さいはて山脈でスノボがしたい!〜断崖絶壁直滑降もあるよ☆〜



<オープニング>


「説明しよう!」
 だだん。
「スノボとは、傾斜のある雪上を滑りやすいように加工した板を使って滑り降りるのを目的としたうぃんたーすぽーつである!」
 である、ある、ある……狭い酒場内に山彦さえ響かせ、左手は腰に、右手は前に。びしっと人差し指で天を突いて。
 ぴよぴよ・ジーニアス(a02228)は、目の前にというよりむしろ世界に説明するように、高らかな宣言を言い放った。
「……ほほう。つまり『スノーの上をボードで滑る』、略して『スノボ』?」
 そのようなスポーツがあったとは世界は広いですねぇ。おねいさんびっくり……と、自分より背の高い義妹に返事をするキリングナビゲータ・シリィ(a90304)を見て、エルフの少女は指を振る。
「ちっちっち、おねいさん。スノボをローカルスポーツだと思ったら大間違い。なにしろ全国には百万人のスノボファンがいるとかいないとか言われてるんだからね!」
「ジーンさん、それは一体どこの全国ですか」
 同盟でないことは間違い無さそうである。かといってセイレーン王国やらソルレオン王国やらで無いことも確かである。
 隣で聞いていた朽葉の八咫狐・ルディ(a00300)は、ソルレオンが鬣をなびかせてエアターンを決めるのを想像して、思わず沈黙した。
「とにかく、です。百万人は妄言だとしても、雪山から滑り降りるのに楽しみを覚えてスポーツのように行う人はいるわけですわ。そこのジーンちゃんを初めとして」
 昨年の記憶を手繰った蠱惑の妖狐・ライカ(a00857)が告げるのを見ながら、黒狗・ミスト(a00792)が何やらしきりに頷いている。 壁に遮られた遠い視線の先には、今年最後の残雪を湛えた山々が見えているに違いない。
「うん、転んで顔面から着地するのって楽しいよ! ……楽しいよ!」
 あえて二度言う辺りに、嫌な予感を感じなくもないが……焔銅の凶剣・シン(a02227)のつぶやきを無視して、ジーニアスは再び拳を握り締めた。
「でね、僕の頭が──」
「耳が」
「──僕の耳が確かなら、さいはて山脈には絶好のスノボポイントがあるとか。雪の状態・傾斜・風景、どれを取ってもスノボ愛好家垂涎の絶好の場所らしいんだ」
 話の腰を折らぬよう、そっと訂正を滑り込ませた黎明に詠う金糸雀・セルフィナ(a01034)の言葉を織り交ぜ、更に言い募る。話の展開を予想したセイレーンの少年が静かに応じた。
「要するに、そこに遊びに行こう……って事だよな?」
「うん! だけどね……そこ、今はグドンに占拠されてるらしいんだよぅ」
 口調と共にテンションも急降下。氷壁の勇魚・キル(a39760)の声に力無く答えると、ジーニアスはがっくりと肩を落として息を吐いた。さながら、自分の部屋がグドンに居座られた──そんな表情で。
「……そんな所を占拠するからには、きっと恐ろしい程のスノボ上級者グドンに違いない……! だけど!」
「『そいつらを倒して絶好のスノボぽいんとを取り戻し、皆で雪遊びを楽しもうじゃないか!』……でオッケー?」
「決め台詞取られたー!?」
 竜巻娘・イロハ(a44667)に抗議の手足をぶんぶんさせる少女を微笑ましく眺めながら、セルフィナは、ぽん、と手を叩いて一同に呼びかけた。
「さて、皆さん急ぐと致しましょう。雪の残っている間に」
「また台詞取られたー!?」

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参加者
朽葉の八咫狐・ルディ(a00300)
黒狗・ミスト(a00792)
蠱惑の妖狐・ライカ(a00857)
黎明に詠う金糸雀・セルフィナ(a01034)
焔銅の凶剣・シン(a02227)
銀翼に咲く幸福・ジーニアス(a02228)
氷壁の勇魚・キル(a39760)
山茶花賛歌・イロハ(a44667)
NPC:キリングナビゲータ・シリィ(a90304)



<リプレイ>

●すのーどろっぷ!
 朽葉の八咫狐・ルディ(a00300)が紅茶の瞳を細めれば、空は海を映したように青く、大地は羽を敷き詰めたように白い。
「スノボー日和、と言っていいんですかね」
 冬の雪と春の桜が交わる初春。グランスティードに荷物を載せた焔銅の凶剣・シン(a02227)達は、残雪まばゆい山裾に足跡を刻んでいた。
「ごめんなさい、シン様。私の荷物まで持って頂いて」
「いや、この量をフィーナに持たせるわけにはいかねぇし」
 黎明に詠う金糸雀・セルフィナ(a01034)達を出迎えた春一番の風は、地に座した粉雪の手を取って、再び空へ誘う。まるで空へと雪が帰って行くかのように。
「さいはて山脈の雪景色、素晴らしいものですね……」
 この景色で飲む酒は格別だろうな、なんて返すシン達の会話を聞きながら、竜巻娘・イロハ(a44667)はカボチャマフラーに鼻先を埋めた。
 標高と反比例して気温は低く。1歩歩けば1℃下がるような錯覚さえ覚える程。
「き、キルは寒くない? というか、髪の毛凍ったりしないかな!?」
 かじかんだ手に白い息を吐きかける少女の手を、氷壁の勇魚・キル(a39760)は静かに握り締めた。
「さすがに凍ったりは……と、こうすればイロハも寒くないよな?」

「二人で一つのポケットに手。羨ましいのですよ……」
「恋人達の邪魔はしないようにと思いつつ、少し心が寒いのは何故っ!」
 借り物の遠眼鏡で何を見ていたのやら。
 シリィの声に相槌を打って、黒狗・ミスト(a00792)──通称サスケは、ペンギン着ぐるみの手をばたつかせる。
 そんな微笑ましい? 風景を歩いて、どれだけ経っただろう。蠱惑の妖狐・ライカ(a00857)は空に吐息を放り投げた。
「ライカも愛する奥様連れてくれば良かったですわね……ま、今日はふわもこグドンやイケメンピルグドン(妄想)と『捕まえてごらんなさい。ウフフアハハ』なんてしてみましょうか」
 とはいえ雪山の風景もそろそろ飽きてきたようで。出前を急かすように頬を膨らませながら、ライカは先頭の少女に声を向けた。
「ジーンちゃん、スノボーポイントまだー?」
「……僕らのスノボに賭ける情熱の前には、距離なんて無意味だよ!」
「要するに、まだ遠いと取っていいんだな?」
「ごめん冗談だから雪玉投げるのやめてみんな。目指す場所はあの丘を越えたところさ!」
 抗議の雪玉を防御しつつ、ぴよぴよ・ジーニアス(a02228)は、びしっと皆の視線を指先で誘う。
 丘の上まで五分。セルフィナとシリィが遠眼鏡を覗き込むまで一分。そこには。
「少々、楽しく滑るのには苦しいポイントでしょうか……」
 セルフィナの言葉は、フォロー多めという物だろう。
 そこは、酷い有様だった。木は戯れに引き倒され、食事の跡か動物の骨はその辺に散らかしっ放し。泥だらけの服を纏ったカモシカグドン達がごろごろする度、白雪に泥色が刻まれる。
 しょうがないんです。だってグドンだもの。
「どうします? 近付くなら、周囲の断崖とかに落ちないでくださいね?」
「意味ありげに俺を見なくていいから」
 ルディとミストの言葉を耳で弾きながら、ライカは茫洋とした視線で光景を右から左へと撫でた。
「キュートな……グドン……」
 カモシカグドンが、生肉を野性溢れる仕草で貪っている。
「イケメン……のピルグドン……」
 雑巾みたいな服のモモンガピルグリムグドンが、ボードの上に胡坐をかいて微妙に浮いている。
「ライカ殿ー? ライカさんー? ライカー?」
 目の前で手を振るイロハが見えていない勢いで、ライカは言葉を吐き出した。
「だ ま さ れ たっ!」
「お落ち着けライカ!? ジーン、止めるの手伝……ぐはっ!?」
 止めようとしたミストが流れパンチで雪に沈んだ、という小イベントはともかく。
「サスケの言う通りだよ」
 水を向けられたジーニアスは、ゆっくり息を吐いた。
「──怒るべきは外見じゃなく、あのピルグドンがボードの上で微妙に浮くなんてイカサマをしてやがること! ぜってぃ、許せねぃ!」
「ジーンも冷静じゃねぇ!?」
 シンの叫びを背に、ジーニアスとライカはMYボードを目一杯前へぶん投げ、ボードを踏みしめる。
 人・板・一・体。
「シリィおねいさん力を貸してっ! 具体的には鎧聖!」
 ──鬼気迫る特攻は、グドン達を怯えさせるに充分だったようだ。
 獣っぽい声と共に、十体のグドン達はボードらしき木の板を足下に、ばたばた逃げ始める。その様を見たキルがやれやれと頭を掻いた。
「これは追うしかねぇかな。初めてのスノボーが実戦練習ってのも何だが」
「ええと……景色を見るのとは別の意味でドキドキなのですけれど……」
 まず鎧聖、と駆け出したキルに続いて、セルフィナも恐る恐るボードに足を乗せる。
 横に伸ばした手でバランスを取り、ボードに雪を噛ませて前へ。
 ぶっつけ本番にも程がある戦いは、こうして始まった。

●どらいばーずはい!
「スピード♪ スピード♪」
 先導するライカたるや、チキンレッグの逃げる速度並み。
 速度が増すたびにイロハの舞鈴が警告の音を鳴らす。風は頬を切って、風景が流れていく。
 心中に暗示を刻みながら、イロハはゴーグル越しに敵の背を睨み付けた。
「芸人一座出身かつ、くノ一・ざ・くーるびゅーてぃーな私なら上手く滑れるはず!」
「今の内にいい気分を味わってくださいね、ピルグドン」
 追う者は、白雪に黒炎の陽炎を落とすルディ達、九人の冒険者。追うべきは、軽快に滑るピルグリムグドンと、遅れて着いていくグドン達。条件は同じ、共に一枚の板に命を預ける高速の世界。
「とは言っても、俺やキル、シリィはグランスティードに乗ってる罠なわけだが」
「グドン達も上手ってわけじゃないみてぇだな……追いつける、か?」
 シンとキルが言葉を交わす間にも、彼我の距離は詰まっていた。今や矢が届く距離、だろうか。
「はい鎧聖鎧聖なのですよ。次の人どぞー」
「シリィさん、サスケさんに近付くなら気をつけて。18禁だから」
「何がだっ!?」
 ペンギン着ぐるみinミストに言葉を投げながら、ルディはエッジを効かせた緩やかなカービングで仲間の後ろにつく。
「スノボーは未経験ですけど、バランスさえ掴めれば難しくは無いですね」
 逃げ切れないと感じたのだろう。ピルグリムグドンを除いたグドン達が速度を落としたのを見て、蜂蜜の髪を翠玉の手袋で押さえたセルフィナが、喉刺す冷気に子守唄を響かせた。
「ピルグリムの方はお任せ致しますね」
 白い世界に吸い込まれる歌声に、グドンが次々倒れていく。が。
 正面に迫る大木に、ふと彼女は困った顔を向けた。
「……。すのぼ、したことがないので、止まり方がわかりません……」
「フィーナ!」
 咄嗟にシンがセルフィナを横抱きにして引き寄せる。
 ざざっ、と黒赤のグランスティードを横滑りさせたままで、シンは流れる水のようにグドン達を彗星の刃で薙ぎ払った。
「見てるだけなら微笑ましくもあるんだが……悪いが薙ぎ払う!」
 ……そのまま勢い余って滑って、木にぶつかったが。
「シン様!? すぐに回復しますです!」
「逆にフィーナに守られてどうすんだ俺……」
 残り、三匹。
 グドンが引き絞る弓に向けて走るミストは──鈍重そうな動きからボードごと全身を翻らせ、矢を板で蹴り弾いて蜘蛛糸を宙に走らせる。
「着ぐるみには着ぐるみの戦い方があるのだよ……」
 鉤爪を閃かせた彼の脇を抜けて、雪上を虹の魔炎が舐めた。ルディが織り上げた魔の炎に食われたグドンは、今や忠実な炎の下僕。
「敵のコマを奪い、自分のコマを増やす……すこぶる気分いいです」
「なんで悪役のノリなんだ、ルディ……」
 これで取り巻きのグドンは全滅だろうか。セルフィナの歌に体を預けていたシンは、前方へ瞳を細めた。
「ピルグリムを追った方はどうなった?」
「ジーンさんも熱くなりすぎてましたし、頭を冷やしてあげないといけませんね。急ぎますか」

●へぶんずどらいぶ!
「ぷはっ! まだまだっ!」
 転んで雪中に突っ込んだ顔を跳ね上げ、ジーニアスは再び滑り出した。
「キサマに本当の滑りってやつを見せてやるぜ!」
 曲がらずに、スピードも緩めずに、何度転んでもゾンビのように追ってくるジーニアスが怖くなったのか、ピルグリムグドンは一層速度を増す。と。
「あら、乙女から逃げるなんてイケテナイ」
 そこに、雪面の微妙な癖を読んで回り込んだ狐の影。舞うようなライカの小刻みなステップに合わせて、真紅のスノーボードが雪上の陽炎のように揺れる。
「しかしあのピル、浮いてるのに何で板使ってんだ?」
 流水の動きでグドンを打ち払って追ってきたキルは、両刃斧を構えたまま首を傾げた。
 もしかして、雪の上では浮かべないとかか? なんて考えつつ、小さな弧を描くドリフトターンで木をかわして、ピルグリムグドンと横並びになる。
 ぎぃん。
 突き飛ばすような爪とキルの盾との間で咲く火花。ボードを蹴り飛ばすタイミングを計るキルの影から、褐色の風が滑り出た。
「なんかレアっぽいグドンだけど、よくもキルと滑ってるのを邪魔してくれたな!」
 マフラーと帽子のうさみみに螺旋を描かせるように、イロハは身を捻る。そしてそのまま、足を跳ね上げての720度スピントリック……!
 その様を喩えるなら、滑りながら回転して突っ込む、スノボスパイラルジェイド奥義(仮名)
「うむ、我ながらヒーローっぽい! ……ただ、勢いつき過ぎて止め方が──」
 語尾は風になった。
「い、イロハー!?」
 必要以上に加速して滑り去っていく彼女と、それを追うキルを見て、傷ついたピルグドンは汗をぬぐう。ようやく一息、と安心した瞬間。
「たっぷり、楽しませて頂戴──」
 ねっ♪ と言葉尻が跳ねたと同時に、ライカの手で閃く夜殿神楽の右刃左刃が重なるように大気とピルグドンの腕を断つ。
「追い詰めた!」
 更には、肉迫するジーニアスの声と同時に、駆け抜けた異形の炎がピルグドンの背を掠めて弾けた。何度も、何度も、喰らい付くように。
『…………!』
 内心悲鳴を上げ、ピルグリムグドンは急激に体を捻ってターンを掛けた。冒険者達の追撃から逃れようと、右へ。向かう先は──
「コースから外れて逃げる気かっ!?」
 ──断崖絶壁。人が手を伸ばしても届くことの無い世界。
 だん、と崖の縁を蹴るように、モモンガピルグリムは身を踊らせた。
 彼にとって、自らに浮遊能力があることをこれほど有り難く思ったことは無かったに違いない。人の手に侵されない空という安全な世界から、羽持たぬ愚者達を笑おうと振り向く。
 ──そこには。
「のーがーさー!」
 ──鼻先30センチの距離、そこには。
「ねーーぃっっ!!」
 ──鬼の形相をしたエルフの少女が、いた。
「「えええええええ!?」」
 ありえねー、の声はピルグリムのもの。加速した勢いのまま一瞬たりとも躊躇することなく、ジーニアスは崖へと跳んでいた。いや、飛んでいた。

 ──雪面まで、30m。

 空飛ぶグドンと空駆けるひよこ彗星の空中戦。
 その様は、遥か後方にいてさえ窺えた。
「……あら?」
 私達は雪の上を滑りに来たのに、どうしてジーン様は空を飛んでいらっしゃるのでしょう──状況が掴めないままの表情で小さく首を傾げて、セルフィナはその光景を見守った。

 ──20m!

 命が惜しくないのか、と瞳で問うピルグリムに、ジーニアスは炎に揺れる拳を振り上げて叫ぶ。
「絶壁顔面滑り落ちは僕の得意技さ!」
 ……滑りというか、ただ落ちるだけだが。

 ──10m!

「怒りのデモニックフレぇぇイムー!!」
 涙すら乾きそうな炎に包まれて、ピルグリムグドンが燃え尽きる。

 ──そして──0m!
 ……を超えて、マイナス2m!(雪の下に埋まったっぽい)

 ずずぅ……ん……と雪崩が心配になる音を響かせて、世界は沈黙する。
 誰も怖くて口を開けない世界の中、キルがぼそっとつぶやいた。
「……命の抱擁が要る事態になってなきゃいいが……」

●うぃんたーふぉーる!
「誰かが雪に埋まりそうな気はすげーしてたんだが」
「予想外と言っていいのか……ジーンさんでしたか」
「『何でお前が無事なんだ?』みたいな顔でこっち見るな。シン。ルディ」
 半眼で睨むペンギンことミストは、この後、帰路で偶然にも小さなクレバスに嵌まって雪中に消えることとなるのだが……その事は彼の名誉の為に伏せておくことにしよう。

 救出されたジーニアスは、慌てて設置されたテントの中でがちがちと凍えていた。
「ジーン様、あまり無茶をなされないで下さい……温かいココアが入りましたので、お体を温めて下さいね?」
 心まで温めそうな甘い湯気が、セルフィナの手でゆらゆらと揺れる。
 ココアもいいが、俺は景色見ながらウィスキーも飲みたい……なんて言いながらシンが空を見上げれば、春の太陽は冬に比べて気が長く、未だ天に留まっていた。
「もう少し滑れそうだな。フィーナ、一緒に行くか?」
「はい。運動は不得手ですので、あまり上達できないかもしれませんけれど……」

 優しい速度で、ライカの瞳の中を風景が流れていく。
「せっかくの貸切状態、楽しまないと♪」
 真紅のボードでパウダースノーを切り裂いて、ライカは雪を蹴る。鋭いエアトリックに追いつけないマフラーが、揺れる金の髪を追って、ふわりと揺れる。
「俺も同じ技を──おわ!?」
 着地失敗。雪の中を転がっていくキルを見て、誰かが笑う。そして笑った者もまた転ぶ。
 イロハが差し出した手を取って、セイレーンの少年は雪を払って立ち上がった。
「ふう。これ、結構難しいな」
「急に無茶はしないで……その、一緒にゆっくり……滑りませんか?」

 のんびりと滑りながらの帰り道。もはや邪魔する敵はおらず、残雪は彼らだけのもの。皆、粉雪の感触をボード越しに感じてながら帰路についている。
 そんな中、滑ることができない少女がルディの背中に一人。
「ううっ……退治が終わったら力いっぱいスノボを楽しむつもりだったのに!」
 背中でじたばたして、首締めの勢いでしがみつく怪我人に振り返り、ルディはため息をついた。
「ジーンさん。ボクのほうが背が低いんで、暴れるとバランス的に危ないですよ」
「ま、こうなっては仕方無いのです。義妹よ、今日は存分にルディさんの背で甘えるが良かろうですよ。おねいさんちょっと羨ましいぞっ」
「な、何を言うのさおねいさーん!?」
 転びつ滑りつ去って行く重騎士の背に叫ぶジーニアスの声を聞きながら、ルディは滑るスピードを速めて、唇だけを小さく動かした。
 ──予想とは違う形で一緒に滑ることになったけど、まぁ、これはこれで。

 時間を掛けて登った山も、滑り降りてくればほんの一時。
 麓に近付くにつれ雪は姿を消し、緑の大地が覗き始めている。
 春はもう、目の前。去り行く冬の後ろ姿へ、誰かがそっとつぶやいた。
「楽しい思い出を、ありがとう」


マスター:麻生南 紹介ページ
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