<リプレイ>
●ひととき 珈琲を片手に窓際へと歩み寄る冒険者。 ぱたん、と軽く窓を押し開け、大きな深呼吸を一つ。 いつものように街を見下ろせば、相変わらず大きなリボンを揺らし、トテトテ歩く霊査士の姿。 「今日は……どんな一日になるかな」 ふと見上げた空は雲一つない青空。
また、素敵な一日が始まる――。
●おさんぽ〜街〜 「平和だね〜。たまにはこういう日も良いかも」 広場へと続く道。 唄を口ずさみ、穏やかな平和を堪能する冒険者とすれ違う。 「猫、飼って……みたいな……白猫……でも、やっぱり……黒猫、のほうが……可愛い……」 その先では両手とおでこをぴったりショーウインドウに張り付け、ぶつぶつ呟く冒険者。 ペットを飼おうと街に繰り出してはきたものの、凶悪的なかわいさを持つ黒猫と白猫、どちらにするかで絶賛悩み中なのだ。 (「……うう、確かにどちらもかわいいのです」) 後ろからそっとのぞきこめば、超愛らしい2匹の猫たん。 「うーん、……栞にしようかなー♪ ……って、あ、親友の誕生日もあと一ヶ月とちょっとだー……。割ともうすぐなのねー……。あ、このアメジスト色の小さい宝石のついたネックレスとか似合いそうー……。ど、どっちに買おうーーー!」 その少し先でも栞とネックレスを順番に手に取ってみては、頭を抱える冒険者が見える。 (「ふふ……時間はまだたっぷりとあるのです」) と、 どんっ 「おわぁっ!!」 「わぁ、ごめんなさい〜」 角を曲がった所で出会い頭にごっつんこ。 「本当にごめんなさい〜。2年ぶりに帰ってきたもので、色々と懐かしくて〜、あ、僕は……」 ユバを引き起こしつつぺこりとお辞儀をし、挨拶をする冒険者。 「お帰りなさいなのです。私は大丈夫なので気にしないでほしいのです」 にこりと微笑むと、その冒険者が手を振り去っていく背中を見送る。 「へー、これなんかいい感じじゃない?」 「そ、そうかな?」 アクセサリーの露店を前に、ぴったりと寄り添う冒険者。 お互いの手には、ブルーベリーといちごミックスのクレープが握られている。 時折気に入ったものをあてっこしてみては、楽しそうに微笑みを交わす。 「わわわ〜……、何にしようかなぁ〜……♪ 低カロリーとはいえ、全部食べちゃうと太っちゃいますし……。でも……」 豆腐ケーキと豆腐プリンを前にうんうんと呻きつつ心の葛藤をする冒険者。 その隣では、 「少し買いすぎたかなぁ? でも多分食べきれるよね。あ、でもどうかな……やっぱり買いすぎた気がしてきた……」 悩む冒険者とは対象的に、夢がいっぱい詰まった紙袋を両手で抱える冒険者。 「あ、ユバさん! 良い所に! よければこの中から好きなケーキをどうぞー。いや、買ったのはいいんですけど一人で食べるには多すぎるなぁって。珍しい豆腐のケーキなんかもあったんですよね〜」 「そんな、悪いのです。ではこの豆腐ケーキをいただくのです」 言うが早いか、しゅばりとカゴごとかっさらうユバ。 「これとか……似合うですよ……?」 ちょっとおしゃれな洋服屋では、手をつなぎながら洋服を選ぶ男女の冒険者。 何を買うとも決めていないけれど、こうして二人でのんびり過ごす時間がとっても幸せで。 「さん……大好きなのです……これで……いつでも……一緒です……」 「そうだ。これ。良く似合うかと思ってな」 不意にお互いから差し出されるおそろいのチョーカー。 「え、え……?」 何を示し合わせたわけでもないけれど、あまりの偶然に目の前で起きていることが把握できない女性は、もちろん顔は最高にまっかっかである。 (「以前と変わらず仲が良くて結構なことなのです」) うんうんと頷きながらその横を通り過ぎる。 「んにゃ!? このかわいいピンクのシャベルほしいにゃ〜♪」 「じゃあボク、この、どす黒い、しゃべるぅ!!!」 「ぅわ〜い♪ おそろいにゃ〜っ☆」 「あっ、こら、店の中走り回っちゃだめだぞっ」 雑貨店に入り乱れる4人の冒険者達は、狭くなった旅団の拡張工事用穴堀り道具を購入しにきたようだ。 まあ旅団ていうか洞窟なんだけども、実は毎日がリアルキャンプ生活な気がするのはこの際気にしないでおこう。 「あ。妾はその、手袋とか……ほら、汚れるのはちょっと……。そういえば、ここの代金、誰が払うんじゃ?」 手袋と言うか軍手を物色しながらぽそりと呟く冒険者。 「そりゃぁ、旅団のことだからな……?」 駆け回っていた冒険者は足を止めると、にんまりと笑みを浮かべ旅団長の顔をのぞきこむ。 (「旅団長さん、がんばってほしいのです」) いろんな意味で旅団長にエールを送りながらその場をあとにする。
「今日も負けないよー!!」 「今日こそ、勝たせてもらうわね〜」 『いただきまーす♪』 がんがんと二人の冒険者のお腹にしまわれていく肉、肉、肉。 「あ、ユバもたべるんだよー!!」 ずんずん歩くユバにぶんぶんと手を振れば、 「そうですか、ではいただくのです」 相変わらず早いね。 しかしパフェといい焼肉といいこの二人、街中の食べ物を食い尽くすつもりなのだろうか。 とりあえずお店の人、泣いてんぞ?
街の出口に差し掛かる頃、前方から歩いてくる冒険者に声をかけられ、 「以前フォーナ祭でお会いした鼻眼鏡を着用したツナさんという女性から聞いた本がなかなかみつからないのですが、そう言えばユバさんとよく似て」 「知らないのですそんな鼻眼鏡、わーわーわー」 耳を抑えながら森の方に駆け出すのはご愛嬌。
●おさんぽ〜森〜 チリリリチリリ 「む、何か音がするのです」 微かな鈴の音がする方を向いてみれば、葉に紛れつつ動く黒。 時折舞扇がひらりと揺れるのが見える。 「あ、あんなところにたくさん!」 がさがさと葉のこすれる音とともに、大量の木苺に向かい超ダッシュをかけていく冒険者。 間違いなく迷子フラグが立っていることはここだけの秘密だ。 「ダメ、違う。そうじゃない」 木陰で寝転んでは首をふりつつぶつぶつ呟くと、新たなベスト昼寝ポジションを求め彷徨う冒険者。 「ここに居ると普段の仕事を忘れて……」 木に寄りかかりのんびりと休息をしていた冒険者はそこまで言いかけると、ふと顎に手をあてる。 まだ残っている仕事を走馬灯の如く思い出したらしいことは、みるみるうちに険しくなる表情からも見て取ることが出来る。 「今日も良いお天気ね、今日はみんな来てくれるのかな?」 切り株をかたどったテーブルにお菓子と紅茶をのせ、誰ともなく声をあげる冒険者。 がさがさ 少しして兎や鳥や狐さんが姿を現せば、満面の笑顔で尻尾を揺らし、いつものように動物さんたちとのお茶会の始まりである。
「嗚呼、やっぱり上手く出来ないや……」 「あ、ごめん……形、ぐしゃぐしゃになっちゃった……」 向かい合い、野薔薇と格闘を繰り広げる二人。 どうやら花冠を作ろうとしているらしい。 (「そ、そこはそうではないのです。その茎の部分をもっと、こう」) それを眺めつつかりかりと幹に爪を立てるユバ。 「あ。貴女……もしよかったら、手伝ってくれない?」 その視線に気が付いたのか、女性がユバにそう尋 「まかしとけなのです。ここはこうやるのが素敵なのです」 みるみるうちに出来上がっていく花冠。 「わぁ、有り難う♪ お礼にこれあげるね♪」 そう礼を言われつつ差し出される一輪の薔薇。 「よろしければ、お菓子、どうぞ」 男性がクッキー、マフィン、パイの入った籠を差し出す。 「そんな、お礼などいいのです。むぐむぐ」 はい、美味しくいただきました。
「あーえーいーうーえーおーあーおー……」 お腹に手を当てつつ真剣な表情で発声練習にいそしむ冒険者。 その声にあわせるように、 「にゃーにゃーにゃー」 と可愛らしい声をあわせる白猫たん。 「あ、ユバさん。今芝居の訓練をしています。よかったら一緒に声出してみませんか? 気分がすっきりとしますよ〜」 と誘われれば、ではちょっと失礼するのです、と大きく息を吸い込む。
「あれはユバか? ……面倒事には首を突っ込まない方が懸命だな」 いつものように森で鍛錬をしている最中だったのだが、なーんか奇妙な声が聞こえると思ったらやっぱりアイツの姿が見えてしまった冒険者。 「……いつもの騒ぎを知っている分、な」 何かを納得したように頷くと、再び木に向かい流れるような一撃を加え始めた。
●おさんぽ〜川〜 ……zzzzz…… 川のほとり。 傍らにパンとりんごのバスケットを控え、釣り糸を垂らしながら舟を漕ぐ冒険者が見える。 「え〜と、相手に何かを上げる時はできる限り高圧的に仕方ないからあげるような言い方をしましょう……『勘違いしないでね。別にこれは…(中略)…勿体無いからあなたにあげるのよ!』っか〜……男の人って何でこういうのが好きなのかなぁ〜」 ぐつぐつ煮える超激辛カレー鍋の傍らで、『1日で覚えるツンデレ・上巻〜まずはツンから〜』を熟読する冒険者。 「っと、今日は大漁だな」 てんこもりの魚籠を横目に、一息つく冒険者。 ふと人の気配がする方を見れば、うりうりと歩くユバの姿。 「あー、ユバか。今日は珍しく大漁でなぁ、どうだ、持って帰るか? 遠慮するな。これだけの魚俺一人で食べきれるわけがねぇだろ? 持って帰って鍋の具にでもしてくれ」 「は、はい、ありがとうござおわぁっ!!」 どちゃりと魚籠の3分の1をぶんなげられる。 「お、おお、おおおおお」 「それじゃ、元気でな」 有無を言わせぬ迫力で再び釣り糸を垂らせば、無論反論の余地があるわけもなかった。
●おさんぽ〜山〜 「おう、ユバはん。お散歩かいな? なかなか面白い本やで。俺もこういう本を一冊書いてみたいものやね」 『ツンとデレの境界線の考察』を手に持ち、たばこをふかしながらごろりと寝転がる冒険者。 「確かに面白そうな本なのです。って、か、勘違いしないでほしいのです! つまらなそうって言ったらあなたがかわいそうだと思っただけなのです!!」 残念な返答をしつつ少し歩いてみれば、木陰で二人の冒険者が寄り添いながらくーくーと寝息をたてている。 女性にそっとのせられた花冠が、時折風に吹かれゆらゆらと揺れる。 きっと二人で幸せな夢を見ているのだろう。
少し大きな岩に座る二人の冒険者。 不意に女性がギターを取り出すと、静かにそっと歌い始める。 その音色は甘く優しく男性の耳に心地よく届く。 それがまさに女性にとっての、『音楽』なのだろう。 微笑みながらそんな女性を見守る男性は、傾きかける陽が少し目に染みるのを感じながら、とっておきの一本の蓋を静かに開けるのだった。
●おさんぽ〜酒場〜 白き艶やかな絹の肌 清水より出でし麗しの君
酒場の扉を開けてすぐ、女性の美しい歌声が耳に入る。 切なくも儚げな意を含むその歌詞は、きっと思い人のためのものなのだろう。 「今日の思い出に、プレゼントだ」 端に座る男女の冒険者。 男性はスレッジ・ハンマーを片手に、先ほど街でこっそり購入した指輪を渡す。 「え……これ、ワタシにっスか?」 びっくりした表情でその指輪を受け取る女性。 「ああ、もちろんだ……よかったら……これからも、よろしくたのむな……」 そう言いつつ極上の微笑を向ければ、 「あ、え、こ、こちらこそよろしくお願いするっス」 と、ひとときの幸せは二人に訪れて。 「瑠っ瑠瑠ゥ〜♪ ……ココで会ったが運の尽k……じゃない、ベスト・ポジション! 今日こそは食べて貰うよ、この『湯豆腐バーガーゼロカスタム!』」 どこから現れたのか、ぐりんぐりんときもい回転運動をしながらすちゃりとユバの前に片膝をつくド・ナルド。 「へ、へんっ! 私にはそんな物など効かないのです、残念でしたなのです。もぐもぐ」 相変わらず女性の歌声が響き渡る。
愛しき君 その名を問うたれども ただ物言わぬ白花一輪 嗚呼 悩ましき君の名は
絹漉し豆腐 絹漉し豆腐の歌かよ!! ●おさんぽ〜街中〜 「にょほー♪」 「ひゃあああ!!」 無防備に歩くユバにフライングだっきゅりもふもふをぶちかます例の冒険者。 今しばらくはこの平穏を確かめておきたい。 そして、臨むべき死地から戻る理由を確かめてお 「にょほほほほ♪」 「はっ、はぁぁぁああ!!」 台無しである。 「……やっぱり、両方買っちゃえ☆ 一気に食べずに、分けて食べれば大丈夫ですもんねっv いっぱい買ったから、旅団のみんなで食べよっと♪」 豆腐ケーキと豆腐プリンをたんまり抱えると至福の笑顔で帰っていく冒険者。 貴方、今まで悩んでおられたんですね? 「さて、今夜は何にしたものか……」 夕方の買い出しに街を訪れた冒険者は、 「しかし、何を食うかを考えるのも大変だ。以前は食えればそれで良いと思っていたが……」 と、顎に手を当てつつ呟く。 「っと、あれはユバさんか……ふむ。今夜は湯豆腐にでもするかな。あれなら作るのもさほど面倒ではないし。シンプルなだけに美味いものを作るのが難しいのだが……1人なら別にさほど美味くなくとも良いしな」 ふむふむと頷きながらユバを呼び止め、夕食が決まったお礼にとさくらんぼを渡す。 「甘酸っぱくて美味しいのです」 むぐむぐとそのさくらんぼを咀嚼しつつ歩く道すがら。 何やら前方でもめる男女が見える。 「『キングスマインドパフェ』に決まりですよ!!」 「……は? 何? お前正気か? 旬の野菜とベーコンがたっぷり入った野菜スープ! これで決まりだろ?」 「一体どうさ」 「おおユバ、いい所に! 全くこいつが頑固で困るんだよ! 金魚鉢サイズのパフェなんて誰が食べるというんだ! 野菜を食べろ、野菜を! なあ、そう思うだろ?」 「ええああはいそう思い」 「スープではお腹の足しにならないでしょうに、第一疲れた時には甘い物が体に良いんですよ? 何が悲しくて野菜スープなんですか! と、……ユバさんですか、初めまして……それはともかく、野菜スープよりパフェの方がいいですよね?」 「……そう言われるとそう思」 「いいや、野菜スープだ!!」 「いえいえパフェです!!」 「おおふぅ」 きっ! と向けられる視線。 『さあ返答を! ハリーハリーハリー!』 ばたばたと手をふりつつユバの返答を待つ二人。 「うう、こうなったら野菜パ」 「因みにヤサイパフェは無しだからな! さあ応えろ!」 「フェ……ぼひぃ……」 『さあ! さあ! さあ!』 やんややんやとユバを取り囲むその怒声はいつ果てるともなく、淡いオレンジ色の空に響いていた。
●一日のおしまい ○月×日 天気 晴れ 久しぶりにお散歩をしてみたのです。
またしても色々な物をいただ…… うう……強烈な眠気が襲ってきたのです……。 もうだめなのです……。 おやすみなさい……また、明 パタン――

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参加者:43人
作成日:2007/05/25
得票数:ほのぼの24
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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