≪盗賊ギルド“夢幻のつばさ”≫僕らの『ケッコンシキ』戦争−−普通の結婚式がしたい!



<オープニング>


 ケッコンシキ。――それは本来、結婚式と書く。
 男と女が結ばれ、永遠を誓い、互いの幸せを祈る神聖な日。涙と笑顔で恋人達は祝福を受け、見守る人々は拍手と羨望の眼差しで恋人達を見守る。荘厳な鐘の音にあわせて花が舞い、青空の下で真っ白なドレスとタキシードが踊る。
 人生で一番幸せな日。そんな日が、此処――盗賊ギルド“夢幻のつばさ”にも訪れる……ハズだった。

「よーし、血痕式まで時間も無いし、さくさく準備をしていかなきゃな」
「イントネーションが違う!」
 この夢幻のつばさを率いる団長、星夜の翼・リィム(a24691)の言葉に、新郎である雷獣・テルル(a24625) が吼える。
 結婚式と血痕式、それは似て非なるもの。同じケッコンシキでも、字面から意味を察するべし。
 そう、ここ夢幻のつばさ――略してむげつばでは、結婚式では無く『血痕式』の準備が進められていた。
「血痕式……盛大にお祝いしますよー。楽しみですね〜」
「最高にハッピーな血痕式にしてあげる、ね?」
「お祝いの歌は放蕩の宴とファナティックどっちがいいかしら!」
 楽しげに語る翠影の木漏れ陽・ラズリオ(a26685)とちっちゃな鈴鳴姫・リィリ(a31959)、そして戯れる森で貴方とワルツ・ゾフカ(a45900)の声に、真闇の通過者サスケ・アソート(a45042)が答えた。
「放蕩の宴は不要だろ。何せ使わなくとも理性の歯止めを失ってる」
 ツッコミ所はそこか。
 ――理性の歯止めを既に失った団員達は、思い思いにテルルを祝福(と言っていいのか分からぬが)する為の準備に追われている。
「フレアちゃん、どっちがどれ着る〜?」
 巫女さんふぁいたー・チトセ(a30031) が持ってきたのは、どれもデザインの違う純白(という名のウェディングドレス)と一着のタキシード。その内のタキシード手にし、新婦――駆け昇る流星・フレア(a26738) がにっこりと一着の純白をテルルへと渡す。
「パイプオルガンの荘厳な音色の中、純白の衣装に身を包んだ新郎はタキシードの新婦をエスコートしバージンロードを歩いた。新婦の頬には一筋の雫が伝う。2人は神父の前で誓いの言葉を述べ、首輪を交換した。背後に並ぶ友人の男達のすべてが純白に身を固め……むぅ、シュールだ」
「って、ふ、フレアーッ!?」
 回ってきた純白に驚愕の声を上げ、テルルは自分の妻となる彼女を涙で見返す。敵は身内にありということか――いや、それよりも男達全員が純白なことに突っ込むべきか。
 涙に暮れる新郎の横、集められた純白を眺めて紅戦士・ルナ(a60264)がぼんやりと呟く。
「やはり途中で『これより新郎新婦のお色直しです』で何回も衣装替えするんだろうな」
「いやいやここはおいぬ。直しだろ」
「いぬ。といわずフル装備に鎧聖・WOLで迎えにいくので覚悟しておけ参列者ども」
「純白の花嫁なんていない……居るのは紅いドレスを纏った女といぬ。だけ」
「そうか、新郎の姿はいぬ。か」
 ゾフカの呟きに答えた我が邪炎に滅せぬは唯一つ・イールード(a25380) は、その状況を想像し眉を顰める。新郎の姿がいぬ。……それは案外、血痕式よりすごいかもしれない。
 ツッコミすら会話に飲まれたテルルは、もう涙も出ない。
 信じられるのは自分の力だけ。逃げ出したい気持ちを堪え、震える足を叱咤して、テルルは立ち上がる。
 それは唯一つ、『人生で一番幸せな日』を、ちゃんと――ちゃんとこの手に掴むため。
「――絶対、絶対に普通の結婚式を挙げてみせるんだーっ!!」
 片手にタキシード、片手に武器を。血痕式を跳ね除けなければ、幸せな結婚式は出来そうにない。
 心からの雄叫びを上げる新郎に、手を貸すべく集まる仲間達――それを囲い、血痕式の準備を進める者達。
 ケッコンシキ。それは本来、『結婚式』と書くもの。
 今回行われるのは結婚式か、それとも血痕式か。
 平穏な結婚式を妨害する数々の試練――襲い来る妨害者を蹴散らし、祝福の道を駆け抜けろ!
 命懸けのケッコンシキが、今、始まる!

マスターからのコメントを見る

参加者
夜駆刀・シュバルツ(a05107)
轟然たる竜の鼓動・ラスティ(a20452)
雷獣・テルル(a24625)
星夜の翼・リィム(a24691)
我が邪炎に滅せぬは唯一つ・イールード(a25380)
駆け昇る流星・フレア(a26738)
巫女さんふぁいたー・チトセ(a30031)
蒼天の守護者・ツカサ(a30890)
鈴鳴姫・リィリ(a31959)
決して軽薄な男じゃありません・ジン(a32218)
隠れ家ヘよーこその看板盗んだ・フォッグ(a33901)
凛然たる氷凰・レイナート(a34578)
苺・アソート(a45042)
黄昏纏う紅円刃・ゼノン(a45612)
紅戦士・ルナ(a60264)
気儘な南風・フェリアス(a60497)
NPC:突撃ヒトノソ元気っ子・リュミー(a90245)



<リプレイ>


 その日、雷獣・テルル(a24625)はずっとそわそわしていた。
 けっこん、結婚。それは人生の一大イベント。幸せな一日に心が躍っている――訳ではなく、どちらかといえば不安に震えるように、テルルは手にした極上のワインを握り締める。
 彼が居る控え室では、沢山の仲間達が祝福に訪れていた。花嫁よりは少し地味なミントグリーンのドレスを着て、轟然たる竜の鼓動・ラスティ(a20452)はちっちゃな鈴鳴姫・リィリ(a31959)と共に駆け昇る流星・フレア(a26738)に駆け寄る。
「フレアおめでとーッ。知り合ってから早2年、こんなに大きくなって」
 よよよ、と涙を流すフリをする永遠の14歳。ラスティ自身はドリアッドなので、知り合ってからは実は全く成長していない。
「いいなぁいいなぁお嫁さん! きれーい」
「フレアさんテルルさん、ご結婚おめでとうございます。幸せな家庭を築いてくださいね」
「二人とも結婚おめでとう、だよ?」
 水色のミニドレスにレース編のショール、花冠を揺らしながらリィリが言えば、紺色の着物姿の蒼天の守護者・ツカサ(a30890)と赤いドレスの気儘な南風・フェリアス(a60497)が続く。花嫁を囲んだ一角は花畑のように華やいで、特別な日をいっそう彩る。
「フレアとテルルもいよいよ結婚か、善哉善哉」
(「――そして愛に試練はつきものなのだろうか」)
 徹夜明けの真闇の通過者サスケ・アソート(a45042)が欠伸を一つしながら、ぐるりとあたりを見渡した。――今のところ穏やかに準備は進んでいるが、何時何が起こるかわからない。
 見れば控え室の片隅で、姿無き足取り・フォッグ(a33901)が受付を行っていた。
「結婚式に関係者の一人として参加するむげつばの人たちはきちんと署名してくれー」
 わいわいと集まる中に、星夜の翼・リィム(a24691)の姿がある。
 セイレーン産高級ワインを握り締めたテルルは、緊張しながら彼女に近付いた。――あいさつ回り、いや買収していないのは、リィムのみ。そして、今回最強(だと思われる)の敵!
「お願いだ。お義姉さん、結婚の許可を!」
 決死の覚悟でテルルはワインを渡す。
 リィムはにっこり笑って新郎用の衣装箱を手渡した。許してもらえたのか!?
 と思ったが。
「誰だ衣装を入れ替えたのはー!」
 箱から現れたのは犬のきぐるみ。
「ああっ、リィムが居ないーっ」
「こんな事もあろ〜かと」
 慌てふためく中、大丈夫、と声をあげた巫女さんふぁいたー・チトセ(a30031)が取り出したのは、純白を一着。――ちょっと待った、タキシードの控えはないのか!?
 
「その箱は偽者、本物はこっちだ!」
 混乱した場を収めるように夜駆刀・シュバルツ(a05107)が本物の新郎用衣装箱を投げ寄越す。それに舌を打ったのはリィム――本当は、偽者の箱を渡すのではなく、ちゃんと衣装を入れ替えるつもりだったのだ。
 昨晩、リィムはこの式場を訪れていた。然し、シュバルツやサスケが寝ずの晩をしていたお陰で、どうにも忍び込む隙が見つからなかった。
「レイナートやチトセも各所に衣装を隠しておいてくれた。いぬ、を着させる事は諦めるんだな」
 勝ち誇ったように言う。
 だが、リィムは不適に笑い控え室を出て、扉を閉めた。――式場へと繋がるその扉の前で意気揚揚と叫ぶ。
「シャドウロック!」
 ガチャッ!
「窓にも全部鍵がかかってるぜ! この7月の熱気。窓を開けるには破壊っきゃねーぜ。壊れた式場で挙式か?」
 屋外でやるにも雨が降ってるぜ、とリィム。心の中で、昨日の雨乞いが効いたとガッツポーズ。
「開錠できるか、試してみるよ」
 即座にフェアリスが開錠に挑む。そこまで難しくは無さそうだが――その間にもリィムが何をしでかすか分からない――!
「仕方ない、壊すよ!」
 チトセが武器を呼び出して、闘気をこめた一撃をドアに向かって放つ!
 爆音と共に扉は崩れ、式場までの道が開いた。
「……瓦礫とか少ないといいなあ」
「暴れすぎて式場崩壊は嫌だよーっ」
 ――式場崩壊はしないが、控え室はボロボロになりそうだ。
 護衛を伴い、新郎新婦は式場へ走る。ここに何かトラップがあったとしても、対応のしようがない。と自らの身を盾に、決して軽薄な男じゃありません・ジン(a32218)が廊下をひた走る。
「はっはっは、全然安全だz……のわぁぁぁ!?」
 そこに突如現れたのは、黄昏纏う紅円刃・ゼノン(a45612)。驚く間に、眠りを誘う歌を大声で歌い上げる。気付いたラスティが凱歌を歌い上げ、全員が寝落ちることを防いだ。
 ゼノンは即座に逃げ出した。当たり前のように、護衛の一同は彼を追う。
 逃げ切れない。
「他人の不幸は蜜の味ー……ってーのとはまるで違うが、なんか素直に祝福ってのも面白くねーしなぁ」
 彼はそう言って振り返り――衝撃波を打ち放つ!


 遠くで聞こえる破壊音。それをしれっとした顔で聞いていたのは、受付のフォッグであった。
 壊れたのは何所か。控え室のあたりだろうと目星をつけながら先ほど書かせた署名に目を落とす。書物の二枚目に、彼らの名前はずらりと並んでいた。
 そう、二枚目に。
「フォッグさん、料理の準備できたよ」
 後は並べるだけ、と凛然たる氷凰・レイナート(a34578)が駆け寄る。家から持ってきたという料理は、ローストビーフなどの豪勢なものばかり。
 料理は何故か、倍ほど用意されていた。その半分は囮用――料理に何かを仕掛けられても大丈夫。
「控え室から凄い音が聞こえたけど……大丈夫かな」
「まあ、俺達には関係無い。――リュミー、このなんだか知らない肉食べるか?」
 そう言って、書物を置く。何所からとも無く取り出したマンガ肉と、レイナートが多めに作っておいた囮用の料理で、とりあえずは腹ごしらえ。リュミーは嬉しそうにお肉へとかぶりつく。
 三人の前で、ひらりと署名の紙が舞う。
 開かれた一枚目のページには「式場を壊した際には弁償します」という契約書があった。
 
 そんな事も露知らず、式場へ向かう廊下。
 衝撃波はフェリアスが呼び出していた土人形にぶつかり、消えた。
「行列の露払い〜♪」
「そーれ! ぶっかけふらわーさいくろん!!」
「感動のあまり硬直しちゃえー♪」
 ホーリーライトで道を照らすラスティにあわせ、リィリが花弁を舞い散らした。眩い光と花弁とお米に混じって、胡椒がばら撒かれる。ぱっと見たところ、綺麗な演出にしか見えないところがポイントだ。その合間を縫って木の葉がリィムの体を押さえこむ。が、直ぐに拘束が解けたリィムやゼノンがくしゃみをしながらさっていってしまった。
 悔しがる二人に、フレアが嬉しそうに微笑む。
「皆、本当にありがとっ。凄く友情を感じるよ」
「実力行使を狙うのはリィムさんとゼノンさんだけ、みたいだね」
 そうくるなら容赦なし、とチトセ。ツカサは会場にたどり着く前に、と二人の衣装に力を注ぎ、宝石と共に防御力を付け加える。
「戦闘不能は避けなければなりませんからね……念のためです」
 本当の戦いは、これからだ。

「新郎新婦の入場だ」
 我が邪炎に滅せぬは唯一つ・イールード(a25380)の声にあわせ、新郎新婦は式場の中へと足を踏み入れた。
 式場内にはお客さんが一杯いた。その多くは何故か子供で、拍手というより冷やかしの声で新郎新婦を迎える。その周りでは親御さんと思われる人々が心配そうに成り行きを見守っていた。
 子供の拍手と冷やかしの口笛が響く中、新郎新婦は神父役を努めるジンの元にたどり着く。白無垢にタキシードの二人は目配せをして、一緒に「鎧聖降臨」と「鎧進化」を使う。
 一瞬にして、二人の服装が変った。感嘆の声と拍手が鳴り響き、ウェディングドレスを着たフレアは軽く礼をする。二人の胸には薔薇の花が揺れ、オパールの髪飾りが紅色の髪の毛に映えていた。
「戦士が……互いの血を飲んで義兄弟以上の絆を結べるという儀式。冒険者がこれをするとは初めて聞いたが」
 後方で、ケッコンシキを勘違いしている紅戦士・ルナ(a60264) がぽつりと言った。ほんの少し空気の凍った式場で、場を取り繕うようにジンは進行を続ける。
「それでは首輪……もとい指輪交換を」
「やっぱり首輪交換なのか」
 ルナの言葉にほんの少し笑って、フレアがテルルの首輪に手を伸ばした。本当に首輪交換なのか! との周り(とテルル)の視線を受けつつ、フレアはテルルの首輪を外す。
「これからはテルルがご主人様。でしょ?」
 そう笑って、首輪を捨てて――二人は静かに指輪を交換した。
 大きな拍手が沸きあがり、二人は照れたように微笑む。
(「いつかボクも結婚するのかな、その時が来たら良いんだけどなぁ」)
 静かに拍手をしながら、料理を並べ終えたレイナートがぼんやりと思う。
 幸せそうな二人の笑顔は、見ている自分達をも幸せにする。暖かな気持ちに包まれながら、レイナートは祝福の言葉を送る。
「二人とも結婚おめでとう、お幸せに!」
 式は穏やかに、そして幸せそうに進んで――いた。

 そして終盤、誓いのキスへと進行は進む。
「……それでは最後に、誓いのキスを」
「お、俺からっすか!? ぐ、ぐぅ……こうなりゃ覚悟決めて」
「この大観衆でできるか? お二人さんヨォ〜」
「なぜあの二人はそれぞれ顔を赤くしてるのだろう? ただ、唇を重ねるだけだろ?」
「めっさ恥ずかしいんですけど!?」
 ひゅうひゅうと鳴り響く子供達の口笛、そしてリィムやルナの声にテルルとフレアは思わずたじろぐ。
 その時。
「――! ジン、危ない!」
「……ぁー、羨まし――ぐっはぁ!」
 思わず本音を言いかけたジンが、新郎新婦の合間を割って走った衝撃破で飛ばされる。これはあれか、本音を言いかけた罰か。いや、楽しく祝いましたよ!?
 意識を失いかけるジンに反し、攻撃を仕掛けたゼノンは、ハイドを見破ったイールードに再度衝撃波を放った。
 会場は思わず悲鳴に包まれる。庇うようにフェリアスが衝撃波を受け、場を取り繕うためにイールードは声を張り上げる。
「スピーチは後の歓談中に! 次は友人による歌を!」
 即座にラスティ達が凱歌を歌い上げ、雰囲気を損なわぬようしながらフェリアスを癒した。
 逃げようとしたゼノンは――囲まれる。
「直で攻撃はしない。ただ……脅す!」
 ルナの声に体を硬直させる。そこにツカサの拳骨が添えられた。
「普通に祝いましょうね、ふ・つ・う・に」
「相手の事を自分に置き換えて考えてみろ。何事も面白愉快にすればよいわけではない。人を呪わば穴は二つ。同じ穴に落ちたくはあるまい?」
 全く、結婚式を血痕式にしようなどと、一般常識も無いのか。自分の番になったときに因果応報の報いを受けても良いのか。と拳骨の痛みに耐えるゼノンに向けてシュバルツは延々と説教を続ける。
 そんな異様な空気を受けながら、何とか立ち上がったジンがもう一度仕切りなおした。
「そ、それでは最後に、誓いのキスを」
 テルルは目の前にいるのがフレアであることを確認し――
「唇を切って互いの血をのむのか」
 勘違いしたままのルナと子供達の口笛に冷やかされながらも、二人は誓いの口付けを交わした。

「ケーキ入刀はさせん! 雰囲気ブチ壊しのアビスフィールド!」
「ちょっと落ちつけ」
 飛燕連撃でケーキ粉砕を狙ったリィムは、フォッグのナイフに阻まれる。そうして、シュバルツ作のケーキへの入刀も無事終った。プログラムはスピーチへと入り、結婚式は落ち着きを取り戻している。
 但し、式場の雰囲気は最悪だが。
「二人とはあたしが冒険者に成り立ての頃初依頼で一緒したのが出会いだったね。そんな二人の初めての共同作業がむげつばへのあたしの拉致……もとい勧誘でした。こんな面白い所紹介して貰えてホントに感謝してるよっ。テルル君はフレアちゃん泣かせたら容赦無しでボコるのでソコん所ヨロシク」
「結婚して変わる事と変わらない事、両方あるだろう。そして、それを知る事が結婚をするということだと思う。二人に幸あれ」
 スピーチを終えたイールードは、視線だけでリィムのいる位置を確認する。疲れ果てたのか、リィムはぐったりと借りてきた猫のように大人しい。
 彼の視線に応じたテルルとフレアが、一つのブーケを持ってリィムの元へと歩み寄った。
 ――世話になった両親へ花束贈呈をするように、新郎新婦から団長リィムへの花束贈呈。
 祝う気持ちがあるのなら、こっそりではなく――今この場面で言って欲しい、とイールードは祈るように見つめる。
 リィムが振り返り、彼らの手の中にある花束を見つめた。
(「あー、ブーケね……どーせ結婚にオレ縁ねぇし……皆で取り合うんだろうなぁ」)
 勘違いし、叫ぶ。
「粉砕!」
「最後は祝うと信じた私が馬鹿だった」
 放たれる飛燕連撃。飛び散る花。リィムを襲う緑の束縛――全く感動出来ないラストシーン。


 ――気がつけば、雨は上がり青空が広がっていた。
「はっぴーうぇでぃんぐっ!」
「ありがとうっ。皆も幸せにねーっ♪」
 リィリが花弁を投げ、その中をテルルとフレアが歩む。ラスティの作り出したライトがきらきらとひかり、花嫁たちを照らした。心を満たすような踊りと歌が、広がっていく。
 感謝の気持ちをこめてフレアの投げたブーケは、皆の手を渡ってレイナートの手に落ちた。驚きと嬉しさに頬を緩めながら、感謝の言葉と祝福の言葉を紡ぐ。
「……次は俺の番か」
「リリもいつか、可愛いお嫁さんになりたいなぁ」
「私も考えておかなければなりませんね」
 新郎新婦たちを見ながら、思い思いに呟く。

 そんな中、血痕式派の二人は傷だらけで式場の外に放置されている。フレアのチェインシュートが決まった箇所を摩りながら、皆の説教に二人は笑って見せた。
「でも、印象には残ったろ」
「妨害も祝福のうちってな」
「こんな結婚式、忘れようと思っても忘れられねえだろ? そう言う日に、したかったんだよ」
 確かに、ちょっと楽しくなりすぎてやりすぎちまったけど。
 その言葉に洩れるのは、溜息と苦笑い。
 二人だって、心から結婚式を邪魔したかった訳ではないのだ。
「そうそう。2人ともおめでとさん」
 リィムが二人へ背を向けたまま、照れくさそうに告げる。
 空にはリィリたちが作った花弁が舞っている。テルルとフレアは何所か不器用な団長の思いを受け取って有難うと笑った。
 色々あったけれども、なんとか式はやり遂げたし――確かにこれから先ずっと忘れられないだろうから。
「さ、二次会・惨事会と行こうぜ♪」
「惨事は嫌――!!!」
 ――照れか本気か、物騒なことを最後に言いながらも、結婚式は無事終った。

 と、思っていた。
 まだ一つだけ問題が残っている。それは、幸せそうな彼らが、知らない事。
 フォッグの作った契約書を握った管理人が、般若の顔で此方に向かっていた。そう、ぶっ壊した控え室の請求書を持って――。
 ――それはきっと、恐怖の、惨事会。


マスター:流星 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:16人
作成日:2007/07/16
得票数:コメディ23 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
 
雷獣・テルル(a24625)  2009年09月12日 16時  通報
ありがとう、フレア。ありがとう、リュミー。みんな本当にありがとう。
……さぁ次は義姉の番だな覚悟しやがれ!(最悪)