星砂の広がる浜辺で……



<オープニング>


「星の砂って知ってる?」
 護りの幻影姫・キラ(a90153)は酒場を訪れるなり、花車の霊査士・ヴァルナ(a90183)へと訊ねた。
「聞いたことくらいは……えと、星みたいな形、してるんだったっけ?」
 突然訊ねられたヴァルナは記憶を頼りに、そう答えた。
「そうそう。それでね、その星砂がある浜辺があるって聞いたの」
 地図を広げながら、この辺りだよ、とキラは言う。
「海水浴には流石に早いけれど、星狩りなんてどうかなって思ってね。足元にも夜空にも星が広がってるって素敵じゃないかな?」
「確かに、いいね。きっと綺麗だと思うよ」
 キラの言葉に、ヴァルナも頷きながら答えた。
「それじゃあ、皆に声かけてみるね」
 ヴァルナの返事に、キラは早速、行動に出るのであった。

マスター:暁ゆか 紹介ページ
 こんにちは、暁ゆかです。
 星凛祭に合わせて、星関連のイベントシナリオをば。

 場所は星砂の広がる海岸、時間は夕暮れから夜にかけて、です。
 見渡す限り広い浜辺ではありますが、岩場もあったりします。二人きり等でゆっくりしたいという方はそちらもオススメです。
 どなたかとご一緒する場合はその人の名前とIDを添えてください。お願いします。

 NPCは三人とも赴く予定です。
 気が向いたら、声をかけてあげてください。

 では、皆さんの参加、お待ちしています。

参加者
NPC:護りの幻影姫・キラ(a90153)



<リプレイ>

●星砂の広がる浜辺で……
 夜空には満天の星。
 足元には白い砂が広がり、所々に星のような形をした砂が混じっている。
 そんな海岸に、護りの幻影姫・キラ(a90153)を初め、幾人かの冒険者たちが星に包まれるひと時を過ごしに訪れていた。

「レイメイさん、一緒に星を見ませんか?」
 蒼流の舞闘士・ニルギン(a55447)は、作ってきたお弁当を手に、尻尾をゆらゆらさせながら、星の砂を一生懸命探そうとしていたレイメイへと思い切って声をかけた。
「いいなぁ〜んよ」
 振り向いたレイメイは、にこりと笑って、その誘いに乗る。
「特に星が綺麗に見える場所とかあればいいんですけれど、あっちの岩場とか行ってみますか?」
 二人っきりで見ることが出来たらと思ったニルギンは、岩場の方へと誘い、足を向けた。
 岩場で星を見ながら、ニルギン手製の弁当を二人で食べる。
「流れ星なぁ〜ん」
 ふと見上げた先で、星が流れたのをレイメイが見つけた。二人は咄嗟に、流れ星に願いかける。
「ニルギンさんは、何てお願いしたなぁん?」
 願い終わって顔を上げると、レイメイはニルギンへと訊ねた。
「願い事は叶うまで黙っていると良いそうですよ」
 持って来ていた寓話集を開きながら、ニルギンは答える。
「そうなのかなぁ〜ん」
「そうです。だから、私の願い事ももちろん秘密です」
 聞きだせず残念そうにするレイメイに、ニルギンはくすりと笑みを零しながら答えた。

 静かな波の音が、守護者・ガルスタ(a32308)の耳に心地よく届く。潮の香りが鼻をくすぐり、ふと見上げた空には満天の星が輝く。真っ直ぐ海の方を見つめるとその星空と静かな夜の海が目に入ってきた。周りを見渡すと、仲間たちの姿があり、皆、思い思いのときを過ごしている。
(「元気でやっているかな、アレは。どこかで同じように星を眺めているのだろうか?」)
 心安らいでいたガルスタは、傍に妻が居ないことを惜しみながら、彼女のことを思い出していた。
(「星が美しく輝くのは、人の願いを灯しているから。人の希望が星々を輝かせるという話もある。……で、あるのならば、私の想いも灯せるだろうか」)
 そう思いながら星空を見上げる。
「と為れば……なんか、腹が減ったな」
 そして、ぽつりと呟くとガルスタは、食を求めて浜辺を歩き始めた。

 護りの幻影姫・キラ(a90153)に想いの歌い手・ラジスラヴァ(a00451)、終色の薔薇・ラゼンシア(a29324)は砂浜をのんびりと散策していた。受けた依頼の話や日常のことなど、時折他愛のない話を交えながら、静かに過ごす。
 そこへ絶対的強さを求める者・ハンムール(a65171)が合流してきた。自身の服装に似たような服装をしているキラに持ち、更に一人で居るのもつまらないからと言って。
「あの、武人のノエルといいます。よろしくお願いします」
 ハンムールも加わって、四人で話していると見習い剣士・ノエル(a64202)がキラへと声をかけてきた。
「ちょっといいですか?」
「よろしくね。えっと、何かな?」
 挨拶の後、訊ねようとするノエルにキラは首を傾げて、質問の内容を待つ。
「あの、キラさんどうして冒険者になったのですか?」
「どうして、か。何でそんなことを?」
 どうしてだったか思い出しつつ、そのような質問をしてきた理由をキラは逆に訊ねてみた。
「私は、冒険者になってまだそんなに経っていませんし、皆さんは冒険者になった理由があると思うので」
「そう言われると、何となく、だなんて答えられないね」
 答えたノエルにキラは苦笑いを浮かべつつ語り始める。
「自分の力を伸ばせるとこまで伸ばしたい、そしてその力を困っている誰かのために使いたいって思ったから、かな。これと言って深い理由とかはないんだよ」
「そうだったんですか」
 理由を聞いて呟くノエルに、キラは「あなたは?」と訊ね返す。
「私は両親が死んでしまったので、独りで生きていくために冒険者になったのです」
「そっか……」
 ノエルの理由を聞いたキラは一瞬表情を曇らせた。
「それじゃあ、星狩りしてきますね。質問に答えてくれて有難う御座いました」
 そう言って浜辺を歩き出すノエルの姿に、キラは微笑んで彼女を見送り、しばし二人の様子をただ見てくれていた他の三人と共に、また他愛もない話をしながら星狩りを再開するのであった。

「お星さま、本当に綺麗ですわ」
 岩場の近くにて、星空を見上げた紅色の剣術士・アムール(a47706)は、呟いた。
「星凛祭ですけど、きょうも彼氏は用事ですし……」
 想いを寄せ合う者と一緒の刻を過ごす祭りが近いのに、今日という日を共に過ごすことの出来ない恋人のことを思い、アムールはひとつ、ため息を漏らした。
(「星の砂、お土産にするのもいいですわね」)
 持ってきた小さな小瓶と浜辺の方を見て、アムールはふと思う。
 そして、しばし星空を眺めた後、彼女は浜辺に向かい、星の砂をその小瓶へと集め始めた。

「星の砂か……せっかくだ。記念として小瓶に詰めていこう」
「はい」
 闇を斬り裂く蒼刃・クロス(a33237)の提案に、幻影魔女は永遠に戦士を愛す・シルヴィア(a32018)ははしゃぎながら、持って来たガラスの小瓶にはしゃぎながら星の砂を集める。
 星の砂を集め終わると、岩場の方に移動して二人で並んで星空を眺める。
「やはり夜空はいいな。星がとても綺麗だ……」
 クロスがぽつりと呟く。
「そうね。ほんと、星がきれい……」
 シルヴィアも頷きながら、その呟きに応えた。
(「ああ、こうやってクロスさんと一緒に星を眺めることが出来るなんて幸せだわ……」)
 シルヴィアはそう思いながら幸せそうに微笑む。そして、そっとクロスへと寄り添った。
(「シルヴィアの方がやはり綺麗……だな」)
 寄り添ってきたシルヴィアの横顔を見て、そんなことを思ったクロスは照れ、薄っすらと頬を赤く染める。
「流れ星か……」
 ふいに流れた星に気付いてクロスが呟く。その流れ星を見て、シルヴィアは熱心に願い事をする。
「ん、熱心に何か願っていたようだが、いったい何を願ったのだ?」
 願い終わって顔を上げたシルヴィアに、クロスは訊ねる。
「え、えっと……」
「教えてくれないのか?」
 口ごもるシルヴィアに、クロスは更に訊ねた。
「……」
 更に訊ねられ、シルヴィアも観念したのか、クロスの耳元に口を寄せるとそっと囁いた。
「……クロスさんは?」
「私か? これからもずっとシルヴィアと幸せな時間を過ごしていけるように、とな」
 囁いた後、訊ね返すシルヴィアにクロスはさらりと答える。
「そうね……ずっとずっと」
 クロスの願い事に照れたシルヴィアは、頬を紅潮させながら、静かに呟いた。

 星空の下、裏方活動家・シャーリー(a05234)は癒しのメイド・アリス(a10251)と二人、夜の浜辺を散策していた。
 ふと砂浜に座り込み、二人は星の砂を探して、拾い集める。
「ねえアリス、星……綺麗ね……」
 空の星、そして足元の星を見ながらシャーリーが呟いた。
「そうですね……」
 アリスもそれぞれの星を見て、頷きながら答える。彼女の先の大戦で、シャーリーが最も危険な任務に参加していたことを思い出した。そして思わず、軽く肩を震わせる。
(「あのときもし……だったら、こうして一緒に星を眺めることもできなかったんですね……」)
「シャーリーさん」
「うん?」
 アリスの呼び声に、星の砂を集めていたシャーリーが顔を上げる。
「無事に帰ってきてくださり、ありがとうございます」
 改めて感謝を述べるアリスに、シャーリーは「うん」と一つ頷いた。
「この星の砂、小瓶に入れて持ち帰ろうね」
「はい」
 二人で過ごしたささやかで貴重な時間を忘れないために、ずっと思い出に残すためにと、シャーリーとアリスは持ち寄った揃いの小瓶を取り出して、集めた星の砂を入れた。

 静かな刻はゆっくりと、そして確実に過ぎていく。
 夜半過ぎ。思い思いに浜辺での刻を過ごした冒険者たちは、その場を後にするのだった。


終。


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参加者:11人
作成日:2007/07/09
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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癒しのメイド・アリス(a10251)  2010年06月30日 22時  通報
シャーリーさんと過ごしたこの時のこと、星の砂と一緒にいつまでも憶えていますよ……