≪勇猛の聖域キシュディム≫開催地探訪−−覇道の宮



<オープニング>


 畏れ多くも『彼』なる呼称が許されるのであるならば、灰がかった青の鱗のリザードマンである彼は、王冠の類ではなく鈍色の兜をかむることを、より良きことと選ぶ質の人間なのだった。
 しかしながら、黒水王・アイザックは今、冠でもなければ鉄兜でもない、緑の地に白の孤で植物の紋様が染め抜かれた布地を、『ほっかむり』なる楓華風の方法で頭に巻きつけている。長い尾は片手で抱えあげて、あまりに長い王宮の回廊の、ひんやりとした石の床に触れぬようにしている。
 彼はしのんでいた。その様子があまりにあからさまである故に、王府で働く官吏たちにとっては、ある種の風物詩ともなっている。かの高名なる女性官吏が所在していた時分には、黒水王にそういった自由は与えられていなかった。時折のお目こぼし――それも意図的な――がある程度で、欲求不満が極限にまで高まったアイザックは、不思議と無事に抜けだせた夜のことを心地よく思うばかり、リタの掌中からはけっして抜けだせぬことを知らない。
 リタが愛する夫の元にあり、新たな生命をこの世に紡ぎだしてからも、黒水王の身にはいくらかの緊張感が残されていた。王としての許されざる行いについての見識が、その頭の先から尻尾の末にまで、もうすっかり染みついてしまっているのである。
 
「夜分に申し訳ありません……急な使いが王府よりお越しで……」
 護衛士の詰め所に姿を現すなり、薄明の霊査士・ベベウは同僚たちにひそめた声で囁きかけると、自分も寝間着に外衣を羽織っただけの姿で燭台を掲げ、廊下を歩き、階段を登り、ひんやりとした空気のたちこめる居間へと皆を誘った。
「先ほど、火をいれたばかりで……直に暖かくなってくれるものと思いますが……あまりゆっくりとしていただける時間はないのです。こちらは……」
 そう言ってベベウが広げた羊皮紙は、酷く古寂れたものだった。折り目から細かな薄片が剥落し、一枚から二枚に、それが四枚となるのに何の手間もかからない――そういった品である。
「……リザードマン領の東側、雫石の聖域ロリエンとも比較的近い場所に設けられた古い集落で、かつては覇道の栄光をもって知られたことから、『覇道の宮』とも呼ばれた祈りの場を持つ所なのです。しかしながら、現在はかつての栄光も薄れ、そこで暮した人々は次々と去ってしまい……今やよからぬ人物たちが大挙して暮らす、いかがわしい、魔窟のごとき有様となっているとか。最寄りのリザードマン護衛士団も、これまでに何度かの取り締まりを行ったようなのですが、蜘蛛の子を散らすように去ったかと思うと、ほとぼりが冷める頃には再び集ってしまうといったことの繰り返しとなり、ほとほと手を焼いているそうなのです」
 灰の瞳がひそめられ、凛とした眉にはしわが寄った。天を仰ぐようにして白い首を露わとした後、ベベウは同僚たちに告げた。
「……そこへ――先ほどいらした使者の方によると――われらが王がお向かいになられたようなのです。おそらく……この推測は誤りではないでしょう。『覇道の宮』は闘技大会の開催場所として、つい先日、候補のひとつから唯一の選択肢とあいなったばかりなのです。王はそのことをご存じで、使者の方がおっしゃるには『大掃除』だの『ひと暴れ』だの『首領に取り入ってドカン』だのといった言葉を呟いておられたとか……。アイザック王のことです……その身に危険が及ぶことはありますまい……。ただ……不逞の輩に鉢合わせた際に、自制心を保ってくださるかどうかが、僕にはとても気にかかる……。今から王を追いかけ、『覇道の宮』の解放に一役買ってはいただけませんか?」

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参加者
縁・イツキ(a00311)
螢火夢幻乱飛・メディス(a05219)
凪影・ナギ(a08272)
贖罪の一矢・ピン(a12654)
博士・ユル(a32671)
剛健たる盾の武・リョウ(a36306)
孤独を映す鏡・シルク(a50758)
亜麻色の髪の天使・アクラシエル(a53494)
紅の騎士・ヴァレリー(a57710)
白銀の誤字っ子術士・マリー(a57776)
NPC:黒水王・アイザック(a90110)



<リプレイ>

●フウライボウ
 岩壁から剥落したその欠片や、床の抜けてしまった荷車の残骸などが散乱する道を、線紺色の甲冑をまとう一騎のグランスティードが駆けあがってゆく――。
 召喚獣の背にまたがり、その優美な線を描くうなじに手をそえているのは、ひとりの少女。白銀の紋章術士・マリー(a57776)は、召喚獣の主である青年に後方から支えてもらいなら、上下する赤いたてがみの先を見つめていたが、とうとうそこに探し求める姿を認めたようだ。
 陛下――と言いかけた後、彼は咳払いをして言い換えた。
「間違いありません、アイさんですね」
 亜麻色の髪の天使・アクラシエル(a53494)は、早駆けに走り抜いて、風来坊然とした男の傍らに辿り着いた。
「ああ……お前か」
 楓華風の装飾が施された書物を乱暴に閉じると、黒水王・アイザックは獣のように黒い瞳で道の後方を見やった。
 路傍の岩を指差した風来坊に促されて、アクラシエルとマリーは三人並んでそこに腰掛けた。アイさんは野辺の草を引き抜いたり、それを風に舞わせたりしていた。時折、件の書物に視線を落としては、何事か言葉を呟くそぶりもみせる。
「この様な形で……お会いするとは思ってもみなかったです……」
 恐縮した様子で言ったマリーに、アイザックが答える。
「そうか?」
「はい……。あの……『覇道の宮』が無事に開放できるといいですね」
「ああ、そうだな」
 ――風が長閑である。
 
 野を矢のように馳せる召喚獣に遅れることしばし、後続のキシュディム護衛士たちが、路傍に仲良く腰掛ける三名の姿を目にする位置にまでやってきた。
 その中心に緑の布地を頭巾の代わりとする人物を認めると、螢火夢幻乱飛・メディス(a05219)は小股に駆けて、アイザックの目の前に立った。
「陛下……じゃない、アイさん……やっぱりひとりで先に行っちゃうんですね……。呼んでくださればいつでもお供しますのに、こんな楽しいこと……ひとりでやっちゃおうなんてずるいー」
 愛らしい仕草で地団駄を踏んだメディスを、アイザックが珍しい物でも目にしたかのように見ている。魅惑のキャミソールをまとって大胆に肌を晒す彼女は、腰から下の衣の丈も短く、ほっそりとしてすべらかな足をあらわとしていたのだ。
「陛下を別称で呼ばせてもらうことをお許しいただきたく……!」
 そう申し出たのは、濡れ羽色の髪を耳の裏側へと撫でつけ、秀でた額をあらわとするヒトの青年だった。彼は名を、剛健たる盾の武・リョウ(a36306)という、懐に『涼風』なる小太刀をしのばせる青の護衛士である。彼の申し出に、アイザックは「う」と唸りのような返事をよこした。光栄とばかりに頭を下げた後、リョウは言った。
「いやあ! なんだか身近に感じられます、兄貴!」
 黒水王もまんざらではないようだ。
「……あまり単独専行が過ぎると……ルタにレポート送るわよ?」
 王にしっかり釘を刺したのは、濃紫の瞳に美しい造作の唇、エルフらしく尖った耳に黄金色の髪を触れさせ、穏やかな笑みを湛える娘だった。縁・イツキ(a00311)の言葉に、アイザックはまたしても「う」と応じる。
 人気のない街道に皆が揃ったところで、今日の作戦について説明を行ったのは、紅の騎士・ヴァレリー(a57710)だった。勇敢さを感じさせる眉を、時折、かすかに震わせながら、ヒトの少年は落ち着きはらった様子で言葉を紡いだ。
 キシュディム護衛士たちの策を、黒水王はいたく気に入ったようだった。数名の伴を引き連れ、よからぬ者が暮らす集落へと向かったアイザックの背を、腰の裏側に白い猫の尾を生やした少年は、くすくすと笑いながら見送った。
(「世直しの旅に出たご隠居ならぬ……悪党退治の暴れん坊の王様……。楽しみですねぇ、とくと拝見したいのです……」)
 しばらく遅れて集落の門をくぐり、雑踏へと潜りこむと、孤独を映す鏡・シルク(a50758)は暗がりに身をひそめ、闇に溶けこむようにして姿を消した。
 
 酒精を大いに含むであろうその液体は、白濁して、香もきつく、把手の欠けた器に注がれて、彼の目前に差しだされた。男ばかりで混雑する狭い酒場の饐えた匂いに、眉と眉の間に皺を寄せた後、博士・ユル(a32671)は酒を一気に呷った。逆さに傾いた視界の先に見知った顔を見つけたが、彼は平然と青白い顔のまま姿勢を正し、隣に腰掛ける荒くれ者に尋ねた。
「と、いうわけで……ここなら追手も来ないだろうと思ったのですが……噂に聞いたその集団はどの程度のものなのですか?」
 キシュディム護衛士たちは、その身分を秘して、乱雑な集落のあちらこちらに散り、『覇道の宮』に陣取る悪党たちの情報を収集した。
 暗闇に存在を沈みこませていたシルクは、遺構の周囲をめぐっている際、そこでイツキと鉢合わせした。その後、ふたりは賊の悪事の証となる存在を、城壁のようにそびえる『覇道の宮』の、高い窓の向こう側に認めた。
 その一方で、黒水王は宿場での待機を余儀なくされていた。落ち着きなく席を立っては、ふらりとどこかへ出向こうとする王を、少年は何度となく制止せねばならなかった。
「王様……ドカンってのは羨まし……いやいや、そんな暴れるのはよくないぜ、うんうん……」
 贖罪の一矢・ピン(a12654)は漆黒の甲冑を身につけている。準備は万端、今すぐにでも『覇道の宮』へ突撃して、魔炎の矢の一発でも射かけてやりたいところだったが、まだその時機ではない。
 窓硝子に小さな石のつぶてが跳ね返った。引かれていた帳の隙間に、先の尖った細い指先をしのばせると、凪し残影・ナギ(a08272)は通りの様子をうかがった。人波の合間に、猫の白い尾が見られたように思う――彼は振り返ってアイザックに言った。
「アイさん、出番だぜ」
 
●トリモノチョウ
 かつて、神聖なる祈りの場であった遺構を占拠する者たちは、考えの足りない連中だった。だが、それだけに、生命力の点では並々ならぬものを持つのだろう。劣悪な環境に見事までに適合、同化しているように見受けられる。
 最初はぎこちなかった流し目を、メディスが見事に操れるようになり、大きな部屋にひしめきあう荒くれ者どもを、飼い主に注目する従順な羊のように魅了するようになってから、しばらく後のことである。
 首領格の男に酒を注いでやりながら、ナギが言った。
「とりあえず試しに置いてみて役に立つかどうか見極めてもらえねぇかな?……もちろん、気にいらねえって話でもこの酒は飲み干してもらってかまわねぇ、こっちの心づけだしな」
 やや酩酊した様子を演じながら、リョウが言葉を添える。
「俺たち……特に兄貴は剣の腕が半端じゃないんだ。用心棒としても損はさせないと思うぜ?」
 赤ら顔となった悪党の首領が、虫の足のようにわななく指先でメディスの腰を手繰り寄せた後、舌の回らぬ様子でくだした決断は、判断基準が明快であり、なおかつ、下品なものだった。
「これだけのいい女を連れてるんだ……腕も相当なもんなんだらうよ……。いいだらろう……ようこそわが一家へ! 黒水の兄貴とその弟分……それに、こつらのお嬢さんを歓迎するぜ!」
 悪党に抱かれる仲間の口元に、波のように浮かんだ不快感に気がつくと、リョウは彼女に目配せをした。メディスは荒くれ者たちに色目を使いながら、肘でアイザックの腕を突いたようだ。
 やおら立ちあがった風来坊に続いて、ヴァレリーも胡座を解き、片方の膝を立てた。
 
 まるで赤子を寝かしつけでもするかのように、メディスは優しいしらべを口ずさんだ。美貌の毒婦を囲むようにしていた男たちが、糸の切れた操り人形のように横たわり、床に広がってゆく――。
 アイザックは凄まじい勢いで駆けだすと、通路に向かうのではなく壁面を粉砕して隣室へと飛びこんだ。
「そう来たか!」
「ああ」
 ヴァレリーの言葉に肯いたリョウは、黒水王が作りあげた穴へと身を躍らせ、暴走気味な君主の後を追う。
「返事はよく考えた方が後悔しないぜ?」
 そう呟いて、首は左右に振り、ナギは指先を暗い天井へと向かわせる。爪に収斂された気が、明るい光を含む糸の束となって拡散されるまで、時はそれほど必要とされなかった。
 隣室の隣室の、それまた隣室で、アイザックに追いついたヴァレリーは、額から目も眩まんばかりの閃光を発しながら王に告げた。
「俺が背中を護る故、ご随意に」
 リョウは廊下から飛びこみ、『兄貴』に斬りつけてきた男を、『涼風』を松葉色の鞘から解き放つことなく失神させた。瞬秒の跳躍で相手の懐に飛びこみ、小太刀の柄で相手の腹を打ったのだ。
 凝縮された闘気を刀身に『ジャヴァージの牙』が振りおろされる――崩れた壁面の向こうに現れたのは、荒くれ者の赤ら顔ではなく、青白く、美しく整った顔容だった。
「あら陛下」
 揃えた足の片方を後方へと引き、片手は胸にまわして、深々と頭をさげたのはシルクだった。彼の後方には、念の糸で縛りあげられた悪党たちの姿、それに、イツキに介抱される少女たちの姿があった。
 遺構の外部では、ピンをはじめとする面々が、逃げ落ちようとする荒くれ者たちの捕縛にあたっていた。
「行きはよいよい帰りは怖いっと、逃げ道は潰しておくかな?」
 赤い腹のペインヴァイパーが螺旋を描くなかに立って、エルフの牙狩人は、弦までが漆黒という弓『八咫烏』に、黒炎の灯る矢をつがえた。放たれた矢は、逃げ惑う男たちの目前に飛びこみ、半ばから折れていた柱の土台を破壊した。倒壊した石のかたまりが、悪党たちの行く手を阻む。
「止まれ!」
 白亜の召喚獣に騎乗した姿、さらには、身につける防具を壮麗なる白銀の甲冑へと変貌させて、アクラシエルが警告を発する。見たこともない獣に、堂々たる重騎士の威圧的な存在――荒くれ者たちは次々と獲物を足元に投げだしてゆく。
 それでも、一縷の望みに賭けて雑踏へと駆けこもうとした輩は、重騎士の後方に控えていた術士たちが、渦巻いて飛来する緑の風によって絡めとった。
 口の両端をつりあげ、狂気の三日月といった形を顔の中央に浮かびあげるのはユルである。そして、宝珠を胸に抱きとめて、ただ静かに佇むのはマリーだった。少女は遺構の入口に現れた赤い髪に気がつくと、彼の元に走り寄った。
 ヴァレリーは、少女の指先をとりながら伝えた。
「マリー、陛下が『覇道の宮』でお待ちだ。事の始末を着けなければな」
 
●ヒカエオロウ
 未だに抵抗を試みようとその男は、身体をまな板の魚のように痙攣させたが、その努力は呆気なく水泡と帰したのだった。ピンの足が、しっかりと男の腹を踏みつけている。
 ナギは王の方を一瞥した後、ピンに手を貸してやりながら言った。
「なんつーか、今回はいっそ……アイちゃん! って呼びたい感じなんだが、これからどうなるのかね」
 メディスは引き立てられてゆく者のなかに、あの嫌らしい指先をした男の姿があるのに気がつくと、小股で駆け寄り言葉をかけた。
「ごめんなさい親分さん。実はこういうことだったのですー。あー肩凝った」
 悪党は顎をだらりとさげ、唖然としていた。
 
 静寂に包まれた『覇道の宮』。その中央に開かれた祈りの場に、すべての悪党たちが地に這う格好で並べられている。祭壇の名残らしき壁面の前に、三名の男たちがそそくさと歩み出た。植物の紋様が染め抜かれた『ほっかむり』の男が中央、その左右にいかにも屈強そうな男が立っている。
 右の男――ヴァレリーが懐から何かを取りだした。それは、青の輝石がちりばめられた銀の指輪である。彼は『キシュディムの証』を皆に見せながら声を張った。
「このキシュディム護衛士の紋章が、目に入らぬか!! ここにおわす御方をどなたと心得るか! 恐れ多くもキシュディムの王、アイザック陛下であらせられる!!」
 左の男――リョウがにやにやとしてしまいそうなのをこらえ、深く響きのよい声で悪党たちに伝える。
「一同、アイザック王の御前である。頭が高い! 控えおろう!」
 左右の男の合間をかきわけるようにして、『ほっかむり』の男は前に出た。緑の頭巾をひらひらと宙に舞わせると、アイザックは口を開いた。――が、言葉が出ない。時機を見計らうのに精一杯で、台詞がすっかり抜けてしまったのだ。
 妙な空白の時を経て、悪党たちに対する裁きの開始を告げたのは、黒水王ではなく、痩せた肩に白衣をひっかけるユルであった。指先でちょいちょいと空をかくアイザックを余所に、彼は言葉を重ねた。
「これよりあなた方の裁きを行う。まずはイツキ君……彼らの罪状を述べてください」
「そうね」
 と呟いたエルフの娘は、ひとつに結わえられた金の髪を背に揺らめかせながら姿を消したと思うと、室内から幾人かの人を連れて戻ってきた。悪党たちによって半ば監禁ともいえる状態におかれていたところを、イツキによって救いだされた少女たちである。
「陛下……このような者たちですが、これだけの罪で一生を決めてしまうのも酷……どうでしょう? このまま……」
 悪党たちを『覇道の宮』に住まわせ、闘技大会の開催に関わる労働に取り組ませて更生を促すべき――ユルはそう話すつもりだった。だが、アイザックは聞いていなかった。彼は大事な台詞を思いだしたところだったのである。
「成敗!」
 しばしの静寂の後、大剣『ジャヴァージの牙』を振りあげた黒水王を、ヴァレリーとリョウがふたりがかりで押さえこむという出来事が起こる――。石の床に伏せる悪党たちは、肩を抱き合い、悲鳴をあげた。成敗はもうとっくに済んでいた。
「暴れないでくださいね、きっと陛下がよい判断をくだしてくださいますから」
 そうは言ったものの、マリーにも確信はない。深い色彩の瞳をひそめさせて、どこか儚げな影を含む可憐な明眸を足元へと傾けた。
「大人しく縛につけば寛大な処置がありますよ、きっと」
 語尾に希望の言葉を添えて、そう悪党たちに語りかけたのアクラシエルである。彼の視線の先には、リョウとヴァレリーの背後にひっこんで、何やら書物を紐解く王の姿が見られた。愛読する楓華列島の書物から、この場にそぐう言葉でも探しているのだろう。
 にんまり口を歪ませて、黒水王は高らかに言い放った。
「これにて、一件落着!」
 
「アイさんと行く〜世直しの旅〜、ってのもいいかもしれませんね〜」
 平伏する荒くれ者の姿を脳裏に描き、シルクはくすくすと笑い、そして、何気なく言葉を続けた。
「そうしたらわたし、毎回お風呂シーンをサービスしちゃいますよ。あ、誰ですか、今見たくないとか言った人は! 糸で吊るしますよっ」
 山道で否定の言葉を口にしたのはアイザックだった。シルクを背に負ったまま力強く歩く黒水王に、リョウは空をちらりと見やって言葉をかける。
「今日もキシュディム晴れですね、陛下」
 寝そべる蛇のように暢気な雲が、冬の高い空に浮かんでいた。


マスター:水原曜 紹介ページ
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参加者:10人
作成日:2007/01/30
得票数:冒険活劇20  ほのぼの2  コメディ6 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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