恐喝紳士



<オープニング>


 われ先にと冒険者の酒場に駆けこんできた紳士は、遅れてやってきた女性に礼儀正しく会釈を傾けている間に追い抜かれ、地団駄を踏むわけにもゆかず、カウンター脇に設置された丸椅子へと腰を降ろした。
 カウンター付近で紳士然とした男を追い越した娘は、そのまま足の運びを緩めてゆくと、肩からさげたポーチから取りだした、花の刺繍の施されたハンカチに額の汗を含ませた。
 円形のテーブルの一角に赤い背もたれの椅子を置いて、目前には素焼きのカップとソーサーの組み合わせで紅い茶を楽しむ霊査士は、こちらにやってきたふたりに気づいていたが、話しかける順序については決めかねていた。
 ハンカチを手にする娘に挨拶を済ませると、彼女のために椅子を引いてやりながら、薄明の霊査士・ベベウはカウンターの椅子に腰掛ける青年に対して会釈をした。相手はわかっているといった様子で、大振りの器を掲げた。隠されていた口元があらわとなったとき、そこには白い気泡が付着していた。
「どのようなご用でいらしたのでしょうか……」
 霊査士の灰の瞳を見つめていた娘は、視線を手元に伏せると、自分の名を告げた後、消え入るような声で言った。
「クレイダーマンという男を罰していただきたいの……」
 背後からの声にベベウが振り返ると、そこには、口のまわりを気泡に縁取らせた青年の姿があった。彼は言う。
「お嬢さん……失礼ですが、あなたは今、クレイダーマンという名を口になさったのではありませんか?」
「ええ」
 小さく肯いた娘に対し、紳士らしからぬ興奮ぶりで男は言った。
「誤解を恐れずに申しあげますが、そのクレイダーマンという男は、卑劣で、矮小で、ねじくれた精神の持ち主なんではありませんか?」
「それは……はい、その通りと思います」
 隣り合った娘と男を正面に、ベベウはふたりに共通するらしい問題について、適切な質問と真摯な傾聴とを繰り返して情報を集めた。
 ふたりは強請に遭っていた。情熱的な言葉が連ねられた手紙は娘、情熱的な言葉が掘られた首飾りは青年が、それぞれ強請の種とされている品である。
 クレイダーマンなる悪漢は、それらを自らの住まう館のいずれかに隠しているらしいのだが、その場所は誰も知らないという。彼の館には大勢の、武装した男たちが見張りに雇われている。そのため、力任せに奪い返そうとしても不可能なのだ。複数の、安全な場所を持っているのですよ――とは、恐喝屋自身の言葉である。
「どうにかしてあいつの弱点を掴んでやりたい……そう思ったのですが、私が知り得たのは、クレイダーマンが黒髪に滅法弱いということだけでした」
 青年に続いて、娘が口を開く。
「わたしが館の使用人から聞きだせたのは、クレイダーマンが美しい少年に目がないということだけで……」
 それから! と声を合わせたふたりは一斉に言った。果実の名前を使った駄洒落にも弱いようだ――と。
 しばらくの沈黙の後、ベベウは手元の羊皮紙に、『黒髪、美少年』それに『果物で言葉遊び』なる紋章文字を記した。役立つかは不明だが、弱点のひとつ――それとも、ふたつ?――でも無いよりはましだろう。
 ふたりの意気投合した依頼者が話すには、クレイダーマンなる人物は、自由気ままに暮らす人物であるらしい。ふたりと隣町を訪問しては、『迷惑な仔猫亭』なるパブに赴いて、酒をたしなむことがある。肝心の生業の種探しについては、自ら足を使うといった労苦を好みはしない。名のある家に生まれた人間たちを陥れるのは、その館に出入りする人間たちであり、そういった人物たちにクレイダーマンは館の扉を開放しておけばよいのである。
 同情のあまりか娘の手をとっていた青年は、われに返ってそっと掌を浮かせ、霊査士に対してこう言った。
「恐喝に苦しめられているのは、何も私たちばかりではないでしょう。あいつの暮らしぶりを見れば、それはよくわかります。私のように宝石を奪われたり、今度は先祖から伝えられた絵画を要求されているのは……」

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参加者
チョコ魔人・ルイ(a02276)
行雲流水・ケイン(a05024)
黒焔の執行者・レグルス(a20725)
ねむねむ呪王さま・シー(a29392)
黒音・アール(a32409)
青銀の飛竜・ウィル(a47045)
孤月・スオウ(a56685)
時空を彷徨う・ルシファ(a59028)
斜陽支えし鋼盾・ジェフリー(a60090)
黒衣の翔剣士・シオン(a61430)


<リプレイ>

●下ごしらえは慎重に
 軽やかな足取りで通りを歩くヒトの青年の姿がある。
(「果物の言葉遊びが好きで? 恥ずかしー文面が並ぶ恋文と恥ずかしー言葉を彫りこんじゃった首飾りを世間に知られたくなければ、こちらの要求に応じやがれコノヤロウという強請か……なんて奴だ……!」)
 絹組み紐で闇色の一房を胸元にまとめ、人目をはばかることなく往来を闊歩する青年は、その名を黒焔の執行者・レグルス(a20725)といった。花の束が収められた籐籠を小さな身体で支える少女のために道を譲ると、彼は懐から数枚の羊皮紙を取りだし、何事かをしたためはじめた。
 その紙片は仲間の手へと渡り、恐喝を行う悪漢を手玉にとる際に用いられることになるのだが、それはいずれの話である。
 
 鉄柵の向こう側に見えている館は、簡素で上品な造りであると見受けられたのだが、その庭に咲く花は皆無という有様で、冬という季節の不自由さをさっぴいてもあまりに彩りに欠けていた。
 肩が乱暴に揺すられた。彼は先ほどから後方に立っていたふたりの男の気配に気づいていたが、驚いた様子で肩を飛びあがらせてみせる。行雲流水・ケイン(a05024)はおそるおそる振り返って、いかにも傭兵然とした身形の男たちの顔色をうかがった。
「実は……こちらの親方様の評判を耳にしまして……」
 野良作業に勤しむ男の実直さを、ケインは自然と身につけている。本来は、金のたてがみをなびかせるグランスティードを駆る、高位の武人であるのだが――。よからぬ企みに荷担する男たちは侮蔑の表情を彼に向けていた。
「どうぞお入りください……」
 扉の奥の暗がりから現れた小さな顔には、空の群青を思わせる明眸が輝いていたが、それらは注意深く足元へと傾けられて、所在なげな少年の儚い美を醸しだすのにひと役買っている。その黒髪の少年は、ケインと視線を交じらせることのないまま、赤い敷物の敷かれた廊下を案内し、廊下の先の庭に面した部屋の扉に立つと、そこで小さな物音を三度繰り返した。
「お入り」
 開かれた扉の先には、窓辺に佇む痩せぎすの男の姿があった。彼は満面の笑みでケインへと近づくと、彼には暖炉側の椅子に腰掛けるように伝え、案内の少年にはその柔らかな肩に白い指先を食いこませながら言った。
「ご苦労だったね、シオン」
「はい旦那様……」
 駆け出し翔剣士・シオン(a61430)は一礼する際に、その群青の瞳に不遜な光をちらつかせたのだが、その事実に気づいた者はケインだけだった。
 
 木立のたくましい枝に腰を落ち着ける彼女は、黒絹のストッキングに包みこまれた足を伸ばし、左右を交互に上下させながら、眼下に見晴るかすことのできる邸宅の様子を観察していた。
 まず、クレイダーマンの館を訪問したのは、青い瞳に黒髪の少年だった。次いで、農夫らしき青年が屋敷のなかに通された。護衛の者たちは、館の周囲をめぐったり、庭をぶらついたりして、主がよからぬ企みによって得た財を護っているようだ――ふと、彼女は胸中に疑念を生じさせた。
(「果物で言葉遊びか。何で弱いんだろう?」)
 黒笑導師・アール(a32409)は小首を傾げていたが、「ん……」と小さな呻きをたてて上肢を反らせた後、紅玉を思わせる美しい瞳を木漏れ日を楽しむことから館の観察へと移した。
 
 青銀の飛竜・ウィル(a47045)は、『迷惑な仔猫亭』なる酒場へと赴く恐喝紳士の動向を背後から観察していたが、突然、慌ただしい様子で駆けだしたのだった。
 いかにも身なりのよい、上質な黒の布地で仕立てられた衣服をざわめかせて、彼はクレイダーマンの傍らを過ぎ去った。そして、はらりと落とした手紙には気づかぬまま、男に呼び止められても気づかぬまま、彼は足早に雑踏へと走り去った。
 クレイダーマンは封に用いられた印籠の荘厳さに気がつくと、その手紙を注意深く扱い、上着の内ポケットにしまいこんだ。
 
●主菜はどうぞ『迷惑な仔猫亭』で
 扉が開かれるたびに、その内側からは獣脂蝋燭のちらつく赤い輝きや叫声じみた笑い声が、薄暗い裏路地の石畳に這いだしてきた。
 自らが子供であることは、巧みな話術を用いることで相手に忘れさせた。しかしながら、男たちが遠慮なく煽っている麦酒を嗜むことは禁じられている。ねむねむ呪王さま・シー(a29392)は酔いもまだ知らないのに、その風だけを装いながら、大きな声で笑った。
「酒場で冒険者のプーカと会って、そのときに『そんなバナナ?』で悪戯された」
 しばしの静寂が彼の心を真綿のように締めつけたが、どうやらその余白は助走に過ぎなかったようだ。酒場のカウンターから広がった馬鹿な笑い声に、斜陽受けし鋼盾・ジェフリー(a60090)は涼しい顔して麦酒の注がれた杯を掲げてみせる。
 そんな折だった――『迷惑な仔猫亭』の扉が開かれて、上質な衣服に身を包む男が姿を現した。背後に恐喝を働く男の存在を感じながら、時間と空間の支配者・ルイ(a02276)は声を張った。クレイダーマンの心を掴むための術、それは先ほどジェフリーが冷や汗をかかされたように、果物を用いた言葉遊びで笑いを誘うことである。
「梨の話はどうですか?」
 仲間が繰りだした籠絡の術を、その濡れ羽色の髪をしたエルフの少女は否応なく耳にする位置にあった。クレイダーマンは彼女の傍らに腰掛けており、どういった理由かは不明だが、「見事」とかなんとかいいながらルイに拍手を送っている。自然と彼の視界には、少女の姿も含まれることになり、孤月・スオウ(a56685)もまた遙を見晴るかすかのような視線をカウンターの燭台に向ける作業を終え、果物を使った言葉遊びに移らねばならないのだった。
「……葡萄、ひと粒どう?」
 飄々とした口調で器に盛られた緑の果実を差しだしたエルフに、クリダーマンは膝を強打しながら歓喜した。理由はよくわからないが、彼の心に大いなる喜びをかきたてたのは事実であるようだ。笑いのあまり目元に涙を浮かべる恐喝紳士に、たたみかけるようにして諧謔の弾丸を撃ちこんだのはルイだった。
「これでも食べて……まあ、スカッとしてください」
 クレイダーマンは、こみあげる笑いにひいひいと苦しみながら言った。
「す、すごい……同じ果物で連続させるなんて……。あなた方は、ただ者ではありませんね
 スオウは口元に微笑みを繕うと、先にレグルスから預かっていた掌中の紙片へと視線を落とし、そこからいくつかの言葉遊びを読みあげた。
「まろはマロンが好き。このスイカ、安いか?」
 激しい喘息のような笑いの後、クレイダーマンは上品な様子をついぞ取り戻せぬまま、スオウたちに尋ねた。
「いやいやお見事だ。愉快な方々よ、こちらにはどのようなご要件でいらしたのです?」
 問いに答えたのはルイである。
「私は詩人なのです。人の心を動かすような情熱的な言葉に興味がありまして……。お許しを願えるのなら、もっとも新しい命を与えられた詩を、芸術に深い理解をお持ちのあなたに披露したい。いかがでしょう?」
「それは是非もない。お聞きいたしましょう」
 レモンの入れもん――ルイがそう発するなり、クレイダーマンは椅子から転げ落ち、床でのたうちまわった。
 外衣の内側に折りたたんだ翼の窮屈さ、それに、銀の髪を隠すためにかむった黒髪の鬘はやけに重たくて、時空を彷徨う・ルシファ(a59028)は身じろぎをしながら出番がやってくるのを待っていた。ジェフリーからの目配せが送られてきて、彼はほっと安堵の溜息をつくと、ほっそりとした足首を床でのたうつ男の側にまで運び、そこにしゃがみこんで掌を差しだした。
 黒髪の少年――ルシファ――の力を借りて丸椅子へと戻ったクレイダーマンは、はあはあと息を荒げていたが、やがてそれを整えることに成功し、硝子の器に注がれた葡萄酒を飲み干した。
「あなたはこの町で、何か商売を?」
 そう尋ねたスオウに、男はこめかみを指差しながら答えた。
「ええ、元手のまったくかからない仕事ですよ」
 鞘に納められた剣を掲げてみせながら、ジェフリーが言う。
「仕事を探していてね……大きな声では言えないが、少々の荒事でも旦那のためならやりますぜ?」
 だが、その視線は宙を泳いでジェフリーの傍らへ、ルシファの顔へと注がれている。慎み深い視線ではあったが、かすかな下劣さが滲んだしまったのは、以下に上質な服で身形を整えたとしても、本来の彼がそういった人間であるからなのだろう。
 その時だった。ルシファが半ばまで閉じた瞳を悲しげに傾け、ジェフリーへの信頼を立つ位置の距離で示しながら、クレイダーマンに決断を促した。
「僕は渋る大人と渋柿はキライです」
 黒髪の美少年に、果物を巧みにあしらった言葉――それはさすがに、獲物を狙う蛇のように慎重な恐喝紳士にも抗えなかったのだろう。館には今朝に雇った少年がいる。さらに、このルシファなる少年を側に置けるのなら、夜な夜なあんなことやこんなことも――と考えたかは不明であるが、クレイダーマンはジェフリーとルシファのふたりに対し、自らの館にまで着いてくるよう言ったのだった。
 そこへ、突然に『迷惑な仔猫亭』の扉が開かれた。乱暴にはばたく戸の傍らには、頬を青ざめさせたウィルの姿があった。彼はカウンターへと足早に近寄ると、酒場の主人に言った。
「先ほどここで一杯やったんだが、手紙が落ちてなかったか? あの手紙が見つからなければ……俺は……」
 恐喝紳士がまずジェフリーに命じたのは、あの手紙を落としたという気の毒な紳士の逗留先を調べあげること。そして、ルシファに命じたのは、あの紳士を自らの館へと招待申しあげるようにということだった。
 
●食後は甘味と誰かが告げる
 月影すら差さぬ薄暗い廊下の先に現れた姿に、クレイダーマンの館を護る男たちは瞬秒だけ臆したが、すぐに腰の鞘から凶刃を解き放ち、獰猛な犬の唸りにも似た奇声を発したのだった。だが、壁面に掲げられた燭台の真下にまで歩みでて、その微笑みを添える美貌を露わとすると、アールは編然と言ってのけた。
「クレイダーマンのために命を粗末にするのって、賢くない生き方だよ……ね? 私は平和主義なんだ。陽気な詩人さ。……本当だよ?」
 曲刀を掲げた男たちは、廊下を駆けてアールへと襲いかかる中途、突然に襲われた抗えぬ眠気によって全身の力を失い、次々と敷物の上に重なっていった。
 館の裏手では、ケインが見覚えのある顔を目の前に、懐へと片腕をつっこむ姿が見られる。彼は懐中の小刀を抜くが抜かざるべきか考えていた。襲いかかってきた悪漢のひと太刀を、彼は素速い身のこなしで避け、相手の腕に木立の柄を打ちこんだ。
 スオウは館の壁面に背を預けて佇んでいる。館の護衛たちを相手に、冒険者たちが傷を負わされることはどうやらなさそうだった。逃げだす者ないように裏門の全景を視界に捉えておく。漆黒の天蓋に瞬く月は、まるで彼女に囁きかけでもするかのように白い光を降らせていた――。
 遠くから聞こえてきた鈍い響きに、クレイダーマンは眉をしかめてみせたが、すぐにうきうきとした様子で仕事に取りかかった。彼の正面にはすっかりうなだれた体のウィルの姿がある。そして、階上の寝室にはルシファのシオンが、自分の到着を首を長くして待っているはずだった。
 またしても響いた、廊下に何かが倒れこむような物音に、クレイダーマンは先ほどよりも深く眉をしかめた。そして、ウィルに鷹揚な態度で暇を請うと、彼からの返事も待たずに廊下の扉を開いた。
 そこには、雇ったばかりの護衛であるジェフリーと見知らぬドリアッドの少年、それに、これまでに会ったことはないが見事な黒髪が悪漢の心を惑わせるレグルスの姿があった。そして、彼らの足元には無力化された転がされた護衛たちの姿も――。
「不届きモノは、俺が叩きのめしますぜ?……なんてな」
 ジェフリーのひと言で、クレイダーマンは多くを悟ったのだった。自分は何者かの策にはまってしまったこと、その謀は『迷惑な仔猫亭』において進められていたこと――。
 深緑の瞳に純真な咎めとでも表すべき色を浮かべると、シーは恐喝紳士に問うた。
「痛い方がいいか? それとも、粘りつく方か?」
 クレイダーマンが選択したのは後者であった。彼の背後では、すでにウィルが立ちあがり、指先に気の力を収斂させていた。悪漢を捕縛すべく、輝く糸の束を拡散させながら、手紙を落とした気の毒な紳士ならぬエルフの武道家は言った。
「武道家は葡萄みたいに甘くはない。観念しろ」
 
 縄目についたクレイダーマンとその雇われ用心棒たちは、薄暗い庭へと引き立てられた。そこで、冒険者たちは依頼者たちがのぞんだ『こらしめる』という仕事に移ったのだが……。
 まず、悪漢の心を千々に乱れさせたのは、ルシファのみせた何気ない仕草だった。彼は黒髪の鬘を外し、目映いばかりの銀の髪を露わとしたのである。
 次いで、恐喝王の心身ともに叩き伏せたのはシオンであった。従順な風を装っていた少年は、黒髪こそ偽りではなかったが、多分に猫をかぶっていた。肩に触れられたことへの怒り、そして、くだらない言葉遊びへの憤りをこめて、シオンは拳を振りあげた。
「ここ誰んち? オレンジ…………ってなんなんだ!」
 庭の方角から聞こえてきた元気な声に、スオウは書架にめぐらせていた指先をはたと休めたが、すぐにクレイダーマンの隠した品々の捜索へと戻った。彼女とルイの調べによって、複数の隠し場所のすべてが明らかとされた。恐喝の種となった品と揺すられた宝を、本来の主の元へ返し、クレイダーマンの罪を白日の下に晒してやらねばならない。
 庭ではケインが麻袋を取りだしたようだ。ちらりちらりとクレイダーマンを見遣りながら、楽しげに輸送の手立てを講じている。
「荷物をどうやって運ぶかな〜」
 だが、その前に、クレイダーマンはレグルスに引きずられて建物の影に姿を消した。そこから聞こえてきたのは、「額に肉!」なる言葉であるとか、「肉だけは勘弁してください」といった悲鳴。
 閃いた、といった様子を輝く瞳にありありと浮かべると、アールはクレイダーマンが姿を消した壁の影へと自らも歩いていった。彼女は悪漢にこう言ったようだ。
「もちろん君は、恥ずかしいものやら情熱的なものやら晒されてもよいのだね、クレイダーマン?」
 子供でもそんな声はあげないだろうといった悲鳴の後、クレイダーマンの身体が壁の裏側から転がりでた。彼の体躯からは、毛という毛がすべて失われていた。何やらべとべとした物体を手にして、角の向こうから現れたレグルスは、満足げな様子で言った。
「餞別だ、檻のなかへ持っていきな!」
 ――モンブランの上に変なもん、ブラ〜ン
 ――りんごの鐘がなった、りんご〜ん♪


マスター:水原曜 紹介ページ
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参加者:10人
作成日:2007/02/18
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