全身鎧好きオヤジにも愛の手を…〜私の自慢の鎧を取り返してくれ〜



<オープニング>


 とある町の、とある屋敷の話である。
 その屋敷に住む、村で一番の富豪である主人は無類の鎧好きであり、特に全身鎧を愛していた。
 それは決して誇張ではなく、もはや趣味の枠を超えた愛となっているのだという。
 冒険者の頑強な鎧も好きであり、兜やマントなどでのフル武装は鼻血が出るほど興奮するそうなのだが……「中の人間」には全く興味がないというか、目に入らない困った人物でもある。
 そのあまりの変わり者っぷりに村では一番の有名人であるのだが、今回はそれが災いしたようであった。
 ……つまるところ。あまり有名になりすぎると、そのコレクションを狙う者が出てくるということである。
「盗まれた?」
「そうらしいですよ。しばらく鎧以外とは会いたくないって大騒ぎしてまして」
 館の主人に会いに来た小さき護りの楯・アドミ二(a27994)はそれを聞いて、たぶん困ったような表情をした。
 たぶん、というのは全身鎧で表情が分からないからだが。
「うーん、じゃあボクはその変な人に会えないから、アドミニが直接聞いてくるしかないんだよ」
 トレジャーハンター・アルカナ(a90042)の言葉を受けてアドミニは屋敷へと向かったが、その対応はまさに門前払いであった。
「冒険者様か……悪いが帰ってくれ! 私は誰にも会いたくない!」
 それを横で聞いていたアルカナが、アドミニに何事かをボソボソと呟く。それを受けてアドミニが発した言葉は、こうである。
「もしもし、通りすがりの鎧ですが……何か困ったことはありませんか?」
 アッサリと扉を開けてくれた館の主人の言うには、一晩の間に選りすぐりの全身鎧が盗まれてしまったのだという。
「困ったものだ……取り戻してくれたら、君に似合う新しい「顔」を用意しないこともないのだが」
 どうやら、「中のアドミニ」を認めるつもりはないようだが……それはさておき。
「あれだけの量の中から、一晩で選りすぐって盗み出す連中だ。相当目利きなのだろうが……」
 館を出てきたアドミニは、事の次第を仲間達に話した。
 幾ら目利きで手際の良い盗賊達ではあっても、全身鎧を複数所持しての運搬は相当困難なはずだ。ならば、取り戻してあげるのが冒険者の道というものである。
 そう頷くと、アドミニ達は盗賊の行方を追うべく聞き込みを開始するのだった。

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参加者
白鎧の騎士・ライノゥシルバ(a00037)
たいがー隊長とその片腕の・ンニャンテ(a04179)
蒼の覚醒守護修羅神・シオン(a12390)
シールディング・シードリン(a14037)
赤き機神・アルシオン(a14122)
不確定名・ヒッサー(a17539)
闇騎士・アドミニ(a27994)
光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)
NPC:トレジャーハンター・アルカナ(a90042)



<リプレイ>

●鎧の館
「初めまして。猫型鎧のシャム14号に御座る。」
「今日は鎧がよく訪ねてきてくれるなあ……はあ、私のコレクションさえあれば……」
 白鎧の騎士・ライノゥシルバ(a00037)の言葉に、明らかに落胆した表情を見せる主人。
 どうにも、鎧を盗まれたショックは大きいようだ。
「盗まれた鎧の目録を戴きたいのでござるが……」
「無いよ」
 アッサリと言う主人。
「目録とかそういうのは、全部私の頭の中。それで充分」
 まあ、そういうものなのかもしれない。そう思い直すとライノゥシルバは、改めて鎧の特徴を聞き始める。
 ちなみに、近くにはクリスタルインセクトに意識を集中しているたいがー副艦長とその片腕の・ンニャンテ(a04179)とトレジャーハンター・アルカナ(a90042)が居たりするのだが。
 鎧を着ていないせいか、館の主人の眼中には入らなかったようである。案外、この辺りに盗まれた理由の一端もあるのかもしれない。
「それがしアドミニ卿に縁ある蜥蜴鎧でござるが、ときに主人。連れ去られた鎧殿の面相や特徴などあれば、お教え願えまいか?」
「アドミニって誰だい?」
 どうやら、個人名では認識していないらしかった。
 不確定名・ヒッサー(a17539)は改めて小さき護りの楯・アドミ二(a27994)の鎧の外観を伝えると館の主人はやっと納得がいった、というように頷く。
「ああ、彼かあ。うんうん、それなら君達も私の鎧を取り戻しに行ってくれるんだね。まず鎧の成り立ちだけれど……」
「いや、ご主人。時間も無いので外観だけで……」
 勿論、個人差はあるのだが。人は好きな話になると、とことん長いものである。
 主人の館より出てきた時には、すでに結構な時間がたっていたのだが……それでも、予想よりは早く切り上げられた。
「諸君! この鎧を見かけなかったか?」
「いやあ、見てないなあ。ところでアンタ、誰だい?」
 ライノゥシルバとヒッサーで描いた鎧の人相書きを見せるが、いまいち村人達の反応は薄い。
 良い反応が返ってきたとしても。
「ああ、これかい。知ってるよ。そこの屋敷のご主人のだよね。え、盗まれたのかい?」
 といった感じである。どうやら、館の主人の家から鎧が出入りするのは日常らしい。
「と、なると……やはり鎧を着て運んでいた、のでしょうか?」
 光纏う黄金の刃・プラチナ(a41265)の言葉に、ライノゥシルバも頷く。
 館の主人の家から出て行くガシャガシャという影。それでいて村人達が気にしない姿は、すなわち鎧姿。
 盗賊達は、鎧を着て運んでいったのだ。この村だからこそ出来る大胆な犯行であったと言えよう。
 ……となれば、あとは確信を得るために偵察にいった仲間たちの帰りを待つばかりではある。

●偵察部隊
「さて、真偽はどのようなものか……」
 東の山の中をグランスティードで走っていた武神装甲ダイ・アルシオン(a14122)は、然程良い成果は得られてはいなかった。
 元より深い山の中。グランスティードに騎乗して走っている状態では、周囲への気配りも散漫になってしまう。
 しかし、それでも盗賊のアジトのようなものがあれば痕跡は発見できると思ったのだが……。
「あるいは、此処に盗賊のアジトがあるという情報はダミーだった可能性がありますね」
 アドミニの言葉にアルシオンは頷き、足元の草を見る。
 あまり人の手が入った様子はなく、あまり踏み荒らされた様子もない。
 盗賊が居るのであれば当然、痕跡はあるはずだから……此処はかなりの確率でダミーということになる。
「……西、か」
「そちらもダミーであればお手上げですけどね」
 2人はそう言って、西の森の方面を眺める。あとは、そちらの成果に期待するしか無かった。
 そして、その西へ向かった2人、真星神冥王蒼月覚醒武人・シオン(a12390)とシールディング・シードリン(a14037)は、何か重たいものが通った痕跡を発見していた。
「ううむ、これは……」
 シオンの声にシードリンも地面に屈みこみ、その足跡を吟味する。
「複数人の足跡……のようですね」
 冒険者と名乗る人影が……という話ではあったが。恐らくは冒険者というのはガセであろう。
 となれば、盗賊の足跡ということになるが……そうなれば、盗賊達は鎧を着て運んだ可能性が高くなる。
「この先に続いているようでござるな」
 意外に鎧の足跡らしきものは深く残っており、余程の事が無ければ消えそうにはない。追尾は容易だろう。
「よし、集合地点に急ぎましょう」
 万が一ということもある。まずは合流して情報を整理するべきだ。
 シードリンの言葉にシオンが頷くと、素早く場所を頭に入れる。万が一、を考えての事だ。
 そのまま2人はグランスティードに乗り疾走する。やがて集合したアドミニ達は、互いの得た情報を交換しあっていた。
「……やはり、西の林である可能性が高いですね」
「ああ、西に関する情報だけ確度が高い。足跡の件も鑑みれば……アジトは西にあると考えて間違いなかろう」
 プラチナの言葉にアルシオンが頷き、他のメンバーもガシャガシャと音を鳴らしながら同意する。
 非常にどうでもいい話ではあるのだが、鎧が円陣を組んで何かをやっている様子は鎧が村にいる光景に慣れた村人達でも、かなり気になる光景であった。 
 心配そうに、あるいは興味津々な様子で誰かが覗いていたりするのはまあ……仕方ないとして。
「いやあ、立派なもんだ」
「全くですな」
 たまにお捻りのつもりなのか、布に包まれたお菓子などが飛んでくるのは一体どういう事なのか。
 鎧というジャンルに対して、この村の村人達は感覚が非常に麻痺しているらしかった。

●盗賊団を捕まえろ
「うわああああ! 鎧が襲ってきやがったあ!」
「バカ、落ち着け! あれは冒険者だ!」
「落ち着いてる場合じゃねえだろバカ!」
 普段策謀を弄する者ほど緊急時には弱いとはよく言ったものである。
 盗賊達のアジトは、突然のアドミニ達の襲撃で大混乱に陥っていた。
「逃げられると思うな!」
 口喧嘩をしながら逃げていた盗賊2人をシオンの粘り蜘蛛糸が捕らえる。
「悪い事をした方に、良い目を見せる訳にはいきません。懲らしめて差し上げます!」
 シードリンの体当たりで地面になぎ倒された盗賊は、そのままンニャンテの手で縛り上げられ、地面に転がされていく。
「貴様らも鎧を愛する者ならば、何故彼の魂の叫びに耳を貸そうとせぬのか! そのような真似をして彼が喜ぶと思っているのか!」
「別に愛してねーよ!」
 漢泣きで鎧の気持ちを代弁するヒッサーを色んな意味で怖がった盗賊達が散り散りに逃げていくが、すぐにアドミニの粘り蜘蛛糸で拘束されてしまう。
「逃げるつもり? 誰一人逃がさない!」
 人質ならぬ鎧質のつもりか、全身鎧を身に着けている者もいたが、粘り蜘蛛糸の前では形無しであった。
「ハラショー、フルアーマー! とか言うと思ったんですけどね〜☆」
「ただの盗賊ですからね……」
 ンニャンテの言葉にプラチナは答えつつも、粘り蜘蛛糸で盗賊達を拘束していく。
 もうかなりの人数を捕まえたはずだが……そういえば、親分らしき姿がまだ見えない。
 何処かから逃げたのだろうか……?
「まあ、心配ないですね〜☆」
 仲間1人の姿が見えない事に気づいたンニャンテが、そんな事を口にする。
 そう、その男はすでに裏口に回っていたのだ。
「ダイアルシオン見参!」
「うわあ、また出たあ!」
 また出たあ、とはご挨拶であるが。こうも立て続けに全身鎧の冒険者ばかりでは無理もあるまい。
「逸騎刀閃っ!」
「どひゃああっ!?」
 ホーリースマッシュで近くの岩を壊して見せたダイアルシオン……もといアルシオンに、盗賊の親分はすっかり腰を抜かしてしまう。
 スーパースポットライトで動きを止めるまでもない。
「さて、覚悟はいいですよね?」
「全身鎧を愛でるのは良い! しかしながら人様の鎧を盗るのは如何なもので御座ろうか!」
 泣くまで脅す。そう宣言したプラチナの言葉と、早くも説教を始めたライノゥシルバに早くも震え上がった盗賊達が村に引き渡されたのは、次の朝のことであった。
 村に帰ってきたヒッサー達は、早速館の主人の大歓迎を受けた。無論鎧として、なので食事の類は出なかったのであるが。
「……と、御主人。拙者、まだ保管庫内に居りますので……鍵はかけないでほしいので御座るが……」
「分かってるよ。ああ、そっちの鎧は館の中に運んでね」
 鎧を運んでいたライノゥシルバを見ていた主人が、それをぼーっと眺めている。
 冒険者達の目の前には、それぞれ厳選したらしい鎧が並べられていた。
「彼は……なんで語尾が『にゃん』じゃないのかなあ……」
 どうでもいい事を呟く主人を、アルカナが理解できないものを見る顔で眺める。
 ちなみにアルカナとは、相変わらず空気のようであった。
「なるほど……これは良い全身鎧ですね」
「だろう? 君達に似合いそうなものを厳選したからね」
 アドミニの言葉に主人は満面の笑顔で答える。
 やがてアルシオンと主人の鎧話に花が咲き、全身鎧を着込んだメンバー同士にしか分からない会話が始まっていく。
 然程鎧のマニアックな話に興味のないプラチナはシードリン達を連れて食事に行ってしまう。
 ……一方、ンニャンテは空気扱いされたくなくて鎧を着ていたのだが。
「……重くて動けませんですよぅ』
 無茶はよくない。自分の身の丈で行動しよう……これは、今日の教訓と言えそうであった。


マスター:じぇい 紹介ページ
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作成日:2007/05/19
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