甘い思い出。



<オープニング>


 なんでだろう……最近はどこのお菓子屋さんもチョコレートがいっぱいな気がする!

 純ワイルドファイア産のクィンスは不思議そうにいつもの町並みを歩いていた。
 普段よりもちょっぴり甘い匂いが漂う町。
 それは嬉しい反面、理由がわからないのはもどかしい。

 そこで、尋ねてみた。
「こんにちはー」
「あら、クィンス君こんにちは」
「ねぇねぇ、なんでチョコレートばっかりなの?」
「そっか。ワイルドファイアの方じゃないのかな? 2月の14日はね、ランララ聖花祭って言う大切な人にお菓子を贈るドリアッド達のお祭りの日なの。それにならって、私たちも準備しているってわけ」
 やわらかく微笑む店の女性の言葉にへぇ、と納得したクィンス。ドリアッドのお祭りじゃ、自分が知るはずもない。
 去年のこの時期は体調が優れずずっとへばっていたのに甘い香りが漂っていたのだけは覚えているからきっとこのお祭りだったのだろう。
 お見舞いに来てくれた宿屋の女将さんがそう言えばチョコレートをくれたっけ。
 ふむ。
 うむ。
 よし。
「教えてくれてありがとー」
 何かを思いついたような表情で、クィンスは店主に手を振りながら駆け出していった。

●甘い思い出。
「なのでー! お菓子作りをしたいと思います!」
 酒場の扉を開けて、グラグラと危なげなほど大量の材料を持ち込み、机の上に広げたクィンス。
 何事なのかと集まった冒険者たちに彼はそう告げた。
 きっと、ランララの趣旨は半分くらい理解してない気もするが。
「お菓子作り用の家は借りられたから!」
 街のはずれの使われていない大きな一軒家を、持ち主の好意で貸してもらえたらしい。
 感謝の念を篭めて、上手く形にはならないかもしれないけれど、それでも作りたい。
 そう思うから、そう思えば、あとは行動に移すだけだ。
「チョコレートの材料をいっぱい用意したから、他に作りたいって人がいたら一緒にやろうね! というかむしろ作り方教えて!」
 そう言ってクィンスはチョコスイーツ調理会場の場所と日時をあまり上手とはいえない字で書きこんだ紙を酒場のボードに貼り付けた。

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参加者
NPC:風翠・クィンス(a90196)



<リプレイ>

 会場の扉が開けられ、大きなキッチンに持ち込んだ材料を広げて準備は万端。

「今年は、去年よりちょっとは上手く作れたらいいなぁ〜ん。お料理はとっても苦手なんだけど、大好きな人のために頑張るの。クィンスくん、一緒に頑張ろうねー」
 ルゥルは指を切ったりしながら、それでも頑張って。大好きな気持ち……いっぱい込めたら、美味しくなるかなぁ〜ん、と林檎の型に溶かしたチョコを流し入れる。
「お菓子作り、得意なんですけど……大切な人にあげると思うと緊張して……」
 大切な人のために精一杯がんばっておいしいお菓子を食べさせてあげられればいいなぁ、とチョコケーキを作るリアナは少し焦り気味。
「喜んでくれると良いんですけど……ぁうー……普段こんなことやらないから、ものすごい気恥ずかしいですよ……ッ」
 真っ赤になったサラスティールは、何て言って渡せば良いんでしょうかー……と悩みは尽きない。

 去年は手作りに自信がなくて購入したお菓子を贈ったけれど、今年こそ……決意を胸にマドレーヌを作るウピルナに、アスティナが実演を交えて教えている。
「分量はきっちり計るのがコツですよぉ〜混ぜる時はこうするのですぅ〜」
 失敗しても何度も挑戦する友人に、ティナも一生懸命に教える。
 シュリが作るのは煮苺と果実酒を閉じ込めた、明るい卵型のマーブルチョコ。
 心に言葉が溢れていて、それを口に出すのは恥かしくて――想いをチョコの中に閉じ込めて、少し早い春の香りと共に彼に届けてみよう――
「そういや、ディアって誰に渡すんだ?」
「秘密よ」
 ユナンに尋ねられたフェルディアはくすくすと微笑み、手元においたスイバの造花に少しだけ視線を落とした。
「ただ、とても感謝している人に、ね」
「誰にあげるにしても、楽しい時間になるといいよな〜」
 頑張って作るぞ〜っ、と気合を入れるかれにフェルディアは丁寧にブラウニーの作り方を教えていく。
「こういうのって……苦手なのよね……」
「大丈夫、任せてください。お料理だけは得意なのなぁ〜ん」
 ピカピカの道具を前に困り顔のユッカにマヒナが笑いかける。
 彼女の失敗を気にせずにあれこれ指示を出し、ユッカは慣れない手つきで言われた通り作業を進める。
「お菓子作りって面白いですよね。良かったらまた作りましょうなぁ〜ん♪」
「今度は是非手の込んだお料理なんかも教えて貰いたいわ」

「だいすきなお友達にプレゼントするのっ。いっつも構ってくれてホントに嬉しいんだもん」
 サガラは料理の上手そうな人の近くによって真似て作り始める。
「きっとみんなも大切な人に喜んで貰いたくって、うきうきどきどきしながら作ってるのよねっ。そういうのって、なんだか嬉しくなっちゃうねーっ」

「結婚してから初めてのお祭りですし、お菓子、ちゃんと用意したいなーって思ったです」
「お料理、お菓子作りは乙女の嗜みですから……」
 ジーナスの言葉にラキアが頷くが、でも、と登場する山葵。
「やっぱり普通に作るだけじゃつまらないですよねーっ♪ ふふふふふ」
「……ってジーナスさんっ! そんなものチョコに入れては……あぁ」
 彼女の口からは溜息。
「余裕があれば他の方のお手伝いもしたかったのですが……無理そうですね」

 メイの指導でキサラとリーファが慣れない手付きで、それぞれ大切な人、そしてお世話になっている人のためにお菓子を作っていた。
 20歳になったので、今年はお酒を使ったお菓子を、とメイ。
 キサラは「今年で4年目のランララになるのですね……」と彼との今までの歩みを思い出しながら、そしてこれからの二人の行く末に想いを馳せながら、お菓子を作っていく。
 リーファは、大好きなおねーちゃんと一緒に何か出来るだけでも嬉しいですと伝え、その頭を良く出来ましたねと撫でられ擽ったそうに笑っていた。
「いっぱいのお仲間さんとお菓子作りは楽しいですよね♪」
 ミルテフィーナは、美味しく焼き上がりますように、と焼き上がりを待っていた。
「わーい、完成ですー。ラッピングも可愛くしたいですね。あ、お渡しするときは温かくしなくちゃです!」
「……去年もこうやってお菓子を一生懸命作りましたっけ。少しは上手になりましたでしょうか」
 イエンシェンは新しいご縁に喜びと感謝と願いを込めて溶かしたチョコをゆっくりかき混ぜていく。
「めがみさまの ごかごが ありますように」

「こう見えて菓子だけやなく料理のテクもあるん」
「……何故、同じ手順で俺のはでろでろ?」
 ユウシの物と自分のを見比べたモニカはさらに作業に没頭していく。
 そんな彼女の頬についたチョコを背中から近付いて舐め取ったユウシ。でも一瞬ビクッとなっただけで期待していた様に驚いて騒いではくれなかった。
「……食べちゃ駄目食べちゃ駄目……」
 気にも止めず摘み食いしそうな自分を諌めるモニカだった。
 生地を練り、型を取り、クッキーを焼く間ゼフィはただ大切な人のことを思っていた。
 ……青空のように笑う、あの人の笑顔が見たいから……彼が喜ぶような美味しいクッキーを作りたい。その一心で。
 ハルキもまた同じように、大切な婚約者への日頃の感謝と気持ちを込めて作っていた。
 贈りたいな……喜んでくれると良いのだけど。少しでも心が癒されたり和んでくれると良いな。私を愛してくれるあの人の為に……私が出来る小さな贈り物。
「ランララのお祭り、とっても楽しそう……ね♪ 久しぶり、作ってみる。すっごく上手……出来る、わけない、けど……もう、1人でも……できるっ。クィンスにも、教えてあげるねっ」
 母と作った昔を振り返りながらココルはぐっと小さな拳を握り締めた。
「ほんのちょこっとで、良い。気持ち、伝わるといいな」

「皆で一緒って久しぶりでうれしー♪」
「みんなと一緒に……行くのは久し……とてもたのしそ……」
「多人数で遊びに行くのは初めてだな」
 シルルとディフィス、ヴィータ、それと恋人の嫌いな甘いチョコを用意するカイン。
「イジメじゃないもん、愛の試練だもん!」
 4人の中で料理が出来そうなのはディフィスだけ。
「レシピもあるし……いざ作れ……なぁ〜ん……」
 彼女の号令で全員が取り掛かる、が。
「みんな、たすけてぇ……」
 とチョコ杏仁を作り始めたシルルが言うと、「皆で楽しくお菓子作りが成功の一歩なのです」と返すカイン。
 ヴィータなんかは料理が出来ないからと手軽なチョコドリンクをチョイスして余裕いっぱい。休憩時に作った物を渡してもいた。
 結局、ディフィスが自分の物と平行して手伝って、なんとかかんとか形になった、のかな?
「……包むはしっかり……1つづつ……面倒がらずに……こつこつと……なぁ〜ん」

「大好きな彼へのプレゼント、去年はちゃんと挙げられなかったからしっかり用意しておくのです」
 クレアはトリュフチョコを手際よく作りながら、本とにらめっこしていたクィンスに声を掛けた。
「時に、クィンスくんはお料理の経験がないのです? それなら、私も少しはお手伝いするのですよ」
「良かったら一緒に作りますか?」
 ユニスもそう声をかける。彼女自身は付き合い始めて初めてのランララのために「喜んでくれると良いけど……」と祈りを込めるように作っていた。 
「クィンスと一緒に、作り方を教えて欲しい。自分の無器用さには、かなりの自信がある。一人でやったら、とんでも無いことになる」
 それを聞いたロゼッタが自分も、と名乗りをあげた。
 大事な彼に贈りたいから手作りで。柄じゃないけど、手作りをしたい。
 そんな思いが、彼から貰った指輪を見ていると頭の中をぐるぐる廻る。
「受け取ってくれるかな、迷惑じゃないかなー……いやもういっそ、義理っぽくかるーく渡せばもしかしたら……?!」
 ティーがランララを機会に仲良く、と想い作る手際は良く、出来た包装はきっと義理には見えない綺麗さ。
「まあ、ダメで元々だし。頑張ってみよう!」
 何か自分にもできることがあればいいなと思いレシピと睨めっこしながら頑張るガウラ。
「恋人さんはいつも私に色々してくださいます。大好きで……とても大切な方」

「ちょっとだけビターの方が好みって言ってたな」
 さてと、と作り始めたラスはクィンスを手伝いながら自分のを仕上げていく。
「で、クィンスは誰に贈る気なんだ?」
「宿屋のおばさんといつもの市場の皆だよー」
 とチョコをかき混ぜる手を休めずに、クィンスはそう答える。
「クィンスさんは、お世話になって優しい気持ちを頂いた方へのお礼として挑戦されるのでしょうか……? もし宜しければ、お手伝いさせて頂きたいなと思います」
 作る数が多いらしいクィンスに、レシピを片手にファオがにっこりと微笑み、並んで作り始める。
 ……大切な方が、寒さに凍えずずっと穏やかに……幸せなお気持ちであられます様に。
 お会い出来て抱けた、沢山の幸せなあたたかい気持ちを、感謝と共にお伝え出来ます様に。
 沢山の気持ちを篭めて大切に作っていく。

「お菓子と呪いの祭典ランララの時期が到来、今年は僕も暗黒食品で参戦するのです!」
「一緒に参加なぁ〜ん♪」
「お菓子作り……覚えてる限りでは初めてだから、楽しみだな……」
「さぁ、がんばろ〜♪」
 クーカに続いてモイモイ、デュナとルミナも会場へと入り、お菓子作りを開始する。
「あんまり難しいのは自信ないから、チョコを溶かして飾りつける、簡単なのにするね……」
「これはね……こうやって……こうやるの」
 まずは皆のやり方をよ〜く観察なぁ〜ん、とデュナやルミナを見ていたはずのモイモイ、だけど「突撃重戦車は細かいことは気にしないのなぁ〜ん!」と分量は適当だ。
 そして、全員のチョコが完成する。
「あげる相手はいないけど、皆と作ってるだけでも、楽しいな……」
「料理も呪いも、想いを形にする点は同じなのです」
「ボク、大雑把に作りすぎなぁ〜ん?」
「ミズチ君、喜んでくれるかな〜?」

 出会って。一緒にいて。結ばれて。沢山くれた心への、せめてもの恩返し。とっても上手っていうわけにも、いかないけれど。精一杯の、想いを籠めて。
 アラクナが作るのは、そんな愛しい人へのプレゼント。
「お菓子作りは苦手なんだけどね……今日くらいはっ!」
 気合を入れて挑むメープル、手の甲に付いたラズベリーピューレをぺロッと舐めて味見する。
 甘酸っぱい……恋の味がした気がした。

「剣を調理器具に持ち替えて、志は高く、イザ行かん調理場という名の戦場へ!」
 泡だて器片手にポーズ取るイオを見たクールが、でも厨房は戦場じゃないわとツッコミつつメイノリアに尋ねると彼女もツッコむ。
「メイ姉、イオって楽しい人?」
「うん、戦場違うね。ポーズ決めてないで手伝ってね」
 3人は、クーを先生にトリュフを作る。
「……う、難しい〜」
「メイ姉もイオも不器用ね。こうするのよ?」
 唸るイオにクーが手解きしてるのを、色々教わろう♪ と見ていたメイが「クー可愛いなぁ……大好きだ!」と抱きついたり。
「綺麗にラッピングして、皆そろって完成☆」
「女の子らしい事って全然向かない。だけど……喜んでくれるなら悪くないかも」
「これで、もっと仲良くなれると良いね、イオ♪」

 彼の方が料理が上手いと言うリリーナは喜んで貰おうと「お料理の腕を上げなくては!」と教えてもらいながら作っていく。
 スイーツに『愛情』という隠し味を目一杯込めましょう。――例え、体が離れていても心はいつも貴方の傍に――

「クィンスさん、色々準備してくださってどうもありがとうございます」
 大切に思うようになった人のためにマシェルは、どちらかというと硬派なタイプだと思ってその人が、照れて笑う処、赤くなって笑う処を思い出し。
 ……とても大切な言葉を私にくれるなんて……と、シンプルなチョコにいっぱいの気持ちを込めていく。
「最近ちょっと元気がない腐れ縁の弟分が、ちょっとでも元気になってくれるといいな」
 と、カルーはせっかくの聖花祭にお菓子でもプレゼントして驚かせてみようかとチョコを作る。
 料理は愛情、を念頭に料理出来ない同士一緒に頑張ろうなぁんっと言っていたヒメラはぴょこんとクィンスの手元を覗き込む。
「うぅ〜……なかなか上手く出来ひんのなぁ〜ん……クィンスはんは、上手く出来たなぁん?」
 そこには、上手く言ってるとはお世辞にはいえない不恰好なチョコレートがいくつもあった。
 それでも彼の目も顔も真剣。
「頑張ればなんとかなるなぁ〜んっ」とヒメラも気合を入れなおし、お菓子作りは続いて行く。

「送る相手は決まっているから、あとは頑張るだけね。久々だけれど、なんとかうまく作ってみましょうか」
 アリアンは作りながらふと、誰かの為にお菓子を作るなんて初めてのことね、と思い出す。嬉しいやら恥ずかしいやら。……でも、不思議と悪くない気分。
 
「ジェフは、甘いのが苦手だから……甘さは控えなきゃ」
 マリアの言葉を聞くベイマの顔には微笑みと、本の少しの羨望。
「お菓子作りなんて……初めて」
 二人ともに料理は得意じゃないけれど、だからこそ頑張って作っていく。
 不安も多いけど、一年に一度の特別な日。それぞれに色の違う包装とリボンを付けて、思いを閉じ込めた。

 去年は料理が出来なくてお店で買った奴だったけど、今年こそはあの人に手作りチョコを。
「一年の修行の成果、今こそ見せる時っ!」
 フソウは気合十分にキッチンに立つ。猫の好きなその人のため、猫の形に整えながら……でも可愛くって食べられないかも?
 その様子を想像して思わず笑いが毀れる。

「リィとのお出掛け嬉しいなぁ〜ん♪ チョコだけじゃなくて、二人の思い出も作ろうなぁ〜ん」
「む、菓子作りとは斯様に力がいるのかえ。これは戦闘よりも妾には難しいかもしれぬの」
 チェリとリィの二人は腕まくりしてチョコを作り始める。
「リィはどんなの作るのかなぁ〜ん? わたしはとにかく大きいのをつくるのなぁ〜ん!」
「妾はチョコシフォンなのじゃ!」
 でも目の前にはべっちゃりとした何か。
「……ま、まあ……作り慣れぬゆえの……こんな物じゃろう」
 つと、目をそらし、でも耐え切れなくなって頭を下げるリィ。
「すまぬ、折角ご一緒したというのにこの有様……っ」
「えっと、リィ、ありがとうなぁ〜ん。いつもわたしなんかのこと気に掛けてくれてなぁ〜ん。とってもとっても嬉しい……大好きなぁ〜ん」

「結婚して二年以上経つけど、やっぱりチョコは忘れずに渡したいから……」
 ニクスは甘い気持ちを詰め込んだケーキを作る。今も大好きな人だから、ね。
 そして最後にそっとメッセージカードをいっしょに閉じ込める。――これからもよろしく。

 甘い思いを詰め込んだチョコレートの、甘い香りに包まれた部屋の中、暖かな思いが溢れていた。
 ――明日はランララ聖花祭。この思いがあの人に伝わりますように――


マスター:仁科ゆう 紹介ページ
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作成日:2007/02/13
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