過去にどんな諍いがあったかは存じませんがっす、団長の為にもご列席下さいっす。聞こえているんっかす、フライド様」
 フライドをズルズルと引きずりながら、緑の記憶・リョク(a21145)が異変に気づく。
 なんとフライドはいつの間にか人形に変化しており、本物がどこかに姿を消している。
「さすが一国の王ともなると、非常時の脱出手段を心得ているようですね」
 感心した様子で溜息をつきながら、バーレルっ娘・ユミ(a30003)が辺りを見回した。
 さすがのフライドも船上から脱出する事は不可能なので、この船のどこかに隠れている事は間違いない。
「……胃が痛くなるような事が怒らなければ良いが」
 嫌な予感が脳裏を過ぎり、夜の協奏曲・カトレヤ(a45156)がフライドを捜す。
 次の瞬間、天井から物音が聞こえ、そこにいたフライドと目が合った。
「み、見つけたにゃ! ここまで来たんにゃから、観念するにゃ!」
 すぐさまフライドに攻撃を仕掛け、蒼首輪の猫・ルバルク(a10582)がニヤリと笑う。
 ルバルクはふたりが仲違いしている原因が国の問題ではなく、男女関係が根幹にあると思っている。
「一体、何の騒ぎですか。……騒々しい」
 不機嫌な表情を浮かべながら、エメラダが扉を開ける。
 凍るように冷たい視線をフライドに対して送りながら……。

●エメラダ
「……なるほど。両国の関係を改善するためにフライドを……。その事なら気にしていません。……過去の事ですから」
 ルバルク達からの説明を聞き、エメラダが納得した様子で答えを返す。
 しかし、フライドとは決して目を合わさないため、彼女の言葉をそのままの意味で受け取っていいのか分からない。
「それならわざわざ触れる必要はありませんね。ところで神殿図書館の事ですが、色々と有難うございます。研究者として純粋に感謝しています」
 エメラダの気持ちを察したのか、グリモアシーカー・アカシック(a00335)が話題を変える。
 実際に神殿図書館で得た知識は多いため、アカシックの言葉に偽りはない。
「こちらとしてもグドン達に奪われた土地を取り戻す事が出来ましたから、あなた達には感謝しなくてはなりませんね。まだトロウルの問題が残っていますが……」
 険しい表情を浮かべながら、エメラダが疲れた様子で溜息を漏らす。
 トロウル達の侵略行為によって多くの命が失われているため、完全に彼らが大人しくなるまでは安心する事が出来ない。
「それじゃ、もしも仮に俺達がトロウルを同盟入りさせたら……、どうする?」
 エメラダの顔色を窺いながら、依頼依存症・ノリス(a42975)が口を開く。
 彼女達から良い交易相手として見られるように、色々な品物を献上してはいるのだが、今後のためにも彼女の真意を知っておく必要がある。
「その時の状況に応じて対応する、と答えておきましょう。分かりますね、この意味が?」
 クールな表情を浮かべながら、エメラダがさらりと答えを返す。
 ハッキリとした答えは出ていないのだが、彼女の雰囲気から言いたい事はよく分かる。
「ちょっと話題を変えてもいいかな? 最近、南方セイレーンからチキンレッグ王国までの街道が開通したのですが、それをそちらの国まで延ばすとかいう話があれば興味持ちますか?」
 だんだん気まずい雰囲気になってきたため、鋼帝・マージュ(a04820)が別の質問をした。
「チキンレッグ王国と北方セイレーン王国は交易路がきちんとありますから、そこまでする必要はないと思います」
 ニューラの淹れた楓華茶を口に含み、エメラダが落ち着いた様子で答えを返す。
 熱血の絢爛舞踏快傑ズガット・マサカズ(a04969)が真っ白なギターを持って、リラックスする事の出来る曲を奏でているため、だんだん機嫌が良くなってきたようだ。
「それなら紅茶・ワイン・香水等、同盟領でも盛んに取引されている物を使って、品評を兼ねた交換会を近いうちにやらないか? ただし、政治的な意図は絡めず、あくまで園遊会として……」
 彼女がどういうものに興味を持っているのか観察しながら、鈍色銀糸・カルア(a28603)が今後の提案をする。
「まだ、その時期ではないと思います」
 カルアの質問に答えを返し、エメラダが楓華菓子を手に取った。
 一応、興味はあるようだが、その前にやるべき事があるため、すぐにやろうとは思っていない。
「まずは、ひとつずつ問題を片付けていかねばなりませんね」
 身の回りの世話をしながら、ジェフリーがコホンと咳をする。
 そろそろ夜も更けてきたため、早くお開きにしなければ、彼女の機嫌を損ねてしまう。
「それじゃ、俺達はそろそろ御暇しておくか。……おや? フライドがいない」
 ハッとした表情を浮かべながら、マサカズがどこかに消えたフライドを捜す。
 しかし、フライドは何処にも見当たらず、マサカズ達は彼女の部屋を後にした……。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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作成日:2007/01/21
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