<リプレイ>
金色の園を風が凪ぐと、首を垂れた穂が流れた風を追うようにそよそよと揺れる。 まるで風の道を示すかのように描かれる、穂達の演舞は見ている者達の心に深い郷愁を呼び起こすもの……。 だがそれもランドアースでの話、毎日がサバイバーなワイルドファイアではそんな甘っちょろいノスタルジーに浸る余裕など無いのだ。
「うひゃー……これがワイルドファイアサイズ……。一つで何人がお腹一杯になるだろうか、凄いわね……」 金色……くすんだ黄色い木のような薄を見上げた先に、実る丸っこいものが噂のワイルド餅米なのだろう……それを見た、生命の監視者・ラシェット(a40939)が惚けたように呟く。 「あれで料理を作れば、きっと凄い物が出来そうだねぇ。みんなも待ちかねているだろうし、頑張ろう♪」 ラシェットの横で、リトル愚ルメな少女少年・ヴィアローネ(a38562)が頷いていた……凄いものって何だろう? と小首を傾げるラシェットの動きにあわせて頭に結んだ青い大きなリボンがふわふわと揺れる。 そんなラシェットの様子など気にした様子も無く、ヴィアローネは楽しみだな〜とご機嫌な様子だ……世の中知らない方が良いこともあるのだろう、きっと。
「原住民さんや〜みんなの分の〜もっちもっち米を〜ぎょ〜さん取ってくるんやなぁ〜ん☆」 ちょ〜トロい術士・アユム(a14870)が超特大ピコピコハンマーを掲げてやる気を見せる。 「餅米を沢山とって、アムネリアちゃんにお土産持って帰ってあげないとなぁ〜ん♪」 そこはかとなく気が抜ける気がしなくも無いアユムに同意するように、炎に輝く優しき野性・リュリュ(a13969)が頷き、手に持った大根棒に新たな外装を追加してゆく。 「そうです、このメイド服姿で御主人様のアムネリアさんにお餅を食べさせてあげるのですよ★」 そして黒い炎を纏いながら、ろりこん疑惑のドジぇろ将軍・フィード(a29126)がメイド服でミニスカートな服の裾をヒラヒラと揺らしてそんな事を言ったりする。 「……」 そんなフィードの様子を見て、赤い実の・ペルシャナ(a90148)は何かを言い掛けたが、何を言っていいか解らなかった。言いたい事は色々あったが、なんだか途中でめんどくさくなった、そんな感じである。 白陽の剣士・セラフィード(a00935)は、なんだかヒラヒラがとっても楽しそうなフィードを見なかった事にして、原住民の為にも頑張らないとねと、もう一度薄を見上げ……。 「私もおモチは食べたいしね」 丁度、手に持った重剣槍『ガングニール』に新たな外装を追加した時、雀怪獣達が集まり出していたのだった。
「来たなぁ〜ん。頑張って一杯もっち米回収しようなぁ〜んね♪」 黒衣の天使・ナナ(a19038)は、大きなメスと名付けた儀礼用長剣を呼び出すと、薄を切り倒す準備を始め、 『ガオー!!』 集まり出した雀怪獣に対して、弓使い・ユリア(a41874)の声が響いた! ……どうやら音で牽制して追い払おうと言う事らしいが……。 『ピー!? ピピー!!』 その声を聞いた雀怪獣達が驚いた様子で鳴き始めると、わさわさと更に多くの雀怪獣が集まってきた! 「ぎゃ、逆効果!?」 「ユリア……大丈夫、策はまだあるから」 見事なまでに逆効果っぷりに自分で驚くユリアの軽く叩いて宥めると、視線を上空へ向けラシェットは手鏡で光を反射させる。お米の実る田んぼとかに雀避けに鏡使ってる事もあるらしいし、もしかしたら威嚇になるかも! とかそんな感じの作戦である! だが、こちらもまんまと裏目に出たらしい、光を当てられた雀怪獣達はラシェットに向かって突撃してくる! 「って、きゃー!? 威嚇して如何するの、私!」 「ラシェットさん! 今助けますよ!」 肩の辺りに乗られ、脳天をガッツンガッツン突かれているラシェットを救うべく、限界まで闘気を込めた天叢雲剣と名付けた蛮刀を振るって周囲に竜巻を起こす! 『ピ……!?』 グランスティードの力を得た竜巻は凄まじい勢いで雀怪獣達を巻き上げ、雀で出来た竜巻のような光景を作り上げる! ……が、如何に雀といえど怪獣である、その程度で倒れることはない。 ドズンドズンドズン! と落ちてくると、そのまま麻痺して動けないヴィアローネを取り囲んで―― 「っ!? 何その渇きを訴えるような目はっ!!」 コロコロとまん丸な雀怪獣に囲まれる様は少しほのぼのしていたりもしたが、奴らの目は笑っていない、渇きを訴えるようなと言うよりは明らかに血を求める目だ! 『ピピィ!』 やっちまいな! とでも言うかのように、雀怪獣の一匹が羽を広げて鳴くと、取り囲んだ雀怪獣達はいっせいにヴィアローネの頭を突き始める! このままでは禿げる……今は大丈夫でも将来的に必ず! ヴィアローネは、この作戦を提案したフィードに助けを求めるような視線を向けるが……、 「ちょっ、ぇろスズメさん! スカートはダメですよ」 乙女チックなポーズで服を剥ぎ取ろうとする雀怪獣と格闘中だった。……嗚呼、期待はしちゃいなかったが現実は余りにも世知辛かった。頭を突付く雀怪獣のくちばしが何だか頑張れよと優しくヴィアローネの頭を撫でているような気がする……気のせいだけど。 「あわ〜あわ〜耳とか〜尻尾を〜つついたら〜あかんのやなぁ〜ん」 ガックリと項垂れて突付かれ放題なヴィアローネを他所に、自分の耳を突付く雀怪獣に対抗すべくワンテ……スリーテンポくらい遅れた感じでアユムは超特大ピコピコハンマーを振り回す。 と、無数の七色の針がアユムの周りに生成され、問答無用に雀怪獣達を貫いてゆく! 「あら〜ごめんやなぁ〜ん」 ピィ!? と針に刺されてバタバタする雀怪獣にのんびりと謝るアユム……言葉とは裏腹に全く悪びれた様子は見えない不思議だ。 「まだ、剥かれるわけにはっ」 じゃぁ、何時なら剥かれて良いんだなんて突っ込みは誰も入れてくれないに違いないことを口走りつつ、フィードは術手袋を構えるとアユムの針から漏れた雀怪獣に黒い炎の塊を放り投げる。炎は雀怪獣を包み、キルドレッドブルーの効果によってその体を拘束した。
「「なぁ〜ん!」」 ナナとペルシャナが息を合わせるように、薄の幹に闘気を極限まで凝縮した一撃を叩き込む……薄は大きく揺れるが大きいだけあって意外と頑丈だ。 そんなナナ達、薄を切り倒す班をを守っていたフィード達だったが、雀怪獣の数は多くとても守りきれるものではない。 「なっ! いたっ! か、髪の毛引っ張っちゃだめなぁ〜ん!」 黒くてまん丸な円らな瞳をキラキラと輝かせてリュリュの髪の毛を引っ張る雀怪獣や、 「無益な殺生はしたくないの、だからこっちに来ないでね」 とやんわりと雀怪獣を遠ざけようとするセラフィードの頭を突付き倒す雀怪獣が居たりもする……さして気にするほどの事でも無いのだが、リュリュやセラフィードの身長より大きい雀にまとわり付かれると面倒だ。 「み、耳痛いっ! なぁ〜ん!」 「……」 耳を突付かれてイヤイヤするリュリュ、嫌がれば嫌がるほどに喜んで突付いてくる雀怪獣、子供かあんた等はと言いたくなる様な行動だが動物なんてそんなものである。 「そ、そこはっ! だっ、だめなぁっ……!」 「…………」 そして何だか色々危険な事を口走り始めるリュリュにエスカレートしてゆく雀たちの行動だが――、 「……今日の晩ご飯はぁぁぁ……スズメの丸焼きぃぃぃぃぃ……」 「なぁん!?」 嘴で首から上をバックリ咥えられたのが鶏冠に来たのか、セラフィードが唐突に奇声を上げる! 確かにこれだけ多きければ食べがいもありそうだが……いや、そういう問題ではなく。 普段の物腰からは想像出来ない様な表情で突撃槍を振り回し、恐怖に慄く雀怪獣達を追い回す! 「……キジも鳴かずば撃たれまいに」 そんな様子を見たユリアがしみじみと言ったものである。 かく言うユリアも、声の矢文でボカーン! とか、バボーン!! などのちょっと乙女チックな叫び声を散々上げていたりもしていたのだが、それはそれこれはこれなのだ。だが、セラフィードの前で騒ぐのは止めた方が良いのかもしれない……何時狩られるか解らないから。
それから暫くそんな感じで騒いでいると、 「なぁ〜ん! 薄が倒れるなぁ〜んから気をつけてなぁ〜ん!」 まじめに働いていたナナとペルシャナの手によって薄が倒される……気をつけてなぁ〜ん! に被せるように「な、なぁ〜ん……!?」とか聞こえたような気がするが、気のせいだろう。 青空に散っていった金髪の緑耳ノソリンで不幸体質な彼女の笑顔に暫しの黙祷を捧げる……想像の中の君は何時だって素敵な笑顔だ、現実は知らないけれど。 そして、ユリア達は倒れた薄から一粒で一抱えもある餅米を持ち出す作業に入り……餅米をマントにくるんで背中に担いだラシェットの髪の毛を、雀怪獣がグィ! と引っ張る。 「……ちょっと……っ、引っ張ってんじゃないわよ!」 ラシェットはグギィ! と在らぬ方向に曲がった首を雀怪獣へ向けると水晶の魔杖で殴打する。 「さて、そろそろ帰りますか」 ムキーと怒っているラシェットから視線を他の仲間達に向けると、どうやら裕に目標数の倍以上は獲れている。十分だろう。 「モチピザでも作ってみようかしら」 大量収穫に満足そうに頷くセラフィードだが、 「セラフィードちゃん、その包みは何なぁ〜ん?」 ペルシャナはグランスティードに積まれた謎の丸っこい物体に興味を示した。ペルシャナの質問にセラフィードは答えなかったけれど、丸焼き丸焼きとブツブツ呟いていたので中身は想像できよう。
薄の原から少し離れると雀怪獣達は追ってこなかった。 「持ち帰ったら餅つき大会かな。今から完成が楽しみだよ〜」 大量の餅米を手に、ヴィアローネが餅つき〜と笑うと、 「わ〜い、もっちもっちや〜なぁ〜ん♪」 「もっちもっち」 わ〜い、とアユムが嬉しそうに万歳しラシェットがウンウンと頷いて……あれ? と何かを忘れているような気になった。暫し顔を見合わせて考えてみる三人だったが、結局思い出せない。まぁ、思い出せないのならば大した事ではないのだろう。 「なむなむなぁ〜ん」 今一度空を見上げれば、さわやかな笑顔がそこに浮かんでいるような気がしたのだった。
【おしまい】

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参加者:8人
作成日:2007/01/21
得票数:ほのぼの5
コメディ16
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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