<リプレイ>
●金持ち一家 「わたしの今年の目標はね、ごっついメイドさんと仲良しになる事なんだ。うーんと迷惑かけると思うけど、発覚しないようにいっぱい我慢してね」 満面の笑みを浮かべながら、紅い魔女・ババロア(a09938)が大富豪の娘に変装した。 一応、偽メイド達に怪しまれないようにするため、髪を縦ロールにしてフリルのついた可愛らしい服を着ているのだが、14歳という年齢設定に無理があるためか、仲間達から無言のツッコミが入っている。 「まぁ……、迷惑が掛かるのは、偽メイドに扮した方々ですからねぇ。わたしぃ達は本能の赴くままに行動しますわ」 のほほんとした表情を浮かべ、吟遊詩人・アカネ(a43373)がクスリと笑う。 偽メイド達に怪しまれないようにするため、屋敷の内部はレッグランブランドのマークが入っており、アカネは乳母役として彼らを騙す事になっている。 「それにしても筋骨隆々で、メイド服の親父かぁ。……わたし、変態って大嫌いなんだよね。ちょっと痛い目を見てもらわないと……」 爽やかな笑みを浮かべながら、歪曲月譚・ギルバーナ(a54337)が危険な事をさらりと言う。 彼は一家の執事として偽メイド達の相手をする事になっているのだが、彼らが来る前から殺意のオーラを漂わせている。 「おはようございます、御主人様♪」 次の瞬間、筋骨隆々なメイド達が扉を壊す勢いで、屋敷の中にゾロゾロと入ってきた。 この時点で冒険者達は偽メイドにツッコミを入れたい心境に陥ったが、ここで逃げられてしまっても困るので笑顔を浮かべて我慢する。 「早くこっちで遊ぶなぁ〜ん♪」 偽メイド達の声に気づき、改良品種ノソヒカリ・オルミナ(a42606)が彼らの裾を引っ張った。 先程までオルミナは広間でゴロゴロと転がって時間を潰していたのだが、あまりにも暇すぎるので偽メイド達と遊びたくなってしまったようだ。 「あら、可愛いお嬢ちゃんねぇ。食べちゃいたいくらいだわぁん」 むせ返るほどの加齢臭を漂わせ、偽メイドがジョリジョリと頬擦りした。 「なぁ〜ん! なぁ〜ん!」 偽メイドの身体をポカスカと叩き、オルミナが煎餅を渡して逃げようとする。 しかし、偽メイド達は執拗に顎鬚を擦りつけ、オルミナの心にトラウマの種を埋めていく。 「使用人たる者、主人が快適に過ごせるよう、日夜奮闘しなければいけないのです! それを貴方は……!!」 オルミナのピンチを察したため、ギルバーナが偽メイド達の気を引いた。 「こ、これは愛情表現ですわ。それが分からないなんて……ひどい!」 瞳をウルウルとさせながら、偽メイド達が悔しそうにハンカチを噛む。 その間にオルミナが広間に逃れ、心の傷を癒すかのように煎餅を齧る。 「言い訳は無用です!! 大体……、その容姿でメイドさんだなんて、何を考えてるんだか」 とうとう我慢の限界を超えたため、ギルバーナがブツブツと文句を言う。 本当なら最後まで言うつもりはなかったのだが、偽メイド達の暴走っぷりに我慢する事が出来なくなった。 「まぁ、いいじゃありませんか。それに容姿でメイドの良し悪しを判断する事は出来ませんわ」 妖艶な笑みを浮かべながら、美白の歌姫・シュチ(a42569)が瞳をキラリと輝かせる。 シュチにとって偽メイド達は、単なる獲物。 仲間達が止めなければ、大人の関係へとステップアップするまでだ。 「ちょっと甘いんじゃないの? 言う事を聞かないメイドにはお仕置きが必要よ!」 悪戯っぽい笑みを浮かべ、ババロアが偽メイドの顔を見る。 「そうですわねぇ。お嬢様がそこまで言うのでしたら、腕立て伏せ300回くらいは必要かも知れませんわね」 偽メイド達の顔色を窺いながら、シュチが怪しくニヤリと笑う。 そのせいで偽メイド達が震え上がり、怯えた様子でダラダラと汗を流す。 「お、お許しください、お嬢様」 わざとらしく涙を浮かべ、偽メイド達がババロアにしがみつく。 偽メイド達も面倒事に巻き込まれたくないので必死である。 「……駄目よ。それにわたしの事はアントワネットとお呼びなさい!」 クールな表情を浮かべながら、ババロアがキッパリと言い放つ。 そして偽メイド達にあれこれ指示を出すと、椅子に座ってのんびりと紅茶を飲み始める。 「アントワネットちゃん、あなたも、もぉ14歳になってから168ヶ月になるのねぇ。そろそろぉ、お見合い何てぇ、したらどうかしらぁ」 レッグランブランドの印付きの革表紙が敷かれた薄い冊子を開き、アカネがババロアに主犯であるケツアゴの似顔絵を見せた。 そのため、主犯のケツアゴがハッとした表情を浮かべて後ろに下がる。 「嫌よ、お見合いなんて! そんな事よりメイド達! 食事の用意はどうしたの? パンがなければ、早くケーキを持ってきなさい」 偽メイド達を蹴り飛ばし、ババロアがプンスカと怒り出す。 「あ、あんなにぃ、やさしかったぁ、アントワネットちゃんがぁ、不良みたいなことをしだすなんてぇ、ギルバーナ様ぁ、どうしましょうかぁ。嗚呼、可愛いあの子はどうなってしまうのでしょうかぁ。だれかぁ、たすけてぇぇぇぇ」 オロオロとした様子で辺りをフラフラとしながら、アカネがギルバーナの名前を呼ぶ。 偽メイド達の登場が早かったため、最初の予定と違った展開になってしまったが、彼らが動揺しているので、まずまずの成功と言えそうだ。 「な、何だか様子がおかしくねぇか。まさか俺達を騙すために……」 ここでようやく偽メイド達が罠だと気づき、蜘蛛の子を散らすようにして逃げていく。 しかし、アカネ達も似せメイド達を逃がすつもりはないため、眠りの歌を歌おうとして放蕩の宴を発動させた。 「あらあら……。皆さん、大変な事になっていますわね。せっかくですから、わたくしが鎮めて差し上げますわ」 天使のような笑みを浮かべ、シチュが偽メイド達を奥の部屋へと連れて行く。 そして、奥の部屋から彼らの悲鳴が響くのだった……。
●裏口 「……まったく嘆かわしい事です。そのような事をしても、みんなが不幸になるだけなのに……。ここは、私達がしっかりとお灸をすえて、真人間になってもらいましょう!! でも……、キスを迫ってくるという事は、きっと彼等もそうせざるをえない環境にあったのかも知れませんわね。……そう。愛が足りず、愛を求めて暴走したのに違いないです!! ならば私が十分な愛を与えて差し上げましょう!!」 偽メイド達に同情しながら、愛戦士・グラズバガス(a20524)が沼の中から顔を出す。 既に屋敷の中からは偽メイド達の悲鳴が聞こえており、何かのぶつかる音がドカスカと聞こえてきた。 「冥土服は、可愛い女の子のためのアイテムなぁ〜ん! 断じてゴツくてムサイ男のためのアイテムではないのなぁ〜ん! 間違った冥土野郎には、教育的鉄槌なのなぁ〜ん!」 頭に蓮の葉を乗せて竹筒を咥え、高らかに響く腹音・クルック(a58349)が裏口を睨む。 それと同時に偽メイド達がスカートを下ろした状態で飛び出し、大粒の涙を浮かべて何かから逃げている。 「逃がしませんわよ!」 奇声を上げて紅蓮の咆哮を発動させ、グラズバガスが茂みから飛び出した。 「「きゃあ! 化け物」」 ……未知との遭遇。 他の冒険者達から見れば『お互い様』だったりするのだが、彼らにとってはショックを受けるほどの出来事であった。 「な、な、なんて醜い人達なのでしょう。か、鏡を見た事があるのかしら!?」 青ざめた表情を浮かべながら、グラズバガスがヘナヘナとその場に崩れ落ちる。 そこでクルックはツッコミを入れようと思ったが、色々な意味で地獄を見るかも知れないので、あえて触れない事にした。 そのため、グラズバガスは自分が驚いた事を恥じながら、偽メイド達の前に立ってコホンと咳をする。 「どうせメイドをするのでしたら、最後までやり通さないと……。しっかりとお仕事しましたら、きっと相手の方も喜んで給料を払ってくれます。何より皆さんが幸せな気分になれますから……」 聖母のような笑みを浮かべ、グラズバガスが延々と説教をし始めた。 しかし、偽メイド達は麻痺から回復しているため、忍び足で彼の傍から離れていく。 「こっちは通さないなぁ〜ん!」 次の瞬間、沼の中からクルックが飛び出し、偽メイド達の度肝を抜いた。 「いいか、お前達! 冥土服というのは、可愛い女の子の聖なる戦闘服なぁ〜ん! 白い清楚なエプロン、手首までピッチリ包む黒のワンピース、スカートからチラリと見える足とガーターベルト! その全てが俺達、男の疲れた体と心を癒すのなぁ〜ん!」 とうとう我慢の限界に達したため、クルックが間違った(主に萌え方面に)冥土解説をし始める。 その間にグラズバガスが仁王のような表情を浮かべて飛び上がり、偽メイド達の背後に立ってシュタッと着地した。 「やはり、あなた達は愛に飢えているのですね。そのために、こんな間違った事をしてしまっているのです。ですから私が愛を与えてあげましょう」 自愛に満ちた表情(見方によっては仁王顔)を浮かべ、グラズバガスがマッスルチャージを発動させる。 それと同時に偽メイド達が身の危険を感じ、その場から逃げ出そうとした。 「何も怖がる必要はありません。あなた達はただ……、流れに身を任せるだけでいいのです」 逃げ遅れた偽メイドにベアハッグを仕掛け、グラズバガスが濃厚なキスをする。 途端に偽メイド達の間から悲鳴が上がり、恐怖のあまりその場から動けなくなった。 「お、俺は何も見ていないなぁ〜ん」 色々な意味でトラウマになる光景を目の当たりにして、クルックが這うようにして逃げていく。 偽メイド達の安否が気になったが、これ以上ここにいたら、一生後悔しそうである。
●外 「何だか悲鳴が聞こえているなぁ〜ん。ひょっとして、メイドインマッチョな人達から、天使のキッスを貰っているのかなぁ〜ん?」 屋敷の入り口が見える場所にある茂みに隠れ、刹断の朱炎・アコナイト(a56329)が遠眼鏡を覗き込む。 先程から屋敷の中が騒がしいのだが、ここからだと何が起こっているのか分からない。 「シェルトの初めては、どこのノソリンのホネ(馬のホネの意)とも知れぬ奴等には、渡せないですなぁ〜ん。でも、マッチョとかケツアゴは結構好みだったりするですなぁ〜ん。でもでも、メイドである必要はないですなぁ〜ん。悪い事はいけないですなぁ〜ん」 不機嫌な表情を浮かべながら、ヒトノソリンの紋章術士・シェルト(a52822)が大きく頬を膨らませる。 偽メイド達に興味はあるのだが、それ以上に正義感が勝っているようだ。 「筋肉質のオジさん達が女装をしている時点で、何だか危険な雰囲気がしますものね」 緊張した様子で茂みに隠れ、戦場を駆ける白兎・ジョーゼ(a59644)が武具の魂を発動させた。 被害を最小限に抑えねばならないため、偽メイド達がキスを迫ってくる前に、倒しておく必要がある。 「僕は女装が悪いとは思いません。……ですがやるなら徹底的にやるのが漢というもの! ……ていうかゴツイか可愛いか、どっちかにして下さいどっちかに! 中途半端な心根は叩きなおしてやるのです!!」 偽メイド達の中途半端さに腹が立ち、地を駆ける金狐・シャンティ(a48412)が怒りで拳を震わせた。 次の瞬間、偽メイド達が屋敷の中から飛び出し、悲鳴を上げて逃げてくる。 「メイド姿で悪事をしたのだから、ちゃんと本当のご奉仕をしてもやらないとな。少しばかり遊ばせてもらうぞ」 含みのある笑みを浮かべ、紅き焔華が咲乱れる庭園の番犬・ラオ(a45058)が行く手を阻む。 そのため、偽メイド達が唇を尖がらせ、ラオ達がキスを迫ってきた。 「おーいそこのメイドというか、冥土的なへんないきものー!」 ラオが何の抵抗もなく偽メイドのキスを受け入れたため、アコナイトが青ざめた表情を浮かべて汗を流す。 色々な意味で逃げ出したい心境になっているのだが、自らの身を犠牲にしてラオが偽メイド達を足止めしているため、覚悟を決めて茂みの中から飛び出した。 「メイドの神聖なお役目を放り出して逃げ出すなど言語道断!! その根性、叩きなおしてくれあげます!」 偽メイド達の行く手を阻み、シャンティが大声を上げる。 次の瞬間、偽メイド達がシャンティの掘った落とし穴に落下し、悔しそうな表情を浮かべて這い上がってきた。 「痺れさせてあげる!」 偽メイド達との間合いを一気に詰め、ジョーゼが電刃衝を放とうとする。 「こ、殺しちゃ駄目なぁ〜ん!」 ハッとした表情を浮かべ、シェルトが土塊の下僕をむかわせた。 さすがに偽メイド達を殺すわけには行かないため、ある程度は手加減をしておかねばならない。 「気持ちは分かるが、手加減してやってくれ」 すぐさま粘り蜘蛛糸を放ち、ラオが偽メイドの動きを封じ込める。 それでも偽メイド達はキスをしようとしていたが、ラオは対して驚く事なく彼らの動きを封じ込めていく。 「りょ、了解って……、しまった!?」 いつの間にか偽メイドの唇が近づいていたため、ジョーゼが悲鳴を上げて後ろに下がる。 手加減をしてくれと言われても、ここで本気を出さねば唇を奪われてしまう。 「これを使うなぁ〜ん!」 ジョーゼにむかって獣の仮面を放り投げ、アコナイトが投網を投げて偽メイド達の動きを封じ込める。 しかし、偽メイド達は獣の仮面越しにアコナイトの唇を奪い、彼女の心にちょっぴりトラウマを残す。 「な、何も見ていないなぁ〜ん」 気まずい様子で視線を逸らし、シェルトがスーパースポットライトを放つ。 そのため、偽メイド達の動きが封じ込まれ、アコナイトが悲鳴を上げて股間を蹴った。 「麻痺しているせいで悲鳴さえ上げる事が出来ないのか。だが、生きていただけでも、幸せだと思うんだな」 粘り蜘蛛糸を使って偽メイド達の動きを封じ込め、ラオが疲れた様子で溜息をつく。 どうやら他の場所にいた冒険者達も偽メイドを捕縛したらしく、みんなでラオ達の様子を見にやってくる。 「それじゃ、キッチリと反省していただきますよ。とりあえず広場500週から始めましょうか」 そう言ってシャンティが偽メイド達をジロリと睨みつけるのであった。

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参加者:12人
作成日:2007/02/06
得票数:ほのぼの1
コメディ13
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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