巨大ホタル怪獣を見に行こう



<オープニング>


「みんなは夜のワイルドサイクル平原を過ごしたことはあるかな? 昼は明るくて雄大でとっても気持ちいいけど、夜もなかなか面白いことがあるよ」
 ヒトの霊査士・キャロット(a90211)の言葉にピンと耳を立てる冒険者たち。当然のことながら、活動時間は夜より昼のほうが長い。もしかしたら見逃していることが多いのではと彼らは思った。
「とある森の中に流れる川のほとりに、ホタル怪獣が生息しているんだ。怪獣だから普通とは違う体長なわけで、出す光も、とても大きくて眩しくて見ごたえがあるんだ」
 キャロットは言いながら微笑んでいる。よほど壮麗な光景が見られるのだろう。冒険者たちは是が非でもその森に行きたくなった。
「大事なことだけど、森の中には夜行性のジャガー怪獣が潜んでいるんだ。爪と牙がかなり強力みたい。なにしろ夜だから、余計に気をつけないといけないよ。しっかり灯りとかも準備してね」

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参加者
紅天黒神戎王孫・ガンバートル(a00727)
幸せを呼ぶ黒猫・ニャコ(a31704)
深森の迷い子・セーラ(a33627)
うたかたのゆめ・ロン(a33766)
孤独を映す鏡・シルク(a50758)
風緑花紅・カイジ(a50823)
ぶどう科・リルル(a52901)
風浪の蒼き人・レナート(a57461)
砂鹿・ニーナ(a59109)
ラトルスネーク・ングホール(a61172)
煌めく仔猫な爆裂少女剣士・ザッハトルテー(a62373)
闇の熾火・アリスローゼ(a63400)


<リプレイ>


 ほぼ全方位に地平線が見える雄大な夜。煌々と満月の輝く静かな夜。
 今、このワイルドサイクル平原における唯一の光に、余計な形容は必要ない。ただ、たとえようもなく綺麗だった。ここまで完璧な満月もなかなか見られない。日程的にずいぶんタイミングがよかったらしい。
(「夜のワイルドファイアってこんななんだ」)
 砂鹿・ニーナ(a59109)が思った。昼のワイルドファイアは何度も経験ある彼女にも、夜はたまらなく新鮮に映った。今回が初上陸の歪みの国の・アリスローゼ(a63400)は、それ以上にドキドキしっぱなし。
 できるならこのまま月見と洒落こみたいところだが――さらなる神秘の光を求め、暗所に入らねばならない。冒険者はそびえ立つ暗い森を目の前にして、気を引き締めた。
 隊列の中央に位置する風緑花紅・カイジ(a50823)がホーリーライトで周囲を照らす。他、複数人でカンテラを灯し、照明を万全にしてから内部へと進入していった。先頭の紅天黒神戎王孫・ガンバートル(a00727)が邪魔な蔓や藪を剣で刈り取っていき、後続が進みやすいよう配慮した。
 夜の森はそれだけで怖いものだが、幸いにして大きな障害もなく歩いていけた。元来、平穏な森なのだろう。
「とはいえ、そろそろジャガーでも来てくれねぇとヒマすぎるぜ」
 ラトルスネーク・ングホール(a61172)があたりをキョロキョロしながら言う。何のトラブルもないのは、彼には退屈なのだった。
 ――その言葉が届いたのか、間もなく前方から草木を掻き分ける音が届いた。
 果たして、4本足の巨体が現れた。
 鮮やかな黄色の毛並みに雄々しい斑点模様。しなやかかつ太い四肢。噂のジャガー怪獣だ。たとえこの種を知らない者でも、一目見ただけで危険な天性の狩人であるとわかるだろう。
「うわぁ、出なくてもいいのにーっ」
「うーん……お邪魔はしたくなかったのですけれど」
 外見年齢詐称ってる・レナート(a57461)が眉をひそめ、カイジが苦笑いした。出会ってしまったものはどうしようもない。皆、低姿勢で睨んでくるジャガー怪獣にしっかりと相対した。レベルの高い者が低い者を囲む体勢。
 ただ、近隣の住民に被害を及ぼしているという話は聞いていない。ゆえに、冒険者たちは無益な殺生はすまいと決めていた。
 獣達の歌を歌える幸せを呼ぶ黒猫・ニャコ(a31704)が、無防備に前に出た。敵対意識はないという姿勢。
「ニャコちゃんたちは戦いに来たわけじゃないにゃ♪ この先にいる巨大ホタルを見に行くだけにゃ♪」
 気軽に声をかける。
 しばしの沈黙が流れた。張り詰める空気。愛しむ仔猫な爆裂少女剣士・ザッハトルテー(a62373)は有事に備えてイリュージョンステップを開始する。
 ――するとそのジャガー怪獣は、くるりと向きを変えた。そのままのしのしと歩み去ってしまう。
 説得が成功したのだ。一同、顔を見合わせてほっと息をついた。


 しかし、森に生息するジャガー怪獣は当然1匹だけではない。
 数分も歩かぬうちに、またジャガー怪獣にばったり遭遇してしまった。
 しかも今度は親子らしき2匹。目が殺気立っていた。虫の居所が悪いのか。
 ガンバートルに君を守ると誓うを施してもらってから、ニャコは歌う。
「ジャガーちゃんたちに迷惑かけるつもりはないにゃ♪ だから、ここを通して欲しいにゃ♪」
 再び説得を試みるが――今度はいつまで経っても素直に退いてくれなかった。
 ニャコは仕方なく斬鉄蹴を見舞った。絶叫のような破壊音を立てて、近くの樹木が倒れていった。
 どいてくれないなら、この力を使うことになる。そういうメッセージだったのだが、下手に刺激してしまったらしい。
 ガウ! 親ジャガーが大きく跳躍し、急降下襲撃してきた。鋭利な爪を持つ豪腕が、冒険者たちを強引に薙ぎ払った。
 向かってくるなら迎え撃つ! 一同戦意を高揚させた。孤独を映す鏡・シルク(a50758)が痛みを堪えつつ、バッドラックシュートを撃った。黒い傷跡が刻まれ、不幸の証となる。
「癒しの歌ですの」
 深森の迷い子・セーラ(a33627)の高らかな凱歌が周囲を癒した。何事もなく立っている冒険者に、親ジャガーは眼光をぎらつかせる。
 と、左翼のうたかたのゆめ・ロン(a33766)がスーパースポットライトを照射する。親ジャガーの注意は彼に向けられた。
「オメェらを見にきたわけじゃねぇんだ、とっとと失せな!」
 あまりに無防備なその尻に向かい、ングホールが強烈な斬鉄蹴を繰り出した。凄まじい絶叫が轟く。下手に暴れさせまいと、姫百合・リルル(a52901)が粘り蜘蛛糸を放出し、身動きできないように絡め取った。
 その時、子供のジャガー怪獣が親を助けようと突撃した。子供とはいえそこは怪獣、充分な突進力。まともに食らえば痛い。
「戦いたくはないのですけれど……すみません!」
 カイジが撃つのは命を取る心配のない慈悲の聖槍。子ジャガーは肩口に食らってもんどりうったが、再度接近してくる。
「あまり痛い思いはさせたくないんだけどね……」
 レナートがエンブレムシャワーを放射する。しかし敵はそれにも怯まず、一気に巨大な牙で噛み付いてきた。またも痛烈な傷を負う前衛たち。
 ――タフそうだし、ある程度強くしても死にはしないだろう。ニーナとアリスローゼが武器に闘気を込めた。
「無駄追いはしないよ!」
「OK!」
 そう言ってから、デストロイブレードを繰り出した。懸命に耐える子ジャガー。さらにザッハトルテーが追撃する。
「ヒラッとハラッと華麗に舞うは蝶のように舞い蜂のように刺すザッハトルテー也♪」
 三方向からのミラージュアタックが見事に決まった。子ジャガーはたまらず横転し、痛みのこもった咆哮を響かせた。
 ガンバートルは親ジャガー怪獣を見る。戦意は衰えていない。――拘束が解ければ、またかかってくるだろう。もう少しダメージを与えなければ。
「はああ!」
 これ以上刃向かう気を起こすなと、容赦なくホーリースマッシュを加えた。衝撃音が森を駆け抜ける。
 親ジャガーはそれでも倒れないが、いよいよ危機感を抱いたのか、いっそう強く吠え出した。己を鼓舞しなければ飲まれてどうにかなってしまうという思考。
 疑いようもなく冒険者側の優勢である。あとは子供の方を封じれば完璧だ。
 これ以上傷つけたくはない――ニャコが心を込めて眠りの歌を紡ぐ。緩やかなメロディが子ジャガーの鼓膜を揺さぶり――強制的に活動を休止させた。
 と、セーラが親ジャガーに視線を送った。
 灼熱する空気。彼女の手から放たれたエンブレムノヴァが、子ジャガーの近くの地面に炸裂した。戦場に熱風が吹き荒れる。
「ここで退けば後は追いませんの」
 静かに告げる。その後ろではシルクが、ロンが、いつでも気の刃を飛ばせるように構えている。そしてリルルがヒーリングウェーブを広げ、こちらにはまだまだ余裕があるとアピールした。
 お前たちでは敵わない――最後の通告だった。
 そのまま待つこと十秒。
 ジャガー怪獣親子は再び動けるようになった。寄り添って、冒険者たちを見据える。
 これでもまだ抵抗しようというのなら見込みはない。速やかに退治しようと決断する。――その裏で、頼むからもう来るなと希望した。
 願いは叶った。
 おぼつかない足取りで、ジャガー怪獣親子は横の茂みに飛び込んだ。一目散に逃げていく。
 終わった。あの分ならば、命に別状はあるまい――不殺を貫けた冒険者たちは、心の底から安堵した。


 鬱蒼と暗い森の空気。それが唐突として明るく変化したことには、すぐに気づいた。
 まず聞こえたのは、耳が洗われるような爽やかな水の音。
 そして見えた。小型の太陽のような……あまりに輝かしい、幾多もの光の群れ。
 冒険者たちは駆けた。辿り着いた。巨大ホタルの生息する川のほとりに。
「到着にゃぁ」
 ニャコが歓声を上げ、早く座って見ようとゴザを取り出した。
 巨大ホタルの飛び方は、まさに乱舞という形容がふさわしい。自由自在に上へ下へ、右へ左へ軽やかに。何にも囚われない、大きく強い光。
 ここはどこだ? 一瞬、夢の世界にでも迷い込んだ気がしてきた。
「わ……! こんな景色が見られるなんて……すごいですね」
「大きなホタルさんも、普通のホタルさんと同じ色の光なのかな?」
 カイジとリルルは大きく目を開き、この世の不思議に見入った。変わった色の光を出す個体は確認できないが、その光の規模は桁違いだ。ザッハトルテーも初めて見るホタルにひたすら感動し、テンションを上げていた。捕まえて商売にしたいなあとか、ついつい思ってしまう。
「あ、そうだ。ジャック君ちょっとおとなしくしててね〜」
 ニーナをはじめ、皆ランタンの光量を落とした。場の灯りはホタルたちが放つ光だけとなった。
 光のショーだねとアリスローゼが呟く。ここはステージだった。ランドアースでは見られない、大自然による一大スペクタクル。周りにホタルがいるというより、むしろ圧倒的存在感に自分たちが飲み込まれている。
「はははっ、夜なのに太陽が見られるとは、こいつはすげぇぜ!」
「ああ。ワイルドファイアには毎度驚かされるが、ここまでとは」
 ングホールとガンバートルはどっかりと腰を下ろし、持参のビールと米酒で乾杯。早くもほろ酔い気分だ。こんなめでたい時に酔わずにいられようか。ふわふわと心が舞い上がるようだった。
 ロンとシルクは、ホタルを刺激しないよう静かに眺めた。綺麗なものを目に焼きつけ、心を潤す。ただそれだけで充分だった。
 しかし、じかに触れてみたい。そんな気持ちも湧いてくる。
「ホ、ホ、ホタル来いですの。こっちの水は甘いぞ、ですの」
「こっちの水は紅茶だけど……あまいよ〜?」
 セーラとレナートがそんなことを言って誘う。
 すると……ホタルが本当に寄ってきたではないか。カップの縁に止まったかと思うと、光を強くした。いかにも心地よさそうに。

 疲れることを知らない魅惑の昆虫たち。彼らの光を見ていると、いつしか眠気がやってきた。
 もう夜も遅い。今夜はこの場で野宿だ。
 寝転べば、すぐ間近にある満天の蛍空。今、冒険者たちだけに許された至福の空間。
 心身が安らかになって、暖かい何かに包まれるような錯覚を受け入れる。
 そうして巨大ホタルたちは、皆が眠るまで、子守をするように輝き続けていた。


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作成日:2007/06/08
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