子猫様大作戦!



<オープニング>


 風もなく、柔らかな日差しが地面を照らす。
 そんな冬の合間の小春日和。
 ぽかぽかとひなたぼっこをするのが、何よりの幸せ。

●にゃぁ。
 ……ざわざわざわざわ。
 いつも賑やかな冒険者の酒場を、何やら異質な空気が満たしていた。
 良く言えばいつもと違う。悪く言えば浮きまくり? ……そんな感じである。
「ふむ……」
 何やら値踏みするような目線で周囲を見回しつつ、その異質な空気の発生源……紺碧の子爵・ロランは手にした陶磁のカップより優雅に茶を一口啜った。 
 ぶっちゃけイケメンである。というか。
 白を基調とした端麗な衣装に、豪奢な刺繍を施した青のガウンのような上衣。
 整った顔にお世辞にも動き易そうとは思えないその格好は、様々な装束の冒険者達が集うこの酒場でも見事に目立ちまくっていた。
 そりゃもう、皆遠巻きにして彼が次に口を開き、どんな言葉がそこから紡がれるのかを固唾を飲んで見守っている始末である。
 そんな時。
 どんがらがっしゃーん…!!
「!?」
 凄まじい音と共に扉が開き、こけつまろびつしながら酒場に入ってきた……いや、転がり込んだというべきか?……存在があった。
「……大丈夫かい?」
「……い、いたた……もう、なんであんな所に猫がおりますの?……って、あら。だ、大丈夫でしてよ。ご心配おかけして申し訳ございませんわ!」
 掛けられた聞き慣れない気遣いの声におほほ、と笑顔で取り繕い、全力で身なりを整えつつエクサントリーク・アナスタシア(a90028)はころころと笑って見せた。
(「わ、私ったらっ……こんな見目麗しい、しかも知らない殿方の前でずっこけるなんてっ……」)
 内心自らの間抜けぶりに海より激しい自己嫌悪に陥っているのは秘密である。
「いえ、目の前を猫が突然横切りまして……避けようと思いましたら偶々そこに積んであった樽にぶつかってしまいましたのよ」
 どうしたのか、と問われ、恥ずかしそうに俯きながら説明するアナスタシア。
 普通そんなものに突入はせんだろうとかツッコミどころは満載だがとりあえずそこはそれだ。
「ふむ。……猫か。そういえば私の話も猫なんだ。奇妙な縁だね」
「は?」 
 唐突にいわれた言葉に彼女のみならず、この騒ぎを見守っていた全員が首を傾げた。
「諸君は猫は好きかい?」
 そんな周りを気にも留めずそのイケメン……ロランはまた優雅に茶を啜ってから続ける。
「猫はいいね。その愛らしい仕草も、気位の高さも、たまに見せる狩人の顔も」
「そ、そうですわね……?」
 とりあえず話が見えないが、頷いてみるアナスタシア以下全員。
「だけど、彼らは天性の隠密だ。そうは思わないかい?」
 はぁ、と話を聞く冒険者達に同意を一方的に求め、ロランは何やら納得したように一人頷いた。
 良くわからないが、何かが彼の眼に適い話の続きをする気になったらしい。
「頼みたいのは、とある姫君の飼い猫の捜索だ」 
 数は8匹だけどね、とロランは平然とした顔で続ける。
「……8匹も行方不明なんですの?」
 不思議そうな顔をするアナスタシア。確かに、猫というのは色々な所に隠れるのが得意な動物ではあるが、8匹も同時にいなくなったりするものなのだろうか。
 というか、普通は8匹も飼ってたりしないだろう。
 彼の話によると、そのセイレーンのお嬢様は大層な動物好きらしい。
 普通に飼うだけでは飽き足らず、たまに外へお忍びで出かけては見つけた動物を保護(……拉致?)してきてしまうのだ。
 そんな彼女に手を焼いた両親が、彼女の目を盗んで近頃生まれた8匹の子猫を城の広大な庭園に開放してしまったらしい。
 一応食べ物はたっぷり与えた後で、首輪には鈴もついているけれど。
 お嬢様は当然激怒。あまりの剣幕に両親は泣く泣くロランに相談してきたということだった。
「まぁ、子猫だからね。いくらあの庭が広いと言ってもそう遠くには行かないだろう」
 この頃暖かいし、まだ2日ほどしか経ってないから飢えたり凍えたりはしていないだろうけどね……なにせいざとなれば隠れる所は腐るほどあるし、とロランは続ける。
「使用人達には、猫を見かければ何か餌を近くに置いておけという達しが出ている」 
「……保護せよ、ではないんですの?」
 アナスタシアが最もな疑問をぶつけた。
「ああ。姫に似たのか天性の物か、とにかく気位の高いお猫様達でね。知らない人間には近寄りもしないそうなんだ」
 ……それはまた厄介な話である。
「姫君の願いは全ての子猫達の保護だ。もちろん毛ほどの傷もつけることは許されない。それから……」
 もし彼女の眼に適う人物であれば、子猫の里親になってもらってもいいとのこと。
「とにかく、子猫を探し出して御前につれていけばいいんですのね?」
 そうそう、簡単だろう?と頷くイケメン。
「優秀な冒険者諸君であれば、たとえその庭園がどれ程広大でも造作もないことだろうしね?」
 何やらえらくとんでもない事をさらりと言って、ロランはいい笑顔で微笑んだ。

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参加者
陽射の中で眠る猫・エリス(a00091)
桜雪灯の花女・オウカ(a05357)
緑星の戦士・アリュナス(a05791)
天上の謳声・リュエル(a35233)
一生紫を愛す司書・コハク(a39685)
風浪の蒼き人・レナート(a57461)
星ノ純銀貨・ウィック(a58440)
草花双調・エミロット(a59580)
NPC:エクサントリーク・アナスタシア(a90028)



<リプレイ>

●にゃぁ。
「きっときっと、子猫様たちの元気な姿を、お嬢様に御見せいたしますぅ!!」
 にこにこしながら、モールス信号解析不能・ウィック(a58440)は元気に宣言し、その後で目の前に広がる光景に思わず感心したようにもらした。
「……それにしても大きなお庭ですぅ……」
 現場となる庭(?)は本当にとんでもなく広かった。
 呆然と彼女がこぼした言葉は紛れもない真実で、そこに集まった面々は、程度の違いこそあれどほんの少しだけ現実逃避をしたくなったのは確かである。
「カオス☆ヘソ」
「そ、その挨拶は! ……かおすへそですわ!」
 ごく普通のセイレーン・レナート(a57461)に爽やかに声を掛けられ、アナスタシアは一瞬たじろぎつつも、以前得た知識(間違っている)によって挨拶を返した。
 当然だがこの妙な文句は挨拶ではない。誰か教えてやって欲しいものだが、聞こえなかったのか見事にスルーする面々。
 というよりも、そんな瑣末事などどうでもよく、彼らの脳内は猫に占められていたといったほうがいいだろうか。
「なんて偉いお嬢様なんじゃ! ペットは飼える者だけが拾ってええものじゃが、そこを無意識にわかっていらっしゃる!」
 このような人間が大勢いれば猫達も幸せに暮らせるだろうにと感心しきりに頷く、猫を愛でる司書・コハク(a39685)の言葉にアナスタシアは思わず首を傾げた。
「で、でも8匹は……ちょっと多いような気もいたしましてよ?」
 子猫の両親もいるわけだろうし、イケメンの話からするとそれ以上に数がいそうである。
 猫以外も含めて。
「え……? 猫って8匹も飼わないものなのですか……?」
 すでに猫を4匹飼ってる私って一体……と、呟くのは桜灯の斎女・オウカ(a05357)だった。ちなみにもう一匹どころか二、三匹増えた所でどんとこいである。
「……。私が間違っておりましたわ……」
 名だたる猫好きたちには数など問題ではないのだ、と悟るアナスタシア。猫は好きだが飼える自信はこれっぽっちもなかった。それが正解だ。
「ご両親の苦労はわかるけど……子猫がかわいそうだ」
(「大丈夫、なんて……放り出すほうの言い訳だから……」)
 小さいうちから放置される身にもなってほしい、とぶつぶつ言っているのは小さな少女。芳草鮮美の宿り・エミロット(a59580)は我が身に置き換えたのか、迅速に子猫を見つけ出すことを心に誓う。一刻も早く見つけてお嬢様を安心させてあげたかった。
(「……。人ごとのような気がしないのは何故でしょうか」)
 猫用に、と用意した籠と毛布をかかえつつ、新米店長・アリュナス(a05791)は遠い目をする。
「アビリティのためとはいえ、この服は寒いですぅ……」
 ヒョウ柄のワンショルダーなワンピースドレスを着た、紋章打の使い手・エリス(a00091)は防寒用のマントの前をぎゅっとかき合わせつつ呟いた。ご丁寧につけられている尻尾がひょこひょこ揺れている。
「まだ少し寒いですし、風邪を引かないでくださいね。……猫さんも寒いでしょうね……」
 彼女とコンビを組んで行動する予定の天上の謳声・リュエル(a35233)の言葉に、皆はしんみりと頷き。打ち合わせの通り基本的に自分の決めた一匹を追いかける事にし、一刻も早く保護する為にも、それぞれが思い思いの方向に散った。
 
●にゃぁにゃぁ。
「高そうだなぁこれ……っていうか、ほんと毎日いいもの食べてそうだよね〜……」
 雄猫はノーサンキュー、可愛い雌猫のみ頑張って保護するつもり満々のレナートは、借り受けた餌容器(中身ごと)を片手にぽりぽりと頭をかいた。
 とりあえずこぼさない様にしつつ、空いた手で遠眼鏡を取り出して、歩いていた森の各所を眺めてみる。
 鈴の音が聞こえないか、などにも気を配っているがそれにしてもこの森は広かった。
「中々見つからないものだね〜」
 発見した東屋で休憩を取りつつ、やれやれ、と溜息一つ。
 その時どこかから、ちりん、と鈴の音が聞こえたような気がして、レナートは東屋の外へそっと踏み出した。
「子猫探しに力技ですか……」
 しかしこの広さでは確かに力技の方が向いている気がしてきてしまったり。
 アリュナスは邸からは遠く離れた場所から虱潰しに探す事にして、籠と毛布を片手に日向や狭い所、高い所を重点的に見回っていた。
「早く見つけませんと、子猫たちの命にも関わりますしね……」
 お願いだから全員無事でいて欲しいと願いつつ、彼は更に手近な丘へと足を向け、歩き出す。
 見晴らしも日当たりもよさそうなその丘に、彼らがいてくれることをただ、祈った。
「……親御さんもひどいことをしたもんじゃ。しっかり飼っておるんじゃからええじゃろうに」
 ぶつぶつと呟きながらコハクは猫の足跡や爪とぎの後などがないかを入念に調べつつ林を歩く。
 両親にしてみれば物事には限度がある、と反論したいだろうがそれはそれ。
 見つかったら用意したマタタビと自慢の尻尾を使った、考え抜いたあの作戦を実行に移す時だ。
「……ん? これは爪とぎの後、かの?」
 かすかに残るその痕跡に、コハクは目を細めてあたりを見回す。
 さっ、と何かが視界を横切ったような気が、した。
「♪小さな子猫を知りませんか?」
 生まれて間もない子猫なら、狩りなどもまだ出来ないはずだ。知らない場所でそう遠くにも行ってはいないだろうと踏み、エミロットは邸近辺を捜索しつつ、道行く小鳥などに歌いかける。
「馬小屋とか……納屋とかも猫が好きそう……」
 そう思い巡らし、踵を返す。歩きながら何度目かに問いかけた時、とある一羽から近くで見たと返答があった。名前を確認したが、まだないので考えてくれと言われたことを思い出し、とりあえず猫さんと呼ぶ事にする。
(「この辺り……?」)
 納屋の近くで気配を探り、耳を澄ます。太陽の光が納屋の中に降り注いで、暖かそうなその藁山の向こうで、何か動いたような音がした。
「後はこのあたりっと……」
 ことり。小さな小皿に餌やミルクを盛って日当たりの良い場所や、大きな木の下や納屋の軒下などの目撃情報のあった場所に置いて行く。
 うまく誘われてくれることを祈りつつ、目印に、とオウカは赤いリボンを見える場所に括りつけた。
 そっと飛ばないようにマタタビの香袋も置いておく事を忘れない。
 ぐるっと一通り置き終わった後は、彼女なりに計算した確率に基づいて、オウカは餌設置ポイントをゆっくりと巡回し始めた。
「……!」
 ほどなく、そのうち一箇所に餌を食べようとした痕跡を発見。
遠くには行っていないはずと注意深く辺りを見回した彼女の耳に、かすかな鳴き声のような物が響いた。
「迷い猫探索の鉄則は、「いなくなった場所の近くを捜す」ですよぅ」
 使用人達に大体どの辺りで放したのかを確認し、エリスは傍らのリュエルに笑いかけた。
 猫耳フードに猫尻尾付のコートに身をつつんだリュエルが感心したように頷くと、ぴょこん、とついている尻尾が撥ねる。
 猫ファッションな二人は、注意深く穴や登りそうな樹をチェックしつつ捜索の輪を広げていった。
「♪小さな可愛い猫さんを〜今日はどこで見ましたか〜?」
 途中、見かけた鳥達に聞いて歩くのを忘れない。
「あ、エリスさん。これは……」
「! 間違いなくおトイレの後ですぅ」
 子猫達はまだ、排泄をした後の隠蔽が下手なのか、それは割とあっさりと発見された。
 鳥たちの情報を総合すると、この近辺に数匹いる様子。
 リュエルは片手にダシパックとマタタビをきゅっと握りしめて辺りに気を配った。
 飛んできた鳥と話していたエリスがそっと彼女に猫じゃらしをを手渡し、あっちの方です、と小声で囁く。
 足音と、自然息まで殺してそーッとそーっと。そこにいると教えられた場所に二人は足を向けた。
「近くにいるなら、何らかの形で痕跡が、あるはずですぅ」
 入念に回りの樹の上などにも気を配りつつ、森を歩くウィックはきょろきょろと辺りを見回す。
「あ! これ、まだ新しいですぅ〜!」
 小さな足跡らしき物を見つけ、一生懸命それを追いかけ、彼女はどんどん森の奥へと足を踏み入れた。
 だんだんと辿るのが困難になり、ふつりとそれが途切れる。
 諦めずにその辺りを入念に調べまわっていると、やがて、ウィックはどうやら子猫らしき影を木立の上に発見した。

●にゃぁにゃぁにゃぁ。 
「少し、眠っていてくださいね……」
 発見した黒猫を歌で眠らせ、オウカは柔らかい布を敷き詰めた籠に起さないようにそーっと入れた。一度お邸に戻ってお嬢様に報告しようと、来た道を折り返す。
 丘の上には白い猫が丸くなっていた。
 微笑んでアリュナスは更に保険として歌で眠らせ、籠に入れ、同じく邸への道を辿る。
「よし。どっからでもくるとええぞ!」
 マタタビをふりかけた尻尾だけを茂みから突き出して振りつつ、確実に近くにいる存在にアピールするコハク。
「!?」
 尻尾に衝撃が走った。罠にはかかってくれたものの、加減を知らない子猫の渾身の一撃を喰らってしまったらしい。彼は悲鳴を堪えつつ、何とかその黒猫を捕獲する事に成功した。
「♪素敵な子猫のお嬢さん、どうかオレと遊んでくださいな〜」
 ネコジャラシを揺らしつつ、微妙に外れた音程で歌うレナート(だが声はいい)。
「♪気高く素敵な子猫さん、食事を持ってきたよ〜。姿見せてくださいな〜」
 妙な音に引かれたのか、ひょっこりと顔を出した麗しの女性(猫)に、魅了の力を持った歌を歌いかけると、彼女は何故か大人しくついてきてくれた。
「♪はじめましてぇ、ウィックと申しますぅ」
 見つけた子猫に微笑みかけ、ウィックは続けた。
「♪夜になると、寒いですから……風邪をひかないうちにご帰還いたしましょうー?」
 にこにこと笑う彼女のほんわりした空気に惹かれたのか、本当に寒かったのか。子猫は割と大人しくウィックの言葉に従った。
「♪猫さん、猫さん、可愛い猫さん。お嬢様が心配してますよ。私がお連れしますから……お家に帰りましょう?」
 威圧感を与えないように、としゃがみこんで語りかけるエミロットを小首を傾げて見上げていたその子猫は、おそるおそる、と言った風に彼女に近寄ってきた。
 説得に応じてくれたらしい子猫をそっと少女は抱えあげ、その体が震えているのに気がついてストールでふわりとくるむ。
「大丈夫。怖くないから……おいで?」
 手にした魅惑のグッズの数々でリュエルはグレイと三毛の二匹の注意を惹いていた。
「追いかけっこになっちゃうと困るから……、ごめんなさいですよぅ」
 すかさず回り込んだエリスが歌で眠らせてそっと抱き上げ、キャリーに入れる。 
 邸の近くまで戻ると、すでに猫と共に帰ってきた仲間たちと合流できた。
 お嬢様へ取次ぎを頼み、待つ間に目覚めた猫達と一緒に猫じゃらしやマタタビで遊びまくる面々。
 どこからともなく何故か猫餌を大量に持ったアナスタシアが、使用人の一人と帰ってきた時にはアリュナスなどは疲れたのか子猫と一緒に日向で眠り込んでいた。

「皆様、本当に感謝いたしますわ」
 かたん、と手にした遠眼鏡を置いて、件のムツゴロウ姫は猫やら犬やらてんこ盛りの部屋で冒険者達に優雅に一礼して見せた。随分と待たされたのは彼女の用意その他も合った訳だが……
(「……御邸の中からご覧になっていたわけですのね……」)
 あらゆる意味で侮れませんわ、と感心するアナスタシア。ちなみに自分も猫探しに行ったのだが、小川の前でさくっと足を踏み外して昏倒しているところを先ほどの使用人に拾われ、お礼にお手伝いに励んでいたらしい。
 ……何をしに来たんだお前とか、そういう突っ込みはしてはいけない。切ないから。
 とりあえずそれにはつっこまず、お嬢様は8匹を順繰りに撫でた後、つい、と冒険者達に振り返った。
「どなたがこの子達とお帰りになるご予定かしら?」
 その眼に宿るのは、実に冷静に彼らを値踏みする光。
「わたくしも猫が大好きなのです。もし、よろしければ……その、数が減るのがお嫌でしたら構いませんから」
「そうね。寂しいけれども、同じ思いの貴女にでしたら構わなくてよ。……可愛がってもらいなさい」 
 オウカに微笑み返し、彼女が希望した黒猫を手渡して、お嬢様はその頭を軽く撫でた。
「うちの子のお嫁さんを探してるのです〜。三毛さんは統計上、99%が女の子だって聞いてるのですよぅ」
「……こんなに小さなうちからお婿さんが見つかって、この子はついてますわね?」
 熱心に頼むエリスにお嬢様はよろしくってよ、と微笑む。
「ちゃんと世話します。たまに一緒に連れて遊びに来ますから……譲っていただけませんか?」
 小さな少女に一生懸命見上げられ、お嬢様は笑ってエミロットに頷いた。
「……私の黒猫の友達が欲しいのです。白猫さんをお願いできないでしょうか」
「仲良くお休みになられていましたものね」 
 頼むアリュナスにくすくすと笑いながらお嬢様はその白猫を手渡す。
「! ……ご覧になってましたか……」
 真っ赤になりつつもそっとその子猫を彼は抱きしめた。
「わ、いたたた!」
「あら。……ごめんあそばせ。その子はいたずら好きで困ってますのよ」
 突然尻尾に思いっきりじゃれつかれ……というよりまた容赦なく引っかかれたに近い……涙目になったコハクにお嬢様は困ったように言う。
「う……うー……いや、お気に召したのじゃったら……これぐらい」
 なんのその、と虚勢を張る彼に、お嬢様はその子をよろしくお願いしますわ、と軽く頭を下げた。
「貴女は、その子? よろしくてよ、頑張っていらしたものね」
「ぇ……わ……良いのですかぁ!? ありがとうございますぅ……!」
 じーっとペルシャの子猫に熱い視線をそそいでいたウィックに、お嬢様が声をかけると、彼女は目をキラキラ輝かせ、飛び上がらんばかりに嬉しそうな顔になる。
「この子は、どうも貴方がお気に入りのようね」
「や〜。光栄だなぁ〜。」
 苦笑しつつ、お嬢様はレナートの足元に擦り寄っていた子猫を抱き上げ、彼に手渡した。
「……名前は、決められて?」
 近くに寄ってきた子猫にそっと手を伸ばしていたリュエルに、お嬢様が問いかける。
「あ……はい! え、エトワールって名前が……いいんじゃないかな、と……」
 良い名前ね、とその猫を抱き上げて手渡してやりつつ、お嬢様は頷いた。
「この子達の里親が全員決まってくれてよかったわ。……貴女は、よろしいの?」
「私は、不器用者ですし……皆様のところにたまに見せてもらいに行きますわ!」
 確かにこの女性には向いてなさそうだ、と判断したのかお嬢様はアナスタシアにはそれ以上突っ込まなかった。
「何はともあれ、その子達をよろしくお願いしましてよ?」
 くれぐれも、と言う彼女に全員が頷き返し。その後お嬢様の猫たちも加えてお茶を楽しみつつ、猫まみれな至福な時間を彼らは送ったのだった。


マスター:神條玲 紹介ページ
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冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:8人
作成日:2007/03/17
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冒険結果:成功!
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