召しませ黄金



<オープニング>


●馨果
 あざやかな薄紅。一面、咲き誇る花々。みあげる村人たちの笑顔。
 それはまるで夢のような、不可思議な光景だった。
 遠い山々は紅葉に染まり、吹く風はすっかり涼やかな秋のそれ、だというのに……。
 桃源郷の単語が金髪の霊査士の脳裏をかすめた、その瞬間。
 眼前の風景は一変した。
 灰色の冬空の下、うっすらと雪化粧を始めた果樹林。たわわに実り垂れる、豊かな黄金。
 鼻腔をくすぐるその芳醇な香に思わず手を伸ばし……しゃらり。
 細腕に架せられた鎖の音が、彼女を引き戻した。

●価千金
「凍蜜桃、という果実をご存知ですか?」
 酒場に居合わせた冒険者達に、エルフの霊査士・ラクウェル(a90339)は話を切り出した。

「それは、秋に花を咲かせ冬に実を結ぶ黄桃の珍種中の珍種。糖蜜漬けの桃にも勝る甘さ、色鮮やかさ。そして限られた地域でしか栽培できぬ稀少さから『凍てる黄金』ともてはやされ、高値で取引されているのだそうです」
 今回は、その桃の果樹林を持つとある村からの依頼だった。
 丹精こめて育てられた桃はノソリン車いっぱいになる程かり入れられ、後はこの村の凍蜜桃の商いを一手に引き受ける商人の下へと入荷するだけ。
 なのだが。
 この珍しい果実の収穫前後頃から、人相のあまりよろしくない不審な人物が、村の周囲でちらほらと見かけられる様になったのだという。

「そこでここは冒険者の皆さまに是非にと、護衛を兼ねての運搬依頼が持ち込まれたという訳です」
 村から商人の住む街までは片道3日程度。
 ごく普通に食事や休息を取りながらであれば、森を縫う様に通る狭い道を抜けて街道に出るまでが1日、そこから街道沿いに街まで2日という道程となるだろう。

 ラクウェルが霊査した道中の危難は2つ。
「まず森中の何処かに盗賊の一団が潜伏しております。その数は20前後」 
 いずれも剣や弓矢等で武装している様です、と付け加えられた。
「街道でも、別の盗賊団による襲来が視えました。全員で30人程度の規模で、こちらは旅の商隊に偽装しております」
 こちらも半数程度は武装している様ですと簡潔にラクウェルは言い添える。
 道中、街道ですれ違う商隊は4つ。そのいずれかひとつが盗賊団が偽装した偽商隊なのだそうだ。
「このふたつの盗賊団の処置については皆様に一任致します」
 凍蜜桃を無事に送り届ける事。何よりもまず、それが第一。
 多少なら傷物を出しても加工用に廻せるので構わないが、その外観も商品価値のひとつ。出来る限り丁重に取り扱ってほしい、との依頼主からの注文を付け加え、お願いしますと一礼した後。

「それから。ほぼすべての凍蜜桃が無事に納入出来た際には冒険者の皆さまにも幾つか振舞って下さるそうです。凍てる冬の黄金……どのような美味なのでしょうね」
 そう語る金髪の霊査士は、ふわり、頬をほころばせたのだった。

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参加者
空仰鵬程・ヴィカル(a27792)
沈勇なる龍神の魂宿りし者・リュウ(a31467)
玉兎の舞刀士・シモン(a33838)
風を纏う赤槍・ウカスィ(a37777)
小さな海・ユユ(a39253)
形無しの暗炎・サタナエル(a46088)
銀青の飛竜・ウィザード(a47044)
今日も明日も風任せ・ヴィトー(a47156)
紅色の剣術士・アムール(a47706)
枝垂髪の植物学者・スイセツ(a51372)


<リプレイ>

●冬桃の里から愛をこめて
 清冽な朝の冷気も薄日に照らされ、ゆるゆるとゆるむお昼前。
 冬の旅立ちにはなかなかに悪くないお日柄である。が。

「思わぬ処で時間を費やしてしまいましたね……」
 ふうと白く吐息を漏らす枝垂髪の植物学者・スイセツ(a51372)。
 その横で土人形が音を立てて崩れ落ち、地へと還る。先発した味方と彼等が取る時差、約一刻をより正確に測る為に、土塊の下僕で計時中なのだ。
 即座に追加召喚された土人形は3体目。これが消えた頃には彼等のノソリン車も出発だ。
「まあ、お昼前に出立できるのだから良しとしましょう」
 幌内を整頓して仮眠場所の確保を済ませ、柔和に笑むのは銀青の飛竜・ウィザード(a47044)。
 天藍石の牙狩人・ユユ(a39253)はその海を思わせる青髪と額の石を隠す為、借りた鏡の前で頭巾と格闘中、なのだが、その手は度々止まる。
 少女はうっとりと眼を瞑り、冬空の下でふわり広がる桃の香を胸いっぱい味わう。
「うん……こんなにいい薫りなんて、ちょっとびっくりなんだよ」

 ふたつもの盗賊団に狙われての凍蜜桃の運搬。冒険者達は道中2隊に分かれ、街を目指す算段だ。
 まず空箱を載せた荷車を先行させ、変身したヒトノソリンの空仰鵬程・ヴィカル(a27792)がこれを牽く。こちらを『囮班』と定め安全を確保させ。
 その少し後を、本物の荷を載せた後発組を『本隊』として進む作戦だ。
「お互い、道中頑張ろうなぁ〜ん♪」
 本隊の荷車の方を牽くのは村から借り受けた若草色のノソリンちゃん。
 ヴィカルは、大切な旅の仲間に彼女おすすめの美味しい草を差し入れて、ぴょこんとご挨拶。

 が、この直後いきなりちょっとした問題点が浮き彫りになる。
「……あたし達の方のノソリン車、桃を積んでないの、すぐわかっちゃいそうなぁ〜ん」
「これは、確かに」 
 荷崩れ防止や緩衝を極力配慮された本隊の荷車と、空箱内に重しまで仕込み外見を完璧に偽装した囮班の荷車。双方の積込みを終え、まずは囮班を送り出すだけまでこぎつけた処で。
 踊るのを止めて困り眉毛でノソリン耳を垂らす少女の言葉に、碧に輝く義の水晶を持つ龍剣士・リュウ(a31467)もハタと気づき考え込む。並べると一目、いや一鼻瞭然だ。
 本隊の荷車からは離れた場所からでも黄金桃の豊かな香りが匂いたつ。一方で、果実の芳香など皆無のもう1台。 ――はたしてこれで盗賊を惹きつける囮を果たせるのだろうか?
「……今、凍蜜桃を詰めている木箱や詰め物。そのまま囮班の空積荷に使ったらどうだろうか」
 ぽつんと。手早く携行食で腹ごしらえを済ませた今日も明日も風任せ・ヴィトー(a47156)が、箱を手にふと思い付きを口にする。ユユが試しにくんと鼻を鳴らす。
 ずっと桃に触れ続けていた箱も詰め物からも充分な強さの移り香。グッと突き出されるOKサイン。

「では、その手で。急ぎましょう」
 スイセツの号令一下、冒険者達に加え手すきの村人も総出で詰め直し作業に取り掛かり、囮班を送り出し……そして、先のスイセツ達のやり取りにと到るのであった。

●冬夜の森で大騒ぎ
 純白のノソリンが牽く荷車に揺られ、深い森の中を進む囮班。
 針葉樹に覆われた頭上を見上げれば空はすっかり黄昏に染まり、吹く風も冷えてきた。
「そろそろ車を停めて、本隊を待ちましょうか」
 携行懐炉をひとさすり。御者台に腰掛けた闇に潜む赤槍・ウカスィ(a37777)が提案すると、ヴィカルはこくんと頷く動作をみせた後、道の脇のやや開けた草場に荷車を導いて止まる。
 4人と6人の2班に分かれた冒険者達だが、危険の高まる夜間だけは、合流し守りを固めながら野営する手はずになっていた。その最初の一晩め。
「……今のところ本隊も異状なし、じゃの」
 そう呟いて悪戯小娘・サタナエル(a46088)はマントで覆われた懐に忍ばせた短剣に視線を落とす。華奢な造り、だが、目利きの者ならば少女の護身用にはやや業物に過ぎる逸品であると直ぐに見て取れるであろうそれは、彼女の義兄の武器だ。
 本隊の有時にはこれをウェポン・オーバーロードで引き寄せ報せてくれると、別れ際ヴィトーが申し出て託したのだ。村では敵襲を知った後に囮班側がどう動くべきかまでは打ち合わせられなかったが。
 どのみち桃の運搬完遂が最優先、その場合やはり囮班も駆けつけるべきだろう。
 御者台と幌内に乗り込んでの森の路上。周囲を警戒しながら3人は、1頭にみえる1人を交え、小声で打ち合わせを済ませた。

 ウカスィや玉兎の舞刀士・シモン(a33838)は獣達の歌を口ずさみ、巣に帰る途中の鳥たちを呼びとめ情報収集に余念がない。傍目からは暢気な鼻歌にしか映らないだろうが。
 こういった小旅行の様な形での依頼は初めての経験。最初はやや肩に力が入りがちなシモンだったが徐々に生来の生真面目さが緊張を凌駕し、今やすっかり手際よく各種作業をこなしている。
『人間の群れ、この先の茂みにいた。こっちに向かってた』
『数しらない。弓や刃物いっぱいもってる。俺、はやく逃げたい』
 鳥たちはそわそわ羽毛を振るわせて答えた。本隊よりも近くに盗賊達は迫っている様だ。
(「やはり夜襲で来ますか。本隊が合流する前にこちらから仕掛けた方が好都合かもしれませんね」)
 民の営みを守る冒険者として。そして。
 桃被害ゼロあーんど至高至福の桃deティータイム! ……を目指す者として。
 ウカスィは脳内であれこれと思考をめぐらせ判断を捻り出す。
「討って出ましょう。……ヴィカルさんは無理せずに。これを」
 皆に指示を出すウカスィが、そして無言でサタナエルも、そっとマントを差し出しノソリンの背にふわりと被せた。
「はい。森の盗賊は基本、放置でよろしいでしょう」
 シオンが背からザックを降ろし、朱金の拵えの二刀小太刀を取り出す。
 殺すまでもない。圧倒的な強者の側が先手まで取ったのだ。多勢といえどグリモアの加護無き盗賊達に為す術はなく。

 まず一つ目の危難は恙なく取り除かれたのであった。

●冬の旅路は騙し騙され?
 2日目は終始、平穏だった。
 囮班本隊、双方とも街道にと辿り着き、整備された道なりに街を目指す。人の往来も増え、単身旅する旅人や行商人ともぽつぽつとすれ違い、あるいは追い越し。目指す街はそれなりの規模の、栄えた商業都市らしい。
 霊査にあった商隊とは、この日は2組すれちがった。

「ああ、もう凍蜜桃が出回る時期かい。高嶺の花だがいつか腹いっぱい食べてみたいものだねえ」
 1組目は樽いっぱいに林檎を詰めた果物商の一行だった。
 羨望の瞳で笑うご老人。つぶらな碧眼をぱちくりさせて愛敬たっぷりの白ノソリンを躾の良い子だと褒めて下さった商隊の長らしき彼は、どうやら本物の善良な通行人っぽい手ごたえ。
「……りんご、いただいてしまったのです」
 シモンは首をかしげていた。商隊の青年の1人が、妙に同情的に瞳をうるませて泣き笑いの笑顔で頭をなでながら、手渡してくれたのだ。
「あと、お手伝いがんばるんだぞと励ましてくださったのです」
「誤解されたのじゃろうの」
 気の良い商人達を相手に、賊か否かの観察をしながら、和やかに相槌を打ち続けていたサタナエルの想像はたぶん的中していた。
 恰幅のよい壮年男性ひとり。大事そうに、それぞれリュックを背負った少年少女の連れ。
 武装や羽を巧妙に隠し召喚獣も引っ込め、一般人を装う彼等を見て、
『男やもめが我が子を食わせる為に愛ノソリンと危険の伴う運送業で根無し草』
『息子と娘は健気にそれを支え……』
 そんな脳内感動巨編が青年の中で出来上がったらしい。
(「……まぁ……人買いや特殊な嗜好の持ち主と思われるよりはマシ、ですよね?」)
 花の独身貴族うかすぃサン、でも、ちょっとご傷心?

 2組目は毛皮やワインといった品を商う商隊だった。自衛の為にとちらほら武装する者も見かけたので遭遇した本隊にはやや緊張が走る。が。
「あんたらも桃だべか。だが気をつけたほうがいいべ?」
「森の方じゃ冒険者様方が大盗賊団と激戦を繰り広げたそうだ。盗賊は皆殺しだがもっとでっかい盗賊団が加勢に来るって話もある」
「お嬢ちゃんなんて真っ先に狙われるべ。そっちの兄さんらがしっかり守ってやんだべ」
 注意喚起とカマかけを兼ねウカスィが彼等に伝えた情報はほぼ事実だった筈だが……既に盛大に尾ひれがついている。
「まあ恐ろしい」
 紅色の剣術士・アムール(a47706)は大げさに眉をひそめ怖がってみせる。対商隊で特に率先して動くつもりはなかったアムールだがこういった会話術は得意らしく、堂々とした物腰で如才なく噂話を弾ませ人垣の輪を作る。それに。
 彼女以外は男(鉄面皮)、男(りすさん尻尾)、男(仮眠中)、男(仮眠中)、子供(10年後は期待大)。
 男所帯な皆さんが、ノーブルな美人を前に思わず競う様に集合したって、ノリと勢いで話を派手にし興味を惹こうとしたって、男心、仕方ないというものだ。
(「囮班のみんなが通したのなら大丈夫、かな?」)
 それでも油断なく。ユユは庇う様に幌の傍に着いてじぃっと万が一に備える。

 程なく彼等とも別れ、2班は再び合流した。夜番のウィザード、スイセツらにリュウが声を掛け暖かな飲み物を差し出す。
 憩いながらも物音に、気配に、鋭く神経を尖らせて警戒を怠らない一同。夜はそのまま明けてゆく。
 そして白じむ空の下での3度目の別離の後、それは起こった。

 朝日を浴びて進む本隊の前に3つめの商隊が姿を現す。
 道の両脇に荷車を止めテントを張っての野営中。おーい、と青年が手を振って本隊の前に立ち止まった、その直後。
 テントの影から次々と矢が飛来する。
 まずは撹乱目的だったのか全て地に刺さる。恐慌を起こしたノソリンをユユの眠りの歌が辺りの盗賊ごと静め、リュウはすかさずその盾となり抜刀して蜘蛛糸を投げ放つ。
「焚火も竃の跡も見当たらない。囮班をやり過ごした後の布陣か」
「別れたのを見計らって……非武装の斥候でも出していたのでしょうね」
 単身の旅人へは流石に無警戒だった。うとうと微睡み始めていたスイセツははね起きて飛び出し、ノソリン車を中心にしてストリームフィールドを生み出す。 
「……近づかないで貰うぞ」
 短剣を掌中に呼び寄せたヴィトーも雪崩れこむ敵から荷やノソリンを庇いながら蜘蛛糸を射出する。
 そして、炎剣を抜き放ち駆け出したアムール。紅髪が放つ光は多くの盗賊達の注視を荷車から逸らし、射竦ませる。
 奇襲こそ成功したが、的確に役割分担し連携を取る冒険者達を前に、後が続かない。
 急ぎ駆けつける囮班の到着を待つまでもなく、盗賊達は瞬く間に無力化させられていった。 

「食べたいなら、ちゃんと買ってくれな」
「はっ! 酒ならともかく木の実なんぞ食いたかねえよ」
「馬鹿みたいにイイ金になるんだよ。金に糸目をつけない、出所も問わない馬鹿な金持ち相手になっ」
 諭すリュウの言葉に、ぐるぐる巻きで転がされた盗賊達は半ば自棄気味に次々と吐き捨てた。
 しまいにはユユ達にはよく意味のわからない罵倒が幾つも飛び交いだし。
「……殺されないだけ有難いと思え」
 黙れとばかりに。
 特に口汚い言葉を吐いていた男の顎を、ウィザードは殺さぬ手加減だけはして派手に殴りあげた。潔癖に澄んだ瞳に剣呑な眼光を浮かべたサタナエルは、だが、とウィザードの後に言葉を継ぐ。
「次悪事を働いたら……容赦なく討つ」
 背後に従う緑鱗の異形がしゅうしゅうと三つの喉を不協和音に鳴らす。盗賊達はただただ黙り込むのであった。

 後は街を目指すだけ。もはや2班分かれて進む理由は無くなった。再出発の準備を整える冒険者達の横を、最後の商隊が通り過ぎる。
「あとちょっとなぁ〜ん。街についたらあたしと一緒に、美味しいもの、食べようなぁ〜ん」
 村のノソリンちゃんと再会を果たし、その無事を喜びながら、ヴィカルはにっこり笑い掛ける。
 なぁ〜ん。
 応じる様に。少し低い鳴き声が、のどかに響き渡ったのだった。
  
●召しませ、金色の冬
 出発から3日目の日没の少し後。2台のノソリン車が轡を並べ、街の門をくぐった。
 街の自警団に盗賊達を引き渡す者と目指す商家に荷を卸す者とに分かれ、任務完了。
 任された凍蜜桃を全く損なう事無く、刻限よりも丸1日早く。
 商家のあるじは諸手を挙げて迎え入れ、屋敷の一角を宿にと提供しその労をねぎらう。太っ腹にもぎっしり木箱ふたつ分の桃を彼等に贈呈してくれた。
 そして、明けた翌日。

「さて、せっかく頂戴した稀少な桃。ラクウェルさんにもひとつお土産で持」
「有難うございます。……霊査で視たとおり。素晴らしい薫りですね」
「……いや、ウィザードさん。物真似の妙技は道中で存分に堪能させて戴きましたから」
 シャーベット溶けますよ? スイセツが苦笑いで銀髪の青年にツッコミひとつ。
 本隊はこの3日間、昼食以外の食事全てでこのワザのお世話になり続けた。
 ええもう、何だかすっかり、金鎖の幻聴が聞こえてきそうな程、おなかいっぱいに。
 かくいうスイセツも怪しげな花々の鉢植えやら持参した小道具やらを駆使した隠し芸?を夜食の度に披露していたのだが。

「なんだか食べてしまうのがもったいない気もするのです」
 シモンは卓上の桃をそっと手に取り、いとおしげに陽に透かす。 
「桃はわたしの好物のひとつですの。……まあ、普通の桃よりも甘みがよろしくて……」
 冬の凍気をその実に蓄えたかの様な、ひやり沁みわたる甘さと瑞々しさ。
 アムールは綺麗に切り整えた桃をフォークでついばみ舌鼓をうつ。絢爛たる紅蓮の炎を思わせる剣士の顔にもひととき、少女の様な笑顔が浮かぶ。
「生でガブって食べるともっとおいしいんだよ〜」
 えへへ〜♪ とユユも上機嫌。つるりと皮を剥き、丸かじり。お行儀は多少よろしくないが新鮮な果実を堪能するといえばやはりこれ。無事に依頼を終えてのご褒美となればその味もひとしおだ。
 そして。
(「農家の人、ありがとうなんだよ……」)
 稀少な桃を育てあげた村人達への感謝の念ごとじんわり、噛みしめて。

 また厨房では。
「リュウさんは起こさない方がよいでしょうね」
 寝室から戻ったウカスィが、自分の分のついでにと桃を手に取り2人分の梱包を始めた。
「……昼夜殆ど寝ていない様子だったからな。……エッちゃんはプリンか?」
「……ん。ミルクたっぷりのピーチプリンなのじゃ」
 絞りたての黄桃ジュースを振舞うヴィトーの問いに、サタナエルはこくんと頷く。

「香りも歯応えも甘さも、全部大好きなぁ〜ん!」
 離れのノソリン舎には、衣服の上からタオルを体の上下に巻いて準備万端のヴィカルの姿。
 産毛を洗いぬぐったぴかぴかの黄金の実を皮ごと、ぱくり。隣には若草ちゃん。
「一口おすそわけなぁ〜ん♪」
『なぁ〜ん』

 ――召しませ、黄金の笑顔で。


マスター:銀條彦 紹介ページ
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冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
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わからない
参加者:10人
作成日:2007/01/31
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