<リプレイ>
冒険者たちが到着した村はグドンに占拠されており、通りを我が物顔で猿グドンたちが歩いていた。 「一体も逃せないか……油断は禁物だね」 海馬に乗った少年・ヴィアローネ(a38562)は仲間たちにそう告げて黒炎覚醒を発動させる。猿グドンたちも冒険者たちの侵入に気が付いた用でギィギィと叫び声を上げていた。幾つかの家屋からわらわらと猿グドンたちが飛び出して集まってくる! 「気張っていくか」 白の戦鬼・ブラス(a23561)も黒炎覚醒を発動させていたが、その間に猿グドンの先陣が間合いを詰めて接近してきた。仲間達の準備が整うまではといつか星の大海へ・ミレアム(a45171)が一歩踏み出し、両手杖を構える。 がががががっ! 描かれた紋章から光の雨が解き放たれる。エンブレムシャワーが猿グドンたちを貫き浮き足立たせる間に蜂蜜騎士・エグザス(a01545)は自身に鎧聖降臨を施していった。 「そんなに広くないみたいだから、すぐに見つかるといいね」 杖から衝撃波を叩き付けて猿グドンを打ち倒し、黒紫鳥・リサ(a16945)は村の様子を見回していた。霊査士の話ではこの群れにはピルグリムグドンも居るらしい。現れれば即座に対応できるようにと冒険者たちはその出現を警戒していたのだ。 「……あれか」 その時、黒い爪・グラリア(a44018)が飛燕連撃を投げつけて猿グドンを打ち倒し、その傍に立つ大柄な猿グドンの存在を仲間達に示していた。一見すれば大き目の猿グドンだがその顔は鉄のような質感をしており、毛色も同じような色をしている。おそらくこいつが鉄の身体部位を持つというピルグリムグドンだろう。 「村人たちの平穏な心のため、わたくしは剣を振るいましょう!」 即座に反応して槍を振り抜き、千変万化の黒狸・ドロレス(a63137)がソニックウェーブを繰り出した! しかしピルグリムグドンはざっと身をかわして衝撃波を回避し、ギギィと耳障りな声を上げた。その声に猿グドンたちが後方から弓矢を幾つも射掛けてくる! 「矢を使うのはそちらだけでは……!」 ざっと降り注ぐ矢を避けて時空を彷徨う・ルシファ(a59028)は呟き、コンポジットボウの弦を引く。狙いをピルグリムグドンに定め、ルシファは目を細めて集中していた。
どん! 叩き付けるようなエグザスの蛮刀が猿グドンを沈黙させ、その脇でヴィアローネは杖『Heart of the Maelstrom』で素早く紋章を描く。 「いっけぇ!」 ばら撒かれる光が次々に猿グドンの身を貫いて打ち倒してゆくが、何とか直撃を免れたグドンや遅れて建物の中から出てくるグドンも居る。跳びかかって剣を振り下ろしてくる猿グドンの攻撃をグラリアは素早く回避し、飛燕連撃を放つ。狙いはピルグリムグドンのすぐ前に居た猿グドンだ。そいつを倒せば……、 「道が出来る、ってね!」 気の刃を追ってリサが走る。目前でグラリアの飛燕連撃に裂かれ、猿グドンが倒れた。その先にはピルグリムグドン! ごっ! 至近距離から杖『羅刹天』を振り抜き、リサはスキュラフレイムを打ち出した! 獅子、雄羊、蛇の形を持った炎とペインヴァイパーのガスが融合してピルグリムグドンに迫るが……敵は腕を振り抜いて炎を払うように防御していた。ぶすぶすと薄く煙が上がるその腕を見れば、肘から手首にかけてが鉄の質感を持っているように見える。 「くっ!?」 その鉄の腕を振り下ろし、ピルグリムグドンはリサの左肩を強打する。ずしんと響く一撃にバランスを崩し、リサは片膝を地面に付けさせられていた。 「回復は任せてもらおう」 ブラスのヒーリングウェーブが冒険者たちに降り注ぎ、リサのダメージを癒してゆく。後方からばらばらと放たれる矢を避け切れずにダメージを受けた者も居たようだが、その傷も同時に癒されていった。 「やっぱり力での支配で、信頼は無いみたいね」 冒険者たちの猛攻にバラバラと逃げるようなそぶりを見せる猿グドンも見え始めていた。ミレアムは言いながらもそいつらとの距離を見極めつつ、エンブレムシャワーで追撃して打ち倒していった。中には届かない猿グドンも居るが……、 「一匹たりとも逃がさない!」 赤猫・ミーヤ(a63081)のホーミングアローがそのグドンを貫いて倒す。ミーヤはグドンの逃走を防ぐために身を潜め、いつでもその足止めが出来るようにと構えていたのだ。今のはヴィアローネやミレアムのエンブレムシャワーでダメージを受けていたのか一撃で仕留められたが、次もそう上手く行くとは限らない。集中力を切らさぬように高めながら、クリスタルボウを引き絞る。 弓グドンが無数に矢を射掛けてくるのでドロレスはストリームフィールドを発動させ、ルシファは貫き通す矢をピルグリムグドンに向けて射出する! じゃっ! ピルグリムグドンはその矢を払おう……とするが直前で身を捻り、ギリギリで回避する。だが完全には回避できずに、貫き通す矢は脇腹あたりを掠めて過ぎた。
「ここは任せる、俺は向こうに回る」 エグザスはそう言って走り出していた。ミーヤが逃走防止に矢を放ってはいるものの、それだけではカバーできない場所もあると判断したのだろう。駆け抜けながら邪魔なグドンを蛮刀で薙ぎ払い、エグザスは突き進む。 じりっと大地を蹴ってグラリアが飛び出す。周囲の猿グドンが減ってきたことを確認し、向かう先は鉄の部位を持つピルグリムグドンだ。 ブラスのヒーリングウェーブで体力を万全とし、全身の力を振り絞って螺旋の動きで突撃を仕掛ける! ガガッ! 鉄の腕部位で防ごうとするピルグリムグドンだが、グラリアのスパイラルジェイドは止まらない。蛇腹剣『連なる牙』を突き出してねじ込み、強引に敵の胸元をえぐり斬った! 『ギギィ!』 耳障りな鳴き声に数匹の猿グドンが飛び出し、グラリアに剣を振り下ろし突き出してくる。ダークネスクロークを翻して回避するグラリアだが、一匹の攻撃が頬を掠めて血が滲む。 「邪魔はさせないよっ!」 ヴィアローネのエンブレムシャワーがそのグドンたちを貫いて倒すが、その攻撃の間にピルグリムグドンは体勢を立て直してグラリアに迫っていた。先程リサが迫った時を真似するかのように、倒れる猿グドンの影からグラリアに拳を突き出す! 「ぐっ……」 みぞおちにめり込む鉄の拳。一歩下がってミレアムから高らかな凱歌を受けるグラリアと入れ替わり、ミレアムがスキュラフレイムを浴びせ掛けた! 三頭の炎は左肩から喰らい付き、ピルグリムグドンの体を蝕むように燃え続ける。 「どんなに硬かろうがこの矢には関係ないです」 ルシファが放つは闇色を持った貫き通す矢、鉄の体でも防げぬ貫通するアビリティの矢はピルグリムグドンの右腕に突き刺さり、貫く。ギギィと苦呻の声を上げるピルグリムグドンにドロレスはソニックウェーブを繰り出す! 「この一閃が平和への道標となるように!」 音速の衝撃波が駆け抜け、ピルグリムグドンの体をびりびりと大きく揺るがせるのだった。
「道に大穴が出来ちゃうかもしれないけど」 どかんと爆発するナパームアローが猿グドンたちを包んで打ち倒す。周囲に建物が無いことを確認しつつ、後で埋めるからとミーヤは胸中だけで呟いて逃げるグドンたちを薙ぎ払っていった。 「よし、隙を作る」 術手袋を突き出してブラスは黒炎覚醒のブラックフレイムを撃ち出す。黒き炎はピルグリムグドンに向かって飛ぶが、鉄の腕に振り払われて防がれる。そして突き出す拳がリサに向かって繰り出された! がっ、と胸を打たれて後退るリサは自身で高らかな凱歌を奏でて回復し、その旋律を聞きながらグラリアは再びスパイラルジェイドを仕掛けた! 相手の胸を貫く勢いで飛翔突撃するグラリアだったが、胸の一部にも鉄部分があったのかぎぃんと硬い音が響き渡り、ピルグリムグドンは衝撃に押されるような形で一歩、二歩と後退る。その足元もふらつき始め、冒険者たちの攻撃が大きなダメージを与えていることが見て取れた。 ざっ……と闇色の矢と衝撃波が交差するようにピルグリムグドンを貫く。鎧強度を無効とする能力を持ったルシファの貫き通す矢が、ドロレスのソニックウェーブがピルグリムグドンの命を貫いた瞬間だった。 ずしんと地面を揺るがすような音を立てて崩れ落ちるピルグリムグドン。リーダーの最期を知った猿グドンたちは慌てて逃走を始める。 「逃がさない!」 その数はほとんど戦闘中に倒せていたので残り僅かだった。ヴィアローネのエンブレムシャワーが追いついて倒し、届かぬグドンにはミーヤの矢が突き刺さって足を止めさせていた。 「大掃除……と」 ミレアムがエンブレムシャワーを放ったのを最後に、その場に残っていた猿グドンたちは全て倒されたのだった。
「ここは大丈夫だな、次」 エグザスは家々を回りながら、中にグドンが残って居ないか確認していた。途中で猿グドンと出会うこともあったがその数は僅かで、それほど手間取るというほどではない。 「ピルグリムグドンの子供が居るかもしれないんだよね」 心配そうに言いながら、リサとミレアムも家々を回っていた。猿グドンたちは占領した村の家屋を利用して繁殖を始めていたようで、中には生まれたばかりのグドンの子供なども残っていた。 「子供を倒すのはイヤなものだけどね」 心を定め、手を下すミレアムは小さく呟く。しかしそれも人々のためだと言い聞かせ、二人は次の家を目指して進む。 「もう残っていないようですね」 家屋の外を警戒して巡り、倒したグドンたちの数を数えてルシファとミーヤは頷いていた。念の為に見回りしていた仲間たちが戻って来て、そのことを伝えてゆく。
「数が多かったから一苦労だな」 見回りついでにグドンたちの亡骸を集め、エグザスとグラリアが村の外で火に弔っていた。静かに立ち昇る煙を眺めながら、依頼の成功に小さく頷く。 「建物が少なければ良かったのに」 グドンたちが使用していたことで村の家屋は幾つも汚されていた。そんなに規模が大きく無い村とはいえ、家屋の数はそれなりにある。掃除を進めながらミレアムはふぅと息を吐き出していた。「やらんよりはマシだろう」とブラスも手は止めずに頷く。ルシファは良い香りのする香草でグドンの臭いが消せないか試していた。 「グドンに荒らされ、戦いの痕跡も残っていては気分良く戻ってこれませんものね」 しかしこれも人々の役に立つことだと、少し楽しそうにドロレスは掃除を続けるのだった。
そうして清掃も一通り終え、灰となったグドンたちの亡骸も全て埋められた。 「例えグドンでも、意思がある命を摘むのはいい気がしないね……」 ヴィアローネは静かに手を合わせ、リサも作業していた道具を片付けて祈りを捧げる。
こうして村を取り戻した冒険者たちはほっと一安心しつつ、報告の為に帰路につくのだった。
(おわり)

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参加者:9人
作成日:2007/04/16
得票数:冒険活劇1
戦闘27
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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