≪Splendid≫移動酒場、開店−−山間の村へ



<オープニング>


 情勢がどれほど動いても、それを知らぬものにとっては何時もの日々である。たとえ空が騒がしく思えども、日々を食いつなぎ生きる人々には、大地に根付いた草木の方が不安の種である。
 そういった村は、いたるところにある。小さな村はそういった不安と戦いながら、日々を生き抜いている。
 ――それが不幸だ、と決め付けるのは否だろう。たとえ貧しくとも、幸せな生活は出来る。彼らにとっての幸せは、ほんの小さな喜びも大きな喜びと感じ取れる所にあるかもしれない。
 
「――そういう村があるって初めて知ってさ。俺もその『小さな喜び』を分けられれば、と思ってな」
 酒場――『Splendid』のカウンターで、闇夜に咲く三色菫・クワイア(a48838)が酒の入ったグラスを傾けながら言った。
 切欠は些細な事だ。
 妹が依頼で向かった村――その小さな村が、腹一杯食べる事も難しい、貧しい村だった――それだけのこと。その村で鍋を振舞った時の子供達や村人達の姿を妹から聞いたクワイアは、護るべき民の姿を知った。強敵と戦う事だけでは見つからぬ、民の暮らしを垣間見た気がしたのだ。
 日々を生きることで精一杯の彼らに、小さくてもいいから幸せな日を送りたい。そう願ったものの、現状を話でしか知らぬクワイアは打つ手を見つけられずに居た。
 そこで、彼は『現状を知る』であろう人を探し、今に至る。
 その小さな村を故郷に持つ静寂を破る刀剣・グラック(a90317)は、何所か照れたように笑って片手のグラスを揺らす。故郷は小さな小さな村だ――こうして気にかけてくれる人が増えるというのは、何所かくすぐったく、何所か嬉しい。
「何所かそういう村は無いか――と聞くのは、少し変な感じもするが」
「いや、いいんじゃねぇ?」
 ランドアースは広く、世界はもっと広い。その中で個人が知る事が出来るのは、ほんの一部分――
「ウチの村近くは結構そういうトコ多いし、来てみるか?」
「いいのか?」
「ああ。気の良い連中ばっかの村だし、喜んでくれると思う。――兎に角、やってみようぜ。考えるよりゃ、動いちまった方が早いことだってあるしな」
 グラックはそう言って、クワイアの背を軽く叩いた。
 小さな親切、というのは案外難しい。その親切が彼らの生活と合っていなければ、単なる好意の押し付けとなりかねない。
 けれど――誰かのためにと思う気持ちがあれば、それが誰かの幸せにも繋がる筈だ。

 たどり着いた村は山間の小さな村だった。斜面が多く畑があまり作れない分、彼らは木を切り出して生活をしているらしい。木々を運ぶノソリンが、なぁ〜んなぁ〜んと鳴いている。
 材木の質は結構良いのであるが、如何せん村の位置が悪かった。近場に大きな町が無い為、どれだけ良い木材が手に入っても売れる数が増えることはない。
 彼らは毎日のように森の木を手入れし、畑を耕し、過ごしている。小さな贅沢といえば、木の手入れ最中に偶然狩りに成功したとか、そういう類のものだ。
 他の村と繋がる小さな道を、『Splendid』の面々は荷車を牽きながら歩む。その中には、様々な食料に、酒、楽器に衣装――そうして『移動酒場Splendid』という手書きの看板。
「おや、珍しい。旅人かね」
「――いや、旅人にしちゃ、不思議な荷物だ」
「大道芸の一行様かの?」
 その姿に、村人が奇異の視線を向けた。
 一同はその視線に怯む事無く、村の入り口で立ち止まる。
「こんにちわ、皆さん。俺達は『移動酒場Splendid』、美味しい酒を届けに来た」
 そう言って、クワイアは酒のたっぷりと入った瓶を揺らしてみせた。

 ――さあ、美味しいお酒はいかがです? 陽気に飲んで、踊って、今日までの疲れを癒しましょう。
 明日という日が輝かしい日々になるように。

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参加者
桜と飲み比べる森の守護娘・シンブ(a28386)
無限のイブクロ・エル(a32875)
姫揚羽・ミソラ(a35915)
鉄弓・ヨイチ(a42044)
魂に刻めその旋律・レシュノ(a45112)
闇夜に咲く三色菫・クワイア(a48838)
春風娘娘・カオユエ(a49243)
風薫る剣の使い手・ユズ(a50407)
老いたる白虎・テツノシン(a50694)
十六夜の月と戯れ踊る白狐・クルワ(a55507)
NPC:静寂を破る刀剣・グラック(a90317)



<リプレイ>


「話には聞いてましたがなかなかに寂れてますね」
 村人達に聞こえぬように、小さく小さく逢魔時と戯れる白狐・クルワ(a55507)が呟く。その村は大きな町とは全く別の風景を持った、確かに寂れた村であった。丸太を積み上げただけのような家は今にも崩れ落ちそうな風貌をさらしているし、住まう人々もやせ細っている。
「貧しい村ってたくさんあるんですよねぇ」
 嘗て訪れた地獄の地を思い出しながら、風薫る剣の使い手・ユズ(a50407)もクルワの言葉に頷いた。ランドアースも、他の大陸も、その端を把握することが難しいほどに広い。冒険者がどれだけ居ても、その総てを回ることは出来ないだろう。広い世界には、この村のような場所は無数にあるのだ。
「皆さん、今日は楽しんでいってほしい」
 村長との交渉を終えた闇夜に咲く三色菫・クワイア(a48838)が、集まっていた村人達にそう言った。ありがたいことに、村長は移動酒場を喜んで受け入れてくれた。幸せの押し付けにならないように、と少し緊張していたクワイアも、ほっと胸を撫で下ろす。だが、本当に忙しいのはこれから。夜までに準備しなければならぬことが、山ほどあるのだ。
「それでは配膳開始しま〜す。足りない物は言って下さいね〜」
「みんなー今日はたくさん食べてほしいよー」
 先ずは昼ご飯、と雪解けを待つ森の守護娘・シンブ(a28386)が子供達にご飯を配っていく。お腹が減っていても、今日は我慢――と無限のイブクロ・エル(a32875)も自分のお菓子をお裾分け。ご飯の後には飴も配って、子供達は嬉しそうに飴を口の中へ。
 お腹が一杯になった所で、次は遊びの時間。
 広場の中心部で、老いたる白虎・テツノシン(a50694)や 春風娘娘・カオユエ(a49243)が子供達を集めていた。何を始めるのかと遠巻きに見つめる人々に、黒蟷螂・ヨイチ(a42044)は遠い国の御伽噺が始まるのだと説明して回る。母親の後ろで隠れる引っ込み思案な子供には、姫揚羽・ミソラ(a35915)が童謡遊びを交えながら優しく誘っていく。
 テツノシンが語るのは、この地から遠い楓華列島の御伽噺や伝説だ。珍しい話とテツノシンの語り口調に、子供達は次第に引き込まれていく。
「これこれ、髭を引っ張るでないのじゃよ……」
 早く続き! と急かす子をそう宥めて、テツノシンは楓華の話をいくつも語った。その話のBGMにと、ミソラが静かに演奏を始める。
 邪魔にならぬ静かな曲は、子供達の耳にすんなりと馴染み、臨場感がぐっと増していく。
(「ちっちゃい子のドキドキワクワクの表情って、見てるこっちまで嬉しく楽しくなるのですよね」)
 子供達の表情を眺めて、ミソラは嬉しそうに笑った。――それほどに、子供達はテツノシンの話を楽しんでいるようだ。

 元気のいい子供達の相手にと、カオユエがフワリンを呼び出す。子供達は見慣れぬ生物に目を丸くし、「わあ!」と声を上げた。ノソリンには慣れ親しんで居るが、ふわふわと浮かぶフワリンとは始めてのご対面。目をきらきら光らせて、子供達は我先にとフワリンに飛びついた。その内の男の子二人が取っ組み合いの喧嘩をはじめ、フワリンは煙のように消えてしまう。唖然とした彼らを宥めながら、ヨイチが「争いは幸せを遠ざける」のだと優しく諭した。
「12頭までしか呼べないから、呼べなくなっちゃたらごめんなさいだよー」
 そう言いながら、カオユエが二体目のフワリンを呼び出す。喧嘩をした二人は、嬉しそうに笑って、一緒にフワリンの背に乗った。
 歌が好きな女の子達は、魂に刻めその旋律・レシュノ(a45112)達に歌を教えている。
「おばあちゃんに教わったの」
 と言って紡がれた歌は、素朴な数え歌。土地に根付いた歌はどれも初めて聞くもので、興味深いッスとレシュノは嬉しそうに笑う。風土と歴史が刻まれた優しい歌声に、BGMを奏で終えたミソラがコンサーティナの音を重ねる。温かさを増した音に、空を飛ぶ鳥が澄んだ鳴き声を加えた。レシュノの歌いかけに、動物たちが答えて集まってくる。
 珍しい冒険者達との交流に、子供達は嬉しそうに笑いながら時間を過ごしているようだった。

「さて、精一杯腕を振るいますか、なんといっても宴会のメインは酒と料理ですからね」
 そう言って、クルワが包丁を握る。
 村の広い家の一つでは、クルワとユズが村の女性たちと共に宴会の料理を作っていた。村の特産物などを聞きながら、二人は郷土料理を教わったり、自分達の知っている料理を教えたりと交流を深めていた。
「こういった調理方法もあるんですねぇ、勉強になります」
 微笑みを浮かべながらクルワが言えば、村の女性たちは嬉しそうに色々と教えてくれた。小さな村だけに料理はとても素朴なもので、こんなものでごめんなさいねと人々は口々に言う。
「お料理は素材も大事だけど心がもっと大事ですよ」
 美味しく食べて欲しいなって気持ちが大事だと、ユズは彼女たちにそう言った。
 つまみ食いに来た子供にはお菓子をあげて、クルワは微笑みながらその頭を撫でる。
「夜は美味しいもの一杯食べれるから、それまでこれで我慢しような」
 夜には沢山の料理が村に並ぶだろう。だからそれまでは我慢。
 さあ、――夕暮れ時まであと少し。

 少し離れた場所で、クワイアは一人カウンター作りに精を出していた。子供達を子供に泣かれてもしかたないしな、と苦笑いを浮かべつつ、彼は夜に向けて準備を進めていく。
 太陽が半分ほど隠れ、空が赤らみ始めた頃――そこには小さな酒場が出来ていた。これこそが移動酒場『Splendid』。その姿を眺め、ヨイチが笑む。
「移動酒場ってのも、面白い活動だよな」
「面白いっスね〜。こういうの、初めてっスよ」
 ヨイチの言葉にレシュノがなんかワクワクすると答えた。
「わーい、みんなあそぼー♪」
 広場のほうでは、まだエルやグラックらが子供達と遊んでいる。楽しげな声が橙の空に登り、村中へと響き渡る。
 夕暮れが過ぎれば、夜になる。沈む夕日が、この移動酒場開店の合図。――料理を作り、酒を用意して――楽しい宴会の時間は近付いていた。


 夜――太陽が地平線に沈み、山並みが橙色から濃紺へと変わっていく。燦々と輝いていた太陽から、優しく淡い光を落とす月へと空の主役は変わり、目に映る光景は一変した。子供達の駆けていた広間は静まり返り、親達のわが子を寝付ける声だけが静かに響く夜。
 何時もは静かなその夜の村に、今日は小さなカウンターが作られていた。
 移動酒場『Splendid』――大人たちの為の店が、今、幕を開ける。
「さあ、お疲れ様だ。今日はゆっくりと楽しんでくれな」
 店長であるクワイアの声にあわせ、集った冒険者達は各々の仕事を行い始める。
 小さなカウンターでは色鮮やかな酒が作られ、並べられたテーブルには色とりどりの料理がのせられた。その多くは、昼間に村人達と作ったユズやクルワの料理である。お肉や魚、酒の肴に果物や野菜のサラダ。疲れを取るための甘いデザートまでが所狭しと並んでいる。
 テーブルの中心には、ヨイチが昼間の内に狩っておいた猪の肉がのせられた。香辛料と油の匂いがパーティらしさを引き立たせているようだ。
「ご注文はお決まりですか?」
 カウンターからクワイアが、村人達に注文を聞いていく。その注文どおりに作られた飲み物が、エルやクルワ達の手によって運ばれた。主にクワイアとユズがカクテルを、ヨイチが弱い人用にジュースやノンアルコールドリンク、度数の低い酒などを用意。
 ユズは地元の素材を組み合わせながら新たなカクテルに挑戦する。常温でも楽しめそうなものを中心に、ユズは新しい酒に挑戦した。春が過ぎたばかりの季節、この小さな村に氷なんてものは無い。
「わぁ、このお酒おもしろい」
「今日はボクは配膳のおてつだーい♪ 料理はどんどん作るし、楽しんでほしいよー♪」
「クワイアさんや、楓華の酒はあったかのぅ?」
 小さな小さな酒場に、ユズやエル、村人に混ざったテツノシンらの楽しげな声が弾んでいた。

 食べ物が大方行き渡ったら、次は音と踊りのステージだ。大人達が酔っ払い始めたことを確認して、シンブが子供達を集めた。
「子供は集合〜。私と向こうで遊びましょうね〜」
 お腹が一杯になっていた子供達は、嬉しそうにシンブと共に大きな家の中に消えていく。そうなれば、此処から先は大人達の時間だ。
 小さなステージに歩み出たレシュノが、グラスに残った酒を飲み干し、ウッドベースを構えた。
「お客様、演奏に向かいますので、注文はユズに頼みます」
 その姿を確認して、クワイアもカウンターから出る。近くの客に頭を下げてから、レシュノの横へと歩み寄った。
「楽しんでるか?」
 そっと囁けば、レシュノも小さく頷く。静かに響くウッドベースの音色にあわせ、クワイアがサックスの音色を響かせた。
 どこかしっとりとした、大人の音楽――ジャズのリズムが酒場を包み、肌寒さも残る夜更けの空気が、安らぎの空気に変わる。
 皆がステージに目を向けた頃を見計らい、カオユエとユズが双頭剣を手に剣舞を舞った。飛び入りでクルワも混じり、鮮やかな剣捌きを皆に披露する。鋭い剣が空を切り、荘厳さを秘めたまま舞い踊る。
 剣舞の終了と共に、ミソラやエル、グラックが演奏に加わった。エルがトロンボーンを吹き鳴らし、グラックはこっそり持ち込んだギターを爪弾く。ミソラは軽いステップを踏みながら、村人達と声を合わせて高らかに歌う。
 ――まるで、夢の世界に迷い込んだようだ。小さな村に住まう人々は、仄かに赤らんだ顔で、そうはにかむ。その幸せな笑みは、歌い踊る仲間達の胸にも染み込んだ。
「偶にはこういう賑やかなのも悪くないですねぇ」
 仲間達の演奏や、音楽を聴きながら、クルワがグラスを傾ける。
「平和じゃのぅ……悪くないのぅ」
 長閑さに白い髭を揺らしながら、テツノシンは何杯目かの酒をぐいと飲み干した。まだまだ若いものには負けぬ、酒は飲んでも飲まれるな、などといいながら――ふと真剣な瞳を村人たちへ向ける。
「この時間を、護るべきなのじゃな……」
 嘗ては楓華で武士として戦った。引退後、このランドアースで冒険者として暮らしているが――民を護ると言う事は変わらない。
「年寄りの冷や水などと言うでないぞい」
 まだまだ若い者には負けていないのだとテツノシンが笑う。その声に、酒を傾けていたレシュノが真剣な顔で頷く。
「必ず守るッスよ」
 それがたとえ神との戦いでも、それ以上に強大な敵との戦いでも。変わり始めた情勢に、このランドアースが飲み込まれそうになっても。
 民を護る。それは冒険者になった時に、誓った言葉。
「ボクも……もっと頑張らないとだよー。冒険者としてだけではなくて……何と言うのかなー?」
 軽く首を傾げながら、カオユエが会話に加わる。言い表せぬ思いを握った拳に詰めて、とにかく、頑張るんだよー♪ と笑った。たとえ全部は無理でも、身近な人を護れるように。
 幸せな思い出は、明日への活力になる。辛い時に今日の日を思い出してもらえたら――いいや、思い出してもらえるようにとカオユエは再度踊りの輪に加わる。
「今、ここに居ることが……とても幸せに感じます」
 慣れぬ足取りでステップを踏みながら、ミソラも笑う。この暖かな音が、人々の微笑みが、笑い声が――言葉にならぬ程の喜びに思える。
 幸せが増える事、それが自分の幸せ。美味しいご飯に素敵な音楽、それに皆の笑顔がそろえば何よりの幸せ。
(「人に幸せを、そして、みんなに希望を」)
 エルの思いをのせたトロンボーンの音が、弾むように響き渡る。再度演奏を始めたレシュノのウッドベースが深みのある音でリズムを刻み、クワイアのサックスが華やかに響く。
 ふと、エルがトロンボーンから口を離し、思い出したように言った。
「そういえば、兄貴……この店一周年って本当?」
「ああ。5月でうちの店も1周年になったんだ」
 クワイアの答えに、冒険者達も村人達も一瞬驚く。そして、その場で大きな拍手が沸きあがった。ほろ酔い加減の村人達も、嬉しそうに手を叩く。
 喜びは喜びを呼び、幸せは一つ二つと増えていく。その瞬間を目に焼き付けながら、エルがクワイアの手からサックスを取り上げた。
「なら、みんなの幸せと、店の1周年を記念してだよ……」
 そうして、穏やかな音を奏で始める。また音が重なりあい、歌声に彩られ、幸せの音楽が空高く駆け上がる。

 そうして、音と踊りのステージは、再び太陽が空を奪うまで続けられた。
「今日も一日、お疲れ様だ。また明日、な」
 踊り疲れて眠ってしまった子を運びながら、ヨイチが優しく言う。
 そうして夜が明けて、皆が目を覚ます頃。雲ひとつ無い抜けるような青空が、彼らを待っていた。


 澄んだ澄んだ空が、歌い踊り疲れた皆を迎える。酒の飲みすぎで二日酔いになったものも、踊りすぎで腰を痛めた人も、この空のように晴れやかな笑みで朝を迎える。
 それでも、夢のようだった昨日の夜と比べれば、この朝はほんの少し寂しい。
「祭りの後はやはり寂しいものですね」
 後片付けを行いながら、シンブがしみじみと言った。祭りが楽しければ楽しいほど、現実に戻りたくなくなる。その思いがこの青空すらも寂しくみせるのだろうかと、冒険者達もしんみりと思う。
「残った材料は、全部あげようよー♪」
 沢山料理を作り、沢山の酒を持ち込んだ。残り物を全部食べてしまいたい気持ちをぐっと堪え、エルはクワイアにそう告げる。残った材料を保存食に変えれば、この先ももう少し豪華な食事を楽しめるだろう。
「む……だ、誰か癒してくれんかのぅ……?」
「診てあげるよー♪」
 子供達と遊んだ時の疲れが出たのか、テツノシンが腰を押さえながら仲間達に声をかけた。カオユエに腰を癒してもらいながら、彼ももう一度村人に目を向ける。
 護るべき人々を確認するようにじっと見つめて、白い髭を揺らし笑った。
「またきますね。お元気で」
「次くるときは今回よりも美味しいもの作れるように頑張りますね」
 料理を教えてくれた女性たちと握手を交し、ユズやクルワがそう約束する。その隣で、ミソラも村人一人一人と握手を交わしていた。
 一期一会の出会い――会えて嬉しかったという気持ちと、また何時か会いましょうという思い。最後の握手を終えて、ミソラとヨイチがクワイアたちに向き直る。
「皆さん、それとSplendidの皆さんに、心から感謝を」
「Splendidの面々に、改めて感謝を」
 礼を言われたクワイアは、グラックに一言礼を言った。彼は何もしてねえよと照れたように笑う。
 そうして、クワイアはテーブルに残っていたグラスを、皆と村人達に向けて掲げる。
「これからの村の幸せと、うちの店の発展を祈って…… 乾杯!」
 最後の乾杯は朝の光を浴びながら。幸福感を満たしたグラスが、カチンと音を立てる――。


マスター:流星 紹介ページ
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参加者:10人
作成日:2007/06/13
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