≪岩腕の王ブラキオン≫温泉で安らぎを



<オープニング>


 バナナが豊かに実りる森を抜けた先に広がる荒野がある。
 かつては七大怪獣の一体である岩腕の王ブラキオンが眠っていたこの荒野……そして、荒野に在る彼の眷属達の洞窟を只管に下へと向かうと決戦の地となった唸りの渓谷の底に出ることが出来る。
 そこは生命の力に満ち溢れるワイルドファイアにあって、異質なほどに生き物の居ない場所なのだが――

「見つけた資源は有効利用しなければならないと思うんだ」
 白乳色に濁るその温水が彼方此方から噴出す渓谷の下は、人の眼から見れば体の疲れを癒すのに最適な資源の宝庫……つまりは温泉地帯なのである。
「皆疲れてるだろうし、疲れを癒すには温泉が一番に違いないんだぞ。うん」
 ブラキオンが浸かっていたところを見ても、それなりの効用があるのかもしれない。単なる思い込みの可能性の方が高いが。
「それに、ほら、今まで苦楽を共にしてきた仲間と、最後に裸の付き合いと言うものがあっても良いじゃないか? 良いよね?」
 ね? と、懇願するような視線を向けてくる、紫猫の霊査士・アムネリア(a90272)の唇に人差し指を当てて、
「……つまり、温泉に入りたいのね?」
 必死に主張するアムネリアを黙らせると、悠久の誘い・メルフィナ(a90240)は微笑んだ。

「では、これから温泉に向かうが――その前に諸君らに説明しておくことがある」
 後ろの方でアレヤコレヤと準備を始めるアムネリアに変わって、なぜか軍人口調で話し始めるメルフィナ。
「予めの調査で、これから向かう場所は三つの大きな丸い池のようになっている場所だと言う事が判明した。これをそれぞれ、女湯、混浴、男湯の三つに分ける」
 真っ白な犬の背中を使って簡単な図を描くと、物凄く嫌そうな顔をしているミルクを全く意に介せずペシペシとそれを叩く……用は真ん中に混浴を置いて女湯と男湯を分けるつもりらしい。
「タオル、水着の着用は許可。ただし、全裸でも問題は無い。そして混浴にはミルク、女湯にはリスト、男湯にはボーラが配置されている。もし何かがあれば……解るな?」
 犬怪獣達は食いしん坊だ。
「説明は以上。諸君らの健闘に期待する!」
 メルフィナは護衛士たちを見回すと、にんまりと満面の笑みを浮かべた。

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参加者
NPC:紫猫の霊査士・アムネリア(a90272)



<リプレイ>

 ――その日、眷属が住処にしていた洞窟を抜けた先の温泉に……多くのブラキオン護衛士達の姿が、あった。それぞれがそれぞれ、思い思いの表情を……。
「輩も人の子。肌を人目に晒すのは恥ずかしい……ゆえに。遠慮無く水着を着用させてもらった!」
 そこはかとなく優美なモノローグを背負って現れたメロスの雰囲気を打ち破るように、ディスティンが全身にフィットする水着を着て仁王立ちだ。そんなディスティンの横を白いノソリンに変身したメルフィが「なぁ……なぁ〜ん!?」と泳いでゆく、泳いでゆくと言うよりも沈んでゆく。ムシャリンやホネリンに次ぐウミリンに……なんて考えていたメルフィだったが、これではサブマリンである。
 放熱の悪さにダウンしたディスティンと共に沈むメルフィを慌ててナナが救出に行ったりもしたが、ナナもまたノソリンのままだったあたり、動揺していたのかもしれない。
「アラハース、ブラキオンと倒してきましたけど……こんなに大きな怪獣が犇めくワイルドファイアって凄いですよね……」
 腰まで湯に浸かりながらナナ達の様子をぼーっと見守っていたアムネリアにアリスが近づく。ランドアースでは余りお目にかかれないような巨大生物を見てきた彼女の言葉には実感がこもっているものだった。
 アリスの言葉にそうかと頷くアムネリアをリィがマジマジと見つめる……見つめる……主に胸の辺りを。そして、赤地に大輪の花の水着の上に更にタオルまで巻いた自分の胸を見下ろし、もう一度アムネリアを見つめると、
「だ、断じて胸を隠そうとしておるのではないのじゃぞっ……!」
 赤面しつつ誰も聞いていないことを必死になって主張した。リィの様子に首を傾げるアムネリアの後ろから「どれくらい成長したかえ?」などと不穏な言葉と共に手が伸びて――
「……女性は胸の大きさを比べあうのが風習って本当だったんだ」
 にゃー!? と変な声を上げてファムトから逃げ回るアムネリアやリィなどを見て呟くマイシャに、
「そりゃ定番だからな。だがこっちもこっちで比べるモンがあるだろー」
 果実酒をチビチビと飲んでいたジャムルが頷くと、こちらも不穏なことを言い始める。そして「マイシャ、お前のもんは小さいのォー」「こ、これから鍛えて大きくするのだ!!」などと皆様のご想像にお任せしますとしか言えない会話を繰り広げているところを見るとジャムルが勝ったようだ。
 一頻りそんな会話を繰り広げたあと再びゆったりと温泉に浸かって周囲を見回せば、自ら魅惑のバディと豪語するクーリィや脱いだら凄いらしいリュリュの姿が……、
「しかし最近の女性は素晴らしい発育ぐあ――」
「……それにしても、まだ成長期のアムネリアは別としてもメルフィナは本当にご愁傷様だよ」
 思わず呟いたマイシャは次に眼に入った真に残念としか言い用の無い女性の姿に思わず言葉を飲み込み、ヴィアローネが代弁するように悲しい微笑を浮かべた。言われたメルフィナは「何が?」と満面の笑みで返したりもしたが、声は一トーンほど普段よりも低い。
 あの表情は危ない……触らぬ何に何とやらである。が、何時ぞやほっぺたをつねられた事に対する報復を誓っていたレジィは運悪くメルフィナの後ろに回りこんでいた為にそんな表情は見えていなかったようだ。
「ふはははは! ほっぺたつままれたの汚名を挽回……じゃねぇ、返上してやった!」
 完全にやってやったほっぺたむにむにし放題だ、ほっぺただけと言わずにこのままくんずほぐれず白百合な世界がこんにちわなほどに――などと考えていたレジィの眼に必死になって何かを訴えるような表情で首を横に振るユリアとリィザの姿が映る。
 何処となくぎこちなく後ろから抱きつく形になっているレジィがメルフィナの表情を覗き込むと、メルフィナは相変わらず満面の笑顔だった。そしてレジィとメルフィナはお互いに見つめあうと、あははうふふと笑いあう。
「は〜……まったりですわ」
 ゆったりと温泉に浸かりながらリィザが息を吐くと寄り添うようにユリアが並び、
「そういえば木の実を一緒に採りに行こうかって話から、親しくなったんだっけ?」
 などと知り合ったばかりの頃の話に花を咲かせる……吟遊詩人に取り押さえられて足の裏を犬怪獣に舐められると言う罰を受けて、悶絶する紋章術士を遠くに見ながら。
(「ハプニング、ハプニングですよっ!」)
 馴れ初めを見守る気満々なリィザ達はどうやらレジィを助ける気が無いらしい。本能に忠実に生きたって良いじゃない、ワイルドファイアなんだしとくんずほぐれずに見えないでもないその様子を見ていたカヅチはご満悦だったけれど。

「ん? 湯船には浸からないのか、ですって?」
 諸事情ありまして、と不思議そうに尋ねてきたペルシャナに意味深笑いを浮かべ、ソルティークは手に持った杯を傾ける……人それぞれ色々なことがあるのだろう。ペルシャナは気にしない事し、手に卵を持って手招きするイズルの元になぁ〜ん? と近寄っていった。
「ねぇアムネリア、ミルクにお湯かけても平気かしら?」
 リィやセラフィードに抱きつかれて大人しくしているミルクを洗って乾かした後にふかもこ増量したところで抱きつく作戦らしい。イズルから卵を受け取って喜んでいるペルシャナを微笑ましく見守っていたアムネリアがラシェットに大丈夫と頷くと、ラシェットは早速ミルクへと近づいて行くのだった。

「ここはブラキオンがいないと、絶好の癒しポイントなぁ〜んねぇ♪」
 疲れが取れるなぁぁ〜〜ん♪ と温泉に浸かって伸びをするリュリュに目を細め、「色々なことがあったからね」とフィードは言う。ブラキオン討伐までの時間……それは長いような、短いような、本当にそんな時間だったが、思い起こせば色々なことがあった。
「そうでござるな……主にホモザルの姿やら……ホモザルの踊りやら……」
 瞳を閉じればほら、ホモザルがクネクネしている姿や、ちょっと恥ずかしいあの踊りやらが……
「アーッ! されてる人も居ましたよねー」
 アーッ! が何なのかは謎であるが、クーリィもまたホモザルを思い出したらしい。「……拙者の人生に色々な汚点ばかり残していったでござるな」とアレスタは遠くを見つめる……思い出すことが汚点ばかりと言うのもなんであるが、兎に角それもまた思い出だ。
「ウサギは、バナナを集めるのが大変だったけど楽しかったのです!」
 あとあと、ブラキオンが思っていたよりもずっとおおきったのです! と興奮気味に両手を広げてウサギは主張し、
「バナナには嫌な思い出もあるなぁ〜んけど……いい思い出も……思い出……」
 バナナに関することを思い出そうとしたリュリュの動きが固まった。
「結局一番被害が大きかったのがバナナ集めだったような気がしないでもないのですよ……?」
 走馬灯のように思い出される楽しい思い出にうわーんと顔が崩れたリュリュに変わってミスティアが続ける。サル怪獣に襲われるわ、鳩怪獣達の襲撃を受けるわ、リストに食われるわ、バナナに潰されるわ……リュリュが泣きたくなるのも頷けると言うものである。
「憎たらしい相手でした」
 バナナを奪い去ったサル怪獣を思い出したのか、あの眷属は本当にやってくれましたとカヅチは遠くを見つめる。
「逃げた眷属たちが悪さしないか……は、今は考えないで置きましょうか」
 そしてなんとなく同じ方向を見つめて、ゆったりと温泉に浸かりながら軽く酒をあおっていたマサキもまた眷属について考えていたようである。
「ん? 王が居なくなった眷族なんてただの怪獣だぞ」
 イリシアとセラフィードから受け取ったバナナやらを五つの果物を使った飲み物を飲んでいたアムネリアは軽く言い切っていたけれど。
「あ、女の子の腕から腋のラインって柔らかくて魅力的ですよね(アムネリアさんもお疲れ様でした)」
 そんなアムネリアにカヅチがねぎらいの言葉をかけようとして、うっかり本音と建前が逆になる。言われたアムネリアは自分の二の腕とカヅチを交互に見比べて……両肩抱くように隠すと口の辺りまで温泉に浸かってあからさまに不信な視線をカヅチに向けた。
「あっせや〜アムネリアちゃんがやってた踊りな〜、一生懸命練習したさかい、踊ってみるわ〜なぁ〜ん♪」
 そんな事を言うつもりはなかったんですブラキオンの呪いですとか言えば言うほどに胡乱な眼差しを向けられるカヅチを無視し、アユムは「ねこねこなぁんなぁんねこななぁ〜ん、くるっとまわって……なぁ〜ん♪」などと手を猫っぽく曲げて踊る。その様子にアムネリアは口元まで温水に使ったまま眉を寄せ……顔が赤くなっているのは温泉の熱のせいだけでは無さそうだ。
「でも一番はアムたんのお帰りなさいの問答がトキメキでした」
 それも良いんだけどねーとクーリィは言い、
「はっはっは、そう苛めるものではない……そうだ。アムネリア殿のお誕生日もお祝いせねばな!」
 ディスティンは彼女達に朗らかな笑い声を上げると、歌のプレゼントと称して大きく息を吸い込んで――ハァ〜 ババンババン〜♪ ごはんにする〜♪ おふ――と、何かとんでもないことを歌い始めた。「なぁ!? だめ……! それはだめなんだから!」と必死になってディスティンの口を両手でふさごうとするアムネリアと、それを見て楽しそうに笑う仲間達から湯煙に覆われる空に視線を移し……ふと、ホモザルと因縁深かったあの人はどうしているのだろう? とマサキは考えるのだった。

 浮き輪に乗ってプカプカと暖かい湯に揺られながら、リンは湯煙に覆われる空を見上げる。
 隣から聞こえてくる笑い声は仲間達のものだろう……仲間が居るって良いなぁとしみじみと思いながらぼぅっと浮かんでいると
「邪魔するよ」
 ガーベラが全裸で、羅漢の如く威風堂々とタオルを片側の肩にかけ湯に浸かる。その姿たるや実に男らしい……女だけど。そしてふぅっと一息つくと近くに居たウィンスィーに酒を差し出し、やらないか? と一言。
 何ですかその意味深な言い方はと言いつつウィンスィーは杯を受けると、私も用意してきたのですよとバナナを使った飲み物を返し、イスズやエルノアーレにも振舞う。
 そして特にリンには変なトラウマを植えつけてしまったようだしと困ったように笑いかけ、「次があればもっと綺麗な形でできるように精進しないと!」と小さく拳を握る……何を綺麗になのかとリンがカクカクしていたけれど、きっと色々なものを綺麗にやるのである。
「今回は長い戦いでしたわね。色々な意味で……」
 思い返せば色々な事が……エルノアーレは、主にアレスタと同じものとなりそうな回想を途中で停止させると「それにしてもこの温泉に自分が入ることになるとは思いませんでしたわ」と伸びする。
「でも、やっぱり温泉は良いですねー……気持ち良いのです」
 リストの首筋あたりを優しく撫でながらイスズは良いじゃないですかと気持ち良いしとご満悦な様子であった。

「……短い間だったが、やっと決着がついたな」
「……否、まだだ、まだ決着はついていない」
 万感の思いを込めて呟いたガイヤだが、トウガは力強く首を振る。そんなトウガにガイヤはふっと笑みをこぼすと「そうだな」とニヒルに笑い……二人そろって地面を這うように湯煙の向こう、つまりはいわゆる楽園へ向けて突き進む。そこから漏れて来る笑い声はそんなに多くは無いが、確実に何人かは居る! そして彼等は一人ではない、隣には戦友、そう何物にも変えがたい戦友がいるのだ! やらねばならぬ、彼のためにも! ほんの少しだけ真っ赤に染まる鋸を手に微笑む妻の姿が脳裏をよぎり、体がガタガタと震えたりもしたが、それを押してでも突き進まねばならぬ時が男にはあ――
「あらあら、何をなさっているのかしら?」
 真っ白な足が視界に入ると同時に上のほうから声がする。地面に這いつくばったままの姿で声の主を見上げれば、エルノアーレが仁王立ちで視線を自分達に向けて、さらにその後ろでは花がほころぶような笑顔で自分達を見つめるイスズの姿もある……何か黒いものがその後ろに見えるような気がしたけれど。
(「くっ、こんなに近くても煙が邪魔で……っ!」)
 何も見えやしなかった。何をなさっているのですか? ともう一度問うエルノアーレに、
「望み? ……俺のではない! これが人の夢! 人の望み! 人の業!」
 ガイヤは今まさに舞台に幕を下ろす悪役のような台詞を吐いてみると、彼女達は残念そうに溜息をつき、「え〜っと……鼻血噴いて倒れる? もしくは、リストに囓られて倒れる? どっちでしょ?」と、トウガは恐る恐る自分達の結末について問うてみるが、
「意外と早くやってきました」
 そんなトウガの問いかけを無視してウィンスィーが少し火照った頬に手を当てて呟く……勿論、綺麗な形でできるようにやる機会がである。
 小動物が上げる断末魔の叫びをバックミュージックに聞きながら、メロスはまったりと温泉につかり「ほどほどにね〜?」と、取り合えずの声をかけてみるのだった。

「あ、星なぁ〜ん」
 見えるはずの無い星が二つほど落ちたような気がして、あれ? と、アデルは空をマジマジと見つめる。
「……愚かな」
 イエールは軽く首を振る。おそらく旅立っていった仲間達だろう、先ほどから二人ほど見えないし。彼らは失敗を見て自分達の行動を思い返したユリアスも首を振り、
「本当、失敗談には事欠きませんね」
 と遠くを見つめる。そんなユリアスにの肩を、でも最後まで犠牲者も出さず勝てて本当に良かったなぁ〜んとアデルが叩き、微力であれど力に慣れたなら重畳というものだと言えば、それもそうですねと男三人ゆるりと湯に使って親睦を深めるのだった。

 まだ空からは薄い光が漏れて来るが、そろそろ夜の闇に包まれるだろう……。
 のぼせたミスティアが湯船に漂っているのを発見したアムネリアがミルクにそれを回収させていると、
「皆さん、本当にありがとうございました。アムネリアさん、私達を導いてくれて、ありがとうございます」
 宴の終わりを告げるように、イリシアが優しい表情で仲間達を見回す……そしてそれに呼応するように、さようなら、またあおう、ありがとうと、それぞれがそれぞれの別れの言葉を口にした。
 アムネリアはそれらの言葉に、頷き、あるいは手を振って応えると、彼等の背中が見えなくなるまで見送る。そして最後に犬怪獣達を抱きしめてから、自分もこの地を去ろうと振り返ると、まだ一人温泉の脇に座っていた。
 如何したのかと近づけば……私は役に立てたのかな? と空を見つめるその瞳は訴えていて……アムネリアはほんの少しだけ考えてから、ふっと表情を崩すと手を差し伸べて――

 また会おう。
 満足そうな光を湛えた瞳が、そう語っているように見えた。

【おしまい】


マスター:八幡 紹介ページ
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作成日:2007/04/08
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