ミッドナーの誕生日〜瞳石の川辺でお昼寝を〜



<オープニング>


 瞳石。そう呼ばれる石がある。元は高い山の源流より転がり落ち、流れて下り、やがて丸い形となって流れ着く。
 元の石の材質なのか、どうなのか。それらは全て、瞳のような模様を持つ石となり、下流の川底へと流れ着く。
 更に、人の手によって磨き上げる事により千差万別の模様を作り出すそれは、その奇異な美しさを称え「瞳石」と呼ばれるようになった。
 吸い込まれるような輝きを持つ、様々な「瞳石」は、やがてお守りとしても扱われるようになった。
 そして、その「瞳石」が最も美しく磨かれるというのは、この雪解け水の季節……ということなのであるが。

「丁度その近くに、綺麗な桜が咲いてるんだけど。ミッドナーの誕生日も近いしさ……どうかなあ?」
 アルカナの言葉にミッドナーは少し考えた後、軽く肯定の意思を示す。どうやら、最近ちょっとお疲れのご様子である。
「うん、それじゃ決まりなんだよ。皆はどうする? 勿論行くよね?」
 アルカナはそう言うと、冒険者達に目を向ける。
 季節は、もう春。ちょっと足を伸ばしてみるのもいいかもしれない。そう考えた冒険者達が、自分の荷物を早速まとめ始めるのだった。

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参加者
NPC:夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)



<リプレイ>

 春。それは目覚めの季節。冬に眠っていた様々なものが目を覚まし、空気すらも眠りから覚めたかのように暖かさを増す。
 大地を覆っていた雪は解け……大地へ、川へと流れ出す。流れ出した雪解け水は、様々なものを生み出していく。
 ……今日の冒険者達の目的である「瞳石」もまた、そういったものの1つであった。
「気候は穏やか、食べ物も美味しい。春生まれの方が羨ましいですね」
 鳴かずの金翅鳥・アクエリアス(a56014)はそう言うと、緩やかに水の流れる川に足を踏み入れる。
 不可思議な模様を持つ瞳石の輝く水底は、それ自体が春の化身のようにも見える。
 その中から1つ、緑色の原石を拾い上げたアクエリアスは、川から上がって適当な場所に座る。
 キュッ、キュッ、キュッと。静かに、しかし真剣な目で磨き始めたアクエリアスは、いつの間にか手元を覗き込んでいる人物が居た事に気づかなかった。
「……いつからそこに?」
「……少し前からでしょうか」
 その覗き込んでいた人物……夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)は、どうも、と言いながら視線をアクエリアスから外す。
 上流へと上っていく寵深花風なリリムの姫宮・ルイ(a52425)が少し心配なようだが、すぐにその視線は別の方向へと注がれる。
「はぁんあ〜 春の小川はよぉ〜 春の魚子はよぉ〜」
 聞こえてくる舟歌……なのだろうか。ともかく近づいてくる何かの歌の聞こえてくる方向を見ると、瞳石の川を下ってくる1艘の船がある。
 なんちゃって船乗り。そうとでも言うべきな格好に身を包んだ風来の・マイハ(a56215)は、そのまま下っていくかと思いきや、突如船を止める。
「よいしょ……っと!」
 颯爽と船を飛び降りてきたマイハは、何やら取り出したマグロをミッドナーへと渡す。
「こんにちは、ミッドナーさん。お誕生日おめでとう!」
「……ありがとうございます。ところで、その」
「これぞ黒いダイヤ! DHAたっぷりだよ!」
 このマグロ、何処からとってきたんだろう。そんな疑問を封殺し、マイハは早速マグロを刺身へと仕上げていく。
「ふふふ……これからは漁の季節!! あたしは海に出る!!」
 豪気な海の女は、後ろなど振り返らないのか。そのまま川を下っていくマイハを、誰が止める事等出来ようか。
「……嵐のようですわね」
 近くで見ていた紅色の剣術士・アムール(a47706)は、そう呟く。
 まあ、長い冬が終わったのだ。彼女くらい元気なほうが、あるいは良いのかもしれない。
「瞳石、本当に綺麗になっていますわ」
 そう言ってアムールもまた川を覗き込み、1つ掬い取る。
 石のような宝石、宝石のような石。美しいという前提さえ満たしていれば、両者に果たしてどれ程の差があるというのだろう。
 アムールは手に取った瞳石を、軽く磨いてみる。その美しい輝きは、本当に吸い込まれそうで。アムールはもう1度、もう1度と。瞳石を磨き始めていたのだった。
「こんにちは、はじめまして」
 そう切り出したのは、凪・タケル(a06416)。傍らにいる晴天陽光・メリーナ(a10320)もタケルに続いて挨拶をする。
「ミッドナー殿とお会いするのは初めてですが……お話はいろいろ。どうぞお幸せに」
「この一年がミッドナーさんにとって幸多き年でありますように」
 どんな話なんだろう、と気になりつつも、いつも通りに挨拶を返す。
「ええ、ありがとうございます。貴方達にもどうか、最良の未来が訪れますように」
 そう言って、3人が柔らかく笑った……その時。
「うわああああ!」
 突如響いた悲鳴に、3人は視線を鋭くする。
 まさか、こんな場所にモンスターが。
「桜だ! 桜がぁ!」
 声のする方向に向かってタケルが建御雷を構え、メリーナがタケルをサポート出来る位置につく。
 やがて、轟音と共にやってきたのは。
「ワチキを見てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 その姿は、まさに桜前線。この春に注目度大上昇、桜のきぐるみを着込んで爆走する赤い風・セナ(a07132)。
 あまりの事に、タケルは思わず構えていた建御雷を取り落としてしまう。
「ああ!! 見てる! 皆ワチキ見てる!! 何か視線ちょっと痛いけど見……」
「待たんかあああい!」
 そこに現れたのは、悪をぶっ飛ばす疾風怒濤・コータロー(a05774)。
 何処から追いかけていたのか、すっかり息の切れたコータローはセナを捕まえる。
「おい、アンタも手伝ってくれ!」
「え、私?」
 近くでボーっとしていた光へ導きし者・リスティー(a49437)や、思わず放心していたタケル達と力を合わせ、セナを抱えあげる。
「あれ? どこへ連れて行くん?」
「わっせ、わっせ」
「え? そっち川……」
「そぉぉれえ!」
 ドボーン。川に投げられたセナはブクブク沈みつつ、満足そうに叫ぶ。
「ミッドナーさ誕生日おめっとー!」
 何かが脱出したような影が水底を進んでいくところを見ると、助けなくても平気そうではある。
「きれいな石ですねぇ。自然というのはこういうものを作り出してくれるから面白いものですよね」
 何事も無かったかのように瞳石を検分し始めるタケル。
 桜前線の影響はもはや、過去のもの。静かな時間がまた、流れ始めていた。
「あ……」
 屈んだタケルの頭に、桜の花びらがひとひら、舞い落ちて。
 メリーナはクスクスと笑いながら、それを摘み上げるのだった。
 そう、穏やかに、緩やかに時間は流れていく。
「綺麗な桜ですね……」
 蜂蜜漬けの桜にお湯を注いでいた楽風の・ニューラ(a00126)は、静かに空を見上げた。
 静かに雲は流れ、満開の桜から時折舞い散る花びら。
「……いい日和ですね」
 ぼーっとしていたミッドナーが、そんな事を呟く。
 こんな静かな日々。平和な日々。
「お久しぶりです、ミッドナーさん」
「お誕生日おめでとうございま〜す!」
「どうも……プラチナさんは性格変わりました?」
 全て知る星海の聖母・マリウェル(a51432)や光纏う黄金の刃・プラチナ(a41265)と、そんな言葉を交わし。
「昨日でも明日でもこの味は損なわれる……つまり今日飲まれる事。それこそがこのシャンパンにとって一番大事な日なんです。そして今日それをあなたに飲んでもらう。その為にわざわざ取り寄せた逸品です。誕生日おめでとう」
「シャンパンの都合は知りませんが、美味しいっていうのは大事ですよね」
 ヒーローになり切れない盾・オレサマ(a45352)の注いだシャンパンを、飲み干していく。
「……いい日ですね」
 さっきとは微妙に意味の変わったミッドナーの台詞に苦笑しつつ、ニューラは桜カステラにナイフを入れる。
 本当に、よい日だ。こんな日々が、いつまでも続けばいいと願うほどに。
 プラチナの連れてきた猫の口をムニムニしているミッドナーを見つつ、ニューラはそんな事を考えていた。
「んふ〜。誕生日おめでとう御座います♪」
「ありがとうございます、ゼソラさん……おや、そのスーツは」
「あ、分かりますー?」
 ミッドナーと同じ格好をして現れたみんなの・ゼソラ(a27083)に、ミッドナーはくすぐったそうに笑う。
 結構、まんざらでもないらしかった。
「ミッドナーさん誕生日おめでとう! この1年が良いものになりますように!」
「ありがとうございます。アキナさんの1年も、幸多いものでありますように」
 月を宿す風の翼・アキナ(a50602)からアクセサリーを受け取ったミッドナーはそう言って、簡単な握手を交わす。
「久し振りに舞を舞って見ますわね……暫く振りですので少しウォーミングアップに少しお浚いして見ましょうか」
 そう言って舞い始めるマリウェルを感心した目で見る仲間達の前に、ニューラの入れたお茶が運ばれてきて。
 静かに始まった、静かな誕生日パーティ。その場所がとても暖かかったのは、きっと。春のせいだけではないに違いなかった。
 そんな彼女達とは、少し離れた瞳石の川原。
「これが瞳石……少々怖い気もしますけど……とても綺麗な石ですね……」
 そう言って、ハー・モニカ(a37774)は自分の持つ瞳石を眺めた。
「瞳石、貴様見ているなっ」
 驚いてモニカが振り返った先にいたのは、ドギャーン、とかズギャーン、とかいう効果音が出そうなポーズで自分の石を見つめている彩雲追月・ユーセシル(a38825)。
 どうやら、凄い勢いの独り言だったらしい。
「あ、いや、これに思いっきりガン見されてる気がしてさ」
「そ、そうなんですか……」
「この瞳石に、私の願いを込めましょう。私の分身となり、いつでも貴方の傍に……だったかなあ?」
 いつの間にやら現れたトレジャーハンター・アルカナ(a90042)が、そんな事を言った。
「瞳石の逸話……ですか?」
「うん、瞳石には色んな逸話があるんだよ。自分の全てを見透かされてしまう、とかね?」
 そう言ってニコニコと笑うアルカナに、モニカは思わず、瞳石に自分の心が映し出されていたのでは、といったような気分になってしまう。
「あ、それと気づいたら瞳石と入れ替わったエルフの男の話とか?」
「え、やっぱり呪われてんの?」
「そんなわけないんだよ」
 ユーセシルとそんな応酬を始めるアルカナから視線を外し、モニカは自分の手の中の瞳石を見る。先程よりは、怖くなくなった気がして。
 吸い込まれていきそうな感覚に陥りつつも、瞳石を再び磨き始めた。
「あ、アルカナさん、良かったら一緒に飲みますか?……お酒、飲め……ますよね?」
「勿論なんだよ」
 ユーセシルを川に沈めたアルカナが、踊る黒い猫・レイオール(a52500)にそう笑い返して。
 実はアルカナが酒乱だった事を知って少しレイオールが後悔するのは、ほんの少し先の事である。
「この石でぇ、刀身をぉ、飾り立てられたぁ、儀礼用短剣をぉ、頼むことは可能なのでしょうかぁ」
「おうよ、勿論だぜ」
 職人に磨いた瞳石を渡した吟遊詩人・アカネ(a43373)は、自分が歩いてきた川辺のほうを見る。
 そちらは何があったのか、プラチナやオレサマ達が、元気に走り回っていて。
「わかいのはいいなぁ」
 などと、そんな台詞が思わず口を付いて出てしまう。
「なら、混ざればいいじゃない。行こうよ?」
 丁度ミッドナーのところへ向かうところだった夜明けの風ききながら・セリア(a16819)にそう言われ、アカネは少し考える。
 確かに、1度挨拶をするつもりだった。ほんの少しくらいなら、いいかもしれない。
「よし、決まり! ミッドナー、誕生日おめでと〜♪」
「おや、セリアさん。ありがとうございます」
 そう、混ざってみれば年の差など些細な事。要は、如何に楽しむか、なのだ。
 ……そう、如何に楽しむかだ。古来より、花より団子という言葉があるように。
 なんだかモチモチした桜色のお菓子を黙々と食べているような、そんな楽しみ方があってもいい。
「……デストはん」
「……なんだ」
 右左をも判ぜず地を這うだけ・ユキノシン(a37388)の言葉に、緑の影・デスト(a90337)は無愛想に答える。
 別に怒っているわけでも不機嫌なわけでもなく、彼のデフォルトであるのだが。
「あんたはんが往く旅の道が捜し求めている何かに続いてる事を祈っとるよ」
「……そうか」
 互いに短い台詞の中で、それぞれの想いを込める。
 言葉にすれば陳腐になってしまいそうで、しかし決してくだらなくはない何か。
「……旨いな」
「そうじゃのう」
 春の日差しの中で、静かに時は流れ行き。
「いつぞやとんでもないものばかり飲ませてくれたことは忘れていないぞ、犬」
「おいおい、大分前の事じゃねーか」
 酒の入った暁天の武侠・タダシ(a06685)とコータローの、男同士の膝を突き合わせた話し合いが眼下では始まっていたりして。
「じゃあ、私はちょっとルイさんを探してきますので。お二人はゆっくり話しあっててください」
「おう」
「ああ」
「お茶の席が……」
 火花を散らす2人は、それでも平和的であったし。再び桜前線が現れていた以外は、おおむね平和であるようだった。
「デスト様、私は貴方の平穏無事を願いますわ」
 硝華・シャナ(a52080)から差し出された瞳石を受け取り、デストはシャナの頭に手を置く。
 特に意味はなく、単なる癖のようなものなのだが。それはある種の感謝の意味も込めていた。
「……貰っておこう」
 そう言って、一緒に来た冒険者達のほうへと振り返る。
 タダシに貰ったマントを羽織ったミッドナーは力尽きているようで、起きる気配は無い。
「そろそろ帰る時間、かな?」
 そう言ったアキナの言葉に、オレサマが頷いて。
 冒険者達は、日も暮れかけていた瞳石の川を、ゆっくりと後にするのだった。


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