幸せのオーストリッチ・フェザー



<オープニング>


 ドドドドド……
 土煙を上げて奴らがやってくる。
 ドドドドドドドドドド……
 並み居る怪獣もなんのその。
 ドドドドドドドドドドドドド……
 ラッキーオーストリッチの群れがやってくる。
「クエエエェェェェッ!!」

「うーん、たまにはバカンスで何処かに行きたいな……」
 南国の太陽・オープスト(a90175)が冒険者の酒場で食事をしながら娯楽情報に網を張っていた時の事。
 彼の耳がヒトの霊査士・キャロット(a90211)が誰かに語っている、とある風物詩情報を捉えた。
「ダチョウ怪獣『ラッキーオーストリッチ』の群れが定期的にある集落の近くの原野を駆け抜けるんだけど、近々その時期が来るそうなんだ。
 その集落ではラッキーオーストリッチの羽が縁起物として扱われていて、群れが駆け抜けた後に落ちている羽を拾ってるんだけど、ラッキーオーストリッチから直接引き抜ける事ができれば、いろんな災厄から身を守れると言われているらしいよ。もっとも、誰も引き抜けた人はいなくて、噂やおまじないの域は出ないんだけどね。
 原野を駆け抜ける怪獣の群れ、中々壮観だから見物するときっと楽しめるよ」
「ふむ、行ってみるか……」
 オープストは早速バカンスの準備に酒場を出るのだった。

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参加者
NPC:南国の太陽・オープスト(a90175)



<リプレイ>

●十人十色のキャンプ模様
 ラッキーオーストリッチ。大きなオーストリッチ・フェザーを手に入れるべく、またはその様を見学するべく、この近隣の原住民は巡回路付近で方々に仮住まいを築き、今か今かと待ち構えつつ宴に入るのが恒例であった。
 今回はそこに冒険者が加わる。今まで誰も達成できなかった、走行中のラッキーオーストリッチからの羽根抜き。果たしてそれを成しえる者が現れるのだろうか……?

「見ると聞くとじゃ大違いだね!」
「話では聞いてたけど、やっぱり広いなぁ……」
 広大な荒野の真っ只中、アキナとオルガは手でひさしを作って強い陽光から目を庇いつつ、地平線を眺めた。
 冒険者の中でも既に何人かは彼らより先にここを訪れ、テント作業に入っている。
「ボクらもテントの準備を始めようか」
「そうだね」
 2人は背負い袋を下ろし、早速テントつくりに入った。

「ただいま。こんなおっきなマンゴーが成ってたよ」
 シンジュはハジと共に現地収穫した一抱え程の大きさのマンゴーを、自分達のキャンプ地に運んだ。
「怪獣は……まだ来なさそうですね」
 マンゴーを下し、耳を地面にあてて怪獣の接近を確認するハジ。
「じゃあ、お弁当にしましょうか♪」
「どーれどれ、ちびがこさえたタコさんウィンナ食ってみっか。お。かーいくできてんじゃねえか。おまえいい嫁さんになれっぞ〜」
 ヘレンが自作のお弁当箱を広げると、アトリがその中のウィンナーを見て褒め、頭を撫でた。

 ご当地料理といえばマンモー肉。
 チトセは火に掛けていた骨付きマンモー肉を、巨大な葉っぱの上に縦置きし、愛用の大太刀でざくざくと厚く2枚を切り取る。
「ほらほら、ジン君しっかり食べないと損だよ〜♪」
 皿代わりの葉っぱに、切り取った肉をデンと置き、巨大レモンの汁を掛け、いただきますと言ってむしゃぶりついた。
 ジンもまた同じく肉にかぶりつき、幸せそうな悲鳴を上げた。
「いやぁ、マジでうまいなこりゃ!」

 ジョルディは駆けるグランスティードの脇腹につけられた飾り羽に手を伸ばす。だが惜しくもタイミングが合わず、その手は空を掴んだ。
「もう20回目くらいだな。そろそろ休憩しようか?」
 オープストはグランスティードの騎乗を解き、ジョルディに休みの提案をすると、思惑があるらしく彼はその提案に乗った。
「にぎわってるな」
 オープストは持参した骨付き肉、アキュティリスやテスカトポリカから貰った野菜炒めやお茶を手に、キャンプ村と化している一帯の真ん中に向かう。
「なんだいオープストちゃん、お茶なんて手にしちゃって。こっちでお酒飲もうよぉ」
 真ん中の空き場所ではアルエットが軽く出来上がった状態で手酌酒。お酒の相手を見つけたとばかりに、アルエットはオープスト達にブンブンと手を振る。おぉいいね、とオープストが誘いに乗ろうとしたとき、ふいにアキュティリスが占い道具を手に立ち上がった。
「……来ます」

●ダチョウ怪獣のスタンピード
「来ましたよ」
 ハジは遠眼鏡を下ろし仲間に告げると、用意していたロープを手に強く握ったまま手から粘り蜘蛛糸を出して絡みつかせた。ヘレンは無茶をしても大丈夫なようにと仲間に鎧聖降臨を掛けていく。ラッキーオーストリッチ達の移動が大変速い為、アトリも早々にチキンスピードを用い、先手をとりやすいようにした。
「いくぞっ」
 ダチョウ怪獣が駆け抜ける直前、シンジュはグランスティードを駆り、群れの先でタイミングを計った。その3呼吸程後、残った3人の元をラッキーオーストリッチが駆け抜ける。ハジの粘着ロープは怪獣の体を捕らえたが粘着糸に羽根は付着せず地面に失墜。ヘレンの側面接触もうまくいかずに羽根を逃し、怪獣に飛び掛ったアトリは何とか首にしがみついたが、そのまま怪獣に連れ去られるように姿を消す。シンジュは早掛けを解き擦れ違いざまに怪獣から羽根を引き抜く事に成功した。
「よっし!」

 ネックはチキンレッグスピードで機会を伺い、投げ縄をダチョウ怪獣の首に引っ掛けようとタイミングよく投げつけた。
「よし、かかったぞぉ〜♪ ……え? あぁーれぇー」
 縄は怪獣1体の首に引っかかり、そしてネックもまたそのまま連れ去られてしまう。

「骨は拾って上げよう。男なら突撃あるのみっ!! そ〜れ☆」
「ははっ、こいやっ! ……あれ、数が。ちょっ、これは予想が……うぎゃぁぁぁっ!!?」
 マンモー肉片手に空いた手でチトセはジンの背中をドンと押す。そのまま観戦モードに入るチトセを背に、押されたジンは気合を入れるものの怪獣達の暴走に飲み込まれて踏みしめられた。去り往く怪獣に向かってプルプルと手を伸ばし、暴走で舞う抜け羽根を掴んでそのまま落ちるのだった。
「ぐふっ…ダメ、だったか……」
「ま、そう言う事もあるか」

「頑張ってフェザーをゲットするなぁ〜ん!」
「溜めに溜めたストレッチパワー、見せてあげます」
 怪獣達が進む先で待ち構えるチェリとジュビス。鎧聖降臨で守りを固め、怪獣達の正面に立つ2人。
「後方へ吹き飛ばされる勢いに怪獣の前進する勢いが勝ることで、その身体なり脚なりに取り付く事が出来るのです。つまるところ重要なのは勢いです。行きますよ」
「……ジェビス、鎧着たままじゃとれないんじゃないかなぁ〜ん?」
「まぁ大丈夫でしょう。たぶん」
 怪獣が迫るタイミングにあわせ、とりゃ! と両腕を広げて飛びつく2人。しかし怪獣は大きな脚で斜め前に一歩踏み出して組み付きをかわした。
「「あれ? あ、ちょっ……」」
 そして迫り来る後続の怪獣達。
 ズドドドドドドドドドドドドドぶちっドドドドドド…………。

●幕間―客席の冒険者達―
「あ。流れ星」
 オープストと一緒にランチを広げていたフィルは、昼の大空でもわかるくらいにキラリと光るものを2つ見つけると、2人で急ぎ手を胸元で組み、願い事を3回唱えた。
「オープストさん、こんにちは。あっちもこっちもやってるなぁ」
 願い事を唱え終わった時に声を掛けられ振り返ると、声を掛けたセトの他、ベルモット、ネロ、ルーファスの【琥珀の城】の4人が弁当箱を手に丁度見学に来た所だった。キャンプの輪を更に広げ、ラッキーオーストリッチの暴走を肴に食事を始める。
「羽とか引き抜かれるの痛そうだなぁっ……」
 ベルモットは背中のエンジェルの翼をいじりながら自分の羽が抜かれた時の事を想像し、恐ろしさのあまり身震いする。
「ベル兄落ち着いて。それにしても凄いな速いなカッコいいなー! あれがラッキーオースト……ごふぅ、かはっ」
 弁当を食べながら興奮気味に語るルーファスだが、不意にうめき声を上げて苦しみだし、フォークが彼の手から離れカラカラと音を立てて地面を転がる。
「大丈夫か? お弁当は逃げないし、ゆっくり味わって食べるといいと思うぞ」
「くすくす……慌てて食べるからだよ」
 セトがトントンと慌てん坊の背中を叩き、ネロが笑いながら水筒に入ったお茶を蓋の器に注ぐと、ルーファスは水筒を奪うように取りゴクゴクと飲んだ。だが、まだまだ足りないらしく、顔色はだんだん赤くなっていく。
「大丈夫ですか? あ、アキちゃんもう一杯お茶をいれてくれる?」
 側にいたオルガも、アキナが入れたお茶を差し出し、一気飲みするルーファス。何とか喉の異物を押し流したらしく、顔の赤味は急速に引いていった。
「ふぅ〜、助かったよ! サンキュ!」
 オルガや仲間達に礼を言うルーファス。まだほんのり赤いのは、照れが入っているからだろうか。
「何処へ行ってもいつも通りだな、ルーファスは」
 仕方がないなとばかりにネロは手にしている器の茶を飲み干した。

●命の輝きは星となって
 ズドン……キラン。
 酔っ払ったアルエットが一瞬にして星となったのを横目で見つつ、テスカトポリカは身構えた。
「このスピードならイケルッ!」
 可能な限り身軽に、戦いの神をあらわす紋様が刻まれた宝石を多数身に着け、テスカトポリカもまたチキンレッグスピードを使いタイミングを計った。そして真正面からすれ違いざまにむしりとる。
 ズドドドドド…………キラン。
「ちぇすとぉー!」
 ジョルディもオープストのグランスティードでの特訓の成果を見せるべく雄叫びと共に突進を避けながら羽を掴み。
 ズドドドドドドドド…………キラン。
「いたにゃっ!」
 チキチキータが怪獣を確認した合図を出しているのを確認し、センは少し離れた場所でハイドインシャドウで気配を断った。間も無くして怪獣の群れが到着し、駆け抜けようとする直前にセンは撹乱を狙いミストフィールドを使うが、怪獣の進路からやや離れていた場所で待機していた為、霧の中に包めた怪獣は少なく、そのまま突破されてしまう。
「しまった! チキチキータ!」
「行くにゃよ〜!」
 センが前に飛び出し、またチキチキータもニードルスピアを撃って怪獣の撹乱を狙う。驚いて脚を鈍らせた怪獣を狙い、センは駆けつけてぶちりと掴んだ分だけ羽を引き抜く。
「やったにゃ、いっただきにゃ〜♪ あ」
 ズドドドドドドドドドド…………キラキラン。
 かくして昼間のワイルドサイクルに流星雨が降り注ぐ。

「待ってたぞ! ラッキーオーストリッチ!」
「さあ、来い!」
 ピカッ!
 レシルカとウィズの頭部が、一瞬太陽のように強い光を放った。群れの一部がスーパースポットライトに魅入られて動きを止める。だがすぐに群れの後続がマヒした怪獣を避けて突っ走った為、近づく事も止めた相手を見つける事も困難となった。
 後続全てが駆け抜けた後、レシルカとウィズが止めた怪獣もまた凄い勢いで走り去るのだった。

「(お願い……1羽根だけでも良いの……っ!)」
 リアは祈りながら突っ走る怪獣に手を伸ばすが、思い切った行動をとれずに手を引っ込めてしまった。ほんの前へ一歩の距離を怪獣達は駆け抜け、あたりには土煙と舞い散った羽が空気を包んでいる。
「残念でしたね。私のほうもさっぱりでしたわ」
 アキュティリスも剥いた果物を餌に引き寄せる作戦を立てたものの、お好みではなかったのかそっぽを向かれてしまい、羽を拾いに来たのだ。
 2人は結果に少し落胆しながらも、抜け羽根を取りにやってきた集落の人と共に、きれいな羽を手にするのだった。

 かくして、オーストリッチフェザーを巡るお祭は終わった。
 なお、星となった者達の多くは、その手に引き抜いた羽を手にして戻ってきたという。


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