菌糸の森のキノコキング



<オープニング>


「貴方達の活躍で」
「キノコテラーの脅威は去りました」
「しかし……嗚呼、何と言うことでしょう」
「ついに、ついに奴が……」
「「キノコキングが現れたのです!!」」
 ヒトの霊査士・キャロット(a90211)と、紫猫の霊査士・アムネリア(a90272)が膝をついてお互いの手を握り憂いを秘めた瞳でウルウルと見上げつつ、何となく厳かにオープニングを飾ってみる。
「……えーっと、つまりキノコキングを倒せと?」
 そんな二人に対して、元々双子じゃないし、そもそも普段と口調違うし……と色々突っ込みどころ散りすぎて突っ込むことを諦めた、悠久の誘い・メルフィナ(a90240)がいきなり確信をつくのも少なからず無理の無いことであろう。
「うむ、今回の敵はキノコキング」
「キングって言うだけあってとっても強いんだ!」
 二人は立ち上がってパンパンと膝についていた砂を払うと、普段の口調で話し始めた。随分なでこぼこコンビであるが、何故か話をするタイミングは息がぴったりだ。きっと予め打ち合わせてるに違いない。
「……キャロットまで出てきてるって事は、何か裏があったりする?」
 と、ここでメルフィナは素朴な疑問を口にする。経験上アムネリアとキャロットがそろう場合、大抵ろくな事は無いのだ。
「ん、裏は無いけど何となく嫌なものを感じる」
「だから気をつけて欲しいんだよ。それと、今回の敵は今までのキノコとは比べ物にならないくらいに強いんだ」
 だが、アムネリアはあっさりと否定するし、キャロットは至って真面目な様子だ。どうやら本人達に自覚はないらしい。
「キノコキングの能力は、キングオーラで体力を大きく回復させる能力」
「そして、キングナックルで目に見える全てを爆砕するんだよ! あと、何より怖いのが……」
「正面からのあらゆる攻撃を跳ね返す、キングカウンター……いや、本気で言ってるんだぞ? 誇張とかないぞ?」
 何処か呆れた目で見つめるメルフィナに必死になって手を振るアムネリアだが、名前だけ聞いていると非常に馬鹿らしい。しかし、内容を考えれば楽観できる相手ではないだろう、対応を誤れば確実に此方がやられるような相手だ。
「キノコキングは菌糸の森の奥、テラーを倒した洞窟を更に抜けた場所に居る」
「皆頑張ってね。油断しちゃ駄目なんだよ!」
「見た目は、頭に草の蔦のようなものを巻いていて、金ぴかだからすぐに解る……それじゃ、宜しくな」
 アムネリアとキャロットは交互に台詞を並べると、冒険者達を見送るのだった。

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参加者
徹夜明け紅茶王子・デュラシア(a09224)
そよ風が草原をなでるように・カヅチ(a10536)
番紅花の葬送姫・ファムト(a16709)
暴れノソリン・タニア(a19371)
愛と正義と黒バニーの使者・アリス(a20132)
漆黒の黄金忍者・ケンハ(a29915)
彩士・リィ(a31270)
ノソ・リン(a50852)
NPC:悠久の誘い・メルフィナ(a90240)



<リプレイ>

 洞窟を抜けるとそこは相変わらずのジメジメした森の中……周囲には緑が溢れ、いたる所に生えるキノコ達が口を開くように胞子を湿った空気の中へと吐き出す。
 空中を泳ぐようにふわふわと漂うそれらを暫しの間追っていた、そよ風が草原をなでるように・カヅチ(a10536)は正面に視線を戻し、
「アムネリアさんってこういう強敵の時の怪獣紹介程ノリノリですよね」
 過去の紫色の霊査士を思い出しながら、何処か感慨深げに呟く。緊張を和らげようとしているのだと好意的な解釈も出来るが……どう考えても素だろう。
「まぁまぁ、それよりも面白モンスター退治も久しぶりじゃな」
 う〜ん、と考え込んでるカヅチに、番紅花の葬送姫・ファムト(a16709)は声をかけつつ、じゅるりと口元を拭う。そんなファムトの様子に、じゅるりって何だ、それ以前にモンスターじゃなくて怪獣だろうと思ったカヅチだったが考えても仕方が無いかと思い直し、先へ進むことに集中する。
「キノコキング……親しみやすい名前だわ」
 キノコキングを食べる気満々なファムトの様子に同調してキノコキングの事を考えてみた、疑惑のヅラ紅茶王子・デュラシア(a09224)が唸る。キノコキング……言われてみれば、なんのひねりも無い名前で馴染み易い。
「元々キノコなんか嫌いだが金ぴかに惹かれて参加しちまった」
 キノコキングか……と暫し考え、漆黒の黄金忍者・ケンハ(a29915)は溜息をつく……キノコキングは金ぴかだと言われてキノコは嫌いなのに対抗意識で参加してしまったと。
「妾もキノコが苦手なのじゃ」
 だが、そんなケンハとは逆に幼い頃に見た毒々しいキノコのせいでキノコが苦手な、彩士・リィ(a31270)は、むしろキングを倒すことによってキノコ嫌いを克服してみせるのじゃ! と意気揚々と握りこぶしを作る……キノコ嫌い同士でも抱える想いは色々なようだ。
「キノコの王様ともなると倒すと巨大化するのでしょうか……?」
 そんなキノコ嫌いの二人の決意は他所に、愛と正義と黒バニーの使者・アリス(a20132)はキノコキングを倒した後に何かあるのでは無いかと考えるが……それは倒してみないと解らない事だろう。
「たかがキノコ。されどキノコよ! 気ぃ抜かずに行かなくちゃねぇ」
 三者三様なアリス達の様子にデュラシアが兎に角頑張って倒さなくっちゃねぇと纏めると、リィ達は力強く頷くのだった。

(「植物怪獣がうごめく様になったし……このキノコキングなぁ〜ん」)
 意気揚々と進むファムト達の背中を見つめて、暴れノソリン・タニア(a19371)は一人思考をめぐらせる……ここ最近の植物怪獣達の動きは明らかに異常だ、ワイルドファイアで何かが起こっているのだろうか? まさか七大怪獣の影響を受けて……と、そこまで考えたところで何時の間にか足をとめてしまっていた自分をカヅチ達が待っている姿が目に入った。
 タニアは一つ大きく息を吐くと、仲間達の元へ歩み始める。
 ――この先に何があるとしても、かつて多くの戦いを切り抜けた仲間たちと共に在るのならば必ず切り抜けられると信じて……。

 一行はさらに変わり映えのしない景色の中を進んでゆく……と、不意にその変わり映えしない景色が一変した。
 薄暗い森の中に在ってその場所だけ青々とする空が良く見え、さらに地面に薄く張った水は空を映して青色の光を跳ね返す……そして、雲に隠されていた太陽がその姿を現せば、風に揺らめく水面は黄金色に輝き――
「あれがキノコキングですね。まさにキングあやかりたいですね」
 水面からの反射すらも自らの輝きと変える程に金ぴかな大きな金色のキノコが其処にたたずんでいた。カヅチが何にあやかりたいのかは不明だが、黄金を纏う姿は正に王者の風格。
「……見つかってしまったようじゃの」
 自分の肩に手を当て守護の誓いを口にするカヅチに軽く礼を述べ、ファムトはズシンズシンと重い音を立てながら近づいてくるキノコキングから視線を離さずに自らの体に黒い炎を纏わせてゆく。
「ばれたのならば仕方が無い、始めるぞ!」
 先手を取って戦いの準備をする時間があればと思っていたケンハであったが、取れなかったものは仕方が無い。バシャバシャと地表の水を弾きながらキノコキングに向かって走り始める。
「散開するわよ!」
 そして、ケンハの動きに併せるようにデュラシア達は予め決めていた通りにキノコキングを取り囲む陣形を作り始め――ケンハの頭部が光を放つのとほぼ同時に放たれたキノコキングの拳が、ほぼ真上からケンハの体に振り下ろされて爆発する!
 ズガァ! と地面が抉れ衝撃が水面を弾いて舞い上げらた水滴が雨のように降り注ぐ……が、風に踊る桜花を彫った巨大剣を担ぐように振りかぶったリィは臆すること無く、水滴の中を突き進むとキノコキングの真後ろから闘気を極限まで凝縮した一撃を叩き込む! 巻き起こった爆風が水に濡れた彼女の小さな羽を揺らし、キノコキングの背中に傷を残す。そして爆風が止まぬうちに左側からタニアが拳を打ち付けると、キノコキングの体は紅蓮の魔炎と青い魔氷に蝕まれ始めた。
「ユユはあっちに」
 ケンハが囮になったことを確認した、銀花小花・リン(a50852)はキノコキングの右側に回りこみ、天藍石の牙狩人・ユユ(a39253)に指示を与えながら自身は鉄をも切り裂く蹴りでキノコキングの足を抉る。
 さらにカヅチは、ユユが放った棘のついた矢を受けて血液と思わしき液体を流すキノコキングの足元に踏み込むと、舞大通連に稲妻の闘気を込めた抜き打ちの一撃を放つが……稲妻の残光を残すその強力な一撃を受けてなお、キノコキングが揺らめく様子すらない。
「どうした、この程度で俺を倒せると思っているのか!」
 ファムトの癒しの光を受け、さらに手に持った儀礼用長剣に精神を集中させて自身の傷を癒しながらケンハはキノコキングを挑発する。キノコキングに言葉が通じる訳ではないが、気分の問題だろう。
 ケンハの言葉に応じるようにキノコキングは両手を広げるように踏ん張ると……体に纏わりついていた魔氷などを振り払う! そしてそのままの勢いで再び拳を振り下ろして周囲に爆発を巻き起こすと、盾で防ごうとしたケンハの腕が弾かれ肩から赤いものが滴り、巻き込まれたファムトの顔が苦痛に歪む……が、ファムトはカヅチの誓いに守られていたおかげで何とか持ちこたえ、すぐさまデュラシアが仲間達を励ます力強い歌でその傷を回復させ、さらに、悠久の誘い・メルフィナ(a90240)がカヅチの傷をその歌で癒していった。
 拳を振り下ろしたままの姿勢のキノコキングに、アリスが全てを受け流す構えからRosenFaden―薔薇―と名付けた剛糸を素早く振るって剛糸を振るうと降り注ぐ水滴の空間を切り裂いて不可視の衝撃波がキノコキングの体を切り裂く!
 しかし、キノコキングは一向に倒れる様子が無い……リィはキノコキングと仲間達の様子を見比べて、自己回復で手一杯に見えるケンハに変わりリィが強大な力を注ぎ込んで鎧の形状を変えてゆく。
(「汝の力は何処で手に入れし力かなぁ〜ん」)
 リィが鎧の形状を変える間にタニアは伝えたい気持ちを拳に篭めてキノコキングに打ち込むが……帰ってきた意思は明確な敵意のみ。
 なぁ〜ん? と唸るタニアを他所に、リンは頭部から光を放ってキノコキングに注意をひきつける。ケンハの様子に囮役を交代したほうが良いと判断したのだろう。
 リンが放った光にグルリと方向を変えたキノコキングの体にユユの棘の付いた矢が再び突き刺さり、その体から液体が溢れ出すが――
「……長くなりそうだ」
 矢の効果から回復した上に、彼方此方に付けられた傷を見る見る回復させたキノコキングの様子に、リンは溜息をつくのだった。

 一進一退の攻防が続く……リンやケンハが防御力を強化した上にカウンター対策で正面から攻撃してこないタニア達に対して、キノコキングの攻撃は決め手に欠ける。
 一方、タニア達の攻撃はキノコキングを追い詰めるものの最後の一歩が届かない……せめて後一手、何か対策を打って置けば届いたかもしれない一歩だけれども……今更言っても後の祭りだろう。

 ――だが、どれだけ硬直状態が続いたとしても、何時かはどちらかに天秤は傾き始める。
「……むぅ」
 ファムトが幾度目かの回復の光を放ちケンハが意識を集中させて自分の傷を癒すが……次の瞬間炸裂したキノコキングの一撃は、今までに無い質量を持って襲い掛かる! 爆裂に抉られた地面は大きく窪み、地面に張っていた水は大きく空へと舞い上げられ……ザバザバと豪雨のように降り注ぐ水滴の中、ゆっくりとケンハとファムトが膝を折った。
 地表に薄く張った水に赤いものが混じる……目に入った水滴で歪んだ視界を頭を振って回復させると、リィは百花彩の極印を持つ手に闘気を篭めてあらん限りの力でキノコキングの足元に一撃を叩き込む。そして、それに併せるように放たれたアリスの不可視の衝撃波がリィが巻き起こした爆発の納まらないキノコキングの足を貫き、さらにタニアの拳が減り込むと――
 片足を切り取られ、滑り落ちるように体がずれたキノコキングは、ズシャァ……と鈍い音を立てて赤い水を弾きながら地面に倒れこんだ。
「そろそろ終わりにしましょう」
 カヅチはメルフィナの歌で肩代わりしていた傷を癒して、大きく息をつくと片足を失っても動きを止めることの無いキノコキングの後ろに立ち稲妻の闘気を這わせた舞大通連をその背中にねじ込む。
 もはや回復する力は残っていないのか、キノコキングはカヅチの蛮刀を捻じ込まれたままズルリズルリと体を引き摺って逃げようとするが、
「キノコは大人しく食われてりゃいいのよ、っとね」
 デュラシアが、道化をイメージした不思議な杖の先に巨大な火球を生み出す……火球は紋章筆記の力を吸収しさらに大きく成り、ミレナリィドールの力を得て七色に輝いて――
 火球は蔦の生えるキノコキングの頭を打ち砕き、キノコキングはその動きを止めたのだった。

「やれやれ、やっぱりキノコは嫌いだ。いっその事、この森に火を点けて根絶やしにしたいくらいだ」
 キノコキングの骸の傍で大きく溜息をついてケンハは愚痴る、受けた傷は決して浅いものでは無かったが愚痴を言う元気があるのなら大丈夫だろう。
「さて……キノコフルコースですか?」
「例によってキノコパーティ……かの?」
 ケンハの様子に大丈夫そうだなとカヅチは頷いてからキノコキングに向き直ると、ファムトも食べる気満々だった。此方も結構な怪我だったはずだが……食欲は何にも勝るのかもしれない。
「食べるんだ?」
 金ぴかはあんまり美味しそうじゃないなぁと思ったりするメルフィナを他所に、カヅチとファムトは早速キノコキングの体をばらし始め、
「……しかし規格外も良いところの大きさじゃのう」
「正に毒キノコだわ。あまり巨大な姿で見たくは無かったもんだねぇ」
 縦にみにょ〜んと割かれるキノコキングの哀れな末路を見守りつつ、リィとデュラシアがもっともな感想を漏らした。派手なキノコほど毒があるとは言ったものだが、派手さにおいてキノコキングの右に出るキノコは居ないだろう。そういった意味で正に毒キノコなのだ。
 その間にも段々楽しくなってきたらしいカヅチとファムトが勢いよくキノコキングを裂く、割く、削……微妙に何かに毒されているらしい。そんな二人が割くキノコキングからコロコロと硬いものが零れ落ちて――
「あれ? これは何でしょう?」
「……玉?」
 それを手に取ったアリスが首を傾げると、リンが横から覗き込む……片手で持てる位の大きさの濁った丸い玉……軽く小突いてみるとコンコンと中身の詰まった硬い音を立てて確かな存在感を返してくる。
 アリスとリンはお互いの顔を見合わせると、その玉を持ち帰ることにした。

 アリスから受け取った緑の玉を両手に持ち、暫く黙っていたアムネリアがおもむろに口を開く。
「……さて、結論から言おう。これは、大大怪獣ワイルドファイアの七つの眷属が一体、緑種の女王エンケロニに纏わる物だ」
 やはりのう頷くファムトに、頷き返しアムネリアは先を続ける。
「七大怪獣エンケロニ……自身の分身である種を撒き植物怪獣に取り付かせる事によってその植物を眷属とする能力を使い、かつては全ての植物怪獣を統べしもの。そして今、眷属とした植物怪獣を吸収する事で在りし日の力を取り戻さんとするもの」
「つまり自分で作った眷族を自分で食べると言う事かえ?」
「そう、既に育っている植物怪獣に種を植え付け自分の物としてから刈り取る……そうやって力をつけて行き、最後にはアラハースやブラキオンを軽く超える力を手にするだろう」
 小首をかしげたリィをじっと見つめて、アムネリアは応える。エンケロニに時間を与えてはならないのだと、紫色の瞳が如実に語っているようだ。
「その玉は、何なの?」
「これは……エンケロニの眷属たる証……つまりアレが育ったものだ」
 リンの問いかけにアムネリアは空を見上げる。そして真っ青な空を漂う無数の綿帽子のような白いものを示し、そう苦々しく応えたのだった。

【END】


マスター:八幡 紹介ページ
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