リョウコと鍛錬 〜唸れ鉄拳! 百人組手〜



<オープニング>


●鍛錬を求めて
「破っ!」
 気合と共に拳を突き出し、無双華・リョウコ(a90264)の前で丸太が爆ぜ割れる。そのまま身を捻って蹴りを放ち、カーンとロープで吊るした板が跳ね上がる。
 ガッ!
 跳ね上がった板を追って飛び上がり、頭突きで割って二つに散った破片をそれぞれ拳で粉砕する。着地するリョウコの元に、背後から声が掛かった。
「……何?」
 修行に水を差されて少々不機嫌ながらもリョウコは言う。相手は冒険者の酒場でも見かける何人かの冒険者たちだった。

 その冒険者たち曰く、リョウコに何か欲しいものは無いかと尋ねに来たとのことだった。

「そうね……ちょっとやそっとじゃ壊れない、修行の相手とか……」
 バババッと連続で拳の素振りをしながら答えるリョウコ。人の形を模した巻き藁が微塵に散ってゆく。
「そうそう、やっぱり修行してると汗をかいちゃうから、良いタオルとか武道着。それに水浴びに良いスポットなんかを知ってるなら教えて欲しいわ」
 額の汗を軽く払い、にっこり笑ってリョウコは言った。
 女性の汗はそれはそれで……と言おうとした男性冒険者の一言は、その隣に居た女性冒険者の肘鉄で止められる。

 かくしてリョウコと組み手で鍛錬すべく、修行相手や水浴び名スポット巡り、プレゼントのタオルや武道着を準備する冒険者たちであった。

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参加者
NPC:無双華・リョウコ(a90264)



<リプレイ>

●血潮の紅で華咲き乱れ
「俺ができる事といったらこれぐらいか? 釣りに行ってくる」
 釣竿を担いで川に向かう砕けること無き不破の盾・ソリッド(a28799)を、隠遁者・アリエノール(a30361)は手を振って見送っていた。アリエノールは楽風の・ニューラ(a00126)と火を起こしながら料理の準備に取り掛かっている。
「鍛錬とかって、柄じゃないんですよね」
 ニューラは苦笑を浮かべつつ、用意した香辛料や食材を確認していた。今日は皆でしっかり鍛錬をするとあって、新陳代謝の促進もあるようにカレーを作ろうと考えているようだ。良質のたんぱく質が摂れるようにと蒼い狼・フィオ(a50649)も用意した食材を託している。フィオ自身は先に組み手やら何やらの鍛錬をしておきたいということで一旦調理チームからは離れていった。
 テーブルのセッティング等を一通り終わらせた砂漠の民〜風砂に煌く蒼星の刃・デューン(a34979)はソリッドに誘われて川についてゆき、ついでに水を汲んでくるという。

「さぁ、どこからでも掛かってらっしゃい!」
 言い放つ無双華・リョウコ(a90264)へとこの瞳が見せる物語・ヤイバ(a63475)が拳を突き出す。リョウコが紙一重でよけて脇を抜けた腕を掴み、そのままどしんと大地に組み伏せた。
「次!」
 すぐに倒されたので見学に回ると下がったヤイバに代わり、白銀の独奏者・タイミス(a61564)が名乗りを上げた。
「では、よろしくお願いしますね」
 何事も礼に始まり礼に終わる。きちんと挨拶をしてからタイミスは無風の構えを取った。
「汝の相手、我が勤めよう」
 だっ! と踏み込み瞬間に、間合いを詰めるリョウコ。同時にその膝がタイミスの脇腹にめり込んでいた。みしりと響く一撃にタイミスは歯を食い縛る……が!
「……甘い、ただ殴る蹴るだけが武道家に非ず」
 その膝裏に手を回してロックし、関節技へと持ち込もうとする。このまま倒せば形勢逆転かと思われたが、とん、とリョウコの手の平がタイミスの胸を打つ。
「破ぁっ!」
 当てた手の平に重ねるようにして、リョウコはもう一方の掌底を叩き込んだ! 衝撃にタイミスのロックが外れ、ざざっと後退させられる。
「では、相手になりますよ」
 我先にと出番を待つ冒険者たちの中からフィオが跳ぶ。そのまま振り下ろす蹴りを、がっとリョウコの蹴りが受け止めた。
 ――っ!
 着地と同時にフィオは一歩下がり、リョウコの裏拳は空を切る。ひゅぅ、と感心した様子でリョウコは息を吐いていた。
「着地の隙、克服してるのね……でも!」
 今度はリョウコが拳を出してフィオの肩口を打つ。その一撃は何とか捌くフィオだったが、続いて繰り出される拳が頬を捉えていた。
「カウンターを警戒することは上出来。でも何時でも自分から攻められる訳じゃないわよね」
 相手から攻められることもあるだろうと言って、リョウコは次の相手に向き直る。
「それじゃあ行って来る」
 岩鉄の刃・エリアン(a28689)は共に剣技の使える虚無の少年鏡・ゼロ(a50162)と木刀で打ち合っていたのだが、やはりリョウコとの手合わせを願いたいようだ。
 ひゅっ!
 振り下ろされる木刀の斬撃をリョウコはサイドステップでかわす。武器の間合いを確認するように視線を送り、身を捻って踏み込む!
「くっ……」
 だが切り返す木刀が接近を阻み、リョウコは辛うじて肘で捌いて直撃を免れていた。びりびりと衝撃が走る。
「武器のメリットはリーチと威力、でもイニシアチブならっ!」
 先手を狙うリョウコは前蹴り、それを受けるがエリアンは耐えて踏ん張り、強引に木刀を振り下ろす!
 ぴっ
 木製の刃がリョウコの前髪を揺らし、エリアンの目前でリョウコの拳が止められていた。――互いに、寸止め。

「はいはーい、それじゃあ手当てに入るね」
 ぱんぱんぱんと手を叩き、組み手の緊迫した空気を翡翠色のレスキュー戦乙女・ナタク(a00229)が崩す。ヒーリングウェーブで疲労と体力を回復させると共に、応急手当も施してゆく。もっともお互いに鍛錬の為の組み手であり、それほど酷いダメージを受けている者は居ない様子だった。
「全員が組み手をすると思ったら大間違いだよ!」
 ビシッとウィンクしつつ、手当ては任せて思いっきりやってくれとナタクは笑う。
「俺も修行の相手になろう」
 次の挑戦者は快傑ズガット・マサカズ(a04969)だが、冒険者としての実力がマサカズの方が勝っていることもあってかリョウコが向かってゆくような形になっていた。
「はぁぁっ」
 繰り出す連続攻撃をマサカズが受け、捌く。その度に次の攻撃をより速く、鋭く研ぎ澄ませてゆく。
 じゃっ! マサカズの突きを腕で受け、捻って衝撃をやり過ごすと同時に深く踏み込むリョウコ。右半身を前に構えたマサカズの背中側へ、自身の背中を滑り込ませるように侵入する。
 がっ! と互いの裏拳が交差し、弾かれて間合いを取り直す。
「目いっぱい鍛錬させていただくとしよう」
 そこで舞闘漢女・コノオ(a15001)と交代し、コノオの蹴りをリョウコは腕で受け止めていた。
「組み手ができるとは絶好の機会だな」
 そのまま正面に立って大地を踏み締め、コノオは両の拳を握って腰だめに構える。リョウコのその意思を汲み取って、同様に拳を握り締めた。
「いくわよ!」
「承知っ!」
 ががががががっ!
 互いに引かず、猛スピードでひたすらに拳だけを繰り出してゆく! 一見ただのブルファイトに見えるがそうでは無く、どこに打てば相手がどう返すか、そして自分が競り勝つには次の拳をどこに打つかを読み合ってせめぎ合っているのだ。
(「くっ……」)
 コノオが歯を食い縛り、リョウコがじりっと足を踏ん張る。相手の裏を突く一撃を織り交ぜ、それに即座に対応して読みを修正する。ハイレベルな拳打の応酬に見物する冒険者たちも気付いて見入っていた。
 ばちん! 互いに拳のみの戦いを打ち切って意表を突いた蹴りを繰り出すが、そのタイミングはほぼ同時だった。フーと息を吐いて一礼するコノオにリョウコも頷く。

「自分の動きの確認をさせてもらいます」
 しなやかに左右の攻撃を繰り出す新米店長・アリュナス(a05791)の言葉にリョウコは小さく息を吐き、受けに回る。左右のタイミングを一定にせずに相手のペースを乱しつつ、攻撃を狙う一撃はタイミングを取らせぬように鋭く打ち抜く。ぱぁん! とリョウコの手の平をアリュナスの拳が叩いた。
「そこっ!」
 そのまま体重を乗せた回し蹴りで相手の体勢を崩す。一つのコンビネーションを確定させ、アリュナスは満足気に頷くのだった。
「飽きるまで相手を勤めてやるから全力で来なぁ」
 息の荒くなり始めたリョウコに天魔伏滅・ガイアス(a53625)が構える。タフさを鍛える持久戦闘ならこれからが本番だと言わんばかりだ。
「折角の機会だ、普通の組み手じゃ出来ねぇ事を色々やってもらおうじゃねぇか」
 自分が限界だと思っていた所から始まることもある。そこから一歩先に進むには、その壁を打ち破らねばならないのだ。荒い息を無理矢理に通常へと戻し、体内に残る酸素だけで打ち出せるだけの攻撃を……ありったけをガイアスへと叩き込んでゆく!

「お、やってるな」
 体の振りを勢いにして、拳を出す。その反動を活かしたまま引き手にし、突き手に乗せて逆の拳へと伝える。何度目かのラッシュで遂にぶはっとリョウコは息を吸い込んだ。
「回復すればまだまだ続けられるだろ? 頑張れ」
 割り込んできたのは川から戻ってきたデューン。リョウコの様子に癒しの拳を打ち込んでニヤリと笑い、次の相手へとバトンタッチするのだった。
「リョウコちん、大人気じゃのー」
 少しだけ残念そうに白牙・ミルミリオン(a26728)が言って、指を突き出してくる。武道家のアビリティ、指殺……ではない。アビリティに手加減は出来ないので、ただその格好をして指を突き出すだけ。それで何かを示すように、つっ……と体に触れてゆく。
「まだフットワークが甘いね、もう少し細かく動くと良いよ」
 アドバイスと共に離れるミルミリオン。入れ替わりはトンファーを携えた安国騎士・イッキュウ(a17887)だ。
「行きますぞ、とんちドラムショット!」
 二本の棒での連続攻撃にリョウコは腕を交差させて防御し、間を抜くように手刀を振り下ろす。イッキュウの額をぺち、と叩いた。
「続いてとんちクロスダイビング!」
 構えたトンファーをねじ込むようにして突撃を仕掛けるイッキュウだが、これは受けては危ないと判断したリョウコは大きく横に跳んで回避を図る。揺れる髪の毛をビシッとトンファーが弾き上げた。イッキュウはざざっと地面を蹴って方向転換し……。
「とどめのとんちトンファーキ〜ック!」
「って、それはトンファー関係ないでしょ!」
 ぶんっ、と繰り出されるイッキュウの蹴りを掻い潜り、突き飛ばすように両手の掌底で押し出すリョウコ。イッキュウはバランスを崩してぺたんと尻もちをついていた。
「我流でよければ相手になろう。格闘術にはこだわりがあってね」
 荒野の黒鷹・グリット(a00160)は手を出さず、防御と回避に専念していた。それはリョウコの攻を磨くと共に、自身の見切りとそれに合わせた動きを研ぎ澄ます鍛錬となる。
「準備運動は十分か、なら遠慮なく叩き込んでくれ」
 右の拳を手の平で受け止め、互いに逃れられぬ間合い。リョウコの左手も腕で受けて押し制し、蹴り上げる膝を右手を止めていた左で弾く。
「手も足も出ない……ってね!」
 ごちんと額に鈍い痛み。少々痛そうな顔をしつつも、リョウコは頭突きで怯んだグリットの胸に拳を突き出した!
「なるほど、武道家は全身が武器か……」
 意表は突かれたが、辛うじて腕を間に挟んで直撃を避けるグリットだった。
「シグレ様の相手は、他でもない貴女自身ですわ」
 殺気を捨て去った構えでカウンターを狙う無垢なる茉莉花・ユリーシャ(a26814)だが、リョウコの突きが頬を掠める。
「実戦ならば、カウンターが決まっていましたわよ」
「そうね、でも……」
 ひゅっ、と逆の拳がユリーシャの寸前で止められていた。
「カウンターは諸刃の剣。見切れなければ……直撃されるわ」
 それは実戦でも変わらぬと、リョウコはユリーシャの腹部をぽんと押して離れる。
「私も修行を頑張るのです」
 怪我をせぬように寸止めで型を確認する中身ふわふわ外はさっくりのエ・クレア(a37112)はそう言って、実戦を意識した組み手を行っていた。そうして仕上げに皆で精神統一の瞑想をしてから、一斉組み手はひとまずお開きになったのであった。

●華吹雪が舞う
「良い温泉場所がすぐ近くにあるので案内しましょう」
 ゼロの提案で汗を流しに温泉へと向かうこととなり、まずはレディーファーストということで女性陣が湯浴みしていた。
「ふふふ、役得役得ー」
 何故か楽しげなミルミリオンの様子を不審に思いつつも、ヤイバ始め汗を流す女性冒険者たち。
「去年の水着、胸の辺りとかきつくなってきたかな……」
 念の為に水着を持ってきたというクレア。そんなクレアやリョウコの胸元を見つつ、コノオは小さく溜息を吐き出した。
「……修行しても此処は鍛えることが出来ないからな……」
 どばしゃーん! とそんな溜息をも掻き消すような盛大な水音が響き渡る。何事かと集まる女性陣の前には……何故か、ゼロ。
「あ、はは……お背中流しましょうか」
 覗き撃退の為に見張っていたのだが、運悪く足を滑らせたらしい。ミイラ取りがミイラ……とは違うが、気を遣ったことが仇となり、とりあえずゼロは『どうにかして』記憶と意識を吹っ飛ばされて外に放りだされるのだった。

「カレーが出来ましたよ」
 ニューラとアリエノール、お手伝いの蒼銀の癒手・ジョゼフィーナ(a35028)たちのお陰で食事の準備は万全。修行でお腹を空かせた冒険者たちは迷わず席についていた。
「うめぇ物を鱈腹補給しようじゃねぇかぁ」
 酒も用意してきたと言うガイアス。沢山消耗した分だけ食べないとと笑みを浮かべ、杯を鳴らしてから目を見張るほどの食欲を見せている。食は元気の源だとヤイバも頷いていた。
「疲れた人にはサッパリしたサラダや、鶏肉を焼いてサッと味付けしたものはどうでしょう」
 フィオも調理を手伝いながら、足りない分や追加を手伝っている。ぱたぱたと給仕するジョゼフィーナに手渡ししていた。
「……食べた分、胸に行ってるのかなぁ……?」
 何だか漠然とした不安を感じているクレアだったが、コノオはならば食べれば良いのかとクレアの食事を参考にコッソリ真似したりしていた。
「ワインはいけるかな?」
 グラスをすっと差し出して、デューンは瓶を開けていた。「いただくわ」と受け取るリョウコにオードブルも添えておく。丁度よいタイミングでマサカズもギターを弾き始めており、激しい鍛錬を駆け抜けた後の安らぎが訪れるのであった。

「とても楽しかったよ、また機会があれば呼んで欲しいね」
 こうして鍛錬の一日も終わり、グリットはリョウコの肩をぽんと叩いて別れを告げる。
「お疲れ様、相変わらず修行三昧だな……」
 労いの言葉はソリッドから。しかし何時までも己を磨くことを忘れぬ精神は、何を志すにしても大切なものかもしれないと頷いていた。

 こうして冒険者たちは手を振ってリョウコと別れ、それぞれの帰路につくのだった。

 (おわり)


マスター:零風堂 紹介ページ
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