アマーの川に橋を



<オープニング>


●引き裂かれた男女
「今回は、壊れた橋の修復作業に向かっていただきます」
 真実求む霊査士・ゼロ(a90250)の言葉に怪訝な視線を向ける冒険者たち、普通ならそれは冒険者が赴くほどのことでは無いような気がするのだが……霊査士が話すのならば相応の理由があるのだろう。それを察しているのか冒険者たちはゼロの話を黙って聞いていた。
「その川は地元ではアマーの川と呼ばれており、先日大雨があり老朽化していた橋が壊れてしまったそうなのです。川を挟んで両側に村があり、そこから修復に村人達も向かったそうなのですが……そこには熊グドンがうろついていたそうです」
 大水で魚の位置でも変わったのだろうか、熊グドンが現れた原因は不明だが、何にせよそいつらのせいで川に近づけず、修復作業が出来ないのだという。
「そして困ったことに、その危険な場所に一組の男女が近づいていると情報が入っています」
 何だってそんな場所にと尋ねる冒険者たちに、ゼロは一つ溜め息を吐いた。
「二人はそれぞれの村に住む恋人同士だそうなのですが、二人で一緒にいるとあまりに仲が良すぎる為に仕事が手につかなくなってしまうそうなのです。それ故に別々の村に住み、仕事が終わった夕方、一日一度だけ橋の上で会っていたのだといいます」
 男はノソリン牧場の管理を、女は洋服作りの仕事をしているそうで、一日会えるその時を励みに頑張っているのだという。
「ところがアマーの川の橋が壊れ、会えない日々が続き……遂に二人とも川へ出かけてしまったということです」
 何とか二人を助けつつ、熊グドンを退治し、橋を直して欲しいとゼロは言う。
「熊グドンは30ほど、ピルグリムグドンは居ない様子ですが……二人の身も心配ですので注意してください」
 ゼロはそう言って、冒険者たちに一礼を送るのだった。

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参加者
蒼き戦乙女・アリア(a37121)
加護を齎す黄金色の聖女・リリーナ(a39659)
朱鴉・シンザ(a45473)
鋼玉・シンク(a56940)
十六夜の月光華・レマイン(a63653)
樹霊・シフィル(a64372)
其の瞬間に総てを賭す・フィエル(a65023)
闘鞭使い・ブラド(a65791)
水琴の波紋・アルーン(a66163)



<リプレイ>

●濁流を挟んで
 ざぁざぁと激しい水音を立てて濁った水が流れてゆく。見るからに危険そうなこの川の周辺に、何人かの冒険者たちが歩いていた。一つはこの近辺に現れた熊グドンの群れを討伐する為。そしてもう一つは……、
「ふふふ、何とも健気な恋でございますわ。ぜひとも成就いただきたいものですわ」
 笑みを含ませながら樹霊・シフィル(a64372)が呟くように、一つの恋を助けること……というのも恋人に会う為に一組の男女が、濁流と熊グドンとで危険なこの川へと向かってしまったらしいのだ。そのため冒険者たちはその保護も目的として追加されたことになっている。
「仲が良すぎて会うのを制限しているとは……妾に言わせれば馬鹿者どもじゃ」
 ふぅ、と息を吐きながら言う水琴の波紋・アルーン(a66163)だが、それでもまずは安全を確保することだと周囲の痕跡を探ってゆく。草が踏み倒されてはいないか、足跡が無いか……それは熊グドンに対しての警戒も含んでいた。
「さァて……先にこいつらの相手か」
 そうしてしばらく進むうちに朱鴉・シンザ(a45473)が先を見据えて駆け出し、スーパースポットライトを輝かせる! 見れば川岸に何体かの熊グドンがうろついており、眩い輝きに何体かはビクンと身を震わせ、また何体かがシンザに注目する。
「前のグドンを引き付けます……」
 シンザの後を追いながら旋風拳脚・フィエル(a65023)は殺気を捨てた無風の構えを取る。しかし今の所熊グドンたちは麻痺しているかシンザに注目しており、フィエルの方に向かおうとしている個体は居なかった。闘鞭使い・ブラド(a65791)もグドンを追い払おうとするが、注目のせいでシンザの方に群がるように集まってゆく。ぶん、ぶんと熊グドンの爪が幾つも振り下ろされていった。
「さぁて、一仕事すっか!」
 一撃を避け、或いは巨大剣で弾くシンザ。びっと一発が頬を掠めて血が流れ出すが構わずに、デストロイブレードを振り下ろす!
 どぉん!
 大地を揺るがすかのような一撃が目前の熊グドンを打ち据え、砕く。だがデストロイブレード一撃で倒せるのは一体のみなので、周囲に群がるグドンたちから一撃、また一撃とシンザに傷が刻まれていった。
「なるべく多くの敵を」
 旋空脚で攻撃を仕掛けるフィエルだが、熊グドンはそれだけでは倒れずに振り返る。そのまま鋭い爪でフィエルの腕を払い、傷と痛みを返してきた。フィエルは痛みに耐えて大地を踏み締め、体勢を崩さぬように着地するのだった。
 殺さずに追い払うよう鞭を振るうブラドだが、熊グドンは容赦なく攻撃を仕掛けてくる。その鞭に怯まずに詰め寄って腕を振り下ろし、ブラドを殴りつけてくる。がづんと頭部に固い衝撃が走り、生暖かい血が垂れ落ちてきた。痛みに耐えながらブラドはそれが目に入らぬように拭うのだった。

 男性側の岸で冒険者たちと熊グドンたちの戦いが始まった頃、女性側の岸では問題の彼女の姿が発見されていた。川から少し離れた岩陰に隠れ、その様子を窺っていたのである。
「グドンが居て危険だっていうのに……もう」
 女性の肩に手を置いて蒼き戦乙女・アリア(a37121)が呟く。同時に『君を守ると誓う』も発動させたようだった。
「何はともあれ、無事でなによりです」
 こんな行動は感心できないことだがと空廻る緋陽・シンク(a56940)は言いつつ、十六夜の月光華・レマイン(a63653)へと視線を送る。レマインはそれを受けてこくりと頷いた。
「あとはグドン退治ですね」
 シンクとレマインが走り、その後を善なる者に女神の祝福を・リリーナ(a39659)が追う。アリアは女性を守るように立ちながらその背を見送っていった。
「降り注ぐ光よ!」
 金属杖を振り抜き紋章を描き、リリーナから光が放たれる! エンブレムシャワーは幾筋もの輝きとなって次々に熊グドンたちを貫いていった。
「お前らの相手はこっちだ!」
 光の雨が降り注ぐ中、飛び込んだシンクが剣を抜いた。両手に携えた刃から流れるような斬撃を繰り出してゆく。
 ざざざざっ!
 シンクの流水撃はリリーナのエンブレムシャワーでダメージを受けていた熊グドンたちを斬り倒していった。しかし運良くその一撃をかわした熊グドンが腕を振り上げ襲い掛かってくる!
「させません!」
 闘気を込めたレマインのデストロイブレードがそのグドンを殴り倒す。アビリティは加減など出来ないが、女性は既に保護しているし単体を対象としたアビリティなので周囲を巻き込む心配はとりあえず無い。
「さて……と」
 前方で戦う仲間達の背を見つめながら、万一に備えてアリアは女性の傍で構えを取るのだった。

「……そういう訳で、妾らが訪れたということじゃ」
 アルーンが語る相手は問題の男性だった。グドンとの戦闘を仲間達に任せて捜索を続けていたアルーンとシフィルは、木々の密集した茂みで隠れていた男性を発見したのだ。
「今は動かない方がよろしいでしょうか?」
 小さく首を傾げるシフィル。というのも、グドンから逃げる時のものか男性は足を挫いていたのである。このまま同行させてグドンと戦う仲間たちの元へ連れて行っていいものかどうか……。
 動けないなら、熊グドンの控える川岸の方に向かうこともないだろう。ならば今は此処に居てもらって、熊グドンがこちらに来ないようにすればいい。
 アルーンとシフィルは頷いて、仲間達の援護に踵を返すのだった。

「邪魔だ!」
 紅蓮の咆哮で一喝し、シンザは群がる熊グドンたちを立ち竦ませ麻痺させる。何とか攻撃は止んだものの、これではダメージは与えられずグドンの数は減らない。
「攻撃すら当てられませんか……」
 スーパースポットライトの注目効果も終わってきたようで、無風の構えを取るフィエルにも攻撃が向かい始めていた。振り下ろされるグドンの爪を見極めてかわし、それを衝撃に変えて相手に返す。しかしそれは熊グドンの攻撃力なので、中々それだけで倒れるということは無さそうであった。
「っ……!?」
 そして無風の構えを取っている間は、自分が最も苦手とする能力で相手の攻撃を受けなければならない。その為に何発かがフィエルの肩にめり込み、腹を薙ぎ払ってゆく。
 相手が熊グドンとは言え、体力を回復させるアビリティを使える者が居ない現状ではダメージは蓄積してゆくばかり。一気に倒そうにも複数の敵を攻撃できるアビリティを使用できる者は無く、一体ずつ倒してゆくしかない。
 敗北とまではいかないだろうが、被害と時間がそれなりに掛かりそうな流れが見え始めていた。そんな中、肩で息をしながら身構えるブラドの目前で熊グドンが両腕を振り上げ……びくりと動きを止める。
「少し待たせたの」
 見ればその影を闇色の矢が射抜いて大地に繋ぎ止めている。影縫いの矢を放ったのはアルーン!
「男性はお待ちいただいておりますので、こちらを先に解決致しましょう」
 言いながらシフィルはヒーリングウェーブの柔らかな光を振り撒き、傷付いた仲間達のダメージを癒してゆくのだった。
「おうよ熊公、調子に乗んな!」
 二人の到着で回復の心配も無くなった。ならば思う存分攻撃に転じられるとシンザは巨大剣『剣虎』を振り上げる!
「はぁぁっ!」
 シンザは闘気を込めて輝く刀身を熊グドンの肩口へとぶち込み、爆裂させた! 更にその勢いを殺さず砕いた相手の居た場所を突破して突き進み、奥に居た別の一体へと刃を向けて迫ってゆく。
「集めすぎましたかな……」
 そして今までシンザが居た場所にはフィエルが滑り込み、無風の構えを取り直す。そうしてシンザへの追撃を防ぐと共に、中央に位置して無風の構えの効果を活かそうというのだ。視界の端で動いたグドンの一撃を紙一重でかわし、衝撃波を反射する。そのダメージで弱ってきた固体には旋空脚を繰り出してトドメを刺し、少しずつではあるが確実にグドンの数は減っていった。
「邪魔、でございますわ」
 シフィルの放つ緑の業火が焼き尽くし、アルーンの矢が貫く。力を合わせた冒険者たちを前に、熊グドンたちは成す術なく倒れてゆくのだった。

 女性側の岸でも、戦いは終わりに近づいていた。
「こっちに来るな!」
 たまに前で戦う冒険者たちを抜けてアリアと女性の方にグドンが近づいてくることもあったが……『たまに』の話。グランスティードの力を乗せたアリアのホーリースマッシュで十分に迎撃できるペースだった。
 ちらりと女性の様子を確認しつつ、アリアは戦況をじっと窺う。もしもの事があれば油断してましたでは済まないのだから。
「そこだっ!」
 ちゃき、と刃を寝かせて斬撃を繰り出すシンク。苦し紛れに放たれたグドンの爪を片方の剣で弾き、受け流して体勢を乱す。
「お願いします」
 体勢の乱れたそのグドンをレマインのデストロイブレードが打ち据え、闘気の爆発を叩きこむ。そいつが倒れたタイミングで、シンクとレマインは地を蹴って左右に分かれた。
「我が力よ、光を成して貫け!」
 開いたスペースをリリーナのエンブレムシャワーが駆け抜ける! 幾筋もの光がグドンたちを貫き……見事にこの場の個体は全滅するのであった。

●やっと会えた
「お気持ちは察しますが、良く考えて動かねば。お二人の身に何かあれば、会えないどころの騒ぎではないのだから……」
 今回のことで少々キツ目に注意するシンク。反省した様子の女性にふぅ、と小さく息をついた。
「それでは、フワリンに乗って川を渡って頂きますわ」
 リリーナはそう言ってどこでもフワリンを発動させる。男性が怪我をして動けないということもあって、女性が男性側の岸へと渡ることになったのだ。勿論、冒険者たちの合流と報告の意味もある。

「心配、かけたね……」
「うぅん、私こそ……」
 そうして出会った二人はひしと抱き合い。お互いの身を案じていたと言葉を紡いでゆく。そんな様子をリリーナはうっとりと見つめていた。
「それにしても……そなた達、いつまでこの状態を続ける気じゃ?」
 アルーンが口を開く。『この状態』とは二人が別々の村に住んでいる現状のことである。
「今日のことが良い教訓ではないか、大切な者が傍に居ないことがどういうことか……考えておくのじゃな」
 そう言ってアルーンは目を伏せた。ここには居ない、誰かのことを思い出したのかもしれないが……それは口にはせずに胸の中だけに留め置いたのかもしれない。その言葉を受けて二人も何か感じることがあったのか、ぺこりと頭を下げるのだった。

「それじゃあ、橋の修理ね」
 このまま橋が落ちた状態では困るだろうと言うアリアに一同は頷き、修理用の材料を村から集めて運び出してくる。
「進め、でございますわ」
 シフィルは土塊の下僕を召喚して運搬を手伝わせ、レマインはどこでもフワリンの召喚に取りかかっていた。
「最後の仕上げですので、こちらも気合いれて頑張りますっ」
 ぐっと力強く言いながら橋の土台となる支柱を川に打ち立ててゆく。グドンが居なくなったことで村人達も何人か集まっており、皆で協力して作業は行われていった。
「よし、力仕事なら任せてくれ」
 シンザも作業を早く終わらせてしまおうと、材木運びから土台の支えまで次々に動いていた。その働きぶりに村人達からも賞賛の声が上がるほどだ。
 こうして着々と橋が作られてゆく中、ブラドはグドンが出現した原因の調査に取りかかろうと思っていた。しかしながら、どうやって調査するのか分からない。少し考えてみても川の増水によってグドンが餌としていた魚の位置が変わったから、ならば川を調べないといけないし、元々グドンが居た場所で何かがあった、ならばまずグドンが何処から来たのか痕跡を追うこと、そしてその場所がどうなっているかを調べる必要がある。
 調査するなら何を、どうやって。対処するにも何を、どうやって? 結果も大事だが、行動・過程が無ければ動きようが無いのもまた事実。どうしようもないかとブラドは溜め息を吐くのだった。

 そうして橋の修復も完了し、双方の村人達は良かった良かったと喜び合っていた。そんな中、リリーナは倒れた熊グドンたちを少し離れた場所へと埋葬していた。
「ごめんなさい。次に出会う彼等とは良き仲間となれますよう……」
 平穏を守るために、犠牲となり大地に還った命達にリリーナは白い花を添えて祈りを捧げてゆく。

「兎に角、これで元通りってことだ」
 頷くシンザを始め冒険者たちは礼を述べる男女と村人達に見送られ、アマーの川の橋を後にするのだった。

 (おわり)


マスター:零風堂 紹介ページ
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参加者:9人
作成日:2007/07/08
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