至福と快楽を呼ぶ『白金の指』



<オープニング>


 また1つ時代が動いた。円卓での会議を経て同盟の冒険者達は地獄の第2層、姦淫の都ミュントスをも活動の場とすることになった。

「これもギャロが持ち込んできたものよ。でも、特に危険や『裏』はないみたいだわ」
 ミュントスの館に滞在することになったストライダーの霊査士・レピア(a90040)は、ある村で行われる技能検定会について説明を始めた。幻奏猟兵・ギャロは地獄の十将軍第9席の主であり、同盟とノスフェラトゥの窓口役の様な事もしている。同盟の冒険者達の中にはその真意を測りかねる者も少なくはないが、今のところ表だって敵対行為はしていない。それどころか至って友好的だ。今回、ギャロが持ち込んだ依頼……これもとても安全そうなものであった。

 その村は身体の疲れを癒すためにある村であった。筋肉の疲労、コリを手で揉んだり、指圧したりしてほぐし和らげる村であった。村の者達は常に自分の技量を磨き、疲れた身体を如何に心地よく楽にしてゆくかを研究している。そうして年に数回技量を検定し、階級を定め皆の励みとしているのである。中でも最も優れた技能者は『白金の指』を持つ者という称号を与えられ、地位と名誉と報酬と……ともかく何もかも『村一番』の待遇を受けるのである。

「今回は傑出した技能の持ち主が3人いて、優劣が付けられないらしいわ。そこで同盟の冒険者達にその審査係をお願いしたいらしいの」
 レピアはゆるやかに曲線を描く豊かな黒髪を右手でそっと払い、口元に僅かな笑みを浮かべた。
「難しく考えることはないわ。ギャロは『もっとも気持ちよくしてくれた人を指名すればいい』と言っていたから、判断の基準はそれだけ……みたいよ」
 レピアは更に意味深長な笑みを浮かべた。

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参加者
風纏う水銀の剣・エッジ(a21596)
ミンストレルレヴァリー・カルフェア(a23806)
神聖爆乳帝國皇女・ミシェル(a27427)
月夜に舞い降る銀羽・エルス(a30781)
故意の奴隷・ネンヤ(a36532)
蒼穹に舞う風・ミリィ(a37592)
ノソ・リン(a50852)
アイゼンベルクの狂犬・ゼスティア(a56910)
悪戯な春風・クィステレーア(a59269)
血の涙を流すオヤジ・ベルナール(a62391)


<リプレイ>

●甘美なる技巧の村
 その村はミュントスの村としては地味な村であった。ごく普通の農村といった様子だ。
「なるほど、ここがそうか。村一番の技巧者を選ぶのであれば、そりゃ多くの意見が必要になるな。よし! ここは俺が一肌脱ぐか!」
 霊峰の守護者・ベルナール(a62391)は普段から身につけている防具を落とし、その下につけていた衣服にまで手を掛け、脱いだ。
「皆様、ようこそいらっしゃいました」
「遠路はるばる、有り難う御座います」
 薄衣をつけたユリアと、横に切り込みが入った長い服を着たアーシャが出迎えに来た。ユリアの服地はほとんど透けていて、身体の線どころか中身が見え放題であった。アーシャの服も胸元や腰のあたりがチラチラする扇情的な型であった。
「お嬢様や旦那様の事はギャロ様配下の方々からお話がございました。どうかこの村で存分にくつろぎ、日頃の疲れを癒して下さい」
 ユリアとアーシャの後ろから来た男はサムと名乗った。この三人が『白金の指』候補者達であった。
「おう! こちとらそのつもりだぜ。この村自慢の技術とやらを、この俺が女限定でばっちり評価してやるぜ」
 既に上半身裸のベルナールはガハハっと笑って言った。
「では……どうぞこちらに」
 ユリアとアーシャはチラリと顔を見合わせ、ユリアがその白い手をベルナールへと向けた。アーシャはベルナールが脱ぎ捨てた服と防具を拾い、2人の後を小走りに追う。
「皆様はこちらでおくつろぎ下さい」
 残った冒険者達はサムの案内で、ベルナールとは別の、村で最も大きな建物へと誘導されていった。

 白い肌の上をやはり白くて細い指が踊るように動く。その指は悪戯な春風・クィステレーア(a59269)の疲れた場所や、かたくこった部分を探り当てると周りから少しずつ崩すようにもみほぐしていく。入浴して暖められた身体はその技術に酔う。気持ちよかった。他人の手で体中を触られまくるというのはもっと官能的なものかのかと思っていたが、そうではなかった。けれど、これもまた快感であった。その手を拒めない程強い抗い違い快感だ。
「あ、あぁ〜ん。すっごいよぉ、ユリアちゃん……とっても、とってもイぃ、気持ちいー」
 閨での睦言の様な喉に絡まる快感の言葉がクィステレーアの唇から漏れ聞こえる。
「嬉しいです。こんなに感じていただけるなんて……」
 ユリアの表情は寝台にうつぶせているクィステレーアには見えない。けれど、話している感じからは嬉しそうだ。
「ほんと、もうぅ、もう……もう、あぁ〜ん、うっとり〜」
 こういうのは年を取った人々こそがしてもらって喜ぶものだと思っていた。けれど、そうではないことを今クィステレーアは身をもって体験していた。どこを触られても身体が嬉しがるのだ。官能のポテンシャルはあがってこないが、身体中が弛緩して動けなくなりそのまま眠り込んでしまいそうになる。これも底なしの快楽だ。
「クィステレーア様はお若くてほっそりとしておいでなのに、筋肉がしっかりとしていらっしゃるのですね……素敵です」
 眠り込む一瞬、そんな賛美の声が聞こえたような気がした。ユリアの尾が服地に擦れサワサワと鳴っていた様であった。

 愛用の剣も身体に慣れた防具も今は手元にない。風纏う水銀の剣・エッジ(a21596)は少し重たげに肩にかかるバスローブを脱ぎ、今まで座っていた広いソファの背に投げかけた。ローブには目もくれずに寝台にうつぶせに寝そべる。
「大変お待たせ致しました」
 エッジしかいなかった部屋がその一言で華やぐ。顔を向けると銀の盆を持った若い娘の姿が見えた。銀色の盆を持ち、その上にガラスの入れ物が沢山並んでいる。
「ご指名ありがとうございます。わたくしがユリアでございます」
 長い髪を結い、ごく薄い肌が透けて見える服を着た娘は淑やかに一礼し、エッジが横たわっている寝台に近づいてきた。シャラシャラと足首につけた細い銀の輪が軽い音をたてる。ユリアは盆を置くともう一度深く頭を下げた。
「お前がユリアか。思ったよりも大人びているのだな」
 寝そべったまま少しだけ顔をユリアへと向け、エッジは意味深長な謎めいた視線を向けた。それは恋など知らない『うぶ』な娘なら、途端に頬を染めてしまいそうな危険な視線だ。恋に駆け引きに長けた者が多いセイレーンと日常的に付き合いがあるから会得したものなのか、それともエッジが生来持つ特別な力なのか……視線を合わせただけで口説けそうなパワーがある。
「……お客様は謎めいた方でいらっしゃるのですね」
 涙に潤んだような熱い瞳でユリアは言った。

 先ほどまで浸っていたぬるい湯船の香料が今も仄かに香っている。蒼穹に舞う風・ミリィ(a37592)は気持ちよかった。流れるようなユリアの指先がミリィの背から腰、また背中から肩へと動くたびに快感が身体を走る。
「……ん……気持ち…いい……」
 思わずミリィの唇から感嘆の溜め息と共に言葉が漏れる。
「嬉しいです。こんなに良く思ってくださるなんて……わたくしも冥利に尽きます」
 ユリアが身につけた薄物がシャラと軽い音をたてる。

「……ミリィ様。あの、ミリィ様……」
 遠くから声が聞こえていた。ゆっくりと意識が戻り暗かった世界に光が戻ってくる。目の前に心配そうなユリアの顔があった。
「私、眠ってしまったのですね」
 全裸だったミリィはユリアとそっくりの、けれどもっと豪華であでやかな色合いの服を身につけていた。丈もずっと長くて足首まであるが、見事な透け感と大胆なスリットは変わらない。
「お食事の準備も整っておりますが、どうなさいますか?」
「せっかくだから、ユリアさんも一緒に食べませんか?」
 ミリィが誘うとご相伴ならばさせていただくとユリアは嬉しそうにうなずいた。

 甘い香りが月夜に舞い降る銀羽・エルス(a30781)を包み込んでいた。それは秋に咲く小さな入り日色の花の香りだった。少し香りがきつい花だから好き嫌いはわかれるかもしれないけれど、エルスは気に入っていた。秋を実感させる香りだからかもしれないし、香りと比べて大人しく慎ましやかな花が可憐だと思ったのかもしれない。だから、この花の香りに包まれていると、つい自分が今どこで何をしているのか失念してしまう。ここは本当は『敵地』なのだからもっと気を張っていなくてはならないと思うのだが、つい身体がほぐれてくると心まで解きほぐされてしまいそうになる。
「アーシャさんは……ノスフェラトゥの人々が好きなの、ですか?」
 真っ白な羽と、その羽の様に白い肌の中から血の色が健康的に覗いている。最初こそ、同性とはいえ見ず知らずのアーシャに全裸を見せるのは恥ずかしかったエルスだったが、僅かな時間でもうすっかり気にならなくなっている。心が軽くなったせいなのか、いつもならば聞けない様な事も大胆に質問出来てしまう。
「えぇ。ご主人様方は皆素晴らしい方々ばかりです。とても寛大でお優しいから、私たちはホントに幸せなのです」
 屈託のない笑顔でアーシャはよどみなく答える。
「ギャロ様も……ですか?」
「お会いしたことはありませんけれど、お慕いしております」
 穏やかにアーシャは言った。

 裸の背に少し暖められた香油が広がり、淡い芳香が部屋を染め覆い尽くしていく。
「たはは……裸ってかなり恥ずかしいね……」
 初めての体験にミンストレルレヴァリー・カルフェア(a23806)の話す言葉は途切れがちだ。初めてだが、他人に背をなでさすられることがこんなに心地の良い事だとは思わなかった。話していても、気持ちよさで弛緩してしまって、次の言葉を紡ぐ事が億劫になる。ドリアッドのカルフェアはまだまだ充分に若かったし肉体的な衰えもなかったが、アーシャの指がもたらす快感は抗う事が出来ないほど甘美なものであった。冒険者として各地を渡り歩き、多くの敵と戦う日々は目に見えない小さな疲労を蓄積させていったのかもしれない。少し鼻につく甘い香りも知らず知らずにカルフェアをとろかしていたのだろうか。
「ですけれど、服の上から施術させていただいたのでは心地よさが半減してしまいます」
「そう……うん、そうかもしれないね。ねぇ、アーシャさん、全然関係ないんだけど……ちょっと、質問いい?」
 やっぱりゆったりとした口調でカルフェアは声を掛ける。せっかくミュントスまでやってきたのだ。出来るだけこの地の事を知っておきたい。
「わたくしで解ることでしたら、なんなりと……」
 歌うようにアーシャは言った。

 施術が終わった銀花小花・リン(a50852)は別室に通された。全裸だった身体には濃い藍色の作務衣をつけている。けれど、肩と袖を留めた部分や袖口や裾、下衣にも明るい紫色の組み紐をあしらい地味になりすぎないようになっている。案内された部屋には黒い木のテーブルと椅子があり、簡単な食事の用意がされてあった。米を炊いたもの、干した魚を焼いたもの、野菜を刻んで塩もみしたもの、そして黄金色に輝く出汁巻き卵だ。
「リン様のお好きな物を伺いましたから、それをなんとか再現するように致しました。けれど、ここはミュントスですからリン様のお国と同じ材料ではございません。お国に合うか心配です」
 先ほどまでリンの身体をほぐしてくれたアーシャが部屋に入ってきた。漆塗りの盆にやはり漆塗りの椀が乗っている。温かい湯気のたつみそ汁だった。
「私の為に……ありがとう」
 礼儀正しくリンは言った。この地でこの料理を出すことがどれほど大変なのかはわからないが、心づくしには礼節を持って応えたい。
「リン様が喜んでくだされば、それがわたくしたちの喜びです」
 リンの目には、そう言って微笑むアーシャに嘘偽りは見えなかった。けれど、それが少し心に痛かった。

 うつぶせで寝台に寝て肩から背にかけて力強く大きな手でもみほぐされる。熟練の技を持つ男の手は指先まで温かく、思わず声が漏れてしまうほどに快感だ。いつもならこの体勢だと豊満すぎる胸のふくらみが圧迫されて腕の付け根の内側が時折痛くなるのだが、それさえ感じなくなるほどに背中が気持ちいい。
「はぁ〜……んん……なぁ〜ん」
 神聖爆乳帝國皇女・ミシェル(a27427)が長い金色の髪を軽く結い上げて留めたのは施術しやすいためであったが、普段は隠れて見えない白いうなじが露わになってなんとも色っぽい。
「……お嬢様、大変失礼をいたしました。どうぞこちらの長椅子にお掛け直し下さい」
「サムちゃん、どうしたんです、なぁ〜ん」
 まだ施術は始まったばかりだが、すっかりサムの手練手管に酔ったミシェルの身体はすぐに動けない。今だけはこのまま寝台に寝そべって怠惰で自堕落に過ごしていたい、なんて思ってしまう。そのミシェルの身体が不意に浮いた。
「失礼をいたします」
 一糸まとわぬミシェルの身体はサムに軽々と抱き上げられ、そして長椅子にそっと横たえられた。押しつけられていた胸が赤くなっていた。
「ミュントスにはこの村のように、人材育成に特化した村が多いのかしら? それは支配階級に供するため、なぁ〜ん?」
「さぁ……僕はこの村と施術の事しか知らないのです」
 曖昧にサムは微笑んだ。

 白い背中に大きな手が乗る。入浴したばかりで火照った身体なのに、その手のぬくもりが心地よい。うっとりとサムの手技に心から酔いしれながら、けれど故意の奴隷・ネンヤ(a36532)は自分が同盟の冒険者であることを忘れなかった。使命とか、悲壮とか、献身とか、そういうのではないと思う。ただ、忘れないというだけだ。いつしか部屋には淡くけぶる紫色の煙が薄く濃くたちこめていた。
「それだけの腕を持っているのですもの、もっとわたくしを別の意味で気持ちよくすることもできるのではなくって?」
 ネンヤが話すと、ゆるくまとめて寝台から零れた水の様な髪がゆらりと揺らめく。
「……どうでしょうか。僕はお嬢様や旦那様がどのように『感じる』のか、わかりません」
 先ほどまでの軽快な会話とは違ってサムの返事はどこか歯切れが悪い。ネンヤがおこした紫煙がサムの心に影響しているのだろうか。
「わたくしが聞いているのはあなたの事ですのよ」
 不意にネンヤは身体を反転させ上体を起こす。艶やかで美しい肩にハラリと水の髪が降りかかる。
「逸脱したくなったりはしませんの?」
 意味深長な笑みを浮かべ、ネンヤはサムを水色の目で見つめる。

 ユリアとアーシャから施術を受けた後、ストレイドッグ・ゼスティア(a56910)はその足でサムの技を堪能していた。ユリアの繊細さ、アーシャの緻密さはないもの、サムにはダイナミックで力強い技量、そして安心感がある。なによりも経験に裏付けられた温かい手のひらが魅力的だった。
「アンタは一番になりテェのかい? なってどうする?」
 心と体の半分ぐらいがサムの施術に耽溺していたが、それでもゼスティアの口調は冷ややかで揶揄の調子が混ざっている。
「僕はこの村で一番になりたいわけではありません。ただ、どこの誰よりも一番お嬢様や旦那様の身体をときほぐせる者になりたいのです」
 全ては施術を受けにここにやってくる『上位者』の為、その者に極上の一時を差し出し、あわせて身体の不快感を取り除くため……なのだと言う。サムは言葉少なに語ったが、ゼスティアにはそれが嘘だとは思えなかった。
「その為ならば、僕はどんな事でも出来る、やりたいって思うんです」
 サムの従順な言葉と態度の向こうに微かに垣間見られる貪欲さと野心。
「なるほどな……嫌いじゃネェぜ、そういうカンカク」
 背中から腰を丹念にもみほぐされながら、ゼスティアは片頬だけに淡く笑みを浮かべた。

 全員がそれぞれに希望する施術を受け、気に入った者を指名する。最も多くの支持を得たのは、水流の指を持つユリア。まだ17歳の娘であった。新たな『白金の指』誕生であった。


マスター:蒼紅深 紹介ページ
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参加者:10人
作成日:2007/05/21
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冒険結果:成功!
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