地獄街道の帰郷〜沼に潜むモノ達〜



<オープニング>


 終着の地エルヴォーグ。
 その中央城砦に、おてんばっ娘・ライト(a21479)は訪れていた。
 周囲には、傷だらけの布を使ったテントで、寒さに震えながら……過去住んでいた村への帰還の時をただ待つ人々……。
 冒険者達に課せられた使命……その一つは、困っている者達を救う事。
 その為にも、自分達にも何か手伝いが出来れば……と、ライト達はこの場所を訪れていた。
「……それにしても、本当に……大変な生活ね……」
 ぽつり、とそうライトが呟く。
 誰もが疲れている風で……声を掛ける気力も余り無い……。
「……?」
 そう思った瞬間……くいくい、と袖を引っ張られる感触。
 振り返ってみると、年の頃8,9歳のエルフの男の子が立っていて。
「……どうしたの、かしら?」
 目線を合わせて話しかけるライト……男の子は、小さくぽつり……と。
「僕達……お家に……帰りたいよぉ……」
 そう……涙声で告げると、わんわんと泣き出し始める男の子。
「あら、あらあら……えっと、詳しく話してくれないかな? 大丈夫だから、ねっ?」
 男の子の泣き声に、ライトは少し慌てながら、その話を聞き始める。
 ……彼の住む村は、この中央城砦から2,3日程度の距離にある村。
 帰還する人数は5人……そしてその道中には、大きな沼沢地があり、既に弱っている村人達にとっては……最大の障害となるだろう。
 更に悪いことに、その沼沢地の周域は、アンデッド達が出没するという……。
「……なかなか、大変な道のりになりそうですね……でも」
 ライトは頷き、そして。
「大丈夫、私達に任せて」
 と、微笑みを浮かべるのであった。
 

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参加者
親愛なる隣りの魔王・マオーガー(a17833)
幸女神の愛娘候補・ファイ(a19808)
おてんばっ娘・ライト(a21479)
銀の剣・ヨハン(a21564)
笑顔のヒーロー・リュウ(a36407)
ヴィクトリア家の公爵代行・ジーフグリス(a53060)
エンジェルの邪竜導士・エヴィン(a53278)
剣舞士・キサヤ(a60615)


<リプレイ>

●家路
 終焉の地エルヴォーグ、その中央砦跡。
 腕を引く子供に連れられて、少年の家族の所へ冒険者達は向かう。
 年の頃三十代頃の女性……少年が言うには、母親だと言う。
「あの……だいじょうぶ、ですか?」
 幸女神の愛娘候補・ファイ(a19808)が声を掛ける……顔を上げる女性。
 ……しかしその目は、どこか虚ろ。
『ママ……この人達が、僕達を連れていってくれるよ……?』
 涙で腫れた瞼をこすりながら、エルフの少年が女性に告げる。
『……貴方、達が……?』
 ……疲弊したその女性。
 ぼろぼろのテントでの生活は、かなりの負担を村人達に強いてるのだろうか……。
「ええ……私達は、皆様の家に帰るお手伝いをさせて頂きたいと思います。だいじょうぶ、安心して下さいっ」
 にこっと微笑み、ぽんと胸を叩くおてんばっ娘・ライト(a21479)。
 そしてその横から、地獄からの復讐者・ジーフグリス(a53060)が頷きながら。
「そうだ……道の案内は、俺に任せておけ……」
 そんな二人の言葉……女性は、腕に縋り付く。
『ありがとうございます、ありがとうございます……』
 大粒の涙を流し、感謝の言葉を口にする女性。
 もう、元の住処へ帰れない……そう疑わなかった村人達にとって、これが朗報なのは間違いない。
 更に今、ライト達と同様に、有志の冒険者達が、残る村人達の帰還の手助けを開始している−−。
 何度となく、頭を下げてくるその女性……。
「頭を下げる必要はありませんよ。私達は冒険者……困っている人達を助けるのも、大事な使命の一つですから……ね」
 銀の剣・ヨハン(a21564)が微笑み、そして笑顔のヒーロー・リュウ(a36407)も。
「そうだね。村人の皆さんが無事に帰れるように僕達が頑張るよ! だから元気を出して、ね?」
 と元気一杯に告げて、精一杯女性を励ます。
 そんな女性の姿を見て、静かに口を開くのは、剣舞士・キサヤ(a60615)。
「帰る事の出来る家があり、帰りたいと貴殿等が言う。それならば、私に出来る事は、その道中の露払い……なればそれを全力を持って行うのみ。それが出来なくて、何の為に此処に来たのだというのか」
「……そうだな。戦えない村人達の代わりに、しっかりと護衛するとしないとな」
 親愛なる隣の魔王・マオーガー(a17833)はそう言いながら、ライトの方を見る。
 ライトは……周りの子供達の頭を撫でながら、静かに心の中で呟いた。
(「……エルヴォーグで故郷に帰る日を待つ人々……ですか。……けれど、エルヴォーグには不慣れな私。私自身が足手まといになるかもしれない……」)
『お姉ちゃん……どうしたの……?』
 ……不安げに見上げてくる少年に、ライトはぐっと拳を握りしめる。
 そう……彼等は、冒険者と違い、戦う力を持ってなどいない。
 冒険者達にとっては弱いアンデッドであったとしても……村人達にとっては死をもたらす災厄である事は変わりはしないのだ。
 そう、それを助けるのは……自分達、冒険者しかいない。
(「……居ても立ってもいられなかった。だから……やっぱり、私は希望のグリモアの冒険者なのでしょうか……」)
 そして精一杯、元気な笑顔を子供達に見せるライトに、マオーガーは……慈愛の微笑みを浮かべながら。
(「ライトちゃんの頼みとあれば、助けてあげないとね。それにまぁ……これも平和への貢献だろうし……ね」)
「……ん? マオーガーさん、どうしたんですか?」
 ライトがマオーガーの顔を見上げてくる。
 マオーガーは手を振りながら。
「いやいや、なんでもない。さてと……じゃあ皆の住んでいた村に向かおう。子供達は手分けをして……おぶった方がいいかもな?」
 目の前にいるのは、大人が二人、子供が三人……。
「……えっと……みんな、だいじょうぶ。あんしんして、ぼくたちについてきて、ね?」
 エンジェルの邪竜導士・エヴィン(a53278)の屈託のない微笑みで、子供達の気分を解きほぐし……そして。
「そう……まぁ、俺達に任せてくれよ、な」
 不安げな表情を浮かべる子供に対して、マオーガーはその手を握りしめて微笑むのである。

●潜む沼
 そして冒険者達は、村人達の住んでいた村へと向かい始める。
 ジーフグリスとキサヤ、リュウの三人が他の仲間達から20m程離れて先行し、周囲の警戒を行い、後方から残る5人が、村人達を護衛しながらついてくる。
 ただ……昼間とは行っても、少し薄暗い雰囲気の地獄……。
 いつ、どこからアンデッド達が現れても不思議ではない場所。
 所々には白骨が転がっており、足場も悪いと言わざるを得ない……。
 様々な、苦難なる条件が揃ってはいるが……それでも、村人達の為に歩く。
「いかにも、何かが出そうな場所よね……でも、全てを迂回していくだけの余力はないですし……。貴方の村はどっちなの?」
 ある程度歩いたら立ち止まり、背負う子供に尋ねる。
 うーん……と考えた後に、一つの方向を指を指す子供。
 その方向を確認しながら、一歩、一歩……村に向けて歩いていく冒険者達。
「道中にある沼沢地等は……交わせるのならば、出来る限り回避して進みましょう。ただ余り時間を掛けても、皆さんの体力が心配ですけれど……」
 ファイがちらりと後ろを見る。そこには……先程の女性。
 対して栄養をとっていないのだろうか……その足取りは心許ない。
「大丈夫ですか、休みますか?」
 と、ヨハンが声を掛けると、彼女は……首を振る。
『大丈夫です……子供達の為にも……早く、村に帰らないと、いけませんから……』
 例え何処にいようとも、子供を思う母親の思いは変ることはない。
 ……きっと彼女は……自分の食事をも、子供達に分け与えたのだろう。そう……容易に想像が出来る。
「……休みましょう、無理をしても良くない」
 ヨハンが少し強い口調で告げると共に、リュウに合図する。
「今日は進むのはここまでだね。どこか休めそうな所を探そう。ジーフグリスさん、どこか知らない?」
 リュウの言葉に、ジーフグリスは辺りを見渡す。
「……確か……こっちの方……だな」
 ぽつり、そう告げて先導する彼。
 数分後……しっかりと乾いた地の場所に辿り着き、テントを張る。
 当然ながら……野営中も襲撃の危険がある訳で……四つの班に分かれ、交代で見張りに立つ。
 ……そんな中、空腹を覚えた子供と大人に対し、マオーガーが差し出したのは携帯食と、干物。
「今こういう物しかないけれど……何も口にしないよりはましだろう。ちゃんと人数分用意してきたから……ほら、二人も食べた食べた」
 大人の二人にも、食事を渡すマオーガー。
 ……二人は頷くと共に、その食事を平らげていく。
「本当に……おなかが空いてたんだね。それじゃ、これもあげる。旅団の新商品の携帯食だよ♪」
 と、リュウの差し出した食事も……直ぐに平らげる。
 栄養をとったお陰か……幾分その顔にも赤みが指してきていた。
「どうやら元気になったみたいだね。そうだ……ちょっと聞いてみたい事があったんだけど、いいかな? 皆さんは、故郷の村では何を作ってるの? キミは村に帰ったら、まず何をしてみたい?」
 明るく声を掛けるリュウ。
 幾分沈んでいた雰囲気は、積極的な会話によって、次第に明るさを取り戻していくような……そんな気がしたのである。

 移動と野営を繰り返し、数日。
 野営時に襲撃が無かったのは……キサヤの安全な寝袋のお陰が大きいかもしれない。
 そして……その日、冒険者達の目の前に広がるのは……巨大な沼沢地。
「大きな……沼ですね。でも……この先に、皆さんの住む村がある……という訳ですか?」
 ファイの問いに、頷く女性。
 辺りを見渡しても……沼の切れ目も無く……更に辺りには、木の一本も生えていない。
「この沼は、どの位大きいのですか?」
 ……しかし、そのファイの問いにも、首を振る女性。
「仕方ないね。一応……沼に対する対策は色々と考えて来たし、きっと大丈夫だよ」
「そうですね、渡るしか方法はなさそうですし……行きましょう」
 リュウの言葉に、ライトが頷く。
 そこに……ぐっ、と手を引く感触。
『……行きたく、ないよぉ……』
 目に涙を浮かばせながら、脚を止める子供。
 そんな子供に対し、ライトは目線を合わせて。
「……この沼沢地を超えたら、貴方達のお家があるのよね? 帰ったら、みんなで一緒にまた暮らせるのよ? ね、あともう一息……頑張りましょう?」
 にっこりと微笑むライトに、うぅ……とおずおずながらに頷く子供達。
「……いちおう、フワリンもよびだしておくね? ただ……てきがちかづいてきたら、フワリンがきえるかのうせいがあるから、ちゅういしてね?」
 エヴィンがそう言い、どこでもフワリンを召喚する。
 余り目にしない存在の登場に……子供達は一瞬、心奪われ、エヴィンの言葉に、素直に従うのであった。

 そして……沼地を進む冒険者達。
 進み始めて数十分程が経過した頃だろうか……前方を歩くリュウが、その異変に気づく。
「……来るよ!」
 叫びと共に、沼地の下から現れたのは……数体のアンデッド達。
「とうとうお出ましって訳か……村人達を傷つけさせはしないぜ」
 鎧聖降臨と共に、村人達の前に立ち塞がるマオーガー。
 更にエヴィンも、フワリンが消えると共に村人達に告げる。
「あわてずに、ボクのまわりからはなれないでね?」
 マオーガーとエヴィンの守護……そしてアンデッド達の前には、ヨハンとキサヤ、リュウの三人が立ち塞がる。
「今度こそ、平穏な眠りを……永遠に」
 ヨハンは、その言葉と共に武器を構える。
 リュウ、キサヤの二人も武器を抜き、アンデッド達に対して構える。
 ……対してのアンデッドは、冒険者達の方を向いて……不気味なうめき声を上げるばかり。
「仕掛けてこないのか? それならば、先に仕掛けさせてもらう……!」
 剣を構え、電刃衝を放つキサヤ。そしてその横から飛び出してきたのは、沼地に浮かぶ骨を足場にして飛び上がり、攻撃を仕掛けるジーフグリスだ。
「……足場が悪い……それを逆手に取るのも、一つの作戦だ……」
 二人の攻撃が、一体のアンデッドに決まる。爆風と共に崩れ落ちるアンデッド。しかし……次なるアンデッドが、前、そして後ろからも現れ始める。
「アンデッド達にとって、沼地は隠れるのに都合が良い……そういう事だな」
 ふっと笑うマオーガー。横のエヴィンとライトに目配せをすると共に、後方に体を向ける。
「まえのアンデッドはまかせるね、ボクたちは、みんなをまもるから」
 エヴィンの言葉にヨハン、リュウ、ジーフグリス、キサヤの四人が頷く。
 村人達を護る事……それが第一の使命。
 後方においては、エヴィンは暗黒縛鎖とニードルスピア、ライトがナパームアローを使い、無尽蔵に現れるアンデッド達の数を減らす。
 残った敵は、マオーガーが斬鉄蹴で蹴散らし、一匹たりとも村人達の近くへと寄せ付けない。
 前方においては、それぞれが村人の所に近づかせないよう、的確に一匹ずつ潰していく。
 役割をはっきりとしたその作戦は上々……ついには、アンデッド達を村人達に近づける事無く、殲滅する事が出来たのである。

「ふぅ……終わったね、みんな、大丈夫?」
 リュウが確認すると、村人達は……冒険者達の戦闘の姿に、目を輝かせている。
 そんな村人達……冷静にキサヤが告げる。
「さて……休んでいる暇はないぞ。このままここにいれば、いつ襲われるかわからぬ。依頼は沼を抜ける事ではない……村人達を、村に無事に送り届ける事、なのだからな」
 そう、ここは……最も危険な場所に変わりはない。
「……早く……行くぞ、こっちだ……」
 ジーフグリスを先頭にして、冒険者達は……沼の脱出を急ぐのである。

●待ち望んだ場所
 そして……沼を乗り越えた冒険者達。
 その目の前に見えるのは……待望の村。
 遠くに見える、見覚えのある形……村人達は、どこか……安堵の表情を浮かべる。
「……良かったな。帰る事が出来て」
 キサヤがそう告げると、女性は頷きながら。
『本当に……皆様のお陰です……本当に、ありがとうございます……』
 その……女性を見ながら、キサヤは心の中で。
(「私達は、自分の意思で帰る場所から離れた。だから、この選択に不満を持つ事も、不平を漏らす事もするまい。ただ……こんな景色を見ていると、少しだけ懐かしく……そして、寂しくなるな……」)
 と、小さく呟いていたのである。

 ……そして村へと辿り着く冒険者達。
 しかし……予想された事ではあるが、村はアンデッド達の襲撃により、所々に被害が及んでいたのである。
 ……流石に落胆の色を隠せない村人達……ライトは、仲間達に向き直ると共に。
「……皆さん、重ねてのお願いで申し訳ありませんが……村の復興の手伝いもしませんか?」
「そうだね……あともう一息。村の復興も頑張ろうか!」
 リュウの言葉に頷く仲間達。
 村の復興……他の村人達が、早く帰ってこれるように……一通り、人が住めるように、家の修理などを協力してこなしていく。
 そんな中で、ライトが聞いてみたかった事。
「村の皆さんは……お食事は、どうされてるのですか?」
 地獄という土地……その食糧事情について、ライトは知りたかった。
 しかしその答えは……とても厳しいという答え。
 沼沢地が多く、陽射しも期待出来ない……作物が生育する環境としては、かなり厳しい条件なのは、想像に難くなかった……。

 ……そうして村の復興も一通り方が付くき、冒険者達も……村を去る時になる。
『いっちゃうの……?』
 手を引く子供達……その目は、強い不安の色が濃く出ていた。
「ごめんな……でも大丈夫。俺達はいつでも、君達の近くにいる。そう、いつでも俺達冒険者を呼べばいいのさ。そうすれば、いつでも駆けつけてやるから、な」
 微笑むマオーガー。そしてキサヤも。
「そうだ……又いつか、困った事があったのなら……呼んでくれ」
 と告げる。
 地獄での生活……それが依然としてまだ厳しい物であるのは間違いない。
 しかし彼等は、同盟諸国に出る事よりも、この……苦しい大地で生きる事を望んだのだ
 ……そして、村を離れていく冒険者達。
 ……昨日の夜に、ライトの腕の中で、静かに眠った子供達の寝顔。
(「……あの可愛い笑顔を絶やさない為にも……もっと、頑張らなくっちゃ……」)
 と呟くライト。
「そうですね……ここで生きるのは辛い事なのかもしれない。でも……地獄の大地にも、希望の種はきっと芽吹く……そう信じましょう」
 ヨハンの言葉に頷く冒険者達。
「……此処に来て、冒険者になって良かったと思える……のだな……」
 未だに暗い空を見上げながら、最後にキサヤはそう呟いた。


マスター:幾夜緋琉 紹介ページ
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