<リプレイ>
●バーレル亀の卵 「おっ! あった、あった。これがバーレル亀の卵か。確かに柔らかくて美味そうだな」 真夜中になってからこんもりと盛り上がった砂浜を掘り起こし、神殺し・ラキ(a61436)がバーレル亀の卵を見つけ出す。 バーレル亀は1回の産卵で100個ほどの卵を産むのだが、とても美味いので外敵に狙われやすい。 そのため、100個中で孵化する事が出来るのは50個ほど。 そのうち海で生き残る事が出来るのは10匹程度らしい。 しかし、神との戦いで海獣が激減したため、バーレル亀が一気に増えてしまう可能性が高くなっている。 最悪の場合はバーレル亀が増え過ぎたせいで、生態系に悪影響を与える可能性まであるようだ。 「すみません、少しだけ分けて頂きますね」 優しく卵に語りかけながら、黄昏の黒竜・ラーズ(a64111)がひとつずつ小袋に詰めていく。 ラーズ達が袋に詰めたのは、バーレル卵80個。 残り20個はそのまま砂浜に埋めておく事にしたため、ジュエルイーターに食べられなければ、バーレル亀が絶滅する事はない。 「卵を傷つけないようにして、慎重に袋に入れていくんじゃぞ」 召喚した土塊の下僕に皮袋を手渡し、言いくるめのペ天使・ヨウリ(a45541)が卵の回収を命じる。 バーレル亀の卵はとても柔らかいため、持ち方が悪いと潰れてしまう。 そのため、ヨウリ達は慎重にならざるを得なかった。 「まるでマシュマロみたいですわね」 緊張した様子で卵をさっと拾い上げ、ヒトの紋章術士・リュカリナ(a66079)がゴクリと唾を飲み込んだ。 早くしないとバーレル亀に見つかってしまう可能性もあるため、どうしても急がなければならなかった。 しかし……、あまり急ぎ過ぎると、せっかく手に入れた卵が割れてしまう。 そんなジレンマに襲われながら、リュカリナ達はバーレル亀の卵を袋に詰めていく。 「卵が割れないようにクッションを用意しておいて正解だったな。こんなに柔らかいんじゃ、いつ割れたっておかしくないぞ」 バーレル亀の卵を詰め終え、ラキがホッとした様子で汗を拭う。 次の瞬間、海からバーレル亀が群れを成して現れ、あっという間に砂浜を埋め尽くす。 それに合わせてジェエルイーターが滑るようにして海から現れ、次々とバーレル亀に喰らいついていく。 「あ、あれは……、ジュエルイーター!?」 ハッとした表情を浮かべてランタンを照らし、リュカリナが土塊の下僕で壁を作る。 しかし、ジュエルイーターの圧倒的な力の前に、土塊の下僕は成す術もなく崩れていった。 「こ、このままではバーレル亀の卵までっ!」 すぐさま粘り蜘蛛糸を放ち、ラーズがジュエルイーターの動きを封じ込める。 そのため、ジュエルイーターがしばらく動けなくなったため、ラーズが卵の入った袋を抱えて岩場まで避難した。 「そんなに慌てたら卵が割れてしまうぞ。こういう時こそ冷静でいるべきだと思うんじゃが……」 土塊の下僕に命令を下してバーレル亀の逃げ道を作り、ヨウリが疲れた様子で溜息をつく。 しかし、バーレル亀の大半は疲れ果てており、その場で動きを止めると眠るようにして息を引き取った。 「……可愛そうに。でも、ジュエルイーターは必ず退治しますわ!」 グッタリとしたバーレル亀を抱き上げ、リュカリナがジェエルイーターを睨む。 ジュエルイーターはバリバリと口を動かしてバーレル亀の甲羅を砕き、ヨダレをダラダラと垂らしながらリュカリナ達を睨み返す。 ジュエルイーターの狙いは、バーレル亀の卵。 固いものばかり食べ過ぎたため、今度は柔らかいものが食べたくなったらしい。 「キルドレット!! 私に力を貸してください!!」 キルドレッドブルーの特殊能力を使ってジュエルイーターに魔炎と魔氷のバットステータスを付与し、ラーズがバーレル亀の卵を抱えて仲間達と合流する。 その間に他の班がバーレル亀の捕獲に向かい、ジェエルイーターに攻撃を仕掛けていった。 「やれやれ、これで一安心じゃな。他の班もうまく行ってくれるといいんじゃが……」 土塊の下僕を集めて壁を作り、ヨウリがバーレル亀の卵を撫でる。 途中でジュエルイーターが襲ってきたため、いくつか割れてしまったようだが、それでも80個近くの卵を回収する事が出来た。 「やっぱ、卵って言ったらゆで卵だよなー。亀の卵なんて食うのも初めてだから楽しみだぜー♪」 満面の笑みを浮かべながら、ラキがバーレル亀の卵に頬擦りする。 念のため、クリスタルインセクトを召喚して、ジュエルイーターを攻撃するように命じておいたので、しばらく時間を稼ぐ事が出来そうだ。
●バーレル亀 「おー、来た来た来た来たァ! これだけバーレル亀がいりゃあ、一生遊んで暮らせるんじゃねえか! 今夜はパーティだな! まぁ……、水着のねーちゃんがひとりもいねぇのは残念だが……。おおっと、いけねぇ。今回は仕事に来ているんだったな」 勢いよく海にザブンと飛び込み、漢女な漢姉さま・アギリ(a27358)が我に返る。 仲間達のおかげでジュエルイーターの足止めには成功しているが、その間にバーレル亀が必死になって海に逃げていく。 「……マズイ事になりましたね。このままではバーレル亀に逃げられてしまいます」 険しい表情を浮かべながら遠眼鏡を覗き込み、赤眼の優男・アーバイン(a50638)が作戦を練り始める。 砂浜にいたバーレル亀は、ざっと30匹。 ジュエルイーターに追い回されて半分以上死んでしまっているが、そのおかげで甲羅が完全な状態で残っている。 しかし、ジュエルイーターが喰らいついているため、早く捕獲しなければまったく意味がない。 「は、速い!? 本当に亀なんですか!?」 信じられない様子でダラリと汗を流し、アーバインが粘り蜘蛛糸を使ってバーレル亀の動きを封じ込める。 それでもバーレル亀は足元を蹴って砂埃を舞い上がらせ、その間に海まで逃げていこうとした。 「本当に逃げ足の速い亀なんですね。何だか従来の亀に対するイメージを一新してくれるような気がします。でも……、自由に動き回る事が出来なければ、それほど苦戦する相手でもありませんねー」 ヘラヘラとした笑みを浮かべ、不思議の国の案内人・チェシャ(a50971)が眠りの歌を歌いだす。 そのため、バーレル亀は海に頭を突っ込んだまま、スヤスヤと眠りの世界に旅立った。 「よっしゃ、今のうちにバーレル亀を捕まえちまおうぜ!」 効率よくバーレル亀を捕獲するため、アギリがホーリーライトを使って辺りを照らす。 それと同時に目を覚ましたバーレル亀もいたが、アギリの仕掛けたトラップフィールドにハマッて穴に転がり落ちた。 「あまりにも手際が良過ぎて、これを使う余裕が無かったねー。えーっと、これで全部かな?」 苦笑いを浮かべてロープを握り、チュシャがバーレル亀の数を数えていく。 ……バーレル亀は全部で6匹。 死んでいるものも合わせれば、13匹ものバーレル亀を捕まえる事が出来た。 「しかし、ノンビリもしていられないようですよ」 険しい表情を浮かべながら、アーバインがバーレル亀を抱えて横に飛ぶ。 それと同時にジュエルイーターがバーレル亀の破片を飛ばし、アーバインのいた場所にあった岩を破壊した。 「お、驚かせやがって……。怪我をしたら、責任を取ってくれるのか? このままお前をギャフンと言わせてやりたかったが……悪いな。お前の相手をしている暇はねぇ」 ジュエルイーターをジロリと睨みつけ、アギリがバーレル亀を袋の中に放り込む。 そのため、バーレル亀がジタバタと暴れたが、きちんと紐で縛っているので、それ以上の事は出来なかった。 「……捕らえる側としてこういう事を言うのもアレなのかも知れませんが、小亀、ちゃんと元気に育ってくれると良いですね。悪い海獣には気を付けるんですよー!」 こんもりと盛り上がった砂浜を見つめ、チェシャがニコリと笑って声を掛ける。 例年と比べてバーレル亀の卵は少ないが、そのぶん外敵である海獣が減っている事が救いであった……。
●ジュエルイーター 「バーレル亀からすれば、ジュエルイーターも冒険者も卵や自身を害する敵なんでしょうね。そう考えると何だか罪悪感が……」 鎧聖降臨を使って鎧強度を高め、猫又・リョウアン(a04794)が深い溜息を漏らす。 辺りにはバーレル亀の死体が転がっており、ジュエルイーターに潰されて無残な姿を晒している。 こうなってしまうと装飾品に加工する事が出来なくなるため、バーレルに持って帰ったとしても売り物にならない。 「……何だか自分達のやっている事が、ものすご〜〜く悪い事みたいに思えてきちゃったよぉ」 落ち込んだ表情を浮かべ、夢見る少女はウシより強い・ユナ(a48571)が肩を落とす。 バーレル亀は涙を流して産卵した卵を奪うだけでも、悪い事をしているという気持ちがあったのだが、死んでしまったバーレル亀の甲羅を剥ぎ取って売り物にするなど考えられない。 しかし、そこまでしなければ、チキンレッグ領を復興する事が難しかった。 「う〜ん、それは仕方が無いんじゃないのかなぁ? 可哀想だからって放っておけば、バーレル亀が増えすぎちゃうものね」 ジュエルイーターめがけてカンテラを放り投げ、享楽を謡う遊魚・クルタナ(a64885)がエンブレムシールドを構える。 それと同時にジュエルイーターが口に含んだバーレル亀を飛ばし、クルタナ達に対して攻撃を仕掛けてきた。 「……考えている暇はないな。このままじゃ、俺達まで殺られるぞ」 鎧聖降臨を使って快傑ズガットに変身し、快傑ズガット・マサカズ(a04969)が横に飛ぶ。 しかし、ジュエルイーターの攻撃を避ける事が出来ず、右足に甲羅の欠片が深々と突き刺さる。 「ジュエルイーターとやらは、亀の癖に亀の卵を食べるのか。ある意味、共食いではないか?」 険しい表情を浮かべながら、ゴロゴロ・サーディーン(a57418)が物陰に潜む。 次の瞬間、サーディーンの脳裏に過ぎる嫌な予感。 (「ま、まさか。俺達が鶏を食べる事と同じなのか!? 他の種族にとっては同じように見えても、俺達チキンレッグにとってはまったくの別物。つまり、そういう事なのか!?」) きっと仲間達も同じ事を思っていたのかも知れない。 誰もサーディーンと視線を合わそうとしないのが、何よりの証拠である。 「……潰す」 一気に間合いを詰めてジュエルイーターを睨みつけ、黒鬼・ディック(a64518)がスティールソードを振り下ろす。 しかし、ジュエルイーターの甲羅が予想以上に固く、近距離から反撃を喰らって後ろに吹っ飛ばされた。 「ユナちゃん、よろしく!」 ポケットの中から宝石を取り出し、クルタナがユナに向かって放り投げる。 それと同時にジュエルイーターが大きく口を開け、地響きをさせながら今度はユナ達に襲い掛かってきた。 「やっほ〜っ♪ こっちだよ〜〜! フォ〜ム・アァ〜〜ップ!!」 クルタナの投げた宝石を受け取り、ユナが鎧聖降臨を発動させて、背中から七色の翼を生やす。 それに合わせてユナが手甲についたピンクパールを見せたが、ジュエルイーターは彼女を横切って別の標的を襲う。 「ちょっ、ちょっと待て。どうしてジュエルイーターが俺のところへ!」 信じられない様子でジュエルイーターを睨みつけ、サーディーンがようやく自分の失敗に気づく。 鎧進化によってサーディーンの鎧は宝石で出来た亀に変化しており、彼のパーフェクトボディラインが亀の卵にも造形が近かった。 すなわち宝石+卵+亀のハイブレッドスタイル。 そのため、ジュエルイーターにとって、サーディーンはご馳走にしか見えない。 「…フッ、道理で、さっきから俺のスナイパーセンス(臆病者の勘)が警告を発し続けているわけだ……って、ぬぁーっ! 来るなーっ! 俺は食いモンじゃないぞーっ!」 ジュエルイーターが物凄いスピードで襲い掛かってきたため、サーディーンが青ざめた表情を浮かべて横に飛ぶ。 次の瞬間、サーディーンの背後にあった岩が砕け、破片がバラバラと音を立てて降り注ぐ。 「いまのうちに、早く逃げるんだっ!」 サーディーンが逃げる時間を稼ぐため、マサカズがジュエルイーターの首にズガットビュートを絡みつける。 それに合わせてディックがデストロイブレードを叩き込み、ジュエルイーターの甲羅にヒビを入れた。 「今度はこっちの番です。今までの御礼をさせてもらいますよっ!」 ジュエルイーターの身体をガシィッと掴み、リョウアンがデンジャラススイングを炸裂させる。 その一撃によってジュエルイーターの甲羅が砕け、無防備な背中が剥き出しになった。 「やったね! これでシュエルイーターを倒せるはず」 すぐさま眠りの歌を歌いだし、クルタナがジュエルイーターを眠らせる。 それでもジュエルイーターは口に含んだ岩を吐き出そうとしていたが、リョウアンの放った斬鉄蹴を喰らって地面に顔を突っ込んだ。 「くらえ必殺、ズガットトルネードッ!!」 マッスルチャージとグランスティードの特殊能力で攻撃力を底上げし、マサカズが雄叫びを上げてデンジャラススイングを放つ。 その落下地点にはユナが待機しており、ジュエルイーターを睨んで口を真一文字に結ぶ。 「あったれ〜〜! アルティメット・スラァ〜〜ッシュ!!」 ジュエルイーターめがけて跳び上がり、ユナが勢いよく巨大剣を振り下ろす。 その一撃を喰らってジュエルイーターの頭が割れ、大量の脳漿を吹き出しながら派手な音立てて地面に突っ伏した。 「……終わったな」 スティールソードについた返り血を払い、ディックが仲間達に対して背を向ける。 ジュエルイーターを倒した以上、この場所に留まる理由はない。 ディックは仲間達とは別れ、別の戦場にむかうのだった……。

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参加者:13人
作成日:2007/07/31
得票数:冒険活劇10
ほのぼの2
コメディ5
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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