つきあかり、しろく綻ぶは



<オープニング>


 しんと冷えた夜更け、銀色の月が昇るころ。
 甘い香りをただよわせ、白い花弁がやわらかに開く。
 山の中に現れた小さな花畑は、冬の夜、月の昇る間だけに清楚な花を広げた。まるで精一杯のお洒落をしたものの、その姿を見せるのを恥ずかしがる乙女のように、ひっそりと。
 その花の蜜は、霜の降りるような夜に甘さを増して、稀な甘露に変わるという。
 こごえた空気の中、村の家々の木戸が開き、少女達がつどう。
 少女達は皆目の詰まった毛織の装束に大判のショールを巻いて、灯火を手にしずかに花畑へと向かって歩き始める。
 囁きは軽やかに、くすくすと小さな笑い声があがり、吐き出す息の白さに寒さを感じながらも、特別に許された子供だけの夜の散歩に気持ちは浮き立つ。

 山の上。少女達は手にした籐籠から素焼きの小瓶を取り出した。花畑へ座ると、白い花をそっと揺らし、蜜を集める。
 指先がかじかんで、時折に花を掴み損ねてしまう。そんな時は母親の持たせてくれた温石を握って指先を暖める。布を通して伝わる優しいぬくもりは、母の優しい手のよう。
 蜜を集め終わると、ふたたび列をなし、小さな囁きと笑い声を漏らしながら、帰途につく。
 銀色の光が、静かにそれを見下ろしていた。

●つきあかり、しろく綻ぶは
「依頼だ」
 いつものテーブルで、いつものように紫の瞳の霊査士が手帳を片手に話し出す。
「とある山に、霜の降りる冷たい夜、月の下でだけ咲く変わった花があるという。その花の蜜は、とても甘く優しい香りがする事で、好事家が求める事もあるそうだ。
 その花畑を管理している村の風習で、最初の蜜を採るのは成人前の娘のみというのがあってな。それは既に済んでいるのだが……」

 ある日、蜜を集めに行った村人が、山を登って花畑へと近づいた。
 月光の下、明かりすら必要ない程の明るい花畑は青味を帯びた幻想的な風景を見せている。聞こえるのは風の音と、それに揺れる草花の擦れる音。村人は常のように花を傷めないようにと、注意深く花畑へ近づく。
 そのとき……足元をかすめ小さな影が過ぎった。蜜を求めに来た何かの小動物だろうと気にせず更に花畑へ近づこうとし。
 風を切るように鋭い音がした。柔軟な鞭のようなものが、足元近くを攫う。ぎいっと悲鳴のような鳴き声が上がり、再び鋭い音と共に鞭状のなにかが、花畑へ没す。
 ……つかのま、血の匂いが、清涼な花の香りの中に混じり……。村人は異変を確信して、すぐさまその場を離れた。

「……花畑におかしなもの混じっているとの事で、霊視したところ、確かに変異植物が根付いている事が分かった。
 それは花の形をしている。天辺に周囲の草花に似た白い花を付けて、人の胴程もある巨体を土中に埋め、獲物が通りかかるのを待っている。
 それは夜間のみ動き、獲物が近づくと鞭状の蔓を伸ばして拘束し、捕食するようだ。幾本もある蔓には棘があり、触れると毒を食らう。本体は動かぬとはいえ、近付けば花から毒性のガスと特殊な液を吐き出して攻撃するから、ある程度は反撃を覚悟しなければならないだろう。
 敵を見つけるならば、蔓の収束する所、放たれる場所を探せ。
 ……そして一番重要な事だが……。
 依頼主は花畑を出来るだけ傷つけないように戦って欲しいと願っている。
 全く花畑へ踏み入らないというのは無理であるが、その辺りを汲み取って、上手くやって欲しい」

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参加者
求道者・ギー(a00041)
幾穣望・イングリド(a03908)
降りそそぐ木漏れ日・スタイン(a04948)
緑薔薇さま・エレナ(a06559)
冷厳たる十三夜月・アキトキ(a06986)
不言の雄姿・バルバロス(a18154)
天高く雲は流る・シュコウ(a33109)
刀将・コジュウロウ(a34599)
幸福の記憶・ユキノシン(a37388)
騎士人形・レベッカ(a47078)
夢見る少女はウシより強い・ユナ(a48571)
花酔い・ラシェット(a53996)


<リプレイ>

「木は森に、花は花畑に……隠れる、か。」
 天高く雲は流る・シュコウ(a33109)はともすれば幼げに見える顔を曇らせ、ぽつりと小さく呟いた。山を渡る風は、昼にも未だ冷たさを残している。
 彼は求道者・ギー(a00041)、不言の雄姿・バルバロス(a18154)と共に、変異植物の所在を示すものは無いかと花の密集していない所を探すが、月夜に咲く花は白い花弁をかたく閉じ、ちいさく縮こまった姿は周囲の草に紛れても見え……。花畑はまるで草原のように青く、植生から見るにしても、知識が不足して推測は容易に為らず。
「ここで確りと確認出来れば……」
 月下の戦いも楽に為ろう程にと、ギーは重傷に鈍く痛む身を周囲に気取らせないよう殊更気丈に振る舞いながら、風渡る風景にやや重たげな溜息を吐いた。
「……案外、荒れてないんやな。地元の人の手入れのお陰やろか」
 真夜中に降り積もる牡丹雪・ユキノシン(a37388)は深い青の瞳で遠眼鏡を覗き込むが、青く茂る一面は一見してどこも変わらずに……むしろ、おだやかにも見えて。

 皆がそうして花畑を検分する間に、長い黒髪を風に靡かせ、仮初の帳・ラシェット(a53996) は木々の生える小道へ向けて獣達に歌い掛け、姿を現した彼らに質問する。『夜におかしな動きをする花を知らないか』、と。
 小動物達は『いるよ』 と、そこははっきり答えるが……。
 どうやら場所が知れる程近付いた者は皆変異植物の餌食となっているらしく、はっきりした場所は掴めなかった。
「まあ、仕方ないわね……小さなあなた達が分かるぐらいの距離じゃ、食べられてしまうのだろうから」

「花のトゲも、あって悪いものじゃないけれど……」
 皆の捜索に付き合いながら、幾穣望・イングリド(a03908)はやりすぎじゃありませんかしらと、伝え聞く変異植物の多彩な攻撃に呆れたように言い。
「けれど、綺麗な場所です」
 騎士人形・レベッカ(a47078)は穏やかな表情で青空を見上げた。夜ともなれば月が上がり、宝石のようにきらきらと星が散りばめられた空が見られるのだろう。そして足元には白い花が一斉に咲き誇る……。想像するに、夢のように美しい風景だ。
「まあ、わたくしも動かない普通の花は気になりますけれど」
 イングリドもそこは期待する所であり、素直に同意する。そうして二人が話していると、ふんわりと食欲のそそる匂いが漂ってきた。
「昼からあまり根を詰めますと夜に障りますわ。お昼の用意をしましたから、少し手を休めませんか?」
 見れば、木陰に緑薔薇さま・エレナ(a06559)が弁当を広げていた。にこにこと笑顔を絶やさぬ彼女は足元の気になる小石などを退けていたらしく、その側にこんもりと小石の山が出来ている。

 食事休憩を取り、再度冒険者は花畑の捜索を開始した。
「さて、射程、位置……こんな所か」
 刀将・コジュウロウ(a34599)は精悍な顔を引き締めて花畑をぐるりと巡り、花畑の構造と射程をしっかりと頭に叩き込む。穏やかな円形を描く花畑は、今は葉の青さばかりが目立つ。大きさを考慮すれば射程は充分に確保出来ようが、実地で見て確認する事が出来るならば、より正確に戦いに反映出来る筈だ。

「この花畑の土壌が良かったのでしょうか?」
 稀なる花を咲かせ、そして変異植物までもその中に隠して……小さな花畑の生命力に感嘆を覚え。降りそそぐ木漏れ日・スタイン(a04948)は、周囲を伺うように遠眼鏡を目元に宛がう。視線を滑らせるように移して……気に掛かるのは、青い花畑に、何かが這いずったような跡が見える事。
「……月の元でしか咲かぬ花、か。」
 さぞかし綺麗なのだろうと冷厳たる十三夜月・アキトキ(a06986)は思う。何か変わった所はないかと、地面に片膝をつけるように身を屈めた。……そうしてじっと目を凝らすと、やがて花畑の中にほんの少しだけ盛り上がるようにして高低が出来ている場所を見つける。
「あれは……」
「どうしました、アキトキさん」
 青いリボンを風にそよがせ、スタインが声を掛ける。アキトキは気になる高低差があるのだとある一点を指差した。
「周囲の様子といい……あの場所で間違い無いでしょう」
 今は青い葉を茂らせ、風に揺れるだけの小さな花畑。僅かに盛り上がり、這いずる跡のように削れた場所……。
 そうして見つけ出した手掛かりは、即座に皆へと伝えられた。


 赤く焼け付く様な色を見せた日が、ゆっくりと沈んでいく。
 月が昇り、しらじらとした青い光が地上に落ちる頃。
 白い花弁がやわらかに開き……青々とした草原は、清華な白色を滲ませて……花畑へ変わる。
 ふいに甘い香りが広がった。
 花畑から充分に距離を取り、木々を背に身体を休めていた冒険者達は思い思いに立ち上がると、思わぬ月光の明るさに目を細める。
「ふむ、月光にたゆたい、綻び狂ふか……」
 ギーは月を見上げて呟いた。熱を持たぬ光は、幻想的な色合いに景色を染め上げる。昼間に見た風景と何も変わらないのに、どこか馴染まぬ色を持った世界。人ならぬ身が蠢くのも道理かと、視線を花畑へ向け。
「うっわぁ〜! 月明かりの下のお花畑ってロマンティック〜。じっくり楽しむためにも、気持ち悪いのは早く伸しちゃおう!」
 夢見る少女はウシより強い・ユナ(a48571)は愛らしい顔を笑ませ、明るく皆に告げる。
 そして静かに、戦いへ向けての準備が開始される。
 まずはイングリドがぐるりと花畑の周囲を巡るように歩き、土塊の下僕を召喚しては『内側へ3歩進みなさい』 と指示。間もなく三方向から下僕が花畑へ向けて歩き出した。
 一巡目は特に何もなく。少しばかり残念そうな顔をしたイングリドは、戻って来た下僕に同じような指示を与える。
 但し、今度は6歩内側へ。
「ユナさん、シュコウさん。こちらへ」
 イングリドの調査の進み具合に合わせ、レベッカが仲間達に鎧聖光臨を掛け始めた。
「レベッカさんありがとう! よ〜し、パワーアップ!」
「それじゃ、行こうか」
 元気にユナは手を振り上げ、シュコウと共に花畑へ向かう。
 青白い光の中、全ては淡々と、予定通りに行われていく。
 それらの行動を見守りながら、エレナはリングスラッシャーの召喚を開始。
「あら? ……どこに行きますの〜」
 円盤状の衝撃波は召喚直後、エレナの呼び止める声も聞かず、宙を滑り、まっすぐに花畑へと向かっていく。
 ……直後にそれは起きた。
 ひゅんと、風を切る音が重なる。耳に痛い程次々に、青白い花畑から怪異なるものの手なる蔓が、宙へと伸ばされた。
 乾いた音を立て、幾本もの蔓が伸び上がり、弧を描いて地表へと突き刺さる。白い花びらが千切れ、はらはらと宙を舞う。
 昼の調査で特定したポイントへ慎重に向かっていたシュコウは、迫り来る異音に気づいた。身体は退避にと動きそうになるが、ぐっと堪えて受身を取り、その場で幾本もの蔓に打たれた。足元の花を気遣ったのだ。
「くっ!」
 いばらの雨は強かに、花を踏まないようにと足元を気にしながら進んでいたユナをも打った。
「きゃあっ! いった〜い!」
 ユナは涙目で抗議する。
 花畑へ侵入していたのは二人だけではない。中心へと調査に向かった下僕と円盤状の衝撃波も、蔓によりその身を穿たれる。土塊は砕かれるようにして形を崩し、衝撃波で出来たそれは消失を逃れたものの全く無事とはいかない。
 花畑の中、僅かに盛り上がった土色の身体の上、白い花は清華に咲く。その擬態は青い月光に輝く周囲の花を映して……しかし、本体に連なる触手めいた蔓が奇怪な動きを見せ、敵を、獲物を捕まえるべくぞろりと蠢くさまはあまりに異様。
 正体を顕にした変異植物は、自在に蔓を操り、冒険者をも捕食すべく……その貪欲な性質で蔓を伸ばした。

「まあ、随分と乱暴ですこと。可哀想な下僕達の敵は、あたくしが取りますわ」
 さえざえとした青い光に相応しく、褐色の滑らかな頬に冷ややかな笑みを湛えたイングリドは変異植物の居るであろう花畑の一角を見据えた。
 捜索を見守っていた者達は、異変に気付くと即座に待機位置より飛び出した。花畑の外縁へ並ぶのはブーメランを持つエレナ、弓持つギーとアキトキ、武器こそリーチは短いが、長距離アビリティを使用してのバルバロス、コジュウロウ、ラシェットは花畑より少しだけ距離を取って陣を展開する。回復の要であるスタイン、鎧聖にて防御の底上げを行うレベッカ、攻撃中心に拘束や回復など臨機応変な対応をするイングリドらも、同じく並び立った。
 そこからさらに離れて弓を引くユキノシンが立つ。
 花畑を踏み荒らすを嫌い、花の咲く領域に踏み込まないようにと皆距離を開ける事を選択した。畑へ踏み込んだ囮の二人も、出来うる限りは動きを抑えて花畑へ被害を与えぬように戦う事を選択する。
「ここは私が……!」
 スタインは術手袋を翳し癒しの光を広げる。花畑を包むようにして広がったそれは、雨に打たれた者達を即座に癒していった。
「今だ!」
 シュコウは傷が癒されるのを感じると、己の役目を果たすべく激しく頭上を光らせた。つられたように蔓が収束し、太い鞭となってシュコウを襲う。戒めるように巻き付いた蔓に生えた鋭い棘は、シュコウの身に毒を送り込んだ。
「シュコウ!」
 イングリドがすかさず凱歌を歌い上げると、傷は癒え、身を焼くような痛みは消えた。
 囮の役目を引き受けたシュコウの意を汲んで、間近に控えたユナはリングスラッシャーと共に本体へすかさず接近し攻撃。踏み込み、上段からの重い打ち込みが決まる
「ふふ、正体現したわね。此処にあんたの場所はないの……消えなさい」
「そこやね……逃がさへん」
 ラシェットは端麗な顔に笑みを閃かせ、軽く踏み込んで華奢な腕を一閃。衝撃波が花畑をすりぬけていく。幼さの残る美しい貌は表情を消し、ただ敵を見据え……後方でユキノシンは引き絞った弦を離し光の矢を放つ。ふたつの攻撃は鞭の収束する場所へと向かい本体を叩いた。
「見えたか、ならば往こう」
 アキトキ、ギー、バルバロスは新たな外装を増やして武器の力を引き出し、コジュウロウはイリュージョンステップで回避を高め。レベッカは鎧聖光臨を続行、ギーの鎧に力を与え、エレナは新たなリングスラッシャーを召喚した。
 シュコウは僅かに出来た隙間に手を差し込んで広げ、脱出を図る。再び攻撃の体勢を取った時、棘を持つ蔓はばらけて空へと伸び上がり、弧を描いて雨のように地へと突き刺さった。再び多くの花びらが千切れて、宙へと放り出される。
 皓々と月が照らし、青く染め上げられた世界に、甘く、甘く、花の香りが匂い立つ。
 多くの者は蔓に打たれたが、スタインはすかさず癒しの光を広げて回復する。
「まずいな……」
 それは誰の呟きであったか。胸中は皆同じであっただろう。こちらが幾ら気遣って花を踏まぬよう戦いを工夫しても、変異植物自体が周囲に遠慮ない抵抗を続ける限り、花畑への被害は増えていくばかりだ。長引かせるのは問題がある。
 ……かくなるは、多少の犠牲を覚悟しても、戦いに出るのみだ。
「弓は得意じゃないんだが……そうも言ってはいられんか」
 アキトキは呟くも、弓引く手は休めない。
「今宵は月の光に酔おうかね……それには、無粋は無用」
 ギーはその身に痛みを覚えつつも弓を引き絞り、ユキノシンと共に光の矢を放った。それは不自然にも見える軌道を描いて敵へと正確に突き立つ。
「……っ!」
 バルバロスは蔓の動きを視線で追い掛け鋭く本体を睨み据えて、逞しい腕を振るいチェインシュートを打ち出した。ラシェットとコジュウロウの衝撃波が走り、イングリドが巨大な火球を紋章より生み出す。エレナの細腕から放たれたブーメランが弧を描き、地を叩くようにして手元へ戻った。
 一斉に、そして果敢に、攻撃が繰り出されていく。力が交差し、連なり、そして圧倒する。
 時に身を毒に焼かれ、いばらの雨が降り……。
「……っく、レベッカさん、回復をお願いします!」
「レーヴァンテイン。その力を癒しに!」
 しかしその傷も、全力のスタインの癒しと、それで足りねばレベッカやイングリドが補って戦線は維持される。
 甘い甘い花の香り。白き花びらは、雪のようにはかなく宙を舞う。
「さあ、その身を熱き炎で焦がしなさい!」
 イングリドの描く紋章から生まれた火球が花畑を太陽のように明るく照らし出す。大きく膨れ上がる炎は宙へ伸びる蔓とその本体を巻き込んで地を焦がし……やがて。
 千切れた蔦は力なく地へと落ち、花が落ちた本体からは虚のような大きな穴が覗く。……それは静かに、動きを止めていた。

「……さて、このようなものかな」
「………ごめんな、こんなことしか出来ないけど」
 ギーとシュコウは、熱心に足元の土を均していた。なるべく捲れあがった土は元に戻して見たが、結局は花の命の強さを信じてみるしかない。
「エレナさん、どうしてはるんやろ」
 ユキノシンも二人を手伝い、繊細な根を傷つけないように土へと戻しながらぽつりと呟く。協力して土中から変異植物を掘り起こした後、細い肩に大きな植物を担いで彼女は皆から姿が見えないぐらいの遠くまでそれを運んで行ってしまった。念のため燃やすのだと言っていたが。
「お待たせしましたわ。随分大きな穴が開いてしまいましたけど、また根付かれるのも嫌ですものね。折角ですから、土を埋めてしまいましょうかしら?」
 花畑の外縁に姿を現したエレナは三人へとそう声を掛け、朗らかに微笑む。
「……とてもいい香りね」
 暗がりで花を触るのは良くないかしらと思い、イングリドは手をつけるのを控えていたが、仲間達が率先して動くのを見て、少しばかり原状回復の手伝いをした。手に付いた土を払い、立ち上がれば……踏みしだかれた鮮烈な青さの中にただよう甘い香りは、清々しい香気を湛えて。
「村の人に蜜を分けてもらえるように頼んでみましょうか」
 この優しい香りがする蜜はどんな味だろう。レベッカはふとそう思い、仲間へと提案する。エレナは適価を払って譲って貰えばどうかしらと返した。確かに、その方がお互い気兼ねせず遣り取り出来るかも知れない。
 月下に揺れる白い花。冒険者達の努力で、花畑の被害は最小限に抑えられた。蔓で穿たれた跡は小さな傷を其処此処に刻んだが、やがては回復出来るだけの小さなものであり、花畑へ踏み込んだ二人が成るべく動きを抑える事によって、変異植物の在った場所と、二人の立った場所以外は綺麗なものである。
「綺麗ですね」
 スタインは微笑む。稀なる景色の、その幻想的な色と香り。伝え聞くだけでは分からない感覚を心に刻むようにして。
「ああ……だが、そう長居は出来まい。そろそろ帰らねばな」
 夜露に濡れる足元。春近くとはいえ、山の上の空気は夜が更けると共に冷えたそれに変わっている。アキトキは穏やかに皆の帰還を促した。


マスター:砂伯茶由 紹介ページ
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作成日:2007/03/08
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