【P.M.】気の短い春告鳥



<オープニング>


●Pretty Monsters.
 モンスター。人々の生活や命を脅かす、恐るべき存在。
 しかし、そんなモンスターの中にも、時には攻撃する事に躊躇してしまうような奴、一度、思うさま抱きしめてみたいと思うような可愛い奴も現れる。
 だが、その円らな瞳が心に訴えてきても、そのもふもふの誘惑に負けそうになっても、決して屈してはならない。それらは、倒すべき存在、『モンスター』なのだから。

●気は早くない
 ほー、ほけきょ
「あらあら、もう春告鳥が鳴く頃なのね。どうりで暖かい筈だわ」
「ねー、ママー?」
 ほー、ほけきょ
「思い出すわぁ、あの人と出会ったのもそう、丁度これぐらいの時期で……」
「ママってばぁ! 鳥さん、道を塞いでるよ?」
「んもう、それが何……え、塞いでる?」
 母娘の前に突如と現れた春告鳥は、黒い目をきらりと光らせて、そして唐突に――
 けきょっけきょけきょーっ!

 始め、霊査士は眉間に皺を寄せていた。次になんだか和んだ表情になった後、再び頭上に『?』を飛ばし、そして最終的にやっぱり
「……って、ひぁ!?」
 椅子ごと真後ろにこけた。が、珍しいことに素早く起き上がると、慌てて椅子等散らばったものを片付けて座り直す。そして、仕事を探しに訪れた冒険者達を何人か呼び止め、こう切り出した。
「とても気の短い鳥型モンスターが出現したんです。今は見晴らしのいい丘に敷かれた街道、そこに堂々と居座っています」
 若葉色の羽と美しい鳴き声、そしてくるりと丸くて黒いつぶらな瞳。これで手の平サイズならさぞ可愛かっただろうと思われる。
「攻撃する前に追い払おうと試みます。能力もそんな感じですね」
 『ほーほけきょ』と鳴けばファナティックソングに酷似した出血、混乱、回復不能に、『けきょ!』と鳴けば麻痺させる。更に、近づけば猛烈な羽ばたきで遠ざけようとするので、まず攻撃が当たる範囲にまで接近するのが困難だろう。
「気が短いので、接近にもたつけば逃げてしまいます。とても身軽なのも注意すべき点ですね」
 お約束的に体力は少ない。また攻撃力も高くはない為に、一度接近できれば討伐は難しくないだろう、と霊査士は言った。最後に冒険者達一人ひとりの目を見て、深く頭を下げる。
「どうかお気をつけて。討伐、宜しくお願いします」

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参加者
牡丹色の舞闘華・ヤシロ(a37005)
食物連鎖の底辺っぽい・ガルーラ(a39452)
夢・リーファン(a42360)
煌蒼の癒風・キララ(a45410)
真鍮の剣・クリスマス(a48312)
残響ノイズ・リュート(a48849)
上を向いて胸を張って生きたい・クークルゥ(a49286)
天地に響く歌声と咆哮・フローラ(a58965)


<リプレイ>

●鳥の予感
 寒さがほんのり緩んだ小春日和。どこまでも続くなだらかな丘に陽光が降り注ぐ、遠出にはぴったりの日だった。吹き抜ける風には未だ冷たさが残り、そけだけが今の季節を思い出させる。
「良い天気ですわね」
 気持ちのいい日和に、二つの声を持つ女・フローラ(a58965)は思わず目を細めた。艶かしい仕草で桜色の唇に手を当てて、ふぅと息を吐き出す。そうですねぇと同意しながら進む、上を向いて胸を張って生きたい・クークルゥ(a49286)も恵みを齎す光を浴びて、心なしか足取りが軽い。
「ほけきょって聞くと、春が来たんだな〜ってほのぼのするんだけど」
 このほけきょはいただけないよ〜、と牡丹色の舞闘華・ヤシロ(a37005)は言う。普通の鶯ならば、風物詩として人々に愛されたのだろうけれど、相手はモンスターだ。幾ら可愛らしくても手加減は出来ない、と真鍮の剣・クリスマス(a48312)も思う。
「街道を塞ぐって、どれくらいの大きさなんだろうねー?」
 限りなく球に近い体型の超球状生命体・ガルーラ(a39452)は、体全体を揺らして歩きつつ、首を傾げた。同時にふと、せめて変異動物なら穏便に終わったかもしれないのに、と残念に思う。
「両腕広げたぐらいの、抱きついて気持ち良さそうな大きさなら嬉し……ハッ」
 ガルーラの問いに答えようとした煌蒼の癒風・キララ(a45410)は、途中から違う方向に意識が飛んでいた事に気付いて、ぶんぶん首を振った。気を引き締めようと、両手で軽く自分の頬を叩く。
 気合を入れ直すキララの横で、同じように葛藤するのは世界の猫飯を食べつくすぞ・リュート(a48849)だった。
(「試練、そうこれは試練……っ! 打ち克つんだ、俺!」)
 春は芽吹きの、恋の、試練の季節――らしい。できる事ならもふもふしたいなぁとか、そんな願望を抑えて、僅かばかり歩みを速めた。
 春を告げる鳥の鳴き声を聞きながら、縁側でお茶でも飲めれば良かったけれど、と蒼龍之夢・リーファン(a42360)は考えた。相手がモンスターなのが悔やまれる。
(「とはいえ、可愛いっつっても限度があるっす」)
 見た目が良くても、害を為すなら可愛く思えないのだ。それだったら、チキンレッグ達をもふもふやっていた方が良いかもしれない。
「ね、ガルーラ。ね、クークルゥ」
「な、なんか嫌な予感がするんだよー」
「わわ、私が何かっ!?」
 そんな事を思いながら声をかけたら、勘で察したのか数歩距離を置かれた。惜しい、と冗談混じりで呟いて、視線を上げると
「おっ、目標発見ー!」
 リュートの指差す方、逃げも隠れもせずに、冒険者達を待ち構えるモンスターの姿が、あった。

●羽ばたきの予感
「まずは、僕が気を惹いてみるねー」
 そう宣言して、ガルーラは鎧進化をかけた。瞬く間に変化したその形状は、まるで
「……まりも?」
「違うよ、鳥だよー。仲間っぽく見えるでしょー?」
 なんだか誇らしげに胸を張るガルーラ。それ以前に、モンスターが他のモンスターを味方と認識することがあるのかどうかとか、やっぱりそれはまりもにしか見えないとか、様々な想い(ツッコミ)が他の冒険者らの胸に去来したが、当人は何も気付かずさっさと敵に近づいていく。
「ま、まぁ鎧強度も増加してるし大丈夫、かな?」
「……だと良いんですけど」
 ヤシロとクリスマスは半ば苦笑しながらそんな会話を交わし、仲間達と共にガルーラの後ろを追った。
「ぴー!」
『あー……』
 結果は、失敗。吹き飛ばされて転倒し、そのまま後方に転がり続けていたガルーラは、追いついた仲間達によって漸く止められた。
「き、気を取り直して」
「そーっすね。じゃあ援護するっす!」
 リーファンが静謐の祈りを捧げる。広がる祈りは冒険者達に幸いを齎す。走り出たヤシロの両手から、蜘蛛糸が放たれた。糸は白い軌跡を残しながら飛び、モンスターの体を縛り付ける。
『きょっ!?』
 口惜しそうにもがくモンスター。その間、ガルーラはイリュージョンステップを、クリスマスは殲術の構えを取る。身動きの取れないモンスターに、フローラは緑の業火を放った。炎は確かにモンスターの体を捉え、身を焼く。
「一撃、お見舞いっす!」
「可愛いけど……倒れてね!」
 リーファンが白刃を抜き放ち達人の一撃を仕掛ける。同時に、ヤシロが別方向から一気に近接して斬鉄蹴をお見舞いした。
「今度生まれ変わってくるのなら、もちっと小さくなってこいよっ!!」
 後方に回り込んだリュートが火球を放ち、もがき続けるモンスターに更なるダメージを与える。
「ごめんね、可愛いんだけど……」
 寂しげな目をしたキララだが、飛んだ白輝の槍は容赦なくモンスターの身を貫いた。続けて前に出たガルーラの華麗な剣戟が、畳み掛けるように身を断つ。
『きょーっ!』
 とその時、拘束を解いたモンスターが反撃に出た。正面に居る冒険者達に向け、猛烈な羽ばたきを繰り出す。
「二度は利かないよー!」
「……っ! これしきっ!」
 ガルーラは見事にその場で踏ん張ったが、他の正面を担当していた冒険者は吹き飛ばされた。ヤシロは上手く着地し、ダメージを減らしたが――ここで誤算が一つ。
「全体攻撃ですか……っ!」
 傷を押さえて、苦々しげにクリスマスが言う。考えてみれば、羽ばたきが単体攻撃だという保証は無かった。冒険者の持つアビリティに似ていると感じた事が、目を曇らせたのかもしれない。
 モンスターは相当疲弊しているようだったが、その目に宿る戦闘意欲は未だ健在のようだ。

●声の予感
 反省は後回しにして、クリスマスがスーパースポットライトを灯す。爛々と輝く光に、モンスターが向き直った。そこに合わせるように接近したクークルゥが達人の一撃を放つ。
「ごめんなさいぃ! 当ってください!」
 タイミングは完璧だったが、手応えは鈍かった。傷付いた仲間達に、フローラが癒しの光を投げかける。
 再びリーファンの蛮刀が閃いた。しかし、今度は見切られる。ぐるりと丸い瞳を回したモンスターは、息を吸い込むように胸を反らせた。
『ほー、ほけきょっ!』
 響き渡った声とそれに伴う衝撃波が冒険者達を襲う。幸運にもバッドステータスを食らった者はいなかったが、受けたダメージは軽くない。ヤシロはこれ以上やらせまいと、二度目の束縛の糸を放った。届くかに見えた糸は、しかし微妙に狙いが逸れてモンスターの足元に。
「みんな無事かっ」
「すぐに癒すわ!」
 声直撃の難を逃れたリュートがヒーリングウェーブを放ち、近くの仲間の傷を癒す。続き、ギリギリまで前に進み出たキララが、正面担当の仲間達へと癒しを届けた。見た目にそぐわぬ身軽さで前方に躍り出たガルーラの、剣が舞い赤い花弁を散らせる。会心の一撃となった攻撃に、ついにモンスターはふらつき始めた。
「もう、お休みなさい……!」
 クリスマスの攻撃が、確かにモンスターの命を削り取る。フローラの放った緑の業火は最後の力を振り絞って回避したが、直後に駆けたクークルゥの大鉈に、倒れた。
『ほー……』
 青い空を寂しそうに見上げて目を細めたモンスターは、そのまま静かに眼を閉じると――砂塵と化して、柔らかな風に吹き散らされていった。

●春の予感
「消えちまったっすねぇ……」
「潔い、って言ったらそうだけどな」
 丘の上、冒険者達は各々の武器を納めながら、モンスターの消えたその場所を見つめた。
「好きだったのでしょうか、春」
「そうかも知れません。春を待ちきれなかったのかも」
 フローラがしんみりと呟けば、クークルゥが静かに同意した。
 ガルーラが額を拭って、大きく息を吐く。
「色んな意味で手強い相手だったよー」
 特に見た目ー、と小さく付け足す。クリスマスは巨大剣をしっかりと背負いながら、誰も大怪我する事無く終えられた事に安堵する。
「終わったー! これでここは一安心だね」
「本当に。……あ、ねぇみんな見て」
 ヤシロもほっと息を吐く。その時、キララが街道に生えた木を指差した。
 冒険者達が注目した先、そこには一輪の小さな花が、春を待ちきれずに咲いていた――。


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作成日:2007/03/20
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