走れ! ノソリン盗賊団



<オープニング>


「やりましたね兄貴。それじゃこれを早速積み込んで……」
「あ、馬鹿野郎! 何考えてやがる!!」
「え、だってその為につれてきたんじゃ……」
「違うわアホぉ!! ほれ、担いでとっとと逃げるぞ!」
 獲物を背に、もの凄いスピードで走り去る盗賊達。だが新人盗賊の動きは鈍く、その視線は一匹のノソリンに向けられていた。
 ノソリンの背には何も無く「なぁ〜ん」と呑気な声を出しながら、新人に並んで走っている。
 一方、背に今盗んだばかりの大荷物を背に、ヒイヒイ言いながら運ぶ新人。
「なんなんだよ、この状況は……!?」
「まあ、お前の気持ちは分からんでもないがな。俺たちと……いや、ボスと上手くやりたかったら慣れるしかないぜ」
 一人の先輩盗賊が、そんな新人を見かねて声を掛けてきた。新人以上の荷物を背負い、顔色一つ変えていない。
 そんな先輩を一瞥し、新人は足に力を込めた。

「みんな、盗賊退治の仕事よ」
 霊査士のリィーンは、酒場にツカツカと入ってくると同時に用件を切り出した。
「最近、南の方で暴れ回ってるらしくてね。霊視でつぎに襲われる村も分かってるから、あとよろしくね」
 以上と話を終えると、リィーンはマスターに遅めの昼食を注文した。
「え、いや、もう少し情報は無いのか?」
 簡潔すぎる説明に僅かな不安を覚え、冒険者の一人がテーブルについたリィーンに近寄った。
「ん? そうね……今のところ被害者に怪我人は出てないわ、殺しとかは好まないようね。だから今回の依頼も、殺さず捕縛して欲しいそうよ。最悪、追い払うだけで構わないって」
 それはかなり大事な情報だと思うのだが……。
「あと、相手は『ノソリン盗賊団』と呼ばれているそうよ」
「ノソリン……それは厄介だな」
 ノソリンを使えば大量の獲物も一度に運ぶ事が出来るだろう。これはその対処も考える必要があるだろうか?
「まあ、そんなに深刻に考えなくても良さそうよ。ノソリンは」
「? 何故だ?」
「被害者の話によると、彼らノソリンを逃走用に使った事は無いそうなの。何時も自分たちが獲物を背負って、ノソリンはただ『なぁ〜ん』って鳴きながら盗賊の後に付いて行くだけ」
「……何故?」
「分からないわ。気になるなら盗賊に直接聞いて。そうそう、あともう一点。逃走する盗賊に混じって、時折ノソリンに跨った少女が目撃されているそうよ。彼女と盗賊団との関わりは分からないけど、一応覚えておいてね」
 そこに丁度ランチが到着。知る限りの情報を話したリィーンは、昼食へと没頭するのだった。

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参加者
白いダークエルフの狂戦士・ギーギィ(a02960)
黄昏の漣・フリア(a03388)
蒼炎の戦姫・フィア(a05367)
闇黒の死を告げる蒼の伐剣者・アシル(a06317)
風切羽・シリル(a06463)
誓いの刃・ステファン(a06484)
白月の雪客・ユキ(a06907)
薫風の護り手・ジラルド(a07099)


<リプレイ>

●下準備
「村は低い柵に囲まれ、入り口は一つ。周囲は平野ですか、さて……」
 盗賊団の次の目標とされた村。その村の入り口で、ドリアッドの医術士・ジラルド(a07099)は手にしたメモを見て呟いた。
 到着後すぐその地形把握の作業に取り掛かったジラルドは、既に大体の地形を把握していた。
「どんな感じです?」
「地形の把握は大体終わりです」
 声にジラルドが振り返ると伝説のナンパ師・アシル(a06317)が立っていた。一言二言の会話の後、ジラルドは他の冒険者と話しをする為その場を離れる。
「さて」
 一方のアシルは、フラフラと村の外へ歩を進めた。

「あの、盗賊団の事を聞きたいんですけど?」
「おや、あんたも冒険者さんかい? ご苦労だね〜、こんな所まで」
「あ、はい。で、盗賊団なんですけど……」
「いや、あの人達も本当は悪い人じゃ無いと思うんだよ。あんなにノソリンは大切にしてるんだからね〜、でもやっぱり人様に迷惑掛けちゃいけないと思うんだよ」
 情報収集の為、見かけたおばあちゃんに話し掛けた白月の雪客・ユキ(a06907)は、話し掛ける相手を失敗した事に少々反省する。
 ぽややんとした性格のユキが、話し好きのおばあちゃんに話し掛ければ、
「えーっとぉー……はあ、そうですかぁ……」
 としか言えなくなるのは至極当然であった。

「縄はこの位?」
「はい、お話を聞いた限りでは30人を上回る事は無いと思いますから」
 目の前に置かれた、30本の縄を前に緑と平穏を愛す者・ステファン(a06484)が呟き、風切羽・シリル(a06463)が頷いた。
 被害にあった村人の話を聞いて推察するに用意すべき縄は約30、そう考えたシリル。捕縛用にと縄を持参していたステファン、ジラルド、そしてシリルの分を合わせれば、その数を揃えるのは容易であった。
「お、ここに居ったか」
 そこに突然掛けられた声。二人が振り返ると白いダークエルフの狂戦士・ギーギィ(a02960)が大げさに手を振りながら、蒼雷の戦姫・フィア(a05367)、ジラルドと歩いてくるのが見えた。

「あの、ノソリンをお貸し願えませんか? 絶対に危険な目にはあわせませんから」
 思案げな顔をする男性を前に、癒しのそよ風・フリア(a03388)は一生懸命お願いをしていた。
 どうしたもんかと考える男性の横、じっとしていたノソリンが突然フリアに歩み寄りその頭を擦り付ける。
「なぁ〜ん」
「……ふむ、まあ嬢ちゃんなら大丈夫か。あの盗賊団が相手なら、ノソリンに手荒な事はせんだろ」
「では?」
「盗賊とノソリン、嬢ちゃんに任せるよ」
「なぁ〜ん♪」
 微笑する男性。ノソリンも嬉しそうに声を上げた。

●ノソリン盗賊団
 刻は日が変わろうという頃、村の中を十数人の男の姿が駆けていた。
「兄貴、あっちに食料庫が……」
「よし、何人かついて来い」
『へい!』
 抑えた声で男達は囁きあい、闇へと紛れ込んだ。

「なにやってんのや?」
 家々の様子を伺う盗賊達は、突然の声に上げそうになった悲鳴を押さえ込み声の方向に向き直った。
 佇むのは黒い肌のエルフ。
「……じっとしてろ」
 数で有利と油断したのか、歩み寄る盗賊三人。ギーギィはニッと笑い一気に間合いを詰め……吼えた!
「!!」
 紅蓮の咆哮に三人は纏めて麻痺に陥る。
「何事だ!?」
 大声に、近くに居た別の一団が駆けつけてきた。
「おとなしゅう降伏しい。ウチも仏のギーギィで通っとるし人殺しは嫌いなんや」
「はっ! 胸も無い小娘が何を……」
「あぁ!?」
 瞬間、巨剣が地面を抉る。竦み上がる盗賊は、その背後に忍び寄っていたシリルに殴られ気を失った。
「落ち着いて下さい」
「……は! ウチは何を……」
 シリルの声に我を取り戻したギーギィは、シリルよりロープを受け取り、盗賊達を縛り上げた。
「さて、聞きたい事は色々あるで〜」
 縛り上げた盗賊に顔を近づけ邪笑を浮かべるギィーギ。
「貴様に話す事など無い!」
「そうだぞ、メガネブス!」
「馬鹿! 余計な事ぬかすな!」
 年長の盗賊が若い盗賊を窘めるがもう遅い。ギィーギは笑みを顔に貼り付け、若い盗賊のロープに手を掛けた。
「なんや言うたか? あぁ!?」
 一気にロープを引き、盗賊を駒のように回す。
「ひぃぃ!」
「……さて、他の方の援護に行きましょうか」
 盗賊達の悲鳴を背に、シリルはその場を後にした。

「ん? 今の声は……」
 食料庫、その扉の前に立つ盗賊は響いた大声に背後を振り返った。声の正体は分からないが、自分たちにとって良くない事なのは間違いないだろう。
「兄貴……」
「ちっ、退くぞ」
 冷静に判断し踵を返す一団に、闇より現れた人影が立ちはだかった。
「……そうは行きません」
 猫尻尾を逆立て、凛とした表情で盗賊の一団を睨むフィア。その姿に一団は僅かに後退する。
「退路は無いよ。諦めたら?」
 ハッと振り返る盗賊の目に映るのはステファン。
 進退窮まった盗賊はオロオロと二人を交互に見る。ステファンは肩を竦め、腰を屈めると一気に駆け出した。
 盗賊は慌てて剣を抜くが間に合わない、手前の二人に肉薄したステファンは紅蓮の咆哮を放つ。
 同時にフィアも駆け出す。驚いて身動きの取れない盗賊の腕を取り、その体を宙へと持ち上げ、そのまま地面へと叩き落した。
「く、くそ!?」
 残った盗賊もそれぞれの武器を構えるが、二人が怯む事など無い。
「まだやるの? これ以上は手加減が難しくなってくるんだけどね」
 フィアがゆっくりと腰を落とし突撃の姿勢を取る。瞬間気を取られた盗賊、その背後にステファンが近付いている事に気づいた時には既に遅く。振り返った盗賊の腹に太刀の柄が深々と刺さった。
「出来れば、おとなしく捕まってくれると嬉しいんだけど……そうもいかないよね? まあ、骨の2、3本我慢できるよね」

●盗賊団のボス
「ボス、様子がおかしいですぜ」
「……」
 村の入り口から離れた場所、そこに六人の盗賊と一匹のノソリンが佇んでいた。
 村から聞こえる大きな声にざわめく盗賊達。その盗賊達に村の入り口から大きな声が掛かった。
「君達の仲間は殆ど捕まえた。君達も観念しないか?」
 松明を持ち、アシルが挑発する。
「ボス、どうします?」
 暗くて良く分からないが、盗賊のボスも一緒なのは確かなようだ。
「来ないならこっちから……」
「! 走れ、グズ共!」
「へい!」
 アシルの声に反応し、ボスの号令の元盗賊達は走り出した。
「ん? 今の声って……」
 アシルが疑問符を浮かべ頭を傾ける。そんなアシルにジラルドが慌てて注意を促す。
「アシルさん、来ますよ!」
「いてかましてやがぁ!?」
 構えるジラルドの手前、盗賊達は盛大にスッ転んだ。
「……落とし穴があるって聞いてませんよ?」
「敵を騙すならまず味方からってね。あんま深く掘れなかったけど」
 それでも大勢で攻めてきた為、一度にはまった盗賊達は身動きが取れない。
 盗賊はアシルとジラルド、そして駆けつけてきたシリルに取り押さえられた。

「ノソリンちゃん、げと〜」
「!?」
 残されたノソリン、その背には黒髪の少女の姿があった。突然ノソリンの首に飛びついたユキに少女は微かに驚く。
「あなたが、ボスさんなんですか?」
 現れたのはノソリンを連れたフリア。少女はフリアを見つめると、頷いた。
「ん〜と、投降して下さい…」
 ノソリンの首にしがみついたまま、少女にユキが訴える。
「……それもいいかもね」
「逃げないのですか?」
「逃げれば貴方達は追いかける、そうなればこの子が怯えるもの」
 ノソリンを優しく撫で、少女が微笑んだ。

●ノソリンと少女
「ノソリンを見てみ? あんな風に何も盗まず争わず、心穏やかに暮らす方が盗みするよりずっとええで。今ならやりなおせるで?」
 一夜明け、縛られ並べられた盗賊達を前に、ノソリンを指差しギーギィが語る。そんなギィーギに若い盗賊は思わず逆らった。
「妙な言葉使いしやがって。なんだお前、芸人か? 血に汚れた芸人……」
「誰がヨゴレ芸人や!」
 ゴスッ、と音を立て盗賊が吹っ飛ぶ。
「ギーギィさん、手加減して下さいよ」
 そんな盗賊をジラルドが慌てて介抱するのだった。

「話してくれるかな、お嬢ちゃん?」
 村長の家。盗賊団のボスであった少女は、アシルに促され口を開いた。
「私が物心ついた頃、両親が亡くなってね。私と兄とあの子が生きる為に盗みを始めたの」
「あの子?」
「ノソリンよ、ずっと一緒だった」
 シリルの問い掛けに、目を瞑り少女は答えた。
「お兄さんは外?」
「いえ、兄は一月ほど前に死んだわ」
 ユキの問いに少女はあっさりと答える。場の空気が途端に重くなった。
「いいのよ、別に。その時は流石に途方に暮れたわ、そんな時前に知り合った盗人仲間に声を掛けられたの、私はその話に乗って、盗賊団のボスになった。始めは生きる為に、ただその内みんな調子に乗り出してね、過剰に盗むようになった。いけない事だって私が思った時には……、やめよって言えない雰囲気になっててね」
「それで、こんな事になった訳ですか」
 窓のから盗賊を眺め、フィアが呟いた。
「質問です〜。どうして物を運ぶ際ノソリンを使わないんですか」
 と、ステファンが皆が不思議に思っていた事を口にした。
「ノソリンにまで悪い事させたくなかったから、皆……」
「なら、皆さん心を入れ替える事が出来ると思います。皆さんノソリンを大切になされてるんですから」
 フリアが少女に微笑みかける。
「そうだお前、俺の手伝いせんか?」
「え?」
「ノソリンが好きなら、ノソリンの世話は得意だろ?」
 声を掛けたのはフリアにノソリンを貸した男性だった。突然の提案に少女は戸惑うが、
「悪い事をしたと思うなら謝って、それから償えば良いんじゃよ」
 ニッコリ笑って村長が言い、少女は微かに頷いた。
「他の者達の働き口も探さんとの〜」
「おぉ、扱き使ってやるぜ」
 村長と男性が笑い合い、冒険者もまたお互いの顔を見て笑みを浮かべるのだった。


マスター:皇弾 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2004/04/17
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