≪岩腕の王ブラキオン≫決戦ブラキオン! 尻尾を狙え!



<オープニング>


●決戦ブラキオン!
 岩腕の王ブラキオン……猿怪獣の王にして、七大怪獣が一体。
 彼の威嚇は全ての生命の危険を呼び起こし抵抗に失敗したものを恐怖に陥れ、足元に近づく者が居れば激しく地団駄をふみ踏み潰そうとする……あの巨体で地団駄を踏まれれば地面の上に立つものは立っている事も侭ならない程の衝撃を受ける事だろう。
 もし彼が気に入らない事があれば唾を吐きかけて不満を現す……たかが唾と侮ること無かれ、彼の唾を受けたら色んな衝撃の余り気を失うだろう。
 さらに、彼の歓喜の踊りは視界に入るもの全てに同じ動きを強制する……猿の動きを強制される、それはなんと恐ろしい事か。

 だが、特筆しなければならないのは彼を象徴する異様に発達した右腕だ……その腕の一撃が一度振り下ろされれば衝撃は大地を揺るがし、周囲にあるあらゆる物を破壊するだろう。

 ――そう、本来ならば……だ
 黒い犬怪獣の背中に腰をかけてプラプラと足を泳がせていたアムネリアは、良く晴れた青空を見上げながらブラキオンの能力を反芻していた。
 本来ならば近づくだけでそれ相応の犠牲を覚悟しなければならない相手だが……護衛士達の活躍によって叩き落された彼は今、右腕と尻尾に傷を負いその本来の破壊力を失っている。
 絶好の機会、もしかしたら千載一遇に有るか無いか位の――
「すぐに襲撃する事に決まったわよ」
 何時の間に近づいていたのか、メルフィナが微笑みながらアムネリアに手を差し伸べている。
「そうか」
 その手を取って、地面に降りるのを助けてもらうとアムネリアは満足そうに頷いた。

●尻尾を狙え!
「この班には、ブラキオンの尻尾を攻撃してもらいたい」
 集まっていた護衛士達の前に立つとアムネリアは説明を始める。
「ブラキオンの装甲は固く、多少の攻撃を叩き込んだところで奴にとっては痛くも痒くも無い……だが、怪我を負っている尻尾なら上手く当てられれば暫くの間ブラキオンを痺れさせて動きを止めることが出来るんだ」
 どうやら尻尾は元々弱点の一つだったのだが、それが怪我を負ってさらに攻めやすい状況になったらしい。相手の弱点を逃す手は無いだろう。
「惹きつけ班がブラキオンを惹きつけている隙に、ブラキオンの足から体を登って尻尾に取り付いて叩くと良い」
 三班が同時にブラキオンに登るのは難しいが、一班だけ……或いはもっと少人数なら何とかブラキオンの隙を付いて登る事も可能だ。
「やりすぎず、やらなすぎず。惹き付け班の動向を観察、或いは息を合わせて行動する必要がある……と思うぞ」
 動きを止められなければ意味を成さず、ブラキオンから集中攻撃を食らえば役割自体を果たせなくなってしまう。その見極めが重要だろうとアムネリアは言う。
「……うん、頑張って」
 護衛士達の顔をじっと見つめた後、呟くように言うとアムネリアは次の説明へ向かった。

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参加者
炎に輝く優しき野性・リュリュ(a13969)
デタラメフォーチュンテラー・メルフィ(a13979)
黄砂の女兵士・ガーベラ(a20332)
満腹を凌駕するみかん・ミスティア(a46283)
星槎の航路・ウサギ(a47579)
楽園の小飛虎・リィザ(a49133)
ノソ・リン(a50852)
無楽な忍び・イズル(a58788)


<リプレイ>

●姿を現すもの
 遠く……と言ってももうすぐ目の前と錯覚するような位置に、ブラキオンの姿が見える。
 彼が放った右腕の衝撃は風を撒き散らし、一瞬だけ視界を遮る煙を払っていた。

「ついに最終決戦、せっかくのチャンスを活かして討伐なのですよ!」
 ブラキオンが動き出したと言う事は惹き付け班の状況は不明だが、決戦の火蓋が落とされたのは間違いない……吹き付ける風に目を細め、満腹を凌駕するみかん・ミスティア(a46283)はグッと握りこぶしを作る。
「見ていろ七大怪獣が一角岩腕の王ブラキオン。今の今までなかなかにてこずらせてくれたが此度はそうは行かぬ!」
 無楽な忍び・イズル(a58788)も少し上ずった声でミスティアと同じように握りこぶしを作る。
「決戦なのです。絶対負けられないのです。あぅ、頑張りますです……!」
 そんな二人に続いて、星槎の航路・ウサギ(a47579)もこくこくと頷きつつ頑張るのポーズを作っている。
 自分のテンションに自信の無かったイズルはミスティアとウサギの様子を見てほっと胸を撫で下ろすと、もう一度ブラキオンへ視線を移して……その姿は再び煙の中へと消えて行こうとしていた。

 デタラメフォーチュンテラー・メルフィ(a13979)が持っていた儀礼用長剣がその姿を消す。
 手順通りに物事が進んでいるところを見ると、どうやら惹き付け班は上手く言っているようだ……メルフィはほっと息を吐くと、大きく息を吸い込み表情を引き締めて、
「それじゃ行動開始なぁ〜ん! ……原住民の依頼から早数ヶ月……ここに終止符を打つなぁん!」
 仲間達を振り返ると高らかに宣言する。
「これで最後にしなきゃなぁ〜ん……!」
「そうさね、これでキメるよ! ここまで来たらもうやるしかないね……」
 オー! と拳を天に突き上げて答えつつ、炎に輝く優しき野性・リュリュ(a13969)は走り出し、黄砂の女兵士・ガーベラ(a20332)も続いた。
 千載一遇のチャンスとまで言われた機会を逃したら次にどうなるか予想も出来ない……何より、此処まで頑張ってきて引くわけには行かないのだから。

「思えば、猿怪獣の一党には負けが込んでいますね」
 近づくほど徐々に大きくなってゆく影を眺めながら、楽園の小飛虎・リィザ(a49133)は呟く。
(「私は借りは返す主義。きっちりしっかり――叩きのめして、全て終わりにさせて頂きますわよ?」)
 巻き起こった風に煙が吹き飛ばされたせいか、僅かに見えたブラキオンは天を見上げて……その黄色く濁った瞳をジッと見つめ、リィザは儀礼長剣を持つ手に力を篭めるのだった。

●揺れる尻尾
 惹き付け班はブラキオンを上手く温水から誘き出すことに成功していたようだ。
「なんだか知らないけど、動きが止まってる今がチャンスなぁ〜ん!」
 前の方では爆発音やらが聞こえてくるが、ブラキオンの動きが止まっている……リュリュが声を上げると、メルフィ達は天空から大地に突き刺さる支柱のように伸びるブラキオンの足まで駆け寄りその足に取り付いた。
 ミスティアがブラキオンの足の毛を掴んで引っ張ると、ブラキオンの毛は確かな感触を返してくる。ミスティア達はブラキオンの毛が自分の体を支えるのに十分な耐久力を持っていることを確認すると、その毛を掴んで一気に登り始めるが、
「あう!? が、ががががくがく、す、するのです!」
 丁度膝の裏あたりまで登ったところで、ブラキオンがゆっさゆっさとその巨体を揺らした。
 ウサギ達はブラキオンの毛にしがみ付いて何とかやり過ごすが嵐の海に放り出された小船のように絶えず四方八方に振り回され、体の中身をぐちゃぐちゃに掻き回されたような気分になる。
「うう……目が回る……むぅ……どうやら踊ってたみたいだね」
 グルングルン振り回されながらも惹き付け班の様子を確認していたらしい、銀花小花・リン(a50852)が焦点の定まらない目で報告する。もしもブラキオンの視界に入るような位置だったら確実に手を離して落ちていただろう……そして最悪は踏まれるのだ、そう思うと背筋に寒いものが走る。
「尻尾はもうすぐそこなぁ〜ん! もう一息なぁ〜ん!」
「よし! 行くよ!」
 よくよく見ないでも確認できる、その長い尻尾をメルフィが指差し、踊りが止まった今のうちにとガーベラがブラキオンの毛から毛へ、或いはブラキオンの体から生えるゴツゴツと隆起した岩を飛び移りながら一気によじ登った。

 ブラキオンの尻尾はそれだけで巨大な蛇の怪獣と言っても過言ではないほどに、長く立派だった。黒い剛毛に包まれるそれは、本来ならば多少の攻撃など受け付けるはずも無いように見えるが……尻尾の丁度真ん中辺りに毛が削げ落ち生身が見える場所があった。
「あれ……だな」
 イズルがふむ、と呟くように言う。尻尾の傷口は視界が悪いこの状態でもはっきり見えるが、遠距離攻撃で届くような距離には無い。
「近づかないと駄目そうだねぇ」
 忙しなく動く尻尾を伝って傷口に近づくのは大変そうだが攻撃が届かなければ意味が無いのだ、観念したように息を吐くとガーベラは意を決したように尻尾の上を進み始めるのだった。

「わ、わわわわ、な、なぁ〜ん!?」
 尻尾に……と言うよりも尻尾から生える毛にしがみ付きながら、リュリュ達は何とか傷口付近まで進む。
「し、しっかり固定しないと、あ、危ないのです」
 ミスティア達はブラキオンの毛にロープを縛りつけ、それと自分を結んでいざ吹き飛ばされた場合の保険にする。こうして置く事によって最悪手を離してしまっても、多少の時間稼ぎは出来るかもしれないだろうと考えたのだ。
 足元の覚束無い場所ではその作業も難航したが、ミスティア達は何とか命綱の固定に成功する……そして、リィザとメルフィがその身に黒い炎を纏い、リュリュがワイルド・インパクト・ボーンを手元に呼び出した時、丁度、弓使い・ユリア(a41874)から攻撃指示が矢文に乗って流れてくる。
「それでは皆さん、準備はいいですか?」
 ミスティアが仲間達に問いかければ、全員各々の獲物を手に頷いている……ミスティアは大きく息を吸い込んで、
「せーのっ!」
 号令をかけると同時に武器をブラキオンの傷口に向けて振り下ろした――

●ゆらりゆらりと尻尾は揺れて
 メルフィの、のそ笛から放たれた黒いガスと融合した三頭の炎が燃えがり、掲げた雷の闘気を纏ったリュリュの大棍棒がブラキオンの傷口に振り下ろされる。メルフィの炎が爆発するのと同時に、ガーベラとリィザの黒い蛇の炎、そしてミスティアとウサギが作り出した衝撃波が傷口を抉るように追撃する。
「動きが……止まったなぁ〜ん?」
 もうもうと尻尾の傷口から煙の立ち上るなか、メルフィは今までゆらりゆらりと緩やかに揺れていたブラキオンの尻尾が強張ったように完全に止まっていることに気付いた。
「やってやったのです!」
 そしてビタリと動きの止まったブラキオンの様子を見て、ミスティアはえっへんと胸を張る。少し攻撃の手が薄いかとも考えていたが、どうやら上手く行ったらしい。
「これで、皆登れるかな?」
 イズルが地上を見下ろせば、ブラキオンに取り付き始めた仲間達の姿が見えた。どのくらいの間、ブラキオンが行動不能になるのかは不明だが、少しでも隙があれば仲間達なら登りきるだろう……イズル達は何れ訪れるであろう、ブラキオンの反撃の衝撃に備えるために尻尾の毛をしっかりと握り締めるのだった。

 リンは登頂班の後ろについてブラキオンの背中に登ると、右肩の後方で命綱をブラキオンの毛に結びつけ、頭上に光る輪を作り出す。
 尻尾からブラキオンの頭上までは煙が邪魔で見る事が出来なかったため、リンが連絡役を買って出たのだ。
(「目立たないようにしないと……」)
 そして眷属に狙われないように……戦っている仲間達の邪魔にならないようにするため、気配を殺そうというのだが……頭上に光る輪がある時点で目立ちまくりだった。

『う……きゃぁぁぁ!』
 ブラキオンが叫ぶと同時に、尻尾がビュンビュン揺れ始める。例えるならば誤って熱湯をかけた手を振って冷まそうとする本能をそのまま尻尾で行ったかのように、ブラキオンの尻尾がビュンビュン振れる。
「あぁうぅぅ!? お目目がグルグル……グルグルなのですよ!」
 地面が見えたかと思えば次の瞬間には煙に覆われた真っ白な空間しか見えなくなり、さらに次の瞬間にはブラキオンの体が見える……ウサギの目が回るのも仕方の無いことだろう。
「頑張れ! 手を離すんじゃないよ!」
 この勢いで地面に叩きつけられたら如何な頑丈がとりえの冒険者といえど只ではすまないだろう……腹の底から振り絞るように叫ぶとガーベラも尻尾の毛を掴む手に力を篭めるのだった。

●決戦の尻尾
 尻尾の揺れが収まると同時に、地上から氷を叩き割るような音が響き渡る。
「惹き付け班は……大丈夫でしょうか?」
 まだ視界が揺れる頭を軽く抑えながらリィザが地上を覗き込むと、ブラキオンが足を踏みおろすたびに地面が水溜りのように波打ち、周囲に激しい衝撃をばら撒いている様子が見て取れる。
「解らないなぁ〜ん……でも……」
 リュリュは首をかしげるが、はっきりと解る事はこのまま放って置くのは危ないという事だろう。
「もう一回やるのです! いくですよー! せーのっ!」
 再びミスティアが合図を出し、各々が武器を手にいまだに煙の上がるブラキオンの尻尾の怪我に向かって叩き付けると、ブラキオンの動きは止まるのだった。

『うき! うきゃー!!!』
「ま、また目がぁ〜! あぅ〜!」
 そして再びブラキオンの尻尾が激しく振られる……それどころか、今度は左手で尻尾を握ろうと手を伸ばしてくる。
「あぶないね……っ! ……ん?」
 振り落とされないように尻尾の毛にしがみ付き、思わず目を閉じるガーベラだが何時までたっても手が伸びてくる様子が無い……と、ブラキオンの肩の付近がぼんやりと赤く光っているではないか。
「り、リンさんからの、あ、合図……み、みたいで、ですが」
 振り回される尻尾にしがみ付くのが精一杯の状態で、攻撃動作なんて行おうものならどうなるか解ったものではない。或いは……命綱に賭けて一か八かでやってみるか……と、リィザが思考をめぐらせている間に、尻尾の動き段々緩やかになってゆく。
 そして一呼吸おいて、リィザが武器を持つ手に力を篭めたとき――
『オォォォオオオォォ!!!』
 耳鳴りが起こり、腹の底にあるものを揺らしそうなほどの咆哮をブラキオンが上げた。その恐怖に足がすくみ、ブラキオンの毛を掴む手の力が抜けそうになる……、
「っ! ウサギは! ウサギは逃げないのです!」
「負けないなぁ〜ん! あとちょっとなぁ〜ん!」
 鷲掴みにされた心から最後の勇気を振り絞るように、ウサギが癒しの力を秘めた風を呼び出しメルフィの歌が仲間達を励ます。
「これでっ……止まれなぁ〜ん!!」
「「「せーのっ!」」」
 そして三度、ミスティアの合図で、リュリュの雷の闘気をまとう大棍棒から放たれる強大な威力を誇る抜き打ちの一撃や傷口に抉りこむように回転しながら切り込むイズルがブラキオンの尻尾を深く抉り、ブラキオンの動きを止めた。

●王は堕ちて
 ――爆発音と共にブラキオンの動きが止まる
「え?」
 不意に止まったブラキオンの動きを不審に思ったリンだが……、
「ちょっ!? なぁ!?」
 考える暇は与えられなく、グラリと揺れたブラキオンに引っ張られるように落ちて行く……途中、縄を切ることには成功したが落下はどうしようもなかった……。

「助かった……なぁ〜ん?」
「……見たいですね」
 温泉に飛び込んだ後、ブラキオンの容積で作り出された水の奔流に巻き込まれたメルフィとユリアは何とか地面に辿り着くと大きく息をつく。
 周囲を見回せば同じように着いた仲間達が、体を休めている……どうやら全員無事なようだ。

「勝った……のか?」
「……はい」
「……勝ったなぁ〜ん」
 温水の中に横たわりピクリとも動かなくなった岩の様な物体をまじまじと見つめながらイズルが言う。
 本当に倒したのだろうか? ……と、確認するように訊ねるイズルに、リィザは微笑み、リュリュも笑っていた。

 徐々に沸き起こってくる勝利の実感を噛み締めるように両手を握り締める。
「おっしゃー!」
 そして、その手で掴んだ勝利を確信するように、イズルは拳を突き上げたのだった。

【END】


マスター:八幡 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2007/03/23
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