【キーゼルの誕生日】硝子工房〜とんぼ玉



<オープニング>


「そういえば、もうじきキーゼルさんの誕生日ね」
 と、リボンの紋章術士・エルル(a90019)が言ったのは、とある冬の日のことだった。
「そうですね〜。もうすぐ31歳なのです〜♪」
 その言葉に、無邪気に笑うのはエルフの重騎士・ノエル(a90260)。人によっては、大きく心を抉られそうなセリフを、満面の笑みで告げる。
「ああ、そうか。もう2月か……早いなぁ」
 とはいえ、キーゼルはそこまで繊細ではなかったようだ。しみじみ呟くキーゼルの姿に、今年の誕生日はどうするの? とエルルが聞けば。
「さあ、まだ考えてなかったけど……ああ、そういえば」
 ふと何か思い出した様子で、硝子工房に行ってみようかな、と続けるキーゼル。
「知り合いから、来ないかって誘われてね」
 キーゼルの古い知り合いが営んでいるという工房は、暇な時期には硝子作りを体験させてくれるのだという。最近は、とんぼ玉なんかを作ってるから、暇があれば来てみないか……なんて知らせが来たらしい。
「とんぼ玉?」
 とんぼの形なのでしょーか? と首を傾げるノエルに、キーゼルは要するにガラスの玉だと教える。
「紐を通して、お守りみたいに出来るのよね。とんぼ玉かぁ……綺麗だろうなぁ……」
 うっとりするエルルに、キーゼルが苦笑しながら「一緒に行くかい?」と誘えば、「いいの!?」と嬉しそうに頷き。
「ボクもいいですか?」
「興味があるならね。せっかくだから他にも誘って、みんなで出かけようか」
 大勢で、何か物を作るというのは、きっと楽しいだろうから……と、そうキーゼルは呟くと、出かける準備を整えながら、冒険者達に声をかけて回るのだった。

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参加者
NPC:ストライダーの霊査士・キーゼル(a90046)



<リプレイ>

●硝子工房へようこそ!
 2月9日。
 キーゼルが誕生日を迎えたその日、総勢19人の冒険者が硝子工房へ向かおうとしていた。
「キーゼルさんこんにちは。新年会振りですね」
 でも何だか、随分長い間会っていなかった気がします、なんて笑いながら挨拶するのは、深緋風籟・ズュースカイト(a19010)。
「1ヶ月ってのは、長く感じる時もあるし、短く感じる時もあるし……だからかな?」
 その言葉に、同じように笑みを浮かべつつ返すキーゼル。
「キーゼルさん、お誕生日おめでとう御座います♪」
 続けて近付いたのは、幸せを求めし白き鷹使い・シャンナ(a00062)。そう告げながら、にっこり笑いかける。
「キーゼルお兄ちゃん、31歳のお誕生日おめでとうございますぅ♪ これからの一年、たくさんいい事がありますようになのですぅ♪」
 螢舞う癒し櫻の蕾・クレア(a06802)も笑顔と共に駆け寄ると、そうキーゼルを見上げて「キーゼルお兄ちゃんとお出かけするのは久しぶりなので、凄く楽しみですぅ」とわくわくした様子で続ける。
「硝子工房で、オリジナルのとんぼ玉を作れるんですよね? 自分で作るのに挑戦できるなんて、凄い体験です♪」
 その言葉にシャンナも「ついつい熱中し過ぎちゃいそうです」なんて苦笑する。どうやら彼女らは、とんぼ玉作りが楽しみで仕方ないようだ。
「初めまして、セドナと申します。キーゼルさん、お誕生日おめでとうございます」
 そんな彼女らの後ろから近付いてきて、一礼するのは孤界狐嘯・セドナ(a30181)。今回の誘いへの礼を兼ねて、祝いの言葉を贈る彼に、キーゼルは「わざわざ、丁寧にありがとう」と返す。
「そっかぁ……はとこの子も、もう31歳か……」
 そんな様子を少しはなれた場所で見つつ、月日が流れるのは色々と早いものだと、そうしみじみ呟いているのは蒼の閃剣・シュウ(a00014)。
 最初に出会った頃から、もう何年も経つ。そしてシュウ自身も、来月になれば30歳を迎えるとあって、何かと色々感慨深いようだ。
「誕生日おめでとう、今日はお招きありがとう」
 そんなシュウの脇を通りつつ、キーゼルに近付いた紅い魔女・ババロア(a09938)もお祝いを告げると、そのまま懐から、羊皮紙の束を取り出して。
「という訳で、いつもお疲れのキーゼルさんには『肩たたき券』をプレゼントよ」
 そうにこやかに差し出した。ちなみに5枚1組、今すぐでも使用OKである。
「これはまた……。ま、それじゃあ、後で使わせて貰おうかな」
 肩たたき券は想定外だったらしいが、そこそこキーゼルの好みには合っていたらしい。苦笑しながら受け取った束をしまう。
「あ、ノエル君もこんにちは。元気?」
 一方ババロアはノエルに気付くと、そう近付いて。その手を取ると、元気かを確かめるように、繋いだ両手をぶんぶん上下に振り回す。
「はい、元気なのですよ〜」
 そう笑うノエル。2人の挨拶の様子を見やりつつ、キーゼルは「それじゃあ、そろそろ行こうか」と皆を促した。

●挑戦、とんぼ玉製作!
「ここが硝子工房ですのね」
 到着した工房の入口を、そう琥珀色の令嬢・リーザ(a52806)は見渡した。
 とんぼ玉を見た事はあるが、自分の手で作るなんて初めてのこと。
 勿論、硝子工房なんて場所に来るのも生まれて初めてで……わくわくとした期待と、緊張感の入り混じった胸に、リーザは無意識のうちに両手を当てる。
「そんなに気負わなくても大丈夫さ。ああ、こっちが、ここの工房主だよ」
 リーザの様子に声をかけつつ、キーゼルは1人の男性を紹介する。彼はにこやかに冒険者達に挨拶すると、分からない事は何でも教えるから気軽に聞いて欲しいと、そう皆を案内する。
「クー、作り方はお姉ちゃんがしっかり教えたげるね♪」
「メイ姉って、ちゃんとお姉ちゃんだね」
 メロメロドラマティック・クール(a09477)の手を引きながら、ガラスの獣・メイノリア(a05919)が振り返ると、クールは思わずそう零した。
 クールの言葉に、やっとお姉ちゃんらしいところを見せられたとメイノリアは喜ぶと、続けて「クー、作り方はお姉ちゃんがしっかり教えたげるね♪」なんて笑う。
 どうやらメイノリアの耳には、クールがぼそっと「こういう時だけね」と呟いたのは、幸か不幸か聞こえていなかったらしい。
「まずは、どんなとんぼ玉にするか、だよねー……」
 作業室の中に入ったズュースカイトは、色ガラスを眺めながら考える。
 そういえば、新年会で食べたロールケーキの苺が綺麗だったから、そんなとんぼ玉が作れたらいいかも……なんて思案しつつ、ふと、ガラスを選ぼうとしているキーゼルの姿を目にすると。
(「あ、あのシャツの色……それに……うん、いいかも」)
 ズュースカイトは何かを思いついた様子で頷くと、2つの色ガラスを手にする。
「まあ。とんぼ玉作りって、あまり難しくありませんのね」
 一方、工房主から簡単に手順を教わったリーザは、それならば自分でも大丈夫そうだと頷いて。早速、硝子を手にする。
「たった一つのオリジナルのとんぼ玉……素敵ですね。心を篭めて作ったら、エルルさんのおっしゃる様なお守りになりそうです」
「ええ、きっとなるわよ。だから頑張って作りましょう」
 赤い硝子に手を伸ばす白銀の紋章術士・マリー(a57776)の言葉に頷くエルル。そう互いに声を掛け合いつつ、思い思いの硝子を取る。
「この色、綺麗……」
 白銀の紡ぎ手・フォウ(a61549)は青色の硝子を選んだ。
 自分が今、ちょっと緊張気味なのは自覚している。それでも、綺麗なとんぼ玉が作れるように精一杯頑張ろうと、そうフォウは誓うと、詳しい手順を教わる為に、工房主の元へ向かう。
「まずは、これを丸くしなくちゃですね」
 シャンナは他の者達と一緒に炉へ近付くと、少しずつ硝子を温め始める。
 やがて柔らかくなった硝子を反対側の棒に巻きつけ、丁寧に形を整えていく。
「うわぁ、こうやって作るんだね」
 メイノリアの手元を見つつ、クールは感嘆の声を上げる。それを真似するように作業を始めるクールだが。
「……クー、火使うから、そんなに近づくと危ないよ?」
「そ、そう?」
 メイノリアから忠告されると、何歩か下がって作業を再開する。
「丸くするのが難しいと聞きましたが……」
「大丈夫。焦らず落ち着いて、少しずつ進めれば大丈夫です」
 工房主から教わっていたセドナは、その言葉に少しだけ緊張をほぐすと、とんぼ玉の形を整える。
 あの人にプレゼントする為の物だから、上手に出来るように……。
 真剣な眼差しと共に、セドナは両手を動かす。
「……たまには、物作りも楽しいな」
 斬風の黒琥・ウォーレン(a01908)は、そう形を整え終わったとんぼ玉を見やった。
 形が出来たなら、一呼吸置いて、今度は模様を付ける番だ。
「シンプルな物もいいが……少し凝ってみるか」
 どんな模様を作り上げるか想像しながら、ウォーレンは呟く。
 ……いつも、世話や心配をかけている感謝を込めて、贈りたいと考えたその相手には、きっと、そういった物の方が似合うだろうし、喜ぶだろうから。
 そうウォーレンはイメージを固めると、模様を付けるための色ガラスを手に、再び炉へと近付く。
 ゆっくりと、慎重に手元を操り、徐々に表面に模様を加えていく。
「こうでしょうか?」
 フォウも工房主の側で、慎重に色ガラスを温める。心配そうに確認するフォウの様子を受けてか、工房主からのアドバイスも、とても丁寧だ。それをしっかり聞きながらのフォウの作業は、初々しいながらも、確実に進んでいる。
「できましたわ……!」
 琥珀色のとんぼ玉を作ったリーザは、更に連ねて飾りにしようと、とんぼ玉作りを続ける。
「こう……いや、こうか……?」
 一方、とても真剣な表情で作業を進めているのは、依頼依存症・ノリス(a42975)。
 ただ眺めるだけにしようか。それとも剣の飾りにしようか……最初はそんな事を考えていたノリスだが、いざ作業が始まると、すっかりそちらに熱中してしまい、今はただ無心に模様を加えている。
「こうして……こう……」
 ノリスに負けず劣らず、温かき風の便り・ミヤクサ(a33619)も真剣な眼差し。彼女はピンクの小さな花びらを混ぜて、ちょっと変わったとんぼ玉を作ろうとしている。
「ふぅ……ああ、そういえば」
 ガラスを巻きつけて、花びらをくわえて……その繰り返しで、とんぼ玉作りを進めていく。
「お、思ったより難しいです……どうでしょう、桜の花に見えるでしょうか?」
「どれ? ああ、大丈夫だよ。ちゃんと桜だって分かる」
 想像よりも大変な工程に、マリーは心配そうな視線をキーゼルに向ける。作業の合間に覗き込んだキーゼルは、そう1つ頷き返す。
「キーゼルお兄ちゃん、これはどうですぅ?」
 八重桜をイメージした模様を刻んでいたクレアの問いかけには、もう少し大きめに模様を付けた方が良いかもしれないね、なんてアドバイスをしていく。
「さてと……僕の方は、こんなものかな」
 その間に、キーゼルはとんぼ玉を完成させる。あとは冷めるまで小休止、と炉を離れれば、ハンカチが控えめに差し出される。
「えと、あの、よろしければ……」
「ああ、ありがとう。悪いね、借りるよ」
 手の主は、微笑みの風を歌う者・メルヴィル(a02418)だ。作業中に浮かんだ汗を拭う為に、と出されたそれを、キーゼルは有難く受け取る。
「キーゼルさんは、お守りにされるおつもりでしょうか?」
「そうだね、紐を通して持ち歩こうかと思ってたところ」
「えと、でしたら……」
 尋ねたメルヴィルは、その返事に、良ければ自分の物もと申し出る。
 1つよりも、2つ。一緒に、自分の玉も結んで貰えたなら……。
「……それじゃあ、君の分が無くなるだろ?」
 その事をキーゼルは気にしたようだったが、微笑むメルヴィルの様子に、「じゃあ、誕生日のお祝いって事で、有難く貰っておこうかな」と呟いた。

●とんぼ玉が完成した後は……
 そんなこんなで、無事とんぼ玉作りを終えた冒険者達は、お礼と共に工房を後にした。
「実は、近くの酒場をお借りしてあるんです。火の近くの作業で、きっと皆さん疲れているでしょうから」
 そう呼びかけたのは、楽風の・ニューラ(a00126)。
 彼女は、とんぼ作りの合間に近所を回り、その手配を行っていたのだ。休憩や補給は勿論……キーゼルのお祝いの場を確保する為に。
「じゃあ、少し休んでから帰ることにしようか」
 折角だからと足を向ければ、そこには既に料理と飲み物が並ぶ。ニューラが調達した物の他、メルヴィルが前夜のうちに準備し、持って来ていたケーキも置かれている。
「……わざわざ良かったのに」
 それを見たキーゼルは苦笑しながらも、ありがとうと感謝の言葉を返す。
「丁度いい」
 ノリスは、懐から小さな小瓶を取り出す。
「お誕生日おめでとう。貴方の生きる日々が、この輝く粒を無限に集めたような、喜びのあるものになるように」
 差し出したのは硝子の小瓶。中には小さな粒が詰められ、キラキラと光っている。
 タイミングを見計らい、渡そうとしていたプレゼントだ。
「俺からは、これを。……改めて、誕生日おめでとうございます。一年が良き物となるよう、ささやかながら祈らせていただきますね」
 ズュースカイトは、簡単にラッピングした箱を手渡す。中身は、さっき作ったばかりの、とんぼ玉。
「へえ、いい色だね……ありがとう」
「あ、先を越されちゃいましたね」
 開けた中身を手にし、気に入った様子で目を細めるキーゼル。そこに、シャンナもとんぼ玉を差し出す。霊視の腕輪の飾りに使ってください、と言い添えると「そうだね、どの辺りが良いかな」と手首を見やりながら考え始める。
「これは、私からのプレゼントです」
 そうニューラが差し出したのは、鬱金で染められた布だ。壊れやすい宝物を包んでおくのに重宝するそうですよ、と告げると、キーゼルはその気遣いに礼を告げながら受け取る。
(「……もっとも、ここに集まった人程の宝も、そうそう無いでしょうけど」)
 そんな中、ニューラは酒場の様子を見回しながら笑んだ。
 キーゼルが大切な宝物を、いくつ持っていたとしても……きっと、こうして誕生日を祝ってくれる人達に勝る宝なんて、どこにも無いはずだ。
「じゃあ乾杯しましょう」
「はい!」
「グラス、回すね」
 そうして全員がグラスを手を取り、乾杯の声が酒場に響くと……キーゼルの誕生日を祝う、ささやかなパーティが始まるのだった。


マスター:七海真砂 紹介ページ
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参加者:16人
作成日:2007/02/18
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