<リプレイ>
●竜脈坑道 冒険者たちは、竜脈坑道に着くなり、二手に分かれていた。 A班はドラゴンが到着するのを待ち構えるように竜脈坑道の前に陣取り、B班はドラゴンの目に付かないよう、それぞれ岩陰などへ隠れていく。 (「ドラゴンというと、やっぱり『破壊の権化』『力の象徴』『超常の存在』という印象だったんだが、俺たちの手が届くようになったんだよなぁ……それが今じゃ対峙して決戦か。……まぁ、相手が変わってもやる事は変わらんが、な」) 上空からやってくるであろうドラゴンから死角になりそうなところに隠れながら、碧緑に燃え上がる剛拳士・ガルティア(a19713)は思う。 「普通に暮らしてる皆さんを脅したり虐めたりするために力を得るなんてぇ、許せないですぅ。酷いことするドラゴンさん、やっつけちゃわなきゃですねぇ? わたしも頑張るですよぅ」 グッと拳を握り、銀露吟望・リンカ(a23298)は上空を見上げた。黄昏時にはまだ早く、ドラゴンが来る気配は今のところ、ない。 (「今はただ、倒すべきモノ……奴を倒すだけ。それだけが、俺にできることで、やるべきことだと思うから」) 闇夜光明・クライシス(a37371)もまた、腰に差した長剣の柄に触れながら、坑道の入り口近くで空を見上げた。 「これが最初の一歩、必ず、守りますから」 兄に貰った武器飾りの紐を見つめて、岩陰に身を潜めた重き白金の聖女・プラティーン(a40669)は呟く。憧れた人が守ってくれたこの世界を守っていく、愛する人たちの盾になると心に誓う。けれど、彼女自身、本当は少し怖く思っていた。『ただいま』と言うことが出来なかったら、と。けれど、どうしても譲れぬ想いがあるからこそ、彼女はこの場に居る。 (「精一杯頑張ります。愛する世界と愛する人たちの為に……」) 彼女は硬く目を閉じて、斧の柄をぎゅっと握り締めた。 班を同じくする者と共に、元第三作戦旅団員・グレッグストン(a63039)は岩陰に身を潜めた。 「くくく……ドラゴンウォリアーの力を試す実験台になってもらうかね。……笑うほど余裕あるわけやないけどな」 ぽつりと呟き、細心の注意を払いながら、更に彼は身を潜める。 祈りも嘆きも歌に込め・アレイスタ(a66494)は、胸元の金色のペンダントを握り締める。 「黄昏より昏きは、夜……しかし、夜の次には朝が来るもの。われわれの手で、宵を切り裂きましょう。光となった方々に恥じぬよう……」 仲間と共に、岩陰に隠れながら呟いた。
●変身! ドラゴンウォリアー 黄昏時。その空の色よりも昏いドラゴンは深く続く峡谷を目指し、上空を飛んでいた。
岩陰から空の様子を遠眼鏡で確認していたアレイスタは、ふと気配を感じた。気配の方に目を向けると、遠くの空に眼を凝らしていないと見逃しそうなほど、訪れる闇に溶け込んだ一つの点が見える。 その点は徐々に近付き、やがて、一体のドラゴンが現れた。 「ここから先は、通行止めだっ!」 電光石火・マイト(a49399)が両手剣を手に、飛来したドラゴンの前へと立ち塞がった。彼の他にも3人の冒険者たちが竜脈坑道の入り口を塞ぐように、立つ。 『貴様ら……ッ!』 ドラゴンは驚いたが、時既に遅し。展開された擬似ドラゴン界へと引きずり込まれていた。 構えたマイトに、傍に佇んでいた召喚獣が光となり、彼の中に入る。彼の髪留めが外れ、赤茶色の髪の毛が逆立った。身に纏う防具も強固な物へと代わり、利き腕である左腕をも覆った。そして、マントの隙間から生える蒼い竜の翼……それは片翼のみで、マイトは自身のまだ未熟な力に少し肩を落とす。 「ドラゴンさん、あなたには悪いけど…勝ちに行かせて貰うわよ?」 くすりと笑うリンカもまた、その姿を変えていく。銀色の髪は黒く、青い瞳は赤くなる。身に纏う着物も露出度の高い物となり、やや見た目の年齢も上がった。 瞳が漆黒に変わったクライシスは、マイトの鎧へと強大な力を注ぎ込んだ。マイトの鎧の強度が増していく。 まだ驚いたままだったドラゴンに、翡翠色のレスキュー戦乙女・ナタク(a00229)が投げた白いペンキの入ったケースが当たった。昏きドラゴンの首辺りに、白いペンキがぶちまけられる。 「その姿、日が暮れたら見えにくいよね?」 そう言った彼女の青い髪は翡翠色の光沢を持ち、瞳は金色になっていた。頭にはヘッドギア、そして背中には蜂のような羽根が一対生えている。 『何をしたッ!』 ドラゴンは吼え、すぅっと息を吸い込むと、入り口へと立ち塞がる4人の冒険者へとブレスを吐き出した。 それぞれ盾や鎧で防ぐものの防ぎきれず、見えぬ力が腕などに傷を作る。ブレスには、毒が混じっていたのか、ついた傷から更に、痛みが広がった。 「大丈夫?」 仲間を励ます力強い歌をリンカが歌う。4人の傷が癒えていくと共に、毒による痛みも引いていった。 「封術が怖くて居合い斬りが出来るかぁっ!」 マイトがドラゴンへと向かって、抜き打ちの一撃を入れる。 「次はナタク、あなたに……」 クライシスはナタクの纏う武道着へと力を注ぎ、その強度を増させた。 『何故、奇襲がバレたんだッ!?』 「それは、ヒミツです♪」 吼えるドラゴンに、ナタクは目の前で人差し指を口に当て、答えた。そして直ぐに一撃、蹴りを入れる。 ドラゴンの意識はすっかり目前の4人へと向けられていた。
●陰からの一斉攻撃 ころあいを見計らって、岩陰から一斉に飛び出す、隠れていた6人の冒険者たち。 「参りますよ、『レオラ』……」 アレイスタの中に、召喚獣が入っていく。彼の髪は紫色へと変わり、一つに束ねていた結びが解けた。瞳の色も同じく紫色に変わる。手にしていた魔楽器は、装飾の施された弓のような形状へと姿を変える。 「愛と勇気と希望の名のもとに……ホーリーアップ」 光に包まれた後、ポーズを取った闇夜に舞う朧月・トミィ(a64965)が現れた。 「ドラゴンウォリアーのお迎えやで!」 眼鏡がなく、黒一色の服で身を包んだグレッグストンも声を張り上げる。 「クーちゃん、ルインに力を貸して欲しいんだよ!」 空を裂く黒き風・ルイン(a60114)も召喚獣と一つになり、ドラゴンウォリアーへとなるが、姿に変わりがない。 「変われるみんなが羨ましいんだよー!」 と、少し悔しそうに叫ぶのであった。 プラティーンの姿は、白いシンプルなワンピースを身に纏い、武器は片手で持てそうな柄の長い白い鎌、そして額手首足首には紫色のつた模様が絡むように現れていた。 「全身全霊全力を賭けて、徹頭徹尾闘るだけだッ!!」 叫ぶガルティアの髪は緑色に染まり、身に纏う鎧の腕の部分からは炎が噴出していた。 岩陰から飛び出すと共に、息を合わせて6人はドラゴンへとそれぞれ攻撃をする。ガルティアはその拳をドラゴンへと振るう。 プラティーンは、白くふわふわした羽毛のような塊――護りの天使を頭上に召喚すると、その力を鎌へと上乗せして、ドラゴンへ一撃を与えた。 両手に取り付けた爪を強化させ、ルインは高速で、華麗な攻撃を放つ。その一撃の軌跡は光を放ち、薔薇の花が辺りへと飛び散っては消えていった。 蛮刀を手にしたグレッグストンは無造作にも見えるその動きで、ドラゴンの間合いへと飛び込んだ。そして、一撃を与える。 「運命の女神様よ……我らに祝福を……」 両手杖を空に向かって掲げたトミィの言葉と共に、ぼんやりと地面が光りだす。 「幸運の女神様が微笑みました」 そう言って、トミィ自身も微笑んだ。 「護りの天使達よ……」 アレイスタの言葉と共に、仲間たちの傍に白くてふわふわした塊のような天使たちが現れる。 一度に多数の攻撃を受け、ドラゴンは傷つき、ぐらりと傾くもののすぐに体勢を立て直すと、新たに現れた冒険者たちを含め、全員に向かってその爪を横へ大きく薙いだ。 「っ!」 「うわわっ!」 大きな爪の攻撃に、交わそうとしても交わしきれず、傷を負ってしまう。 すぐに体勢を立ち直したナタクは、疾風のような軽やかな身のこなしで、蹴りを繰り出した。蹴りの軌跡はまばゆい光の弧を描く。 「これぐらいなら、まだいけるわよね?」 そう言ってリンカは気合に満ちた熱い歌声で、歌を歌う。 ガルティアはドラゴンへと突っ込むと、ドラゴンの身体に拳を一撃、打ち込んだ。 「うりゃあっ!」 マイトはドラゴンの間合いに踏み込み、手にした両手剣で一撃を放った。間合いに容易く入られたことでドラゴンは深く落ち込んでしまう。 構えた長剣に稲妻の闘気を込めて、クライシスはその剣を振るった。痛みと共に、傷口から徐々にその身を痺れさせていく。 グレッグストンもドラゴンの間合いに踏み込むと、容易く一撃を与えた。続くプラティーンは、護りの天使の力を上乗せした鎌で、ドラゴンの翼を狙って攻撃を繰り出した。 冒険者たちの攻撃と、ドラゴンのブレス攻撃が繰り返される。けれど、回復する術を持つ冒険者たちと違い、このドラゴンは回復する術を持たない。 冒険者たちの攻撃は確実にドラゴンの体力を削っていった。 「戦慄よ、皆様の心と身体に癒しを……」 傷ついた仲間たちを励ます歌をアレイスタが歌う。 虚無のエネルギーの欠片を身に纏ったトミィも皆の傷の具合を見て、回復を施す。 「クーちゃんやみんなと一緒に戦ってるから、ドラゴンなんか怖くない! なにより、戦いが長くなったらルイン達が圧倒的に不利なんだから、パパッと終わらせるんだよ!」 そう言って両手につけた爪でルインがドラゴンの身体を引っかくように攻撃をした。その一撃は高速、華麗である。一撃が入るごとに薔薇の花が周囲に飛び散った。 『グァァァァッ!』 ルインのその攻撃が止めとなり、ドラゴンは叫び声と共に絶命した。 擬似ドラゴン界が消滅し、その黄昏よりも昏い巨体は、すっかり宵闇に包まれた竜脈坑道の入り口へと倒れこんだ。
●そして 「ふぅ、無事に勝ててよかったなー」 そう言いながら、マイトは解けた髪留めをもう一度結び直す。 「あー、お腹すいたなぁ……」 1体とはいえ、10人でやっと倒したドラゴンの亡骸を見、内心ワクワクしながらマイトはぽつりと呟いた。 他の者たちも安堵の息を漏らしながら、一連のことを報告すべく、酒場へと帰っていくのであった。
終。

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参加者:10人
作成日:2007/08/15
得票数:冒険活劇9
戦闘9
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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