化生の花



<オープニング>


●流浪する花達
 美しい女と可愛らしい少女の2人旅。
 春を迎えてなお雪深い山道を、女と少女が行く。
 山の民に相応しい分厚い毛織の上着と毛皮、厚手のスカートに重ねられた何枚も布地が、雪の冷たさを孕んで吹く風に靡く。
 ざくりざくりとブーツが雪を踏む音。
 女2人に会話は無い。
 寒さに色を失った唇に薄い笑を刷き、2人は春めいて澄んだ陽光の中で雪解けを待つ、小さな村を見下ろしていた。
 
 道に迷ったという2人を、村人は快く迎え入れた。
 その夜、煌々と月が輝く夜空に一筋の煙が立った。
 月を貫く刃の様に、高く高く煙が立った。
 春の芽吹きを待つ雪山から女達が現れ。
 全て殺した。
 春の蕾を思わせる村の少女を1人と赤子を1人残して全て殺した。
 子供も大人も老人も男も女も全て殺した。
 村が1つ、この世から消えた。

●化生の花
「偶然、旅商が村を訪れてやっと、村が盗賊に襲われた事が知れたの。それはそれは凄惨な、殺され方をしていたわ。戯れに、時に恨みを持つ者の仕業であるかのように。盗賊と村の間には、狙った者と狙われた者と言う以上の関係は何も無いのにね」

 鋼の色の目、濃い灰色から薄墨を経て薄灰に変わる斑色の髪をした羊飼いの霊査士・ユビキタス(a90291)は、羊飼いの石投げ遊び――ペジタ――に使われる文様の彫り込まれた綺麗な石を小さな円卓にざらざらと撒き、数個の石の塊を幾つかとより大きな石の塊を1つ作って、これが盗賊、と言った。

「盗賊たちは雪山を越えるところ。3、4人の小さなグループに分かれて大きな町を目指しているわ。そこで休息を取って、また仕事に出かけるのでしょうね。雪解けの清水を流れる花の様に」

 盗賊が花とは可笑しいけれど、美しくまた可愛らしい女しかいなのよ、この盗賊団は。
 売られ、世界に搾取された女達。大層、憐れな話だわ。
 そう、霊査士は物憂く笑みを浮かべる。

「迷えば死ぬ雪山だから、辿れる獣道は限られているわ。そう、3つ程。道毎に分かれて、そうと気付かれない様に逆から辿れば、盗賊を見つける事はできるでしょう。抵抗はされるでしょうけれど、殺す事は簡単だわ。小さなグループを辿って行けば、頭領を含む盗賊の本隊を見つける事ができる。ただ――人質がいるの。ユールという村娘とレーシャという赤子。戦利品として連れて行かれたのね、きっと」

 搾取する世界を逃れ世界を恨み搾取する側になった、自分が知る世界と同じくらい無慈悲な女達。
 何も知らない頃には、ただ美しく咲く花だったのに、歪んでしまった化生の花。
 世界には暖かい場所も優しい場所も沢山あるのに――そう思っているとも、思っていないともつかない物憂い笑みを浮かべたまま、霊査士は言葉を継ぐ。

「そう依頼されているから全部殺してね。でも人質は殺しちゃだめよ。誰もが誰も、人質の振りをするでしょう。盗賊と村娘の違いを見分けて、騙されないように気を付けて。村娘も盗賊と同じ格好をしているから、服装では分からない。村娘は可愛らしく、目を見ても駄目だわ。そして、赤子を人質に取られているから、戦闘になれば盗賊と同じ様に殺意を込めてあなた達に必死に抵抗し、盗賊が捕まれば同じ様に人質の振りをするでしょう。心が既にそう、条件付けられてしまっているのね。でも決定的な違いはあるわ、きっと。体のどこかに」

 赤子がどこのグループにいるか分からない。少女がどのグループにいるのかも。
 ユビキタスは、長い野辺での労働で荒れた手をゆっくりとさすりながら話を続ける。 
 全てを捕まえて見比べる時間は無いわ。見張りを置く人手は無いし、逃げられてしまうかも。
 強く狡猾な女達だから。
 捕まえて、見定めて、直ぐに殺して。
 きっと出来る事はそんな事。
 鋼色の眼差しを冒険者に遣り、霊査士は物憂げな笑みを微かに深めた。
 カナダリオ・ユーゴ(a90302)が蛮刀を手に立ち上がる。

「行くの?」

 ユビキタスが訊く。

「盗賊はきらいだ」

 そう、ユーゴは答えた。

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参加者
銀閃の・ウルフェナイト(a04043)
剣狼戦華・カイザー(a12898)
黎燿・ロー(a13882)
茜空ノ唄・ヤマト(a15527)
金牙百光・ユン(a35696)
行人遊子・ヒルカニア(a50171)
風任せの術士・ローシュン(a58607)
海と夜空の迷い唄・リオルーナ(a62185)
NPC:カナダリオ・ユーゴ(a90302)



<リプレイ>

 銀髪のストライダーが、セイレーンの少女にばさりとマントを投げかけた。
 エルフの少女が、まごついているセイレーンの、特徴ある髪を隠す様にマントを整え、フードを被せて額の宝石を隠した。
 雪山を滲ませる曇天の下に集まった9人は、皆それぞれ姿を確認し合い、従う獣に待機を命じる。
 満ちる雰囲気は、生きるための狩猟に出かける狩人に似て。
 獲物は盗賊。報酬は安寧。狩る彼らは冒険者。

●六花 十二花 十六花
 ――ただ、グリモアに誓った身として、成すべき事を成す為に。
 呼吸をする様に、拙速・ヒルカニア(a50171)は盗賊の娘を殺した。
 柔らかな唇も美しい水色の瞳も勿忘草を思わせる可憐さも、溢れる涙でさえも、娘が纏う鎧と剣に慣れた手の前には意味を成さなかった。
 ダガーで、拘束された少女の左乳房の下を正確に貫いたヒルカニアは、娘の鼓動が止まった事を確認してから、引き抜く。
 返り血が掛らぬよう、注意深く無駄の無い一動作だった。
 若芽を僅かに覗かせる木に、湿った赤が幾筋も掛り、重く、ぽたりぽたりと滴れる。
 生臭さと共に湯気が昇らせながら、出来立ての死体は木の根元にうつ伏せに倒れて、縄に縛られた体を痙攣させた。
 盗賊達は、どんなに可憐に見えようと、此の世の汚穢から自力で這い出てきた者達だ。
 術で拘束され手から寒さ避けの布切れを剥かれた時点で、冒険者達が何を確認をしているのか理解し、1人殺された時に自分達の運命を悟っていた。
 特に、ヒルカニアが捕まえた女達は、叫ぼうとしただけで殺される事すら知っているかの様に、また隙を伺う様に静かだった。
 一番年嵩の美しい女が、茜空ノ唄・ヤマト(a15527)を見て唇の端をもたげる。
「貴女よりも少し若い子供がいるのよ、私」
 ――だから、何だと言うのだろう。
 女の無慈悲な双眸の奥底に、子への限り無い愛情が見て取れたからと言って、何が変わる訳でも無く。
 殺せというのなら、ころすよ。ヤマトは、女の細い首を捉えたまま思う。
 それが約束。
 自分は殺しているのに殺されたくないなんて、そんなのは虫のいい話。
 生き残りたいと望むモノは、誰だって生き続けたいと思うんだよ。
 ヤマトが口を開く。
「……殺すのだとしたら、殺されることも覚悟してるはずだよな」
「覚悟なんかしちゃいない。死なないと思ってたの。子供と一緒に生き続けたいから死なないと」
 愛しているわと女が言い、名前を乗せた風が吹き去った。
 ヤマトが放つ衝撃波。
 剥き出しの枝が擦れ合う寂しい音に混じって、首の骨が折れる鈍い音がした。
 剣を使い慣れた手をした女は、拘束されてもなお猛々しさを失わない瞳で風任せの術士・ローシュン(a58607)を見ていた。予想していた通りの、憎悪に満ちた目だ。僅かな理想と、儚い希望と、続くと思っていた未来。全て剥ぎ取られた女に残されたのは、憎悪だけだった。
「あたしを売った親も、あんたみたいな目をして、しょうがないんだ、と抜かしやがったよ」
 食い縛った歯の隙間から毒の如き言葉が漏れる。しょうがないんだ、しょうがないんだ、と繰り返して不意に笑い出そうとした女の口を押さえるローシュン。目を見開いた女の胸にワンドを押し当て、衝撃波を放った。
 女の目に満ちた憎しみが抜け、後には虚無。
 盗賊の言葉は明らかに言い掛かりだった。ただ親をローシュンに重ねて、行き場の無い憎しみを叩き付けただけだ。襲った村の誰かにそうした様に。忘却という安らぎを撥ね付ける程に、女は世界を憎んでいた。 
 憎しみには慣れている。己の手で救えなかった者がいて、恨みを買った事など幾らでもある――束の間、死体を見ていたローシュンは静かにマントを調える。
 そして、仲間達と頷きを交わし、更に山を登り始めた。
 別の獣道では冒険者のひと組が、遠眼鏡で女達を見付けていた。
 巧みに茂みを伝って、密やかに近付き、蜘蛛糸を投げかけて捕らえる。十分に気をつけていれば簡単だった。霊査士が言っていた『人質の振り』すらする隙も与え無い。
 手から布を剥ぎ取り、確認し、殺す。
 刺した場所から生暖かな血が溢れ、銀閃の・ウルフェナイト(a04043)の手を汚した。
 傷口から湧いては雪に溶ける命。
 垢じみた襤褸切をありったけ掻き集めて纏った様な身なりの少女の、それでも美しい口端から一筋流れて顎を伝う。
 物に成りつつある体からずるりと武器を抜けば、命の奔流は鼓動を表わして強く弱く吹き出し続けた。
 剣狼戦華・カイザー(a12898)は、雪よりも白い髪をした女の口元を抑えて、背にするりと剣を差し込む。細い体を貫く事は容易だ。肉を裂き骨を掠める硬い手応えの直ぐ後に、切っ先が胸から飛び出た。
 呆気無い程、容易く人は死ぬ――死体となった娘を見下ろすカイザーの双眸は何の感情も映さない。ふと顔を上げると、カナダリオ・ユーゴ(a90302)が目に入った。
 血塗れの蛮刀を握り、足元には幼さの残る娘が倒れている。何かがごっそり抜けた表情のまま立つユーゴの双眸は深海。光は失せ、死を見ている。
 カイザーは、目線を外して布切れで剣を拭い、鞘に収める。
 ウルフェナイトが、行くぞ、と端的に促せば、弾かれた様にユーゴも蛮刀を仕舞い、死体を置いて一行は進み出した。
 空は低く陽光は限り無く淡い灰色の世界の中で、金牙百光・ユン(a35696)達は務めを果たす。
 殺した数は多くない。ただ確認と殺戮の間に横たわる時間が、殺した女の数を何倍にも何十倍にも感じさせた。
「……人の命を喰らって……生き延びる……。……飢えたら……人も獣も……同じ……。だからこれは……ただの……狩り……」
 呟き、死体を後に、ユンは狩りを続ける。
 黎燿・ロー(a13882)が待機の手振り。
 木立を透かして、4人の女の姿が見えた。
 ただ冷たいばかりの獣道を黙々と歩き、また雪に樹木に溶け入る様にして潜む時間の長さ。
 敵とした女達の相手の弱さ。
 仕事、責務と名前を付け、たとえ誓いがあったとしても、殺しは殺しで、これは戦ではなく、殺戮だった。
 降伏も何の慈悲も無く、必要だから淡々と行われる行為。
 己と折り合いを付けた者や諦念を滲ませる者とは違い、海と夜空の迷い唄・リオルーナ(a62185)は、殺す事を迷った自分を思い出す。
 波の髪を持つ彼の少女は迷わないのだろうか――。
 ロー、ユンに続いて飛び出すリオルーナ。
 一瞬、一瞬が網膜に焼き付く様な無言劇が繰り広げられ、三方向から囲まれた女達が蜘蛛糸に囚われる。
 手早く、女達の手布を解けば、リオルーナの目の前に現れたのは『温かな手』。
「ユールさん――」
 リオルーナの言葉を聞いて、ローは細身剣の切っ先を正確に、捕らえた女の首筋へと当てた。
 皮を切り裂いてから心臓を射止めるまで、瞬きの間しか掛らない。儚げな風情の女は硬直し、次に力を失って膝から地面に突っ伏す。
 蒼い髪が扇状に広がって、雪解け水に映り込む蒼穹を思わせた。
 リオルーナは、ユールの傍らの少女を見る。
 同じ様な服装、同じ様な歳、これから死ぬ少女とこれから生きる少女の違いが、罪の重さ――。
 術に拘束された少女は瞬きもせず此方を見ていた。生きる事を望み憐れを請う眼差し。
 リオルーナはそれでも殺した。自分で選択した道だった。
 ユンが最後の女の胸に掌底を喰らわせる。肋骨が音を立てて折れ、女が血を吐く。倒れそうになる女を咄嗟に腕に抱けば、服に血が染みた。
「……せめて綺麗に……」
 ユンは無意識に、引き破ったマントの裾で女の口を拭いていた。髪を梳いて静かに横たえる。ローが手を伸べて、開いたまま、もう何を見る事も無い目を閉じた。
「血がついている」
 ローがユンの顔を、布切れで拭う。
「これ以上人を狩らせるわけには……いかないの……」
「そうだな」
 呟き、俯くユン。ローは応えて立ち上がる。
「私は人質なの……リーシャが捕まっているの、まだ赤ちゃんなの。助けて……ねえ、助け……」
 縋る様な声で言って振り向いたユールが、死体を見て双眸を大きく開いた。動きが止まる。咄嗟に眠りの歌を口にし掛けたリオルーナを遮って、ユールが言葉を継いだ。
「私……殺されないの? ねえ、この人達が殺されても私は殺されないの……?」
 私だって村の人、殺したのに――呆然と呟いたユールの瞳に、狂気が翳りを落とす。
 リオルーナは歌った。
 ユンとローは瞑目した。
 リーシャを人質に取られては、逆らえはしなかっただろう。無理強いされたのかも知れない。何も言わず、何も言えず、ユンとローは道を進み、リオルーナはそっと少女を抱き上げる。
 その体は哀しい程、軽かった。

●化生の花
 汚穢から這い出た先で苦痛と恨みで出来た血溜まりに身を浸し、何の意味も齎さず潰える女達。
 世界から拒まれ、また世界を拒みながら咲いた、歪な化生の花。
 盗賊の本隊はまるで、冬の最中に狂い咲く花の如く、突如として灰色の世界に彩を添えた。
 歪な花でも彼女らは、紛れも無く美しかったから。

 ロー達が本隊を見つけた頃には、リオルーナ以外の全ての冒険者が揃っていた。
 無言で連携する冒険者達の拘束の技から逃れられた女は、ほんの数人しかいなかった。
 カイザーは拘束する事無く後を追う。
 黄金の髪が雷鳴を思わせる女の渾身の一撃を柄で受け、弾いて、剣を一閃。
 ざっくりと喉笛を切り裂かれた女の血が、カイザーを濡らした。
 もう、避けはしなかった。白い雪に散る血が美しく、白い布を染める血が美しく、女の目は虚無を見ていて彼女は何処にもいない。
「この世に搾取される者は、道徳と倫理を越えなければ自分を守れない――」
 白光を帯びる剣に鮮やかな色。世界は静かで、自分と女とその間にだけ色があった。
 搾取される者は、己の手で生を掴まねばならない。
 世界の狭間には、いかなる正しい手も届かない。
 殺さなければ生きて行けない彼女と、殺す方法を見つけた自分と。
 その違いは、戻る事の出来ない程、遠くへと過ぎ去ってしまった場所にある出発点。
「――……」
 カイザーは女を省みる事無く、本隊へと踵を返す。
「搾取されたから搾取する――か。気持ちは解らないでもないがな。所詮は他人、本当の所は判らないが、どれ程同情の余地があっても人を傷つける事を是とした以上、冒険者の責務として討伐させて貰う。自分が傷ついたからと言って他人を傷つけても良いって法はないんだよ」
「法か……お笑いだ。法に護られなかった私らに、法など関係ないさ――」
 そうか――溜息とも呟きともつかない声と共に、ウルフェナイトが踏み出す。
 女は、己の胸を貫いた武器を見下ろす。
 死ぬのだ。死ぬのだ、死ぬのだ。女はやっと理解して、艶めかしく哂った。
「お前の様な気障男にだけは殺されたくなかったよ……」
 それが搾取され尽くした女の最後の言葉。
 表情が消え、目から生気が失せ、命が失せて。
 ウルフェナイトは今際のきわを見た者が受けるいかなる感情も排していて、後には何も残らない。
 少女を追いかけるユンは、逃げ切れぬと悟った少女の反撃を避ける事無く受けた。
 それが、彼女が残す最後の生の証だから。
 無防備な脇腹に突き立つ短剣。痛みと溢れ出る熱を無視して、ユンは静かに少女を見た。
「……たとえ……生き延びるためでも……貴女達に……これ以上人を狩らせるわけには……いかないの……。悪いけど……ここで……」
 おしまい。
 布越しに見ても分かる程、手に腕に渾身の力を込めて己を殺そうとしている少女が顔を上げた。憎しみと、それよりも強い羨望を含んだ
眼差しとユンのそれが交わる。直後、少女は崩折れた。永き苦痛に永遠のおしまい。彼女が今、安らいでいるのかなんて分かる筈も無いけれど、現世の終わった事だけは確かだった。少女の目にあった羨望が、落ちぬ返り血として心に染み付いた。

 リーシャを見つけ、女達を全て殺すまでに要した時間は僅か。
 死者は全て雪に横たわり、赤子はヤマトの腕の中で、眠りの歌に導かれてただ眠る。
 誰も憐憫を抱かず、哀れみを遠ざけ、自分達が為した結果だけを見ていた。
「戦場で武器を手放すな」
 蛮刀が突き立つ死体の横にしゃがみ込み動かないユーゴに、熟練の傭兵が新兵を叱咤する厳しさでローが告げる。
 ユーゴは立ち上がり、剣を握り締め、よろめきながら抜いた。
 赤子の様子を仔細に見ていたローシュンが、赤子がまったく健康な事を告げると、ヤマトは微笑んでゆっくりと赤子の身をゆすった。
「……そういえば、俺の手も、昔に比べて綺麗になったような気がするな」
 その赤子を抱く筈の少女の手を思い、自分の手を見てヒルカニアが薄ら笑った。
 ヤマトが顔を上げる。ヒルカニアは首を振る。
 リオルーナが最後に戻って来、ユールの言葉をこう告げた。
 彼女達は自分達がいかなる方法でも埋葬される事を拒否していたと。
 だから、私が出来る限り丁重に葬ると。
 大好きだった村の人々と、可哀想なあの人達の為に春に咲く花を見付けて、巡り来る何時の春にも、花で溢れる様にするから、そのままにしておいて欲しい、と。
 斑模様に感情の入り混じった言葉を、リオルーナは淡々と告げる。
 冒険者達は理解した印に頷いた。
 語り交わす言葉を必要としないまま、冒険者達は山を下る。
 ――命を摘み取ることに、迷いは……ないの?
 リオルーナがユーゴにたずねようとした言葉もまた、最後まで口に上る事は無かった。
 ここ、という場所はその問いを、あらゆる形で拒否していたから。


マスター:中原塔子 紹介ページ
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作成日:2007/05/21
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