魔風ウェルダン:プルミエールの決意



<オープニング>


●魔風ウェルダン
 大神ザウスによるランドアース破壊は、冒険者達の活躍により最小限の被害で食い止める事ができた。
 勿論、その被害は未曾有の規模のものではあったが、チキンレッグ王国と北方セイレーン王国は、既に復興に向けて動き出しているようだ。

 だが、その復興を邪魔する物がある。

 神との戦いの最中に、同盟諸国の冒険者の防衛線を突破した『魔風ウェルダン』の一団である。
 大神ザウスが滅びた事で、魔風ウェルダンは統一された目的を失い、ただただ目についた人造物を破壊する為に稼動し続けている。

 このウェルダンを放置していては、チキンレッグ王国や北方セイレーン王国の復興もままならないだろう。

 神との戦いを終えたばかりではあるが、この脅威を取り除くためには、冒険者の力が是非必要なのだ。

※※※

「みんな、よく集まってくれたわね」
 ヒトの霊査士・リゼル(a90007)は、冒険者達に感謝の気持ちで一礼すると、状況の説明を始めた。

「今回は、あの竜巻で物を破壊して進む迷惑な巨大ギア、魔風ウェルダンの討伐よ。神との戦いで討ち漏らしたウェルダン達は、現在はてんでバラバラに徘徊しているようだけど、その危険度は普通のモンスターの比では無いわ」
 リゼルは真剣にそう言う。
 ウェルダンの厄介な所は、戦闘力よりも『人造物の破壊』に特化したギアである事だ。
 ウェルダンはたった1体で、村や町の1つや2つ、簡単に破壊しつくしてしまう力を持っているのだ。

「ウェルダンの現在位置は、チキンレッグ王国南方付近ね。詳しくは、担当の霊査士に聞いて、急いで退治に向かって頂戴」
 これ以上、チキンレッグ王国に被害が出ないように……。
 そう言うと、リゼルは、冒険者達に頭を下げた。

●プルミエールの決意
 葵桂の霊査士・アイ(a90289)が話をはじめた。
「魔風ウェルダンがまだ残っていること……これを看過することはできない」
 ウェルダンは「ギア」と呼ばれる古代機械の一種である。ザウスとの戦いでは神の手駒となり、大群でチキンレッグ王国方面から大陸に侵攻した。冒険者の奮闘によりほぼ壊滅させられたウェルダン軍団であったが、防衛戦を突破し逃げのびた個体もある。
 主を喪ったウェルダンたちは、いまなおかつて与えられた命令――破壊を忠実に実行しつづけている。すでにいくつもの集落が襲われ、あえなく壊滅した町や村もあるという。
「つらい話になるかもしれないが、私が伝えたい依頼は、まさにその破壊された町を舞台としたものになるだろう……。戦線より逃れた一体のウェルダンがこの小さな町に突入し、竜巻を発生させながらゆっくりと、まさしく『機械的に』破壊したのだ。いまこの場所には廃墟と化しているようだ。不幸中の幸いというべきか、なすすべのないことを知ったチキンレッグの住人たちはすべて退避しおえている。怪我人もいるようだが、命を失ったもののはないとのことだ」
 そのウェルダンは町跡から動いていないという。自身の成果をたしかめているのだろうか。それともつぎの移動先を探しているのだろうか。理由はわからない。
「ゆえに諸君らに依頼したい。廃墟の町に入り、この破壊をもたらしたウェルダン一体を倒してほしい。敵は無論はげしく抵抗するだろうが、このメンバーで力をあわせればかならず勝機はある」
「私がもっとしっかりしていれば……」
 つぶやく声、それは、はじまりは・プルミエール(a90091)だった。アイのテーブルそばに座っている。
 このつぶやきで、プルミエールがそこにいることにはじめて気づいたものも多い。普段ならすぐに存在を感じさせるプルミエールが、今日はまるで別人のように沈んでおり生気がないのだ。
「あの戦いでウェルダンを全滅させられたなかったことに責任を感じているのか」
 アイが問いかける。プルミエールは、ウェルダンと最前線で激突する部隊の作戦旅団長だった。
 プルミエールはうなずき口をひらこうとしたが、
「それは違うぞ」
 冷徹な口調で否定される。
「作戦そのものは成功している、全力で戦った結果であるなら恥ずるべきではない。それになにより、ともに奮戦した仲間に失礼だと思わないか」
「……はい……すみません……私、そんなつもりは……」
「それでも気が晴れないというのなら、自分ができることをするべきだ。それは、ここで愚痴をいうことではないだろう?」
「そうです! 私……私、かならず破壊兵器を倒します!」
「よくいった。それに、さきも述べたが町は滅ぼされたものの住人は無事だ。ウェルダン撃破後に町の復興を手伝うこともできるではないか」
 アイはそっと、プルミエールの肩をさすった。そして集まった顔ぶれに視線をむけていう。
「だが無理はするな。諸君らも同じだ。必勝を期すのと無謀とはちがう。協力しあい作戦を遂行してほしい」

!グリモアエフェクトについて!
 このシナリオはランドアース大陸全体に関わる重要なシナリオ(全体シナリオ)ですが、『グリモアエフェクト』は発動しません。
 これは、倒すべき敵が『魔風ウェルダン』という巨大ギアであり、グリモアを巡る争いでは無い事が主な理由となっています。

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参加者
界廻る選定の志・エルス(a01321)
ビッグペタン十貧衆〜萌世魔王・ゴウテン(a03491)
鳳凰の焔剣・オウキ(a08306)
世界を救う希望のひとしずく・ルシア(a35455)
牡丹色の舞闘華・ヤシロ(a37005)
奏光の白兎・リセルシア(a43963)
神殿騎士・カズ(a46193)
月夜に謡う波の調べ・ルルナ(a51112)
黒の記憶を謳う者・ジェイク(a56365)
金平糖より零れし光彩・リシャロット(a58790)
空と風のコンチェルト・クライス(a59001)

NPC:はじまりは・プルミエール(a90091)



<リプレイ>

●一
 星と月のソナタ・クライス(a59001)は駒を駆る。残骸と瓦礫の合間を、紅き鎧のグランスティードが風のように駆け抜ける。
「まさかこんなに早く発見されるとは」
 クライスは早々に偵察をきりあげ仲間のもとへと急いだ。すぐにでもウェルダンは追ってこよう。

 はじまりは・プルミエール(a90091)は背に、大きな荷物をしょっているように見えた。本当に荷があるわけではない。だが不殺の天魔・エルス(a01321)にはそう見えた。いつも溌剌(はつらつ)としている彼女が、今日は別人のごとく沈んでいる。
「プルミー、お前に一つ、伝えておきたい言葉がある」
 エルスはプルミエールに告げていた。
「『悩んでもいい。迷ってもいい。でも…絶対に振り向くな。顔を上げて、前を見ろ……』」
 エルスはいう、これが、親友がエルスにくれた『最後』の言葉であったと。
「そしてここから先は、俺の言葉だ。プルミー、一人でなんでも抱えこもうとするなよ? お前の周りには、たくさんの頼れる仲間がいる。頼ってくれないと逆に寂しい。それに」
「それに?」
 プルミエールの大きな瞳がみつめていた。かたちがよく瑞々しく、なにか訴えてくるような瞳――。エルスは口ごもってしまった。見とれていたのではない……と思う。
 鳳凰の焔剣・オウキ(a08306)がつぶやくようにいう。
「今回の戦争では俺は後方で護っていた。ウェルダンを壊滅できず通してしまい、すまない………」
「そ、そんなことはありません!」
 これをきき、あわててプルミエールは否定する。そこに、
「つまりそういうこった、ぷーみん」
 という声は、ビッグペタン十貧衆〜萌世魔王・ゴウテン(a03491)だった。
「オウキのことだって、全部が誰かのせいってわけじゃねぇ。だから、ぷーみんもあんな戦いの責任を一人で感じるこたぁねぇぜ」
 神殿騎士・カズ(a46193)も同意見のようだ。
「無理に気負いすぎないでくださいです、ここには同じ気持ちの人たちがいますから、協力して魔風ウェルダンを倒しましょうです」
 カズのやさしい表情は、それだけで場をなごませた。
 月夜に謡う波の調べ・ルルナ(a51112)はプルミエールの手をとる。
「あの戦争でともに戦った者として、悔しい気持ちは皆同じです。これはお一人での戦いではなく、皆にとっても大事な戦いです」
 ルルナは握る手に力をこめた。
「だから一緒に頑張りましょう」
 感極まったようにプルミエールはうなずいた。『一人での戦いではない』、ルルナのその言葉はとりわけ胸にしみた。
「お前も知っている通り、ウェルダンは皆が協力しないと倒せんからな。無茶はしないことだ。誰がいなくなっても悲しむ者がいること思い出してな……」
 といってオウキは、プルミエールの頭をなでるのだった。

 一行はいつしか廃墟にさしかかっている。
「……ひどいものね……」
 金平糖より零れし光彩・リシャロット(a58790)は哀しげな口調だ。もはやここは町ではない。あらゆるものが破壊されている。町ひとつを簡単に滅ぼすウェルダンの所行、認めるわけにはいかない。
 奏光の白兎・リセルシア(a43963) も感傷をともにする。ひたすらに胸が痛んだ。
「もうこれ以上、ウェルダンによる被害をださないためにも、完全に破壊しなければ……」
 そのときリセルシアの、そして全員の耳に、その音はひびきわたった。
 蹄(ひづめ)の音、そして竜巻の音――それがなにを意味するかは、あらためて口にするまでもない。
 黒の記憶を謳う者・ジェイク(a56365)は剣を抜く。ジェイクはプルミエールに呼びかけた。
「プルミーさん、いや、『神との戦い』第一作戦旅団長!」
「えっ? はい!」
「戦闘の指示をお願いしていいか? 忘れないでくれよな、みんな、なんとかしたいって思ってる。オレたちはチームで動いてるんだ。そしてチームをまとめるのは、団長であったプルミーさんこそが適役だ」
 ここでかつてのプルミエールであったなら、責務の大きさに尻込みしたであろう。しかし『神との戦い』を乗り越えた経験と、この日の仲間たちの団結、そしてジェイクの熱意が彼女を動かした。
「計画通り囮班と攻撃班に分かれ戦闘準備をはじめます。音から判断してクライスさんが追われているにちがいありません。遠距離攻撃の担当メンバーは援護を!」
 牡丹色の舞闘華・ヤシロ(a37005)はプルミエールにうなずく。
「その意気よ! あたしたちはあの人数で精一杯食い止めたけど、それでもウェルダンの大群を食い止め切れなかった……それくらい強敵って事だから焦っちゃだめだよ。皆で力を合わせてぜったいあいつを倒そう!」
「そうね。プルミーさんが元気だと、私もやる気が出てくるよ!」
 といって、同盟を奮い立たせる応援団長・ルシア(a35455)は拳を握りしめる。
「さあ、みんな……今日も生き残ろう♪」
 ルシアのこの宣言が、全員の合い言葉となった!
 
●二
 クライスが滑りこむと同時に、冒険者たちの陣形は完成した。
「すまない。敵を呼び寄せる結果になってしまった」
 クライスは慚愧(ざんき)するがゴウテンは豪胆に笑う。
「いやむしろもっけの幸いだ。俺たちゃ囮部隊、目立ったほうがいいってもんさ。なに、敵は一体、せいぜい派手にやろうぜ!」
 すでに傷を負っているクライスに、カズが治療をほどこした。
「戦闘準備の時間もありました。斥候としての役目は充分果たせていますよ」
 カズのいうとおり、黒炎覚醒や鎧聖降臨など、すでに多くのものが能力のブーストを終えている。
 うなる竜巻の音はすでに、すぐそばまで迫っている。低い音をあげて一行の左前方にあたる瓦礫が吹き飛ばされた。そこに姿を見せたのは赤い目、破壊のために作られた機械人形(ギア)、ウェルダン!
「さぁって、早いところ、解体しちまおうか!」
 エルスは地を蹴り猛禽類のように、あえて真正面から飛びかかる。
 ほぼ同時にリセルシア、
「あなた(ウェルダン)の竜巻と私の突風、どちらが強いか見てみましょうか!」
 あえて声をはりあげ吹きつける。精度より視覚・聴覚に訴える行動をめざすゆえ、さしたる被害は与えていないがそれでいい。かれらは囮班、敵の注意をむけるのが使命だ。
 この機をのがさずゴウテン、ジグザクに走り接近する。プルミエールも追おうとするが、
「早まらないで。プルミーさんは私のそばで、敵の気を引きながら回避防御に集中する作戦のはずよ」
 とルシアにとめられる。
「でも、私……」
「忘れちゃだめ! あなたは団長、できることを、やらなきゃいけないことをやるんだよっ! 無駄なことなんて、どこにもないんだから!」
 メンバーの要(かなめ)であるプルミエールに無謀をさせるわけにはいかない。ルシアの言葉は厳峻であるが、それもプルミエール、ひいては仲間たちのことを想ってであるということは充分に伝わった。
「目が覚めました!」
 といってプルミエールは迷いをはらい、求められた役割をつとめる。
 血気盛んゆえに冷静にならねばならぬ……ジェイクはプルミエールの姿に胸を熱くし、自身にもそれをいいきかせながら、
「いこうぜ、ヴリュンカディス!!」
 自身の剣に呼びかけ、剣振るアクションとともにデモニックフレイムを撃ちだす! 当たるか当たらないか、あるいはどれほどの被害を与えるかはこの際問題ではない。いまはただ、甲虫の複眼をこちらに惹きつけることだけが目的!

 敵の注意を充分に囮へひきつけたのち、背後に回りこんだ攻撃メンバーが強襲する……この作戦はしかし、予想外の困難を呈した。
「道が………!」
 オウキの声色に悔しさがにじんだ。破壊されつくした町の間道をたどるのは楽な行程ではない。とりわけこの一帯はひどく、倒壊した建物やクレバス状に裂けた石畳が一行の妨害をする。もどかしい状況だが、無茶をすれば作戦自体が台無しになるのをオウキは知っていた。
 すぐそばで激戦が行われている。ゆえに粉塵が降り注ぐことも一通りではなく、ヤシロの愛らしい髪も顔も、たちまちにして汚れてしまった。しかしヤシロはそんなことにかまわず、
「ルルナさん、リシャロットさんも、身を低くして。流れ弾がかすめるかもしれない」
 と警戒をよびかける。
 ルルナは、信頼の証にうなずいて見せ、
「こちらが苦しいときは敵も苦しいものです。いま、私たちにできることは戦力を温存すること……急ぎましょう」
 リシャロットも壁に身を寄せる。その割れ目の向こうに、禍禍(まがまが)しきギアが豪風を上げ、真っ赤な熱線にて暴威をふるうのが見えた。プルミーさんも無謀はやめてね……と祈り、リシャロットは
「大丈夫。きっと、上手くいくわ……」
 自身と仲間を勇気づける。

●三
 森羅の息吹も併用しつつ、ゴウテンは必死で戦線維持につとめる。
「ウェルダンなんてのがいたんじゃ、世界中にいるペタン娘たちも安心して暮らせないってなもんだっ!」
 かく強がるゴウテンだが苦戦は隠しきれない。ウェルダン自身の防護の高さもさることながら、つぎつぎと放たれる熱線が、脅威的なまでの強さを見せていた。
 エルスはもんどりうって倒れた。焼けつくような痛みが全身をかけめぐる。チキンスピードの効果が切れた瞬間に、まともに熱光線を浴びてしまったのだ。
「エルスさん!」
 カズの叫ぶのが耳に届いたが、不思議と遠くからの声のようにエルスには思えた。周囲からどんどん音が消えていく。静かだ。ルシアの声も聞こえる。プルミエールの涙声も……
「泣いちゃだめだプルミー、お前には……」
 エルスは最後の力をふりしぼって言葉を紡いだ。
「お前には、笑顔のほうが似合ってる」
 エルスの沈黙を契機にますます戦線は悪化する。つぎに犠牲になったのはクライスだった。平時のクライスであれば致命傷は避けられた打撃だ。だが、標的にされたプルミエールをとっさにかばったことにより、大型盾を活かせぬまま貫かれたのである。
 うすれゆく意識のなか、クライスには不思議な充実感もあった。かれは想う。
(「あの時、第三作戦まで、我々は貴女がたに護ってもらった。今度は、私が貴女を護りましょう……この身体(からだ)で……」)
 目をとじたクライスの顔は、眠るように安らかであった。 
 ジェイクは拳を握りしめた。
「どうせ撃つならオレを撃て! このポンコツ野郎!」
 ジェイクの口をついてでたのは、それでも怯まぬ士気のあらわれだ。
 ルシアも全力、かくなれば自身も捨石にならんと、スーパースポットライトを発動した。
「ほらっ! こんなに目立つ標的に当てられないのっ!?」
 大声で叫ぶ。二人倒されたがまだくじけない、絶対負けないと信じるがゆえの度胸だ。
 一瞬、ルシアに向きかけたギアだが忽(たちま)ち、高波にすくわれる小舟のように体勢を崩してしまう。高波ではない……これを誘引したのはリセルシア入魂の一撃!
「ほら、油断していたらいつでもこうですよ?」
 リセルシアが放ったのは緑の突風だ。覚醒した黒炎を身にまとい、杖片手に敵を指すリセルシアの姿は、皇后のように気高く聖処女のように清らかである。
 そこにプルミエールが猛然と斬り込む。電刃衝! すかさずゴウテンも攻撃。
「いいぞぷーみん! やっぱり俺は元気な嬢ちゃんが好きだぞ」
 かくいうなり長い脚、ゴウテンは斬鉄蹴にて敵を斬る。
 歯車がきしむような音が轟く。ウェルダンは猛然と竜巻を吹き上げ、複眼を血のように赤く燃やした。機械ゆえ感情はなかろうが、このとき動物でいう「本気」の状態にウェルダンは移行したかと思われる。しかしそのオーバーヒートは……無駄!
 爆音とともに甲虫後方の外装が砕け散った! 硬い鋼板が飴(あめ)のように曲がる。
 カズは愁眉をひらく。
「オウキさん、それに、みなさんも!」
 カズの声も、青いリボンも知らず震えていた。この刻(とき)をまっていた!
 この瞬間のためにオウキは耐え忍んだ。いま、オウキの悲しみと怒り、あらゆる感情が身よりほとばしっている。
「もう主はいないんださっさと潰れろ!!」
 オウキはついにウェルダン後方にまわりこみ、愛騎『紅蓮輝』にて突進、これ以上ないほどの達人の一撃を決めたのである。強く美しいその勇姿よ!
 タイミングをあわせヤシロも突入する。花のように可憐なヤシロだがその一撃は、螺旋、回転、鉄をも貫く。
「一斉攻撃だよ!」
 ヤシロの攻撃はスパイラルジェイド、突き入れる! ウェルダンの内部から見たこともない機械片が四方八方へ散らばった。
 いま、ルルナの神々しさをなんと表現すればいいだろう。普段はそれこそ縁側のネコのようにやさしいルルナが、いまは毅然たる表情で
「必ずここで倒すのです。それが今やるべきことです」
 かくいいはなちスクリューのごとく、スパイラルジェイドで断罪する!
 リシャロットもいる。白きその手に、握られしは輝く聖槍。機械破壊者への悲しみは、尽きぬ慈悲にていざ返さん。
「これ以上悲しみを広げないためにも……あなたをここで、止めます」
 投じた槍の軌道は、オウキ、ヤシロ、ルルナのつけた傷痕をさらに深めた。
 プルミエールが号令を下す。
「挟撃は完成です! 一定距離をたもち包囲にうつり、完全破壊にかかりましょう!」
 仲間たちが気勢をあげたのはいうまでもない。立っている全員でかかる。それでもウェルダンは防戦につとめるも、すでにその命運は尽きていた。
 ルシアは、プルミエールの背をたたいて勇気づける。
「よくがんばったね、プルミーさん。冒険者の使命に終わりはないけど、今日のところはこれでしめよう、ね?」
 オウキも同意し、道をひらいた。
「さあ、団長」
 リシャロットが告げる。
「……勝ちに、いきましょ」
 プルミエールは強く一声あげて、ブラッディザッパーにてとどめを刺したのだった。
 素晴らしい仲間にめぐまれたことを、彼女は心から感謝していた。

●四
 戦いは終わった。
 リセルシアに手当てされてエルスは息を吹き返し、クライスもまた、プルミエールの手を握り笑みを返した。ルシアとカズは健闘をたたえあう。
 リシャロットはふと、戦いのあとを見回した。戦闘中は失念していたが、ここはかつて町だったのだ。
「おわった、わね…」
 しばし呆然とし、わずかに苦笑して
「復興するまで時間、かかりそうね。これからが大変だわ」
 という。
「そこまで大変じゃないかもしれないよ」
 ヤシロがくすっと笑った。ルルナも微笑して示す。
「ほら、あれを」
 遠くからやってくる姿がある。オウキ、それにジェイクだ。ふたりは『紅蓮輝』の背に揺られている。ジェイクが手を振りながらいった。
「ひとっぱしり伝えてきたぜ! ここの住民が避難している場所にな。すぐ戻ってくるそうだ」
 ゴウテンは貧乳眼鏡っ娘本(愛読書)から顔をあげ、二人に片手をあげてニヤリとした。
「さあこれから復興作業か。もう一仕事ってとこだな!」

(終)


マスター:桂木京介 紹介ページ
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