【PARADISE LOST】渓谷に潜むモノ



<オープニング>


●渓谷の奥へ
「先日の共同作戦、お疲れ様でした。その後、持ち帰って頂いた品物を霊査したところ、渓谷の奥にピルグリムの集団が潜伏していることが判明しました」
 冒険者の酒場に顔を出したエンジェルの霊査士・エリアードは、そう言って冒険者の意志を確認する。
 現在、ランドアース大陸は大変なことになっているが、ホワイトガーデンも放置するわけにはいかない。
「ピルグリムは渓谷の奥深くに潜伏し、渓谷の間に無数の白い糸を張り巡らせています。ピルグリムはこれらの糸を巧みに利用し、トリッキーな動きで侵入者を排除しようとするでしょう」
 ピルグリムのテリトリーで戦うという事は、冒険者にとって大きな危険を伴うだろう。
 しかし、危険を恐れていては、前へは進めない。
 一歩を踏み出したその時から、覚悟は出来ているのだから。
「強力な融合型ピルグリムに率いられたピルグリムの集団を排除して、渓谷の平和を取り戻しましょう。
 どうか、皆さんの力をお貸し下さい……」
 言いながら、エリアードは静かに頭を下げる。
 こうして、戦場に赴く冒険者を見送りながら、エリアードは彼等に新たな希望を託すのだった。

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参加者
白陽の剣士・セラフィード(a00935)
星天主・ノア(a03478)
笑顔の約束・ソレイユ(a06226)
赤烏・ソルティーク(a10158)
運命の担い手・ロック(a11077)
銀風・ユウリア(a12192)
鉄壁の無色ペリカン・トウマ(a16023)
阿蒙・クエス(a17037)
白と銀の幸せの医術士・リィルアリア(a34182)
日燐陽車・アレイア(a41247)
弓使い・ユリア(a41874)
絶えぬ波音・アニス(a50019)


<リプレイ>

●渓谷の奥へ
 冒険者の行く手には白い靄のようなモノが立ち込めているように見えるが、近付いて確認してみるとそれがピルグリムの皮膚と同じ色をした糸だと分かる。
 渓谷の奥に張り巡らされたそれは、エンジェルを……あるいは、冒険者すらも罠にかけるように、徐々に密度を増しているようだった。
「さて、どこから来る……?」
 銀風・ユウリア(a12192)は一見出鱈目に張り巡らされた糸の配列を確認しながら、ピルグリムの奇襲パターンを読んでいる。
 だが、空中を含めた全方位に警戒しなければならないという、精神的な圧迫感は大きい。
 冒険者は術士を真ん中に据えた円陣を組み、ピルグリムの襲撃に警戒している。
 そんな中、最初の奇襲は静かに始まっていた。
 ポトリ。
 どこから落ちてきたのか、一匹のピルグリムが冒険者の目の前に転げ落ちてくる。
「……!?」
「一匹だけ……か?」
 一瞬、反応に困る冒険者だが、警戒態勢は崩さない。
「ふぁいえるっ!」
 次の瞬間、空中に張り巡らされた糸の合間に潜んだピルグリムの姿を確認し、蒼穹の虹飛燕・ユリア(a41874)が上空に向かってナパームアローを撃ち出すと、空中で炸裂したそれはピルグリムを容赦なく巻き込んでいく。
 だが、被害を免れたピルグリムは冒険者の周囲に降り立つと、攻撃を開始していた。
「ヘッ。雑魚がウヨウヨいやがるぜ。んじゃ、ちゃっちゃと片付けるとしよーぜ」
 ウェポン・オーバーロードを発動し、極限まで研ぎ澄まされた得物を手に流水撃で応戦しながら、鉄壁の無色ペリカン・トウマ(a16023)は軽く言い放つ。
 だが、ナパームアローの直撃を受けて生き残ったピルグリムの中には、空中から直接攻撃を仕掛けてくる個体もおり、それらの攻撃は確実に円陣の内側にいる術士を狙ってくる。
「……ッ、面倒な相手ですね」
 死角から繰り出される正確な攻撃を受け、それでもブラックフレイムで襲い掛かるピルグリムを焼き払いながら、赤烏・ソルティーク(a10158)は息を吐く。
 分かっていた事だが、地の利が相手にあるというのは非常にやりづらい。
「わたくしの目の前では誰も傷付けさせません!」
 そのため、冒険者の被害も大きいのだが、笑顔の約束・ソレイユ(a06226)はヒーリングウェーブで必死に仲間の傷を癒している。
 黒炎覚醒も発動した彼女の回復力は、それだけで、仲間の体力を支えるだけの力を有していた。
 だが、それを狙うように、上空から蜘蛛糸が放たれる。
「しまっ……」
 投網のように覆い被さってくる蜘蛛糸に巻き込まれ、星天主・ノア(a03478)が身動きを封じ込められていた。
 他にも、何人かの仲間が融合型ピルグリムの吐き出した蜘蛛糸に絡め取られ、行動を妨害されている。
「陣形を固めても、こうやって一網打尽にされると面倒ね……」
 だからといって、下手に散開すれば各個撃破されるのは明白だろう。
 白陽の剣士・セラフィード(a00935)は身動き出来ない状況に溜め息を漏らしながら、反撃の機会を窺っていた。
 大丈夫、対策は用意してある。
「……っ、解けたなぁ〜ん♪」
 拘束を自力で振り解きながら、白と銀の幸せの医術士・リィルアリア(a34182)が静謐の祈りを捧げると、清浄なる祈りが仲間を呪縛から解き放っていく。
 身体の自由を取り戻した事で、冒険者が少しずつ押し返し始めていた。
「やれやれ……ピルグリムの癖に頭が回る」
 ピルグリムの攻撃を無防備な体勢から受け流し、力をそのまま衝撃波として叩き込みながら、阿蒙・クエス(a17037)は感心したように呟いている。
 これくらいの相手なら、無風の構えも多少は効果を発揮するらしい。
 それにしても、厄介な相手ではある。
「あいつをどうにかしないといけないかな……っ!」
 キルドレッドブルーの力と同化した氷炎の一撃でピルグリムを斬り付けながら、赫灼天華・アレイア(a41247)は上空を見上げつつ呟いていた。
 糸に掴まり空中に留まっている融合型ピルグリムは、再度、蜘蛛糸を吐き出そうとしている。
「任せて下さい!」
 それに応じるように、ユリアが咄嗟に鮫牙の矢を撃ち出すと、直撃を受けた融合型ピルグリムは大量の体液を撒き散らしながら戦場の直中に落下していた。
 直撃を避けるように、運命の担い手・ロック(a11077)はその場から飛び退いていく。
「接近戦の方が得意なものでね」
 融合型ピルグリムの攻撃を受け流し、斬鉄蹴をお見舞いしながら、彼は不敵な笑みを浮かべる。
 そこに、絶えぬ波音・アニス(a50019)が一気に詰め寄ると、デンジャラススイングを繰り出していた。
「面倒な奴だね! 大人しくブッ倒されなっ!」
 言いながら、彼女は融合型ピルグリムを容赦なく投げ飛ばす。
 力強く地面に叩き付けられ、融合型ピルグリムは怒りの咆哮を上げるのだった。

●連戦
 ピルグリムの奇襲により多少の混乱はあったものの、ペースを掴んだ事で徐々に冒険者が押し返している。
 しかし、最初の戦闘で消耗していれば、最後まで戦えないだろう。
「これで決めるよ!」
 ノアの放ったニードルスピアが、詰め寄るピルグリムを次々と撃ち抜いていく。
 それでも生き残ったピルグリムは、ソルティークのエンブレムシャワーが撃ち抜いていた。
 残ったのは、一匹のピルグリムと融合型ピルグリムだけ。
 しかし、融合型ピルグリムは怖じ気付くことなく、杭のように尖った足先を打ち付けるように、ロックに向かって振り下ろす。
「……くっ!?」
 対処しきれず、肩口から大量の血飛沫を巻き上げながら、ロックはそれでも踏み止まっていた。
「ロック!?」
「ロックさん!」
 咄嗟に割り込んだユウリアが、弾丸のように飛び込みながら融合型ピルグリムに強烈な一撃をお見舞いする。
 その間にも、ソレイユが慌てて癒しの聖女を飛ばすが、彼女の力でもロックのダメージを完全に解消するには至らない。
「これでも一応武道家なのでね」
 言いながら、ロックは自分でも森羅の息吹を発動し、呼吸を整え精神集中し体内の気を循環させて体力を回復させる。
「あまり長引かせると厄介だ……」
 クエスがキルドレッドブルーと同化したブラックフレイムを撃ち込むと、融合型ピルグリムは完全に身動きを封じられていた。
 そこに、無造作に距離を詰めながら、セラフィードは達人の一撃を繰り出していく。
「これで終わりよ!」
 ウェポン・オーバーロードに裏打ちされ、グランスティードの力を乗せて叩き込まれた一撃は、融合型ピルグリムの防御を突き破り刺し貫いていた。
 傷口から体液を撒き散らしながら、融合型ピルグリムが地面に倒れ伏す。
「終わりました……かね?」
「いや……?!」
 ロックの言葉にトウマが応じる。
 空中に張り巡らされた白い糸には、一匹のピルグリムが逆さまにぶら下がっていた。
 そのまま、冒険者の視界から立ち去ろうとするピルグリムに、ユリアの放った矢が追いすがる。
「逃がしません!」
 しかし、間に合わない。
「仲間を呼ぶ気か!?」
「……いや、待て。深追いするな」
 そのまま、渓谷の奥に消えていくピルグリム。
 ユウリアが即座に追い掛けようとするが、クエスが咄嗟に押し止めていた。
 言葉では言い表せないが、何か嫌な予感がする。
「地の利は相手にあります……下手に動けば、ピルグリムの思う壺でしょう」
 もしかしたら、待ち伏せされているかも知れない。
 慎重に行った方が良いだろう、とソルティークは冷静に付け加える。
 いずれにしても、休憩する時間は与えてくれないだろう。
 冒険者は被害状況を確認し、陣形を整えていた。
 今の所、冒険者の中に脱落者は一人も出ていないが、これから先何があるか分からない。
 そうして、彼等は周囲を警戒しながら慎重に渓谷の奥へと入り込んでいくのだった。

 融合型ピルグリムの前肢が叩き付けられる。
 咄嗟に避けようとするが、ガードも間に合わない。
「……っ、ちょっと油断したな」
 悔しそうに呟きながら、アレイアが地面に倒れ込んでいく。
「だ、大丈夫ですなぁ〜ん!?」
 リィルアリアが咄嗟に抱きとめるが、既に彼女の意識はない。
 慌てて円陣の内側に引き込むが、冒険者の陣形が崩れたのを見計らうように、ピルグリムが雪崩れ込んでくる。
「うぉぉぉらっ。一昨日きやがれってんだッ!!」
 それらのピルグリムを、トウマの流水撃が容赦なく薙ぎ払っていくが、一旦崩れた陣形を修復するのは容易ではない。
 それに乗じるように、融合型ピルグリムも怒濤の攻撃を仕掛けてくる。
 既に二回の衝突を経て疲弊している冒険者だが、それでも、気力だけは負けていなかった。
「私は……躓く事があっても、決して退かない!」
 セラフィードの繰り出した達人の一撃が、融合型ピルグリムの戦意を削ぎ落としていく。
 これで少しは時間稼ぎになるだろう。
 その間にも、ピルグリムの攻撃は続いている。
 ソレイユは円陣の内側に入り込んだピルグリムの直接攻撃を受けながらも、何とか耐えていたが……ノアはピルグリムの猛攻に耐えきれず、その場に倒れ込んでいた。
「ここまで……かな?」
「諦めちゃ駄目ですなぁ〜ん!」
 リィルアリアは癒しの波動を放ちながら、何とか持ち堪えようとしている。
 ユウリアも粘り蜘蛛糸を使用し、ピルグリムを絡め取っていく。
「今だ!」
「任せて下さい!」
 そこに、ソルティークのエンブレムシャワーが撃ち込まれると、降り注ぐ光の雨がピルグリムを次々と撃ち抜いていた。
 どうにか態勢を整える冒険者だが、その頃には、融合型ピルグリムが身体の自由を取り戻している。
 叩き込まれる一撃を、クエスは防ぐ事が出来ない。
「……ッ、こいつ!」
 それでも、彼は咄嗟にヒーリングウェーブで回復するが、どうしても消耗は避けられないだろう。
 ソレイユも、仲間の回復に追われている。
 回復アビリティは今の所余裕があるが、まだ、一番厄介であろうリーダーの姿が見えない以上、油断するわけにはいかなかった。
 ユリアの放った鮫牙の矢が、融合型ピルグリムを射抜く。
 体液を撒き散らしながら怒りに委せて攻撃を繰り出す融合型ピルグリムであるが、セラフィードは鎧聖降臨の加護を得て受け止めていた。
 そこに、ユウリアのスパイラルジェイドが繰り出されると、強烈な一撃がクモのような足をバラバラに切断してしまう。
「しぶといですね……」
 節足の2、3本を切り刻まれ、それでも向かってくる融合型ピルグリムにソルティークの放った緑の業火が叩き込まれると、ペインヴァイパーの力と同化した炎は融合型ピルグリムを容赦なく呑み込んでいく。
 そうして、動かなくなった融合型ピルグリムを確認したのも束の間、日差しを遮るように、何かが上空から舞い降りてくる。
 ズン。
 カマキリの上半身とクモの下半身を持つ融合型ピルグリムが、見上げるような巨体で大地を振るわせながら冒険者の目の前に降り立っていた。

●ピルグリム渓谷の決戦
「……ようやく本命のお出ましか」
 ピルグリムリーダーの登場に、一同に緊張が走る。
 渓谷の主は威嚇するように冒険者を睥睨すると、両手にある巨大な大鎌で獲物を薙ぎ払っていた。
 大気を切り裂くように繰り出された一撃は、切り裂かれたバターのように地面にバツ印の傷跡を残している。
 巻き込まれた冒険者の身体にも、大きな傷跡が深々と刻み付けられていた。
 まともに食らえばどうなるか、想像しただけで恐ろしい。
 それでも、冒険者として簡単に引き下がるわけにはいかないだろう。
 意を決しピルグリムリーダーに立ち向かう冒険者だが、連戦による疲労は隠しようがない。
 数こそ少ないが、残されたピルグリムも冒険者を追い詰めている。
「食らいやがれっ。炎と氷の輪舞曲!!」
 真っ先に飛び出していったトウマが、氷炎の一撃を叩き込んでいた。
 しかし、ピルグリムリーダーは片方の大鎌で軽く受け流すと、装甲の表面で炎と氷が弾け散る。
 セラフィードが駆け寄りざまに達人の一撃を繰り出すが、これも、もう片方の大鎌に受け止められていた。
「そこだ……!」
 だが、一瞬の隙を見逃すことなく、一気に間合いを詰めたユウリアが繰り出したスパイラルジェイドは、ピルグリムリーダーの胴体を大きく引き裂いていく。
 だがしかし、苦痛に悶えるピルグリムリーダーは気を取り直すと、眼下のユウリアに巨大な大鎌を振り下ろす。
 それを、避ける事は出来ない。
「……ぐあっ!?」
「ユウリアさん!」
 恐ろしく研ぎ澄まされた刃が、彼女の身体を貫いていく。
 そのまま、意識を失い身動きしなくなったユウリアを庇いながら、ロックが斬鉄蹴を繰り出していた。
 しかし、ピルグリムリーダーの分厚い装甲を突き破る事は出来ない。
 クエスもブラックフレイムを撃ち出すが、ピルグリムリーダーを止める事は出来なかった。
 リィルアリアが倒れた仲間を助ける間、ソレイユも攻撃に参加する。
「……攻撃だって出来ますの!」
 キルドレッドブルーの力と同化した氷炎の魔弾が、ピルグリムリーダーの分厚い装甲を撃ち抜いていく。
 それは、傷口から炎と氷を撒き散らし、ピルグリムリーダーの身動きを封じ込める事に成功していた。
「今ですの!」
 身動き出来なくなったピルグリムリーダーに、冒険者の攻撃が次々と叩き込まれる。
 残されたピルグリムを排除したアニスは、ピルグリムリーダーの懐に潜り込むと、デンジャラススイングを仕掛けていた。
 吹き飛ばされ、それでも起き上がりながら、ピルグリムリーダーは反撃に転じる。
「……来る!」
 振り下ろされる巨大な大鎌は、しかし。
 クエスの身体を捉えることなく、力は衝撃波として返されていた。
 そこに、追い討ちをかけるようにユリアの鮫牙の矢が突き刺さり、ソルティークの緑の業火が叩き込まれる。
 それでも、ピルグリムリーダーは倒れない。
 恐るべき生命力で、冒険者の前に立ち塞がる。
 だが、再度ソレイユの放った氷炎の魔弾が撃ち抜くと、セラフィードの繰り出した達人の一撃がピルグリムリーダーの身体を貫いていた。
 そこに、トウマの氷炎の一撃が叩き込まれる。
「今度こそ、食らいやがれ。炎と氷のロンドっ!!」
 繰り出された一撃は今度こそピルグリムリーダーの身体を捉えると、その身を両断し、炎が全身を焼き尽くしていく。
 そうして完全に沈黙したのを確認してから、冒険者の長い長い戦いにようやく終止符が打たれるのであった。

「何時まで経っても減らないピルグリム……何処からやってくるのかしら?」
 セラフィードが倒れたピルグリムの死骸を見渡しながら、溜め息を漏らしている。
 ソルティークもタバコを吹かしながら何やら考え込んでいた。
 いずれにしても、これで少しは平和に近付いたのかと、ソレイユやリィルアリアは思う。
 やがて、冒険者は渓谷の奥を見据えてから、疲れた身体を引きずるように、我が家への帰路に就くのだった――。


マスター:内海直人 紹介ページ
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参加者:12人
作成日:2007/06/26
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死亡者:なし
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