【麺道】燃える男の鉄板焼きそば



<オープニング>


●夜店の屋台は危険がいっぱい!?
「みんな、聞いて〜♪
 もうすぐ星祭りだけど、実は夜店の屋台を襲撃する変わったモンスターが現れたの」
 冒険者の酒場に参上するなり、そう言って冒険者を集めるのは、いつも元気なストライダーの霊査士・ルラルである。
 彼女は集まってきた冒険者の顔を見回すと、今回の依頼の説明を開始していた。
「モンスターは焼きそばの塊みたいな外見をしていて、アツアツの麺というか触手を絡み付けて攻撃してくるの。他にも、触手を器用に使ってコテを投げ付けたり、熱々の鉄板で攻撃を跳ね返して来るみたい」
 見た目に反して手強いかも、とルラルは付け加える。
「だけど、麺道を歩き始めた冒険者には立ち止まる事は決して許されないよ。例え相手が焼きそばモンスターでも、立ち向かってサクッとやっつけちゃおう!!」
 その麺道というのが一体何なのか、突っ込みどころは色々あるのだが……まあ、困ってる人が居る以上、放置するわけにもいかないだろう。
 何より、貴重な屋台を破壊するモンスターは許せない。
「今回も例によって、成功の暁には屋台のおじさんがアツアツの鉄板焼きそばを御馳走してくれるって。他にも夜店の屋台があるみたいだから、楽しんできてね」
 そう言って、ルラルは可愛くウィンク一つ。
「それじゃ、頑張ってね。
 みんなの事、応援してるよ〜♪」
 元気な彼女に見送られ、冒険者は夜店の屋台を守るため祭りの会場へと赴くのだった。

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参加者
きゅーたま・アムル(a06772)
エルフの翔剣士・シェルト(a11554)
兄貴屋台・ラーメン(a27118)
大図書館・エクストラ(a37539)
天秤の淑女・アリシア(a38400)
いつでもはらぺこ・カリジラ(a44977)
煌蒼の癒風・キララ(a45410)
碧光宝珠・セシリー(a48519)
風薫月橘・メレリラ(a50837)
武人型狐スト忍者・アリエーテ(a57608)


<リプレイ>

●祭囃子とモンスター
 焼きそばの匂いがする。
 甘辛いソースの絡まったアツアツの麺と、細長く切り揃えられたキャベツなどの具材。
 焼きそばと言うにはあまりにも大きいそれは、巨大な鉄板と二丁のコテを触手で器用に構えながら不気味に蠢いていた。
「今度の麺邪は焼きそばか……なかなかの男前じゃねぇか」
「敵影はっけんですなぁ〜ん」
 兄貴屋台・ラーメン(a27118)が何故か仁王立ちする隣では、いつでもはらぺこ・カリジラ(a44977)は香ばしい匂いに引き寄せられそうになりながら、辛うじて理性を保ちつつ、モンスターの攻撃に備えて戦闘準備を開始する。
「我ら、屋台防衛隊なぁーん!」
 迷彩の浴衣でびしっと敬礼し、呼び出した土塊の下僕に屋台を任せながら、彼女は仲間と共に焼きそばモンスターに立ち向かっていく。
「さくっとぉ! やっつけちゃいましょう! いっきま〜す」
 きゅーたま・アムル(a06772)がじりじりと前進し、焼きそばモンスターの投げ付けてくるコテを弾き返しつつ、聖なる一撃を叩き込む。
 しかし、弾力のある触手はなかなか刃を通さない。
「隙を作ります……」
 後方からは、詠唱兵器・エクストラ(a37539)が紋章筆記で強化されたエンブレムノヴァを撃ち込み、黒炎覚醒とミレナリィドールの力で増幅された巨大な虹色の火球は、膨大な火力でモンスターの身体を焼き払っていた。
「見えるか? ……これが麺気じゃ!」
 そう言って黒炎覚醒を発動したラーメンは、生み出したブラックフレイムで駄目押しする。
 それでも、焼きそばだけに熱さには慣れているのか、それとも単なるやせ我慢か、構わずにモンスターは触手を繰り出していた。
「……っく、熱い!?」
 それは、狐スト忍者の武人・アリエーテ(a57608)の身体に絡み付くと、強靱な力で身動きを封じ込め、触れた場所からはジリジリと肉の焼けるような音が聞こえてくる。
「大丈夫……?」
 それを確認し、煌蒼の癒風・キララ(a45410)が咄嗟に静謐の祈りを捧げるも、ダメージまでをも解消する事は出来ない。
「今、治しますわ!」
 そこに、天秤の淑女・アリシア(a38400)が癒しの波動を飛ばすと、アリエーテは体力を回復し立ち上がっていた。
「乙女の柔肌が火傷だらけでござるー……」
 ウェポン・オーバーロードに裏打ちされた得物を手に達人の一撃を繰り出すと、一時的に戦意を失ったモンスターはノソリンのお面が飾られた出店を破壊しつつ、冒険者の包囲から逃れようと広場の中央へ逃げ込んでいく。
 それを追撃するように、碧き槍翼の飛燕・シェルト(a11554)が薔薇の剣戟を繰り出そうとするが、焼きそばモンスターが鉄板を構えるのを確認し、咄嗟に通常攻撃に切り替えていた。
 だが、それはモンスターの身体を捉えることなく、逆に燃え盛る鉄板がシェルトに叩き込まれる。
「くっ……!」
「させへん!」
 自分の力を利用され、倒れ込む彼を援護するように、烈光業火・セシリー(a48519)が緑の業火を撃ち込むと、魔炎に包まれ燃え上がる焼きそばモンスターに、風薫月橘・メレリラ(a50837)が緑の束縛を繰り出していた。
「えーい、麺って拡がるだけじゃ駄目なのよ! しっかりと纏まって拘束されなさい!」
 彼女の言葉に応じるように、無数の木の葉がモンスターの全身を絡め取っていく。
 しかし、彼女の目的は敵の拘束だけではない。
 このまま焼きそばモンスターが動けなければ、究極奥義とやらも出せなくなる。
 だが、拘束が上手く成功したとしても、バッドラックシュートが効かなければ意味はないだろう。
 そして、キララの放ったバッドラックシュートが宙を薙ぎ、モンスターは力任せに拘束を振り解くと、燃え盛る鉄板を頭上で大回転させていた。
「来ます、なぁ〜ん!」
 カリジラが慌てて警戒を促し、冒険者が咄嗟に身構えると同時に、渦巻く炎と高温の熱波が襲い掛かる。
 それは、周囲の冒険者を呑み込むと、彼等を容赦なく焼き尽くしていた。

●炎のガチンコバトル
 燃える世界の真ん中で、冒険者はただただ立ち尽くすのみ。
「ああっ、クレープの屋台がっ!」
「水風船が割れてます!」
 …………。
 前言撤回。
 モンスターの範囲攻撃に巻き込まれた屋台や出店の被害状況を確認し、冒険者が慌ただしく右往左往している。
 本人達もかなりの被害を被っているが、あんまり気にしている様子はない。
 とは言え、目の前にいる焼きそばモンスターを倒さなければ被害が拡がるのも事実だろう。
「よくも……」
「よくも……!」
『よくも……!!(×9+なぁ〜ん!!)』
 彼等は傷付いた身体でゆらりと立ち上がり、悠然とモンスターに向き直る。
 その目は、焼きそばモンスターに対する怒りで一杯だった。
 当然、怒りの矛先を向けられたモンスターも冒険者を迎え撃とうと身構えるが、ラーメンの繰り出したデンジャラススイングが焼きそばモンスターの巨体を吹き飛ばし、地面に叩き付ける。
「MENは腰が命!」
「私の後ろには、絶対に守らないといけない屋台(もの)があるから! これ以上、火の粉一粒も、通しはしません!」
 勝ち誇るラーメンに続くように、アムルがモンスターに向かってホーリースマッシュを叩き込んでいた。
「く……屋台は壊させはしない!」
 更に、シェルトの薔薇の剣戟が繰り出される。
 モンスターの体勢が崩れたところに、後方からエクストラ、カリジラ、セシリー、メレリラのエンブレムノヴァが次々と叩き込まれると、度重なる攻撃によりモンスターの身体は中程まで炭化していた。
 しかし、モンスターも残された触手を振り回し、冒険者に襲い掛かる。
 繰り出されたアツアツの触手がラーメンの身体を捉えると、力任せに締め上げ、高熱により焦がしていく。
「……くっ、やるのぅ。じゃけど、わしは追い詰められれば追い詰められるほど燃えるんじゃ!」
「いや、本当に燃えてますって……」
 モンスターの触手に絡め取られながらも、不敵な笑みを崩さないラーメンだが、実際に燃えている。
「と言うか、フンドシ一丁だと後がないよ!?」
 このままだと、女性陣の前であられもない格好にされてしまうのも時間の問題だろう。
 いやまあ、フンドシと言えども防具なので大丈夫かも知れないが、何というか危うい状況かも知れない。
 主に生命の。
「ラーメン様、今助けますわ!」
 アリシアが咄嗟に高らかな凱歌を奏でると、モンスターの触手に掴まったラーメンを解放する。
 キララは慈悲の聖槍を撃ち込み、モンスターを牽制していた。
 そこに、アリエーテが達人の一撃を叩き込んでいく。
 繰り出された剣先は、しかし、モンスターの身体を捉える事は出来ない。
 一瞬の隙を突き、モンスターが身体の中から取り出したのは二丁のコテである。
「……っ、拙い!」
 狙われているのは後衛だろうか。
 しかし、下手に回避すると後方にある屋台が危ない。
 何しろ、そこにあるのは縁日の女王、りんごあめだったりする。
 あのキラキラとした宝石のようなりんごあめが、必死に助けを求めているようで、引き下がるわけにはいかない。
「……させません」
 咄嗟に防御の姿勢を取るエクストラに、焼きそばモンスターの投げ放ったコテが突き刺さっていた。
 遠のく意識を必死に押し止めながら、彼女は再度、虹色に輝く巨大な火球を撃ち出していく。
 膨大な熱量にその身を焦がされ、それでもモンスターは動き続けていた。
 勝機を見出そうと、モンスターは燃え盛る鉄板を構える。
「また、あれを使う気でしょうか?」
「その前に……倒します!」
 しかし、そうはさせまいと、冒険者も渾身の力を込めて最後の攻撃を繰り出していた。
 次々と攻撃が叩き込まれるが、モンスターは倒れる気配がない。
 それどころか、頭上(?)で鉄板を回転させる動作に移ろうとしていた。
「飛距離と角度に注意なぁ〜ん」
 カリジラが何とか被害を最小限に食い止めようと、緑の突風を繰り出し、モンスターを広場の中央へと吹き飛ばす。
 次の瞬間、再度、モンスターの放った炎の波動が冒険者を呑み込んでいた。
 たまらず何人かの冒険者が倒れるが、踏み止まったアリシアは悪魔の炎を生み出し、叩き付けていく。
「魔性の焔はかなり効きましてよ」
「超必殺の地獄の業火を食らうんや〜! うちの屋台には絶対触らさせへんで〜!」
 デモニックフレイムに食らい付かれて悶えるモンスターに、セシリーの緑の業火が襲い掛かると、モンスターの身体を最後まで焼き尽くしていた。
「やっぱ、焼きそばは高火力で調理しないと駄目よね」
 炭の塊と化し、完全に動かなくなったモンスターを見下ろしながら、メレリラが小さく呟いている。
 いずれにせよ、夜店の平和は守られた。
 多少の被害はあったものの、祭りの進行には影響はないだろう。
「ああっ、拙者のぷりちーなしっぽがチリチリに!」
 毎日手入れをしている尻尾を焼かれて涙目になっているアリエーテはさておき。
 こうして、冒険者は無事に使命を全うし、再開される祭囃子の中、夜店の屋台へと繰り出すのだった。

●屋台の焼きそば腹一杯
「麺道って何でござるか?」
 とりあえずアツアツの焼きそばを食べて立ち直ったらしいアリエーテが、怪訝な表情で仲間に問いかける。
 しかし、彼等は応える術を持たない。
 麺道とは果てしなく遠く深く、そして長い存在である。
 それは、一朝一夕に語り尽くせるものではない。
 ……実際にあればの話だが。
「いや、あるんじゃ! わしは必ずや、麺道の極致へ辿り着いてみせる!」
 ラーメンが何やら燃えている。
「漢じゃのぅ。焼きそば、お前ぇは漢じゃ!」
 そう言って焼きそばをもしゃもしゃと頬張りながら、何やら思い付いたらしい。
 ラーメンはアツアツの焼きそばを平らげると、いそいそと何やら倒れたモンスターの元へと向かっていた。
 それを怪訝そうに見送りながら、メレリラは焼きそばを味わっている。
「屋台の焼きそばって、独特の味わいがあって好きなのよね」
 家庭や店では真似出来ないな、と感想を漏らしながら、彼女はアツアツの焼きそばを楽しんでいた。
 一方、セシリーは焼きそばを始めとして、たこ焼き、わたあめ、りんごあめ、イカ焼き、お好み焼き、焼き鳥とあるだけの屋台のメニューを制覇しようとしている。
「こうなったら、全部食べ尽くすんや〜!」
「あっ、りんごあめ良いなぁ〜ん。あっちにカルメ焼きとソース煎餅とフランクフルトの屋台があったなぁ〜ん」
「なに? どこや!」
 カリジラの言葉を聞き付け、セシリーは慌てて駆け出していた。
 何しろ、広場は屋台が入り組んでいるので迷いやすい。
 広場では流星踊りなるダンスが行われているが、それには目もくれず、セシリーは一目散に駆けていく。
 それを見送りながら、カリジラはカレー煎餅をパリンと囓るのだった。
 一方、カップルで夜店を回っている冒険者もいる。
「アンズ飴とか無いかな〜♪」
「……あっちを探してみますか?」
 はしゃぐキララの隣では、七天狐・リョウマ(a37240)がエスコートしていた。
 二人とも、浴衣に着替えて屋台を楽しんでいる。
 それとは対照的に、アリシアは戦闘執事・サキト(a38399)が焼きそばの屋台で何やら作っているのを眺めているらしい。
「ところでサキト、貴方は何をしてらっしゃるのかしら?」
「セイレーン領名物、塩焼きそばを作っているのだ」
「そんな名物、聞いた事無いですわ。そもそも、執事服姿で焼きそばを作るなど……むむ、悔しいけれどさっぱりして美味しいですわ」
 等とやりとりをしている。
 ちなみに、彼女の片手には、出店を回ってきたのか金魚の入った小さな鉢が吊り下げられていた。
 ちなみに、金魚すくいで自力で取ったのかは不明である。
(たぶん、サービスだ)
「へえ、手際が良いね……」
 シェルトは何やら屋台のおじさんに美味しい焼きそばを焼くコツを教わっていた。
 自分でもやってみるが、やはり、その道のプロには敵いそうにない。
「……ふ、ふぉっふ?」
 わたあめを食べながら何やらもごもごと異常事態を察知するのは、他にも色々な食べ物を手にしたアムルである。
 彼女の視線の先には、モンスターの鉄板を利用して焼きそばを焼くラーメンの姿があった。
 ……いや。
「あれは……ラーメンですね」
 何やら屋台のメニューを両手に抱えたエクストラが言うが、確かに、そこで焼かれているのは焼きそばの麺ではない、間違いなくラーメンである。
 ソースの代わりに絡めているのは、濃厚なとんこつスープだろうか。
「わしの作った焼きラーメン、一丁どうじゃ!?」
「そんなの作ってたの……?」
 とんこつスープの焦げる香ばしい匂いを嗅ぎ付けて、メレリラが呆れ顔でやってくる。
 しかし、この匂いはたまらない。
 既に食しているエレクトラにつられて実際に食べてみると、濃厚な旨味が口いっぱいに広がっていく。
 一般客も押し寄せて、ひょっとすると新しい名物になるかも知れない。
 そんなこんなで、祭りの夜は滞りなく過ぎていく。
 冒険者は香ばしいソース焼きそばや、ラーメンの作った新メニューの思い出を胸に、それぞれの家路に就くのだった――。


マスター:内海直人 紹介ページ
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参加者:10人
作成日:2007/07/17
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
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