はじめてのお人形劇



<オープニング>


「ふふ、ユバさんは頑張り屋さんね」
「そ、そんなことないのです」
「あらそう? 私は立派だと思うわ。とても」
「リゼルさんにそんなことを言っていただけるなんて光栄なのです……ですがリゼルさんこそ私の目標となる方なのです!」
「ま、嬉しいこと言ってくれるわね」
「ほ、本当のことなのです!!」

 ある家の隅っこ。
 そこにはリゼル人形(自作)と会話を楽しむ一人の霊査士の姿。
 ひとしきりの会話を楽しんだ後、そっとリゼ人を傍らに置くとぽさりとベッドに倒れこむ。
「……一人ではつまらないのです……ここはみなさんでお人形劇をしてみるのも一つの手な気がするのです……」
 また。
 やめてよそういうよからぬこと考えるのは。
「そうなのです!! そうと決まれば早速みなさんをお誘いするのです!!」
 ドバタンと勢いよく扉が開かれれば既にユバの姿はなく。
「お人形劇をしたいみなさんはこの指止まれ〜! なのです!!」
 天を指しつつ土煙をあげながらどこまでも駆けてゆくユバ。
 おまえが止まれよ。いろんな意味で。

マスター:湯豆腐 紹介ページ
 劇豆腐です。
 今回は素敵なお人形劇をしてみてはいかがでしょうか。
 以下に詳細を。
 
■お人形劇について
・一人一品、お人形劇をぶっ放すにあたって相応しい物体をお持ちください。
・どう見てもお人形じゃないのは基本的に不可。
・ですがどうしてもこれがお人形と言い張るのであれば可。
・指人形からぬいぐるみまでなんでもいいです。
・内容は個々人がお好きなように思うように。それを湯豆腐が物語に仕立て上げます。
・セリフを主にしていただけると出番が増える可能性があがります。
・お人形劇は恥ずかしいからちょっと……という方は鑑賞をどうぞ。
・鑑賞する方が0でもやります。

■発行アイテムについて
・劇に使用したお人形をアイテムで発行してほしいと言う方は、
◆名称:全角35文字以内
◆内容:全角40文字以内
 で指定していただき、問題がなければ発行致します。

■備考
・使う人はいないと思いますがアビリティの使用は禁止となります。
・ユバは当然あの人形を持っていきます。

 それでは皆様、のんびりまったりとお人形劇をしましょうね。

参加者
NPC:ヒトの霊査士・ユバ(a90301)



<リプレイ>

●ひとときの安らぎを
「ここに座ろうか、エルヴィア」
 ヴァイスの優しい微笑みにエルヴィアはこくり、と頷くとぽさりと腰をおろす。
「思ったより鑑賞をする人は少ないみたいだね。よく見えそうでよかった」
 観客席に座る冒険者は、自分達を含め4人余り。
 隣にヴァイスの気配を感じながら再び頷き、舞台を見つめるエルヴィア。
 そこではお人形劇に参加する冒険者達が忙しそうに準備を進めている。はずだが、
「ユバさーん! らぶー!!」
 ドドドドド
「ゼ、ゼソラさん!! 今準備で忙しいのではっー!! ちょ、やめふひはっー!!」
 右に左にかっとぶユバとゼソラ。
 その光景にくすりと笑みを零すエルヴィア。
 ヴァイスはそんなエルヴィアを横目に見ながら、この争いごとの絶えない世界で、ひとときの、こんなゆっくりとした平和な時間を大切にしたい、と心から願う。
「んんんひーっ!!」
(「……ところで、この劇のタイトルは決めていただろうか? そう言えば誰もどの劇をしようとは言っていなかったが……大丈夫だろうか?」)
 あえなくゼソラに御用となったユバの断末魔が響き渡る中、一抹の不安を抱えるレクス。
 そしていつしか舞台の準備が整えば、華麗なるお人形劇の始まりなのである。
 
●春近し、お人形劇は、うららかに
「フフフ、今日はサンマが安く買えたのデス。これでどこかに良い武器が落ちてたら最高なんデスけど」
 ミニチュアサンマを抱え、仮面をかぶったぼさぼさ頭のお人形がトコトコと舞台の隅から現れる。
 やけに大きな左手の爪が妖しさを醸し出すが、それにも増して何が妖しいかって、このお人形から発せられる声がまるで女の子みたいな声であるということだろう。
「せんせー、アンニュイな感じがします」
 縞模様のトカゲと肩下げ鞄を身に着けた吟遊詩人を模した人形が反対側から現れると、ヴァイス達の方に向かいパタパタと手を振る。
「おやまぁ、なんと」
 天井裏から現れたお人形が、あんまりびっくりしてなさそうにびっくりした声をあげる。
「う〜ん、今日は何だか退屈……こんな日はひたすら寝ているのもいいかもなぁ」
 下からぴょこりと現れた青髪の男の子のお人形は、周りを見渡すと腕を頭の後ろにまわしつつぺたりと横になり、
「何か面白い事はないかなぁ」
 そのまま安らかな眠りに入ろうとする。
 ポロン、ポロロン
 ユヴァの奏でる柔らかな音色が心地良く耳に届く。
 春も近付きつつあるうららかな陽射しに照らされ、お人形劇はゆるやかに続いてゆく。
 
 スタタンスタタン
 軽快にステップを踏みながら、レベッカ人形はダンスを披露する。
(「顔や腕の角度で人形にも表情をつけることが出来るのです」)
 その表情は時に寂しげで、楽しげで、まるでそこに本当に生が存在しているのではないかと見紛う程である。それほど、操るリアルレベッカの気持ちが込められているということか。
 そんな中、不意に舞台袖から白いクマさんがトコトコと歩みでると、
「ん? やあ! ボクはテディベア、名前はまだないんだ。今日は分体たる某ハニーハンターの肩から離れてゆっくり散歩でもしてみようと思うんだ。ほら、お出かけだから衣装も新調したよ。じゃーん、白熊バージョン! こんなに可愛いんだから某トレジャーハンターも怖がらないよね? 決ーめた、予定変更して早速遊びに行こうっと!」
 一通り言いたいことを一息でぶっ放したのち、ポコンと一つ手を打つと、そのまま超ダッシュで去っていく白いクマさん。
 うーん、ほのぼのしてるよなあ。
 でも、いろいろとギリギリなことはあまり口にしないでいただけませんか。
「初めまして、俺の名前はノエルって言うんだ。以後お見知りおきを。よし! 今回は俺のとっておきのマジックを見せちゃおう♪ わん、つー、すりー! はい! 鳩が出てきたぜー!」
 ペコリとお辞儀をすると、シルクハットからばさばさと鳩のミニチュアを飛ばすお人形ノエル。 
 そのマジックにちょっとびっくりしたのか、きゅっ、とヴァイスの袖を掴むエルヴィア。
「いらっしゃい。熱々絞りたての豆乳があるよ? 掬い湯葉だって出来るよ」
 突然酒場のような物体がどこからともなくどでんと現れると、その中でシャカシャカと豆乳を混ぜ始める酒場のマスター風人形。
「辛い事でもあったんですか? これは私からのおごりですよ」
 しゃーっ、とカウンターを滑る豆乳。
「フフフ、これはこれは、美味しそうな夕飯の材料デスねぇ……」
 と、先ほどの爪人形がふむふむと頷く。
「そろそろお昼の時間だね。お昼ご飯を食べよう♪」
 横になっていた青髪の人形もすくりと立ち上がると、立て続けに滑ってきた豆乳を受け取りごきゅごきゅと飲み始める。
「明日はきっと良いことありますよ。ほら、湯葉越しのライトがあんなに綺麗じゃありませんか」
 きゅっきゅっ、とお皿を磨きながら誰ともなく呟くマスター。
 オーケー、まだ昼。
 
『しかしこの平穏も、長くは続かなかったのです……』
 ばさっと天井から現れ、そして一瞬で消えていくイルハ人形。
 気のせいか身体中が真っ赤だった気がするけれど、
『この笑顔の裏に隠された狂気に、この時はまだ誰も気がついていなかったのです……』
 姿は見せずに再びイルハ人形の声が響く。
 少しだけ何かが狂い始めた。
 レクスは、確かにそう感じた。
 
●台本とか、ある程度の道しるべって大事
「ユバたんはぁはぁ!! はぁはぁ!!」
 1/1ユバたん抱き枕をどでんと押し倒すと直接描写不可な行為を公衆の面前で披露し始める某ピンク色の物体(ヒトノソリン・女性)。
 いきなり人形劇のアイデンティティを根底から覆すその行為。
 どうでもいいけどとりあえずどっから持ってきたその萌えグッズ。
「そうだ! エなんとかオンはきっと人形に入っ……」
 どでんばたんと縦横無尽にユバ枕をこねくりまわしつつ相変わらず意味不明なことを口走りそうになったその時、
「ていただだだだなぁ〜ん!!」
 ピンクの首に荒縄が見事に食い込み、そして捻りあげられる。
 その後ろで満面の笑みでくいくい縄を操作するツインテールのブルー。
「人形……つまり、人の形をしてればいいんでしょう」
 右に左にと引きずり回し、そして振り回す。ぶいんぶいん振り回す。振り回しちゃって。
「ぐぎぎぎ、ぐぶぅ、おうふぅ、なぁ〜ん」
 嬉しそうに操られるピンク。
 ギュイイィィン!
 突如ユヴァの曲調が激しいそれに変化する。
「普段は散々バカやってるオレだが、この想いだけは誰にも譲れん! ああそうさ……オレはバカだしスケベだしライダーだし白塗りだし……だが! お前の過去も今も未来も全て含めてオレは護って行きたい!! ああそうさ! ドレだけオレがお前の事を思っているかと言えば……この熱い口づけでほげー!!」
 人形劇というか、大事そうに抱えたドリアッド風のかわいらしいお人形に向かって告白をしていたド・ナルドは、その熱き想いを口づけ(人形に対して)にて表現しようとしていた矢先に、振り回されているピンクにかっとばされ、そのままアイムラビンとポテトをばらまきながら空の彼方へ消えた。
 ぎゅうう
 エルヴィアはそんな光景にツボったのか、小刻みに震えながらヴァイスの袖を強く握り締める。
「我こそは闇の王なり。汝らがどれ程束になろうとも我には効かぬ、なぁ〜ん」
 舞台の上から現れるブラックフードをかぶったお人形。
 見た目とは裏腹に、またしてもかわいい女の子声であることは最早つっこむまでもない。
「この森は、僕が闇に染めるのです!」
 ばっさぁとマントを翻しつつ、ブラックフードの後ろから現れるお人形。
 二人で向き合い、こくりと頷くと、どでんばだんとセットの木をなぎ倒し始める。
 悪行の限りを尽くすこの2体を、誰か止める方はいらっしゃいませんか!!
「そこまでよ!! なのです!!」
 びしいぃぃっ! と指をさしながら颯爽と現れるリゼル人形。
「この私がきたからには、二人の好きにさせておかないわよ!! なのです!! とーっ!!」
 低い姿勢から熊殺し蹴りを放つリゼル人形。
 しかしひらりと避けられてしまう。
 ダイナミックに動くその姿を客席から正座をしつつじーっと見つめる一匹の猫。
 リゼル人形というか、それを操る後ろのヒトを上から下からねぶりあげるように、そして汚すかのように視線を絡ませる。
(「ユバさんたらやわらかくてふにふにで良い匂いがするのですよ」)
 先ほどのジョージを思い出しつつ、真剣にユバを汚す、汚す。
「ふははは、そんな攻撃が我に通用すると思うてか! なぁ〜ん」
 くねくねとリゼルを挑発するブラックフード。
「くっ! 卑怯よ!! ちゃんと当たれなのです!!」
 場に緊張が走る。
 と、またもや不意に現れる白クマさん。
「何あのセイレーンの王女、相変わらずえっらそうに。近いうちにお説教しなきゃ。あ、こっちは六角眼鏡だ、またバカやってるの? 面白いなぁ」
 はーい! 白クマさーん! 何言っちゃってるんですかー!
「……パ〜ンチッ!」
「ぐはぁ! まさか、我がこんな女子供にやられるとは。不覚、なぁ〜ん!!」
「あああああ!! なのです!!」
「うわぁ、いつも肩から見てる景色が視界が違うだけでこんなに新鮮だなんてええぇぇ!!」
 金槌頭の人形が突如現れパンチをぶっ放せば、もう一緒にみんな飛んでいく!!
 ギャリギャリギャリギャリ
 破壊的な音を醸し出すユヴァ。
「俺は普通だー!」
 眼鏡をかけ平和な笑顔を浮かべた人形が、その表情から720度くらい違った方向性の絶叫をあげる。
「俺は普通なんだー!」
 もう何が言いたいのかよくわからないけれど、とりあえず言えることは、
「自分が普通だと思う人ほど、普通ではないんですよ」
 そうそう。
 吟遊詩人のお人形が代弁してくれました。
「俺はいつでも普通なんだ」
「大丈夫大丈夫。冒険者なんだから」
「俺は健全なんだよ」
「やめて下さい、倦怠期の夫婦を見てるみたいです」
「普通が何よりだ」
「何の脈絡もない物って大変だと思う」
 吟遊詩人人形と眼鏡人形が、脳を破壊されるような会話を繰り返す。
 でも一つだけ吟遊詩人さんいいこと言った。

『何の脈絡もない物って大変だと思う』

 まったくもって、その通り。少し反省している。
「わたし、お婆ちゃんの所へお使いに行くの。お婆ちゃんに、この国家機密書類を持っていかなきゃ」
 トテトテと赤い頭巾をかぶったお人形が端っこから現れるが、既にノーマルじゃあないことはもう皆さんわかっていらっしゃいますよね。
「きゅー!」
 ごろごろごろごろ
 風船豚ちゃんがどっからともなく転がってくる。
 その容姿は足は短く控え目な脇役として体長1.6メートル程である。
 お人形劇の舞台が、大きいんだか小さいんだか、もうこの際気にすることではなかろう。
「風船豚さん、どうしてそんなにお腹が大きいの? お腹の中にお婆ちゃんがいる事は分かっているわ、早くお婆ちゃんを解放して!!」
 パカーン!
 赤頭巾が舞う。
 風船豚ちゃんは転がっていく。
「あ、待ちなさい材料! 逃がしませんよ!」
 爪人形さんが転がっていく風船豚ちゃんのあとを追う。
 なんていうか、もう、アレだよね。うん。いつものアレ。

「阿鼻叫喚……だな」
 ピンク色の物体の顔が紫から白になり始める頃、レクスはぽつりと呟く。
 こういった依頼は必ずドタバタが起こり、被害をこうむる者達が現れる事を、レクスは経験から知っていた。
 だからこそ今回は観客としてそれを存分に傍目から見させて貰おうとしたのだ。
「あらまあ」
 そんな天国絵図を、頬に手を当てながら優しく見守るヤーデお婆さん。
 物語として紡がれれば、登場した者達は見ている方の心にも生き続ける、と心から願い、全てを許すかのごとく慈悲たる笑みで佇む。
 しかし残念ながら物語として紡がれているかどうかははなはだ疑問である。
「困った子ねぇ」
 相変わらず振り回されているピンクを眺めながら仕方ないといった表情で佇むヤーデお婆さん。
 まともな貴方がいてよかった。
 心からそう思います。
 そういえば、最初から最後まで、舞台の端っこにひっそりと立っていたレインボーアフロの方は、肩をふるふると震わせ、泣いているのか? と声をかけてあげたくなるが、そこはかけないのが真の優しさというものではなかろうか。
 
 そしてピンクの首縄がぷっちんとぶちぎれ、そのままあらぬ方向にすっとんでいったことをきっかけに、このお人形劇改め阿鼻叫喚天国絵図物語は終焉を迎えるのだった。
 
●いろいろあったけれど
「今日はありがとう。もうそろそろ俺はただの人形に戻ります……ばいばい」
 先ほど鳩を取り出してみせたシルクハットを目深にかぶり、もう一度お辞儀をすると、コテンと横たわるノエル。
 ぱちぱちぱち、と満足そうに拍手をするエルヴィアを眺めながら、ヴァイスは今日というこの日のことは、きっと忘れないだろう(いろんな意味で)、と、お人形劇に参加した冒険者達に深い感謝を覚える。
「はぁ、はぁ……ど、どうだクサツム……満足、したか」
 肩で息をしながらユバに、その成果をうかがうユヴァ。
 周りには使用した楽器が転がっているが、その弦がちらほら切れているとか切れていないとか。
「大満足なのです!! 流石はみなさんなのです!! こんなお人形劇は滅多に見られるものではないのです!! リゼルさんも喜んでいるのです!!」
 ふりふりとリゼル人形の手をふりながら満面の笑みで頷くユバ。
「で……ユバ。結局の所、人形劇で何がやりたかったんだ?」
 頃合を見計い、レクスは本日最大級にして超弩級の疑問をぶん投げる。
 その問いにユバはにこりと微笑み、こくりと頷くと、
「流石はみなさんなのです!! なんだか私は元気がみなぎってきた気がするのです!!」
「無視かよ!!」
 レインボーアフロさんの最初で最後のドツッコミが、オレンジ色に染まる空にこだましたのであった。


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