ちょっぴりキケンな山菜狩り



<オープニング>


●山菜狩りのシーズンです。
 ワラビ、タラノメ、コゴミ、ヤマウド、フキノトウ……春は山野草が美味である。
 どこか、この近くの村から来たのだろうお婆さんと孫娘が共に早朝から山菜狩りに勤しんでいた。篭いっぱいの山菜、若草。山の香りを吸い込み、やわらかな日差しと澄んだ空気は爽やかで晴れ晴れしい。かく汗さえも気持ちの良い労働であった。
 しかし――突然、「ひぇ〜」と聞こえたお婆さんの悲鳴。
「お婆ちゃん! どうしたのっ!?」
 声がした方に急いだ娘は、腰を抜かして尻餅をついているお婆さんを見つけた。
「大丈夫? ごめんね、私も山菜採りに夢中で……」
 お婆さんは首を振りながら、孫の腕にすがりつき、驚きの余り言葉を失いながらも一方を必死に指差してに何かを示そうとしていた。そちらに目を向けたも娘も驚いて目を丸くする。
 今までお婆さんに注意が集中していたせいでその異様さに気付くのが遅れたのだろうか……いやいや、それにしたって不自然な光景が目の前に広がっている。
「うわぁ、デカ……」
 そこには、成長しきったと言うにも大きく育ったゼンマイが、頭を丸めて群生していた。
 成長すれば高さ1メートルを越すこともあるというゼンマイであるが、それにしても――いや。
 今はまだ、山野で見かけるにも少し早い時期だからということで、……いやいや、やはり無視できない。あまりにもそのサイズは規格外。
「はあ、こりゃ、まあ、えらいことで……」
 と、お婆さんはひたすら巨大ゼンマイに向かって手を合わせ、拝んでいる。
「お婆ちゃん、拝んでいる場合じゃ……」
 お婆さんを庇うように間に入り、一刻も早くこの場を離れようと促す。ゼンマイに注視していると、くるんと巻いたゼンマイの、綿毛を被った頭が微かに震えたように見えた。色濃くなる嫌な予感。
 一刻も早くこの場から離れようとお婆さんを促して、歩き出す。
 老人の歩調に合わせて、ゆっくりと、ゆっくりと。内心大急ぎで。――その背後で、立ち上がる気配。
「きゃ……!?」
 娘が振り返る間もなかった。一陣の風が彼女の足を撫で、服の裾がめくれ上がる――

●――という訳で、依頼なんです。
 とある村の奥山に、不逞を働くゼンマイが出た。
 村の乙女達ももう何人か、被害に遭っているようだ。
 通常、その多くは危険地帯――山の傾斜や沢沿いの傾斜、湿地帯などに自生するというゼンマイ。
 例に漏れず今回のソレも崖向こうから伸びて来たものらしい。崖下には沢。
 無論、茎自体が伸縮自在な訳ではないので、一定の距離以上に離れるとゼンマイの頭も届かず、おかげで村人達も逃げおおせているのだが。
 タチが悪いこのゼンマイは己に近づく人間に対して、若い女性は触りまくり、男性はぽこぺんと殴打し、子供と一定以上のお年を召した男女には無反応という、ある意味無礼極まりない植物である。
 しかし、放っておいてもそれ以上の悪さをしなさそうでは、ある。
 近づかなければ済むのではないかとも思うのだが……
「ころコロこロコろ殺ス」
 殺気立った烈斗酔脚の栗鼠・ヤン(a90106)が、さっきから「絶対ぇ殺す」と言って聞かない。どうやらこの手の手合いは生理的に受け付けないらしい。
「このまま放っておくと、『どこまで成長するか解らん』。今の内に刈っておくのがベストだな」
 成長。今回の場合は、ある種の進化も伴うのかもしれない。
 村人(特に乙女)達から被害の相談を受けた霊査士のこの言葉により、正式にこの怪植物退治依頼が出されることになったのだった。
「狩ル。根こそぎ狩ル……」
 はい、どーどーどー。ヤンは並ならぬ憎悪で我を忘れているようだ。
 精神安定のためかちびちびと酒を呷っていたりもする。据わった目付きで。
 このまま向かわせるのは色んな意味で少々危険かもしれないが……かくして霊査士は冒険者達を招集するのであった。

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参加者
聖砂の銀獅子・オーエン(a00660)
永遠の娼女・イリス(a01084)
熊猫の宿主・ハロルド(a03705)
燃えるにゃんこ料理人・ロジャー(a05286)
闇黒の死を告げる蒼の伐剣者・アシル(a06317)
三日月の導師・キョウマ(a06996)
翠玉の残光・カイン(a07393)
吼えろ・バイケン(a07496)
NPC:烈斗酔脚・ヤン(a90106)



<リプレイ>

 何故だ。何故、皆はこんなに余裕しゃくしゃくなのだ?
 烈斗酔脚の栗鼠・ヤン(a90106)はそんなことを思いながら、仲間達の様子を眺めていた。
「わ〜いわ〜い♪ ハルは春にピクニックっす〜♪」
「丘を越え行こうじゃないか! と考える」
 熊猫と戯れし閑の位・ハロルド(a03705)は陽気にピクニック気分でいるし、彼の頭に棲息する(?)パンダの人形『くまにゃー』も調子を合わせて相槌。いつものことらしい。人形であるくまにゃーが喋る原理については諸説あるらしいが、腹話術との説が有力だ。
 楽しげなハロルドから視線を逸らせばふと目に止まる永遠の娼女・イリス(a01084)は、大きな籠を背負い、鎌を持ち、山菜採りに向かうとしか思えない。セクハラゼンマイと対峙するにあたり最も気を付けねばならない『女性』はヤンとイリスの二人だけだと言うのに、まるで彼女は気負っていなかった。
 冷静であろうとする思考回路は何処へやら。ヤンは水筒から酒を呷ろうとする。
「…シラフじゃやってられないわ」
 それを背後から手を伸ばして止める聖砂の銀獅子・オーエン(a00660)。
「怒りは直接遭遇したらで良いじゃないか、あと崖だから落ちないよう気をつけること…とまあ…水でも飲んで落ち着け」
 彼が差し出す水筒にはたっぷりの水。
「うー。…いいわよ」
「そうか?」
 遠慮するヤンに微笑して、オーエンはそれを酒入りの水筒と交換しヤンに持たせた。「あー」と困ったような声が上がるが気にしない。そんなオーエンにこっそり「ナイスフォロー」と言わんばかりに合図を送る月光纏う森の魔導師・キョウマ(a06996)。彼もまた、ヤンを必要以上に酔わせないように注意を払っている1人だ。
 悠然とヤン抜き去り現場へと急ぐオーエンの背に大きなリュックが負ぶさっているのを彼女は見た。その中には崖向こうを確認するためのロープやら、ゼンマイを燃やすべく用意した油やらが入っているらしいのだが、――ヤンは腑に落ちないらしかった。

 ……何故だ。何故、皆は行楽スタイルなのだ……?

●数々の不安要素を引っさげて、いざ到着です。
 そこだけが別世界だった。林を抜けて開けた視界、抜けるような青空が広がるその崖の手前に群生しているゼンマイは巨大に育ち、まるで熱帯雨林か何かを思わせた。群生という言葉に留まらず、もう、鬱蒼と生い茂っていると言うのが適切か。
「これが噂のエロゼンマイか。うらやま……いやいや悪い奴も居たもんだ。念入りにお仕置きせねばなりませんね」
 しみじみ呟きかけてヒトの猫道家・ロジャー(a05286)は慌てて二の句を継いだ。少しわざとらしい。
 ロジャーを睨みつけるヤンが今にも唸り声を上げて飛び掛って来そうだ。何かそんな空気だ。
「わ〜い♪ でっかいっす〜♪」
「大きいことはいいことだ! 小さいことはグッドなことだ! と考える」
 そんな空気もおかまいなしにハロルドがはしゃぎ、くまにゃーと共にゼンマイの元へと駆けて行く。
「気をつけるでござるよ!」
 11歳、且つ男のお子様ハロルドに、ゼンマイは何ら反応を示さない。が、燃えよ・バイケン(a07496)は無邪気なお子様に一応の注意を促す。
 その隣でゼンマイを無言で眺めている伝説のナンパ師・アシル(a06317)が、
(「ふむ…ぜひとも店に置きたいな…」)
 などと考えていたことは、誰も知る由もない。
「――さて。これで少しは違うでしょう。所詮は土塊ですからあまり大したことは出来ないかもしれませんが…」
 ドリアッドの邪竜導士・カイン(a07393)が土塊の下僕を2体ずつ、イリスとヤンの護衛につけた。人形にはカカシの骨組みを組み、村娘から借り受けたスカートを被せて、女性に見せる努力。
 どれだけ役に立つかは解らないが、それだけでも気の持ちようは大分違ってくる。
「でも、余り近づき過ぎない様に注意して下さいね」
 キョウマがイリスとヤンに言い聞かせた。続けて「特にヤンさんは」と強調して。
「1人で突っ込んで行かないようにして下さいね。女性ですし、最近不運続きのようですから」
「まったくもって」
 と、カインも同調。得も知れぬ仲間の迫力に圧されてヤンは縮こまる。
「…解ったわよ〜」
「気をつけます。ありがとうございます」
 どこか不満げなヤンとは対照的に、イリスは素直に返事をして、ぺこりと頭を下げた。
 その間にもオーエンは己の武器に武具の魂を施して戦闘準備。

●『山菜狩り』と書いて『戦闘開始』なのです。
 セクハラゼンマイはリザードマンに対してどんな反応を示すだろうか?
 尽きない興味を携えて、ゼンマイへの距離を詰めるバイケン。
 花見ならぬ山菜見気分、花より団子気分でチョコレートをかじりながらゼンマイの木陰でごろごろと陽気を満喫していたハロルドは、その姿に気付いて身を起こした。
「山菜狩り、っす?」
「うむ」
 少年に頷いてバイケンは手を伸ばし、とうとう太いゼンマイの茎に触れるが何も起こらない。
「……」
 しばし待ってみるが、無反応。
 どうやらリザードマンは『大きなトカゲ』と判断されたらしい。さすがどっしりと構えているだけあってこのゼンマイ、なかなかいい度胸をしている。
 突如、飛来した針がゼンマイを串刺しにした。
 キョウマやカインのニードルスピアが炸裂したのである。
 攻撃開始、バイケンとハロルドもゼンマイから距離を取る。攻撃されてなお、ゼンマイは微動だにしない――いや、よく見ると小刻みにその身を震わせているのだが反撃に出てくる様子は無い。やや拍子抜けだが、彼らの動ける範囲内に対象を与えなければ所詮は鎖につながれた犬も同然。吼えたり噛んだりしない分、犬よりもよっぽど簡単な相手かもしれない。
 が、それでは気が済まないのか前衛組。セクハラ野郎に容赦はなし、とロジャーが懐に飛び込んで行く。ゼンマイにしてみれば願っても無い獲物であろう。ここぞとばかりにロジャーへと、茎をうねらせ、しならせながら、葉が巻いた頭部を打ち付けて『殴る』。
「わっ、たっ…!」
 回避しようと試みるが、縦横無尽に襲い来る数え切れないゼンマイの本数に、少しずつダメージが蓄積されて行く。殴っても殴っても、起き上がって来るゼンマイはサンドバッグのようだ。
「殴る蹴るじゃ、キリがない、か!?」
「スキュラさん、ご〜! っす〜♪」
 ハロルドの声。背後から駆けて来る圧、獅子と山羊、蛇の頭部を持つ黒い炎がロジャーの目の前のゼンマイを燃え上がらせる。
「ふぁいやー! 燃えー! と考える」
 ノリにノっているくまにゃー。目の前の爆発炎上に目を細めながらロジャーは数歩下がって、ゼンマイの追撃を回避。バイケンが放つリングスラッシャーが、広範囲のゼンマイを刈り取ろうと空を走った。
 一度では茎の表面を傷つけるだけに留まるも、二度、三度と繰り返していくうちに見事に切断されてその身を大地に横たえる。実に爽快。一網打尽にする側は爽快だろう。が。
「あーもうっ! 一発ぐらい入れさせロ!」
 見ているだけの歯がゆさに、居ても立っても居られずヤンが大方の予想通りに飛び出して行く。寸断され空を舞うゼンマイの間を潜り抜け、崖縁に未だ根をおろして立つゼンマイを一蹴すべく飛び掛かる!――と!
「ヤン様、ダメ! 今飛び出されましてはっ…!」
 ヤンを止めようとイリスが全力で抱きついた。体勢を崩すヤン。ああ、もしや――
「ひゅおっ?」
 勢い余って二人は崖向こうに飛び出した。二人の身体を受け止めたのはお約束と言うか何と言うか、セクハラゼンマイその人であった。
「……」
 うわあ。
 予想通りといえば予想通りのそんな展開に、冒険者達の手が一瞬止まる。
 びちびちびちびち。
 切断されたゼンマイは、切り捨てられたトカゲの尻尾の様にのたうっている。
 のたうちながら、土塊に被せてある村娘の匂いがついたスカートを――匂いで判断しているかどうかは不明だが――捲り、その下が乙女の柔肌でないことに憤慨したのか鎌首をもたげ、土塊目掛けて振り下ろす。
「まだ動けるのか、こいつッ!?」
 カインは驚嘆しながらもすかさずニードルスピアでトドメを刺した。
 女性陣を助けようと飛び出したアシルは同じようなゼンマイに足を払われて転倒、足止めを喰らっている。
「おとなしく店頭に並べーーー!」
 剣に閃く怒りの雷光――電刃衝。 
 その間にも踏み込むオーエンの居合切りが、女性二人を捉えたゼンマイの胴体に食い込む。しかし、ゼンマイは頑固にも二人を離そうとはしない。未だ残る数本がそのゼンマイを守るようにうねり、オーエンに殴りかかる。別のゼンマイはイリスやヤンの身体へとその頭の先を伸ばしていたりするが。
 とにかく、ゼンマイ達の嫌〜な一致団結であった。
 体勢を整え、振り下ろす閃きの電刃衝。だが他のゼンマイ達に阻まれて思うようにダメージが与えられない。
「くっ、しぶといな…」

 囚われのヤンとイリスは必死に自我を保とうとしていた。密着していてイリスも迂闊に鎌を振るえない。自分達を捉えている極太のゼンマイは、きっとボスなのだろう。身体に巻きつく葉がじわじわと蠢いている感触を気のせいだと言い聞かせながら身を固くする二人。
「い、い、いイリスはダイジョブ、多分。…ハロルドには無反応だったんだから…」
 ヤンは誰にともなく言い聞かせている。イリスとハロルドは同い年である。ならば、彼女だけはゼンマイの悪戯は受けない……はずである。
「あ、そうでございます、ね…」
 イリスの声色は思ったより静かで、今どんな気持ちでいるのか全く読めない。少々声が上擦っているのは緊張からだろうと、ヤンは思った。
「ぅわ……や、や、や」
 コートのスリットの下に潜り込む気配に撫で上げられ、ギリギリの短パンから伸びる素脚に触れる感触に怖気。硬く目を瞑り、ヤンはとにかくイリスを助けようと、気力を奮い立たせて腕に力を込める。と――当のイリスにしがみつかれて目を開ける。
「ちょ、ちょっと、これじゃ皆の方に投げられないわよ」
 ますます動きを封じられて何故か焦る。イリスは切なげに眉を寄せて涙目でヤンを見上げた。
「や、や、ヤン様……何だかわたくしめも触られてる、みたいなんですけど……」
 ゼンマイによる愛撫に耐えるように小刻みに震えるイリスは時折身体を揺らす。もう訳が解らない。
「……っ、ヤン様ぁ……」
 下では戦闘が繰り広げられているだろう音と衝撃が、ゼンマイの茎を通して二人の身体に伝えられる。不安げに抱きつくイリスの歳の割には豊な胸がヤンの胸に押し付けられて弾む。
 ゼンマイは同胞の犠牲も意に介さず、その数を減らしながらもしつこくねちっこく、ヤンとイリスを撫でまわす。
「ひぁわわわわ! …死ぇいッ!! このシダ植物がッ!」
 じたばたともがくヤンの脚がかろうじて迫り来るゼンマイの頭部を蹴飛ばしている。はた、と、仲間の目に晒されているような気がしてヤンは――
「こらァ! 見てないで助けなさいっ、男の子ッ!」
 顔を真っ赤にして叫んだ。イリスはヤンの腕に支えられたまま、頬を染めてぐったり。

 ――見ていた訳では……
 ――男の子って歳でも……
 ――終わったら山菜御飯でも……
 そもそもこうなったのはヤンの自業自得と言うか目の保養というか。
 思う事は多々あれど。
 『男の子』達は諸々の雑念を振り払い、目の前の敵に俄然闘志を燃やすのだった。

●――お疲れ様でした。
「いけそうか? ロジャー、気をつけてくれ」
「ああ、大丈夫。これで、さ、い、ご、っと……」
 念には念を、と言う訳で。
 ロープに吊るされたロジャーが、ゼンマイの根に油をかけて燃やすという作業をこなしている。その幅、実に十メートル四方に渡りゼンマイの禍根を見つけた。だが、びっしり密集して生えていた訳ではないため、二人が持ってきた油で何とか事足りたようだ。ロープも然り。そのロープの端は木に固定した上でオーエンがしっかり握っている。アビリティの炎では物理的に燃やすことは出来ないため、こうして地道に絶やすしかないのだ。
「あとは、灰も残らぬくらいまで燃え尽きてくれることを願うばかり、ですね」
 予備のロープを手にしたキョウマが忌々しげに、ゼンマイの残骸を見つめて言う。
 地上で刈り取られたゼンマイは一部を除いてやはり、燃やされていたりする。その火の上では何故か、鍋がいい頃合だった。
「む〜……いいにおいっす〜おなかすいたっすね〜……」
「おなかと背中がくっつくぞ! どうやって!? と考える」
 ハロルドとくまにゃーが鍋の前に陣取り、待遠しげに呟いている。適度な運動の後、山菜の焼ける匂いも相まって食欲が刺激されたらしい。巨大山菜を目の当りにしたバイケンが料理人の性で腕を振るいたくなったのか「調理する」と言い出し、火にかけた鍋の中身は渾身の山菜おこわ。
「もうすぐでござる。未知の食材ゆえ、ぜひとも皆に感想を聞かせてもらいたいでござるな」
 嬉々として語るバイケンの屈強な皮膚には明らかな打撲傷がある。後衛で戦っていたはずの彼、しかもゼンマイにやられたものにしては小さな痕……もしかしなくても女性陣救出の際、誰かさんに暴れられたのだろう。その誰かさんは今、木の陰で膝を抱えて打ちひしがれている。
 地上に帰還したロジャーが煤けた顔を拭いつつ、鍋を見ておずおずと首を傾げた。
「もしかして…巨大ゼンマイを…? やめといた方が良いと思いますよ。食べたら絶対お腹壊すって……」
 何故ならば、突然変異した植物である。中身もどんな変異を遂げているか解ったものではないのだ。
 適度に運動してるから、身は締まっているかもしれないが。と思わなくもなかったが。美味いかどうかは別問題。少なくとも香りは悪くなかったりするのが危険な誘惑だ……
 イリスはヤンほど気落ちすることもなく、むしろ何事も無かったかのように指を咥えておこわの出来上がりを待っている。燃やされる前にちゃっかり確保して籠に入れようとしていた巨大ゼンマイの残骸は、鍋の中。しょうがないのでそこらに生えているであろう普通の山菜を探し始める。オーエンもそれにならって山菜狩りを楽しんだ。摘み取った多種多様な山菜は彼が持って来た大きなリュックの中へ。
 
 さて。おこわの出来は申し分無かった。気になるゼンマイのお味についてはご想像にお任せしよう。
「結局…なんなのかね?このゼンマイ…」
 巨大ゼンマイを手に入れ損ねた1人、アシルの疲弊した声色に、誰一人答える言葉も無く。
 ただ、少なくとも、色んな意味で『食えねぇ奴』だということは確かだった。

「酒場に帰ったら皆で飲み直そう。な?」
 ふて腐れているヤンに酒入りの水筒を返しながらオーエンは言った。
 ヤンはお嫁に行けないとか何とか、ぶつぶつ言っていたような気がするが、聞こえないフリ。
 勿論、今度こそ自分達へのご褒美は『普通の山菜』で。


マスター:宇世真 紹介ページ
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作成日:2004/05/03
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