【無人島開拓計画!】底なし沼



<オープニング>


「無人島開拓チームの皆さんお疲れ様です。今年も頑張ってくださいね。私も霊査で頑張りますから」
 ドリアッドの霊査士・シィル(a90170)は軽く挨拶してから本題に入った。今回で7回目、だいぶ島は回ったし、そろそろスパートをかけたいところだ。
「今回も依頼人さんからの要望なんですが……ええと、島には危険な場所もあるだろうから、そういった場所には責任を持って立入禁止の指定をしてほしい……ということなんです」
 なるほど、と皆は思った。遊楽地に危険な場所があってはならない。
「地図がかすれててちょっと読みにくいですけど……島の東西に『底なし沼』という文字と小さな丸がふたつありますね。間違って人がこの周辺に入ってしまわないように、二手に分かれて立て札などを設置してください。沼があることをはっきりわからせるために、見晴らしをよくしておくのも手でしょうか。色々方法はありそうです」
 底なし沼――そこにはまったら、冒険者といえど脱出できるかどうか。絶対に人を近寄らせてはならないだろう。
「霊査してみたら、どっちにも近くに野犬やオオカミの気配がありました。まあたいていの野生動物は人を避けますが……作業中に襲われるかもしれませんから、戦える用意はしてくださいね」

マスターからのコメントを見る

参加者
剣難女難・シリュウ(a01390)
うたかたのゆめ・ロン(a33766)
珊瑚礁の歌姫・メルフェイス(a36190)
リリカル武闘少女・ミオ(a36452)
吟歌の巫女・ナルミ(a41610)
道楽娘・ガザミ(a42279)
美白の歌姫・シュチ(a42569)
魂に刻めその旋律・レシュノ(a45112)
青・ケロ(a45847)
灰色の岩山・ワング(a48598)
春風に舞う鈴の音・アンジェリカ(a48991)
時空を彷徨う・ルシファ(a59028)


<リプレイ>


 青く澄み切った冬の空に、静かな波音が溶けてゆく。朝一番に無人島に降り立った冒険者たちは心地よい海の空気をひとしきり吸い込むと、慣れた足取りで島の入口となっている岩壁の間を通り抜けた。
(「かいたく、楽しそうだなぁ〜ん」)
 初参加のリリカル武闘少女・ミオ(a36452)はウキウキ顔だ。彼女と親しいうたかたのゆめ・ロン(a33766)もその様子を見て頑張ろうという気になっている。
 しかし今回の相手は、なかなかに強敵だ。
 底なし沼というのは、ある意味モンスターなどより厄介になる。なにしろ沼自体をなくすことはできない。この先は危険だと知らせる以外にないのである。
 ともかく、事故発生を限りなく0パーセントに近づけなければならない。冒険者たちはモンスター退治に赴く時のような気合を発散した。
 底なし沼は東西に2箇所。自然と2班に分かれての作業となる。
「皆さん、底なし沼は危険ですから、お互い十分に気をつけましょう」
 珊瑚礁の歌姫・メルフェイス(a36190)が真剣な面持ちで言う。皆、真剣に頷いた。


 木々の隙間を縫い、腰ほどにも伸びた草むらを武器で薙ぎ払いながら、東班は黙々と沼へと進んだ。時空を彷徨う・ルシファ(a59028)が土塊の下僕を先行させ、自身は身軽に木に登ったりして遠くを見渡した。
 今のところ、動物等の襲撃はない。できるなら何にも邪魔されず、任務に取り掛かりたいところだ。
 やがて一行は、木と草むらが途切れているのを見た。
 目を凝らすと、そのすぐ先に黒に近い茶色の、いかにも柔らかそうな地面が広がっている。ここが底なし沼に間違いはない。一般的な家屋4戸分くらいの面積だった。
「……沼の底に何か沈んでいないでしょうね」
 何の気もなしに言うルシファ。財宝とか遺跡とか……想像は豊かに羽ばたくが、さすがに確認する術はない。そんな考えはすぐに捨てた。
 いよいよ任務開始だ。だが作業に夢中になるうち、間違って沼に踏み出してしまう恐れもある。どこからが沼なのかをはっきりさせる必要があった。
 メルフェイスと魂に刻めその旋律・レシュノ(a45112)が木製の棒を構えた。慎重に草の途切れているあたりを突きながら、沼の周りを回った。
 すると、草の生え際より一歩程度進んだところから沼ということがわかった。いずれにしても、草むらから出ない限りは安全だ。
 まずは視界をよくするために、草むらと木を除去する。ミオが斬鉄蹴を鋭利に唸らせ、灰色の岩山・ワング(a48598)も重騎士らしく、そこらの木を片っ端から切り倒していった。ルシファは引き続き土塊の下僕を召喚して草刈りをさせている。
 ――その時だった。
「うわ?」
 ルシファが大声を出す。近くの木の枝から、いきなりヘビがぶら下がってきたのだ。
 彼は驚きのあまり、思いっきり飛びのいてしまった。そこは運悪く――底なし沼。瞬く間に、ズブズブと足が沈んでいってしまう!
「大丈夫っすよ! フワリン!」
 レシュノが召喚したフワリンに乗り、ロープを伸ばした。膝まで沈んでいたが、どうにか無事に引っ張り上げることができた。ほっと胸を撫で下ろす一同。
「ふう……面目ないです」
「フワリンを召喚できるようにしといてよかったっス」
 万が一の時を考える。それも冒険者には必須の心得である。
 一方、ロンは別行動を取っていた。少し離れたところで、柵を立てるための太い木を切り出している。精神を集中させてカラミティエッジを撃ち出せば、見事に根元から切断されて木は倒れていく。剛にして妙なる戦士の技であった。
 倒木はトンテンカンテンと丁寧に加工されて、柵や看板の形になっていった。
「よいしょ、よいしょ……ろーどーの汗は美しいのなぁ〜ん」
 それらがノソリンに変身したミオによって沼に運び出される頃には、視界はだいぶ良好になっていた。ジメジメとしていた濃緑地域は、太陽を燦々と浴びる広場と変わった。
「さて……ここからが本番か」
「ええ、しっかりやりましょう」
 ワングが沼の周りに、柵を等間隔で地面に挿していく。メルフェイスがそれに丈夫なロープを渡らせていく。大人がまたいで通れず、子供がくぐって通れないようなものになった。看板にはペンキで『立入禁止』と力強い筆力で書かれ、存在感を充分に表した。
 途中でオオカミらしい影が見えたが、争うのは無駄と悟ったのだろう、何もせずに走り去って行った。
 彼らは最後まで気を抜かないよう務めた。おかげでトラブルらしいトラブルはなく、任務は無事に達成できそうだった。


 西班も順調に歩みを進めていた。先頭に立つのは剣難女難・シリュウ(a01390)。リーダーシップではなく、女性に囲まれては大変なので。
「この先にあるという沼のこと、知りません〜か〜?」
 吟歌の巫女・ナルミ(a41610)は獣達の歌で情報収集する。通りがかった小動物の教えてくれるとおりに方向を修正しながら、また歩いていった。
 そうして彼らも、藪に囲まれた沼を発見する。
 どことなく重苦しい空気が立ち込めている。足を踏み入れたら一巻の終わりという、底なし沼特有の殺伐感だった。
「それでは始めますか」
 シリュウがウェポン・オーバーロードでアクスの威力を高め、春風に舞う鈴の音・アンジェリカ(a48991)はマッスルチャージした。東班に比べるとやや大きめの樹木が多く、力仕事になりそうだった。
 さっそく、バキバキと破壊音が響いた。
「へいへいほー、なんてなぁ」
 道楽娘・ガザミ(a42279)が大地斬で豪快に真っ二つにした音だ。自然を楽しむ為に自然破壊、開発なんてなそんなもんやと彼女は達観していた。悲しいが事実だ。しかし人々の豊かな生活のためには、なさなければならないことである。
 そこへ、獣の唸り声が響いてきた。
 はっとして振り返る一同。漆黒のフォルム。現れたのは4匹の野犬だ。鋭い目を血走らせ、邪魔者に対する脅しをかけている。
 どうやらここいら一帯が彼らの縄張りのようだ。先住民は向こうだし、本来ならば自分たちが退くべきところなのだが――任務を果たさねばならない。
「おとなしくしてくれれば、危害は加えません」
 ナルミが獣達の歌で言葉を伝えるが、相手にしてみれば退けと言われて応じる理由もない。問答無用で飛びかかってきた。
「聞き分けのない――後悔しますわよ?」
 美白の歌姫・シュチ(a42569)の口から紡がれたのは、屈強の戦士すら恐れるファナティックソング。これを聞かされた敵は全身から血を噴出し、混乱する。野犬たちはキャンキャン喚いてもんどりうった。
「こんなとこで力を使いたくはありませんし、速攻で」
「わかりました♪」
 青・ケロ(a45847)のスーパースポットライトにまとめて引き寄せられたところ、がおぉ〜〜っとアンジェリカの紅蓮の咆哮が飛ばされる。ぴったりと動けなくなった野犬たちは、遅すぎではあるが冒険者たちの強さを痛いほど知った。
 それ以上手を出さずにいると、野犬たちはそそくさと撤退していった。
 この島は広いから、また別の場所を縄張りにするはず。冒険者たちはそんな風に罪悪感を押し込めた。
 草刈りと樹木伐採はスピーディーに行われ、ほどなく景色は広々と明るくなった。鬱蒼と茂る密林は見る影もなく、爽やかな平地に成り代わった。これなら遠目からでも沼だとわかるだろう。
「焦ることはありませんし、少し休憩しましょうか」
 シュチが幸せの運び手でメンバーを内側から満たした。空きはじめた腹も元通り元気になった。
 彼らはしばし休み、青空を眺めてみる。
 ……あとどのくらいでここは安全な島になるのだろう? 安全になった時が、冒険者の任務の終了だ。それは喜ばしいことだが、この島での作業は楽しいことも多い。寂しい気持ちもあった。
 やがて作業は再開された。いざもうひと踏ん張り。
「ふむ……このあたりですね」
 シリュウが棒で沼の位置を改めて確認すると、柵を立てる位置を決定した。すでに用意は整っている。あとは挿し込んでいくだけだ。
 ナルミが生み出した土塊の下僕と、アンジェリカの召喚獣グランスティードが、所定の位置に柵を運ぶ。ガザミがそれらをほいほいと地面に打っていく。
 平行して看板も作られた。加工され充分に乾いたそれには、ケロが得意の画力を発揮する。沼にはまってもがいている人の絵だ。文字よりも遥かに訴える力が強い。これを見れば、好奇心で柵を乗り越えてやろうなどとは誰も思うまい。
 その後は動物に襲われることもなく、やがて最後の柵が打ち込まれた。
 黒い地面を囲う整然とした柵、そして看板。どこから見てもここは危険区域だとわかるだろう。作業完了だ。


 東西2班は、入口まで戻って合流した。互いの頑張りをねぎらいあって、達成感溢れた微笑を交わした。
 もう夕暮れ時だ。夕日に焼けた西の空が冒険者の汗をきらめかせる。今日もいい仕事をしたなあと感慨深くなった。
「……お、お粗末さまでした」
 ナルミが幸せの運び手で全員を補給し、ひとまずは一件落着である。あとはミオの配るチョコを食べたりして、のんびりと潮風に吹かれていた。
「レシュノ、なんか一曲歌ってくれよ」
 ワングが言うと、レシュノは喜んで歌声を披露した。無人島に人が来て開拓され、豊かな行楽地になるという内容を即興で作った。
「完成が楽しみやわ〜」
 ガザミは近い将来、人がわっと来る様子を想像してほくそ笑んだ。

 ――オオオオオオオン。

 前触れもなく、遠くから吼え声が響いてきた。
 いったい何だ? 普通の犬やオオカミとは違う。桁違いに大きな吼え声だった。
 もしや、この島には巨大な「ヌシ」のようなものがいるのではないか。全員が全員、確信めいた思いを抱いた。
 風雲急を告ぐ。やはり簡単には終わりそうにない。


マスター:silflu 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:12人
作成日:2007/01/28
得票数:ミステリ2  ほのぼの13 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。