特大料理を喰らえ!〜驚天動地、魚一匹



<オープニング>


「ワイルドファイアに生息する『ギョッ』って魚を知ってるかい?
 別に洒落でも冗談でもなくて。言葉の通り、見た者をぎょっとさせるようなすごい魚だよ。
 まず大きい。ワイルドファイア的にはさほどでもないかもしれないけれど、小柄であれば冒険者だって一呑みだ。
 次に美味しい。鍛え上げられた強靱な身肉は、あふれんばかりの旨味成分を含んでいる御馳走だっていうよ。
 さらに美しい。その鱗は生きながらにして叩けば叩くほど硬く輝きを増すとかで、剛いものほど美しいらしいね。
 そして凶暴だ。自分以外の生き物を見かければ、強烈な体当たりで手酷く追い払おうとするんだって。
 最後に何よりも――ものすごく跳ぶ。たとえ敵が陸にいようが、水面から飛び出して暴れ回って水中に戻っていくのだという。

 いろんな意味で驚かない人はいないんじゃないかな。
 さあ、そんな魚が棲むという池の噂を聞いたんだけど……みんなは、どうする?」
 傾奇者・ボサツ(a15733)はそう言って、仲間たちを前ににやりと笑うのであった。

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参加者
蒼の閃剣・シュウ(a00014)
バニーな翔剣士・ミィミー(a00562)
清麗なる空牙の娘・オリエ(a05190)
天藍の風・アモウ(a08601)
傾奇者・ボサツ(a15733)
砂漠の水鳥・シリウス(a15956)
天藍の翼・サナ(a25832)
雄風を纏いし碧眼の黒猫・ユダ(a27741)


<リプレイ>

●局地的猛暑
 思い切り踏み込んで大地を蹴れば、噴き出した玉の汗が弾けて飛んだ。
 暑くて熱い。何が暑いか。ワイルドファイアだから。何が熱いか。ワイルドファイアだから?
 否。
(サナには特に美味しそうな部分を食べさせてやるからな。その、ほら、お腹の子供の分も、な?)
(うん、ありがと)
 視界の端に映るのは、皆と同じように駆けながらも目と目で語り合う二人。超愛妻家でサナの王子様・アモウ(a08601)と天藍の花嫁・サナ(a25832)のフィオール夫妻の姿。
 きゃっきゃうふふと笑顔を交わす二人をよそに、轟音を立てて立木が薙ぎ倒される。
「ええいッ! 暑いんじゃー!」
 汗だか涙だか解らない雫を拭いつつ、蒼の閃剣・シュウ(a00014)が八つ当たり気味に叫びながら稲妻の斬撃を一閃させる。
 横腹に打ち込んだにもかかわらず、硬い感触が片刃を弾く。だが衝撃は殺しきれなかったらしく、怪魚はもんどりうって地面に伏した。

 ここはワイルドファイア某所。
 凶暴な巨大魚『ギョッ』の棲む水辺。
 誘き出すまでもなく飛び出してきたその怪魚に対し、冒険者たちはスーパースポットライトによる引き付けと散開、各種強化アビリティと連携によって攻勢を掛けていた。
「はふぅー。喰われるかと思ったぁー」
 息を切らせてそう呟き、足を止めて汗を拭くのはバニーな翔剣士・ミィミー(a00562)。
 束ねた髪の一方の先がほんのちょっとギザギザになっているのは、大口を避けた際に鋭いヒレがそこを掠めたから。
 さんざん追いかけ回されながら最寄りの仲間に攻撃を任せる、という作戦行動を数ターンぶっ通しで繰り返した結果、すっかり息が上がっている。
「さあ、次はこちらだギョッよ!」
 足を止めた彼女の代わりに閃光を放つ、雄風を纏いし碧眼の黒猫・ユダ(a27741)。
 魚の視界は広い。それを受けて巨大魚は、ばちんと土を弾いて再度宙に跳ねた。
 最寄の岩に頭をぶつけ、近場の立木に尾をぶつけ、それらの反動で高々と跳ね上がる。
 そこから身をよじって急降下しながら、吹き付ける木の葉と光の槍をすれ違うようにかわす。
「ナイス牽制だ!」
 回避でわずかに体勢を崩した怪魚の横面に、砂漠の水鳥・シリウス(a15956)の二丁の斧が振り下ろされた。
 がっつん、と重い手応えとともに、双方反動で後方に吹き飛ぶ。
 斧の刃に目を落として舌打ちするシリウス。刃こぼれはしていないが、逆に血もついていない。
 頭から突っ込む分、おそらくそこ周辺が一番鍛え上げられ硬いのだろう。痺れた腕を清麗なる空牙の娘・オリエ(a05190)に癒してもらいながら、次の攻撃機会を窺う。

「合わせて、アモウ!」
「まかせろ、サナ!」
 ユダと、彼を援護するように立ち回る傾奇者・ボサツ(a15733)の二人と肉薄しつつ前方を横切る怪魚に向けて、サナとアモウが木の葉と粘糸が浴びせた。
 跳ねて避けようとしたところに真正面からの衝撃波を受け、動きが止まった怪魚はそのまま束縛される。
「さあチャンスだっ!」
 そのボサツの言葉に合わせ、分散していた冒険者たちが一斉に前に出る。
 シュウの剣が、オリエの光槍が怪魚を打ち据え、ボサツの掌がそれをさらに吹き飛ばした。
「まだまだいくわよっ!」
 ミィミーの細身剣が舞い散る花弁と共に三撃目で弾かれる。くわっと今にも拘束を弾き飛ばしそうな勢いのギョッからあわてて飛び退ると、その影から全力で闘気を込めた斧が繰り出された。
 手応えを感じつつも舌打ちするシリウス。今度は斧の刃先にじっとりと赤く魚の体液が残っていた。
「ちぃっ、締め損ねたか!」
「なに、まだ活造りが出来ると考えればいい」
 ユダの繰り出した鋼糸が、お前はすでに俎上にあるとばかりに、怪魚を三枚に下ろすべくその全身を切り裂こうとする。
 が、寸前に束縛を破ったギョッは、一斉攻撃で周囲に近づいていた冒険者たちを弾き飛ばさんばかりに暴れ始める。引き絞られる寸前の鋼糸が弾かれ、その巨体が躍り上がる。
 ぐぐっ、と宙で反転させ、改めて狙いを定め直すギョッの目に、やや後ろで身構えるサナの姿が映った。
 ばきばきと音を立てて木の枝が折れ砕ける。周りを囲う冒険者たちの頭上を跳び越し、一直線に目標へと躍りかかる――。
「させるもんかっ!」
「止めるっ!」
 ボサツの蹴り上げが真下から下顎を捉え、シュウが全身の力を込めて盾で横面を弾く。衝撃で牙が逸れ、衝撃に足をもつれさせながらその場を慌てて飛び退くサナ。
 だがギョッもじっとしてはいない。その場で尾をぐるんと横に振るう。追って一撃を加えようと迫っていたシリウスとユダが弾かれ、鋭い尾びれがそのままサナを襲わんとする。
 次の瞬間。
 ――アモウがサナの手をとり、身を挺して愛する妻をかばったのが先か。
 ――サナがアモウの手をとり、全力で引き寄せて愛する夫を盾にしたのが先か。
 とにかく、直撃を受けたアモウが一条の深紅の迸りと共に勢いよく吹き飛んだ。

「……とどめ」
 ボサツの指が、ずぶりと急所に突き刺さった。
 びくんと最後に一度だけ激しく震えると、そのまま動かなくなる――怪魚、ギョッ。
 かくて冒険者たちの味的好奇心その他を満たす邪魔をするものはいなくなったのであった。

●鮮魚の鉄人
「さすがに手強かったもんだね」
「そうだな……ごふっ」
 仲間たちの負った傷を癒しつつ、オリエとアモウがそんな言葉を交わす。
 戦闘を終えた冒険者たちは、すでに仕留めた獲物の処理と、さらに次の段階の準備へと取り掛かっていた。
「あー疲れた」
 ミィミーは飲み物の準備。すでに用意してあった酒などの飲み物を、ギョッの棲んでいた水場から引き揚げる。
 程よく冷えた手触りに、思わず喉がごくりと鳴る。が、まだ我慢。
「さて、どう捌こうか」
「適当でいいかな? 内臓だけ傷つけないようにしてくれれば」
 まずは魚をどうにか捌く。ボサツの簡単な指示に従って、ユダがざっくりと身を切り分けてゆく。
 硬い鱗は隙間から剥がして別に取っておく。非常に頑強だった戦闘中と比べて、鱗の下の肉は非常に柔らかく、これが本当にさっきの強敵なのかと疑わしくなるほどだ。
 とにかく身をいくつかに切り分け、あとは各々が適当な大きさに切り分けて調理開始だ。

「わぁ♪ 死んでもお口の中で旨みが飛び跳ねてるわぁ♪」
「これは……美味いな」
 薄く白い身肉を短冊状に削ぎ切り、刺身にしてひょいぱくと口にする。
 軽い歯ざわりと染み出す旨味、噛んだ瞬間と喉を通した瞬間で一気に広がる特有の香り。
 思わず感涙に咽びそうになる肩を軽く叩き促し、シュウはシリウスと二人で次々と魚肉を一口大に切ってゆく。
「それでは、茹でて焼いて揚げてはわたしたちで」
「食べるだけしてたいなあ」
 オリエとボサツが持参した調理器具で、手間のかかる各種加熱調理に取り掛かる。
 内側の肉はなるべく刺身用に任せて、皮のついた部分の肉を、鍋や鉄板に入れて乗せてゆく。
 ごぼごぼと沸き立つ湯からは食欲をそそるにおいが、はじける音を立てる鉄網からは、肉からあふれた脂がつやつやとこぼれている。
 衣で覆った魚肉を加熱した油に沈めると、すぐに浮いてきた。さっと揚げたりしばらく沈めたりと、加熱具合に差をつけてみたり。
「サナ、レモンとって」
「はい」
 一角では夫婦が仲良くキッチンモード。
 見ているだけでおなかいっぱいになりそうなので、せっかくのご馳走を前に邪魔する野暮もいない。二人で簡単な料理を実に幸せそうに作っていた。

●祝杯
「それではボサツたんさま軍団結成とサナのお腹の赤ちゃんおめでとうを祝してかんぱーい♪」
 シュウの号令で杯が打ち合わされ、宴が始まった。
 ボサツ軍団なのになんでシュウが号令をかけるのか、などと細かいことを気にする余裕はない。
 あふれんばかりに盛られた魚料理の数々に、皆次々と舌鼓を打っていたからだ。
「あぁ、運動しておいしいもの食べて、お酒飲んで、幸せ〜♪」
 真っ先にぱたんきゅー、と実に幸せそうな顔でミィミーが潰れた。
「サナ、はい、あーんして?」
「うん、おいしい。アモウにも、はい、あ〜ん」
 幸せ夫婦はすっかり独自の世界を作り上げている。邪魔しないように中てられないように、ほかの面々は少し離れた場所で酒盛りだ。
 たまに酔ったアモウの方から絡み酒風に寄ってくるが。
「シリウスもっと飲めー。遠慮すんなー」
「飲んでるよ。いいからこれでもサナにかけてやんな!」
「オリエは美人だなぁ。きっといい奥さんになるぞー」
「ありがとう。でも一番の美人は別にいるでしょう?」
「ボサツ、これ旨いなぁ。誘ってくれてありがとう。俺、幸せ♪」
「幸せついでに子供いっぱい作って一人俺にくれよ」
 と、ちゃんと奥さんについてていやがれしっしっと追い払う。

 酒を酌み交わし、適度に語り合う。
 腹が膨れ喉が潤えば、あとは時の過ぎ行くのすらを楽しみ惜しむのが宴だ。
 陽気の下、吹く風に涼みつつすよすよと寝息を立てる者も、喧騒からやや離れて手中の杯を傾けるものも、等しく楽しい時間が過ぎてゆく。
「たまにはバカンスも悪くないよねー」
 ……ん、バカンスだっけ? と小首を傾げつつ、シュウが手の中の輝きに目を向ける。
 そこに光るのは、一枚の鱗。
「バカンスでいいんじゃないかい?」
 同じく手に鱗を持ちながら、ボサツが応えた。
 楽しめればイコールバカンスとまではいかないが、温暖のこの地でのんびり過ごすこの時間は、何にも代えがたいものでもある。
「いいか」
「いいさ」
 それだけ言って、手近な皿の料理を口に放り込む。
 ふわりと。
 幸せの味が広がったような気がした。


マスター:磯山公樹 紹介ページ
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作成日:2007/05/28
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