＜リプレイ＞
●乙女村
「……乙女化とはどのようなものなのでしょうね。弱いこの身が少しでも皆様のお役に立てるといいのですが……、どうか離婚秒読みに間に合いますように……」
祈るような表情を浮かべながら、夢見る白百合・リズ（a56117）が乙女化した村を目指す。
乙女花の影響で村のまわりはピンク色の霧に包まれており、無駄に爽やかな野太い笑い声が辺りに響いている。
「ごっつい乙女……、ごっつい乙女……、うわ、想像の許容範囲を超えてる！ でも、実際に見てみたいわぁ」
乙女化したチキンレッグのオヤジ達を思い浮かべ、あわてんぼ誤字姫・リィナール（a57051）がクスリと笑う。
何となく想像する事は出来るのだが、完璧にイメージする事になってトラウマになる恐れがあったため、リィナールは途中で考える事を……止めた。
「まぁ……、乙女化しているとは言え一般人。それほど恐れる事もないだろ。むしろ気をつけるべきは乙女花……」
険しい表情を浮かべながら、武に生きる天の使い・トリエット（a61921）が乙女花の咲いた村を睨む。
彼女は乙女から程遠い位置にいる人物なので、他の者達と比べて乙女化する確率が高い。
もちろん、一般人と違って乙女化する確率は低いのだが……。
「いや……、一番怖いのは、こんな依頼を出したガイだっ！ 一見のほほんとしている依頼だが、あまく見たら痛い目を遭うぞ！ 場合によっては俺の貞操が……」
青ざめた表情を浮かべながら、ネアンデルタール・ジン（a08625）がハイドインシャドウを使う。
既にジンの危機センサーが警報を鳴らしているため、乙女化した村で何らかの悲劇が起こる事は間違いない。
「あははっ、ジンさんは本当に怖がりだなぁ」
苦笑いを浮かべながら、バナナの皮大王・エル（a59510）が乙女化した村に入っていく。
それと同時に乙女化したチキンレッグ達が瞳を潤ませ、次々とエルに対して接吻を仕掛けてくる。
「ほ、ほらっ！ だから言わんこっちゃないだろ！ あのオッサンはいつもそうだ！ 肝心な事を伏せてやがる！ ……って、しまった！」
ハイドインシャドウが解除され、ジンがハッとした表情を浮かべて悲鳴を上げた。
……乙女達の熱い視線。
ジンが貞操の危機を感じて、後ろに下がる。
「ふふ、ふははははははっ！ 残念だったな！ そんな事でメゲる俺じゃねぇ！」
すぐさま鎧進化を発動させ、ジンが術士服をドーム型シェルターに変化させていく。
「これで大丈夫……って、息が……。息が出来ない……。ぷはーっ！ し、しぬかと思った！ これで大丈夫……、じゃねぇ！」
心の中で『キルガイデスデス』と唱えながら、ジンが小動物のような表情を浮かべて血反吐を吐いた。
「マ……、ママン。俺、頑張るからな!! 俺にはママンがついているから大丈夫。何があってもママンさえいればっ！」
自分自身に言い聞かせながら、澄み渡る空に歌う心と王子・ガトーフレーズ（a63203）が拳をギュッと握り締める。
迂闊に村人達を攻撃するわけにもいかないため、眠りの歌を歌って村人達を眠らせていく。
「クッ……、何だ、この違和感は……。まるで乙女化している……みたい……だ……わ……」
苦しそうに唇を噛み締め、トリエットがダラリと汗を流す。
自分の中に乙女な心が芽生えてきたため、支配されまいと必死になって戦っている。
「……大丈夫。もっとリラックスして、上目遣いで少し指を咥えた感じで……そう！ そこで人に見せる時は左斜め四十五度をっ！ ……はい、そこで照れながら、ニッコリと笑ってー」
自我を忘れて身も心も乙女化している村人達（トリエット含む）を集め、リィナールが乙女のポーズを指導し始めた。
そのため、トリエットはこめかみを激しくピクつかせ、自分の中に芽生えた乙女心を退けようと頑張っている。
「……って、なんでやね〜ん。アンタとはやってられないわ」
ナニーワに伝わるツッコミでシュシュッと手刀を放ち、エルがハッとした表情を浮かべて口元を押さえた。
すぐに抵抗に成功する事が出来るのだが、ピンク色の霧が出ているせいでエルも奇妙な感覚に囚われている。
「どうやら早くここから避難した方がいいようですね……」
毒消しの風を使って村人達を治療し、リズが警戒した様子で辺りを見回した。
村人達は一瞬だけ元に戻るのだが、すぐにピンク色の霧を吸い込んで乙女化してしまう。
もちろん、乙女化した者の大半はゴッツイオヤジ達なので、例え自我を取り戻したとしても激しく落ち込んでしまう可能性が高い。
「まぁ、俺の家族はみんな乙女なオヤジだから、この程度の事じゃ驚く事もないけどね。おっと……、これも乙女化の影響か」
高らかな凱歌を使って村人達を治療し、ガトーフレーズが我に返ってクスリと笑う。
何人か乙女化したオヤジ達が迫ってきたが、ガトーフレーズは気にせずドツキ倒していった。
「はあはあ……、酷い目に遭った。きっと、これは……、夢だな」
魂の抜けた表情を浮かべ、トリエットが自分自身に言い聞かせる。
一瞬、フリルなゴスロリ衣装を身に纏った自分自身が浮かんだため、『悪夢だ！』と叫んで自分の頭をポカスカと叩く。
「も、申し訳ありません。ちょっと、可愛いと思っちゃいました」
申し訳無さそうな表情を浮かべ、リズが毒消しの風を使って村人達を元に戻す。
気のせいかトリエットが顔を真っ赤にしたように見えたが、いまは殺気に満ちた表情を浮かべてリズの顔を睨んでいる。
「はうあっ!? 一体、俺は今まで何をっ！ 今まで何か悪い夢を見ていたような気がする……。おおっと、ここで忘れちゃ駄目だな。キルガイデスデス……、ギルガイデスデス……」
乙女達（注：オヤジ）の洗礼から解放され、ジンが現実逃避をし始めた。
本当なら乙女化したオヤジ達の被害に遭わず、無事に依頼を達成していたはずなので、自分の身に降りかかった不幸を否定し続けているようだ。
「ま、まぁ……、みんな無事だったんだからいいんじゃ……って、あっ！ なんでもないです！」
ジンが無事ではなかった事を思い出し、リィナールが気まずい様子で視線を逸らす。
彼女の背後でジンが呪いの言葉を吐いてきたため、両手で耳を押さえて村人達を連れて逃げていく。
「ここはやっぱりスパイラルジェイドでツッコミを入れるべきやろうか。でも、うっかりジンさんを殺してしまいそうな気もするし……」
ハリセンをギッと握り締め、エルがゴクリと唾を飲み込んだ。
それと同時に『ネタ重傷』という言葉が脳裏を過ぎる。
その事も考えてフェイクデスを活性化しているが、この事がキッカケでジンの不幸が感染（ぇ）しそうな気がしたので止めておく事にした。
「……ママン。俺、頑張ったよ！ ママン！」
瞳をウルウルさせながら、ガトーフレーズがママンの名前を連呼する。
気のせいか夕日にはママンの笑顔が浮かんでいた。
●乙女花
「ゴッツイオッサンのきらきら乙女化……駄目だ。そんな恐ろしいモノが蔓延したら……これは絶対に退治しないとだ！」
拳をギュッと握り締め、漆黒の風追い人・サイカ（a61137）が乙女花の退治にむかう。
乙女花のまわりはピンク色の霧に包まれているため、なるべく吸い込まないようにして気をつけておく。
「花のもたらす害を聞いてビビビッときちゃったわ！ わたしがこんな風なのって、そのお花の所為じゃないのっ？ 真相を確認しなきゃ、夜も眠れないわ！」
決意の炎をメラメラと燃やし、乙女系男前・ジョニー（a56975）が乙女花を捜す。
乙女花は円らな瞳をウルウルさせ、ジョニー達に気づいて甘い息を吐きかける。
「漢たるもの乙女化する事で怯むわけにはいかんぞぃ！ 冒険者としてやるべき事をやるだけじゃ！」
花粉を吸い込まないようにするため気合を入れ、魅惑の髭三つ編み・ハラルド（a40024）が乙女花を睨む。
それと同時に乙女花の花粉を吸い込んでしまい、ハラルドの瞳がきゅるるんと可愛らしく変化した。
「ハ、ハラルドさんが乙女に……!? まさかこの花粉って、ちょっと吸い込んだだけでも駄目なの!?」
甘酸っぱい乙女な雰囲気を漂わせ、セイレーンの放浪紋章術士・レナータ（a62039）がゲホゲホと咳き込んだ。
乙女花の花粉は数時間で効果が失われてしまうのだが、乙女花が定期的に花粉を吐き出しているので、村人達が大変な事になっていたらしい。
そのため、例え乙女花の花粉を持って帰ったとしても、ここで起こった事と同じような効果は望めない。
「もともと純情可憐な乙女なわしには、乙女化なぞ通用しないのじゃっ！ ……申し訳ありませんが、たおさせていただきますわ」
おしとやかな素振りで乙女花に近づき、きまぐれわんこ・フィーゼリア（a59992）が粘り蜘蛛糸を放つ。
乙女花は可愛らしい悲鳴をあげ、大量の花粉を吐き出した。
「うわっ……、物凄い花粉……。でも、ここで乙女化するわけには行かないからね。ＵＭＡ乗り魂を見せてやるー！」
鎧聖降臨を使ってフルアーマーをフェイスマスク状に変化させ、鋼の戦乙女・カレン（a62590）がグランスティードに飛び乗ってホーリースマッシュを放つ。
それと同時に乙女花が大量の花粉を吐き出し、ピンク色の霧で辺りを包んでいく。
「いやぁぁぁぁ！」
色々な意味で身の危険を感じたため、カレンがグンラスティードに乗って釘つきバットを振り回す。
一応、フェイスマスクをつけているので乙女花の花粉を吸い込む事は無かったが、目の前が一瞬にしてピンク色に染まったのでパニックに陥っているようだ。
「……あら？ 別に何も起こらないじゃない？ ひょっとして、わたしには効果が無いのかしら？」
頬に手を当て困ったような表情を浮かべ、ジョニーが不思議そうに首を傾げる。
普段から乙女な雰囲気を漂わせているためか、いくら花粉を吸い込んでもあまり変化が無い。
「どうやら人によって効果がマチマチのようだね？」
花粉を吸い込まないようにするため口元を押さえ、レナータがピンク色の霧に消えた乙女花を捜す。
ピンク色の霧が深くなっているせいで、乙女花が何処にいるのか分からない。
「いいか！ 乙女花！ 俺は絶対に乙女化なんて、御免だからな！ 今からお前を成敗してやる、覚悟しろよ！」
不機嫌な表情を浮かべながら、サイカが興奮した様子で宣言する。
辺りには大量の花粉が漂っているため、面倒な事になる前に乙女花を倒す事にした。
「もぉう、そんなに何を興奮しているの？ 乙女花ちゃんはワタクシ達を癒してくれる貴重な存在よぉん。それを退治するなんて……、ヒドイ人！」
すっかり乙女花に毒され、ハラルドが瞳をきゅるるんとさせてサイカをドツく。
身体をクネクネとさせているわりにはパワーアップしている感じなので、軽く叩いているように見えても骨が折れるほど痛い。
「このままではマズイのじゃ！ 早く乙女花を見つけないと大変な事になるぞ！」
ハラルドがドッスンドッスンと身体を揺らして攻撃を仕掛けてきたため、フォーゼリアが青ざめた表情を浮かべて攻撃をかわす。
しかし、ハラルドは三つ編みをしているヒゲを振り回しながら、乙女チックな表情を浮かべて内股で体当たりを仕掛けてくる。
「そ、そんな事を言われても……、ぬわあああ！ す……、吸ってしまった……」
一瞬にして脳内が乙女色に染まり、サイカが大粒の涙を浮かべて悲鳴を上げた。
何とか抵抗する事に成功はしたものの、乙女な世界に足を踏み入れてしまったため、何だか後戻りする事が出来ない気持ちになっている。
「あらあら、もうお終い？」
メルヘンな雰囲気をもわんと漂わせ、ハラルドが全身の筋肉を隆起させてニヤリと笑う。
幸い村人達の避難が終わっているため、実質的な被害は仲間達だけだが、精神的なショックはかなりのものである。
「と、とにかく乙女花を倒さないと……」
険しい表情を浮かべながら、レナータが毒消しの風を使う。
次の瞬間、ハラルドが残念そうな表情を浮かべ、乙女化から回復しているにも拘らず怪しく腰をクネクネさせた。
「俺の前は何人たりとも走らせねぇ！ ＵＭＡに蹴られて地獄に堕ちろっ！」
花粉を吸い込み過ぎたせいで雄闘命（おとめ）化し、カレンがグランスティードに乗ったままホーリースマッシュを炸裂させる。
その一撃が見事に乙女花を捉え、断末魔に悲鳴が辺りに響く。
「……恐ろしい呪いの花だったわ……。ああ、わたしは花の呪いの所為でこんな風に……。もう……、永遠に解けない呪いなのね……」
次第にピンク色の霧が晴れてきたため、ジョニーが乙女花の死骸を見つめて感傷に浸る。
「取り敢えず終わったけど……俺……なんか今夜うなされそう……乙女花と乙女チックなおっさんに追っかけられる夢を見そう……」
そう言ってサイカが疲れた様子で溜息をついた。
|
|
|
参加者：12人
作成日：2007/03/20
得票数：コメディ15
|
冒険結果：成功！
重傷者：なし
死亡者：なし
|
|
あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
|
|
|
シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|
|
 |
|---|
|
|
