≪緑種の女王エンケロニ≫緑種の女王エンケロニ 青の守護者



<オープニング>


●緑種の女王エンケロニ
 ――七大怪獣エンケロニ
 自身の分身である種を撒き、植物怪獣に取り付かせる事によってその植物を眷属とする能力を持つもの。
 かつてはその能力を持って全ての植物怪獣を統べしもの……そして今、眷属とした植物怪獣を吸収する事で在りし日の力を取り戻さんとするもの。
 在りし日の姿、それは絶対的な力を持つ自身とその周りに集めた、強大な力を持つ植物怪獣達の森の姿。
 緑種の森、緑の生命に溢れた森……だが、それは彼等に組しないものにとっては……踏み込んだら生きては帰れぬ魔の森に他ならなかった――

「さて……」
 ウサギが持ち帰った黄色い花が付いた蔦を両手に抱えて、紫猫の霊査士・アムネリア(a90272)は眉を寄せる。
 今現在、三つ首の薔薇怪獣と同等の能力を持っている植物怪獣はエンケロニの根元に三体、森の要所要所に三体……そして、後一体の計七体といったところだろう……だがこれが時間と共に倍倍に増えてゆく様が見えた。
 つまり時間をかければかけるほど、確実に不利になってゆくのだ。
「う〜ん……もう少し調べてから動きたかったけど……」
 確実に不利になると解っていて、それを傍観するのも愚かな事だろう……それに、エンケロニが持つ本来の能力については不明な部分も多いが、少なくとも今、現時点で直接的な攻撃は出来ないようなのだ。
 ならば、取るべき道など一つしかないだろう。
 アムネリアは両手で抱えていた蔦を、物欲しそうに見つめていた茶色い犬怪獣の口に放り投げ、護衛士達の下へ向かった。

●青の守護者
「と言うわけで、エンケロニの護衛が強くならないうちに……エンケロニが新しい力を復活させないうちに仕掛ける」
 アムネリアはその結論に至った理由を簡潔に説明すると、次に全体の流れを説明する。
「まず、皆で固まってエンケロニの根元まで突き進む。三つ首の薔薇怪獣から手に入れた玉があれば、途中の植物怪獣は一切気にしないで良いだろう」
 つまり、三つ首の薔薇怪獣から手に入れた玉が無ければ話にならないと言う事だ。
「次にエンケロニの根元に着いたら、そこを守護するように居る赤、青、黄色の向日葵に似た植物怪獣を突破して、エンケロニの天辺を目指す班と、それぞれの色の植物怪獣を相手にする班に分かれる」
 当然その三体の植物怪獣には黄色い花が咲いた蔦が絡まっている……ようは、エンケロニの守護をする三体の植物怪獣をそえぞれの班が抑え、その間にエンケロニの天辺を目指す班を行かせる作戦だ。

「この班は、エンケロニの根元に居る、青い向日葵に似た植物怪獣を相手にして欲しい。黄色い向日葵の右横にいるこいつの相手をし続けるのが貴様らの役目だ」
 解った? と一通り護衛士たちを見回してから、青い向日葵についての説明をはじめた。
「青い向日葵は物凄く硬くてな……その硬い花を地面に叩き付けて砂礫と衝撃波を起こして目の前の敵を吹き飛ばす」
 重騎士の砂礫陣のようなものだと考えれば良いだろうか……もっとも威力は比較にならないだろうが。
「それと周囲に青白い光を放って、視界に入るものすべての防御力を奪う能力も持っているようだな」
 アーマーブレイクの効果だろう、それ単体では気にするほどでもないが他の攻撃と組み合わされると厄介な事この上ない。そして今回、同時に三体の敵を相手にする事になる冒険者たちにとっては脅威といえる。
「ここが正念場だ、くれぐれも気をつけて……ちゃんと帰ってくるんだぞ?」
 もう一息だから、頑張ってと言うとアムネリアは護衛士たちを見送った。

マスターからのコメントを見る

参加者
炎に輝く優しき野性・リュリュ(a13969)
マインドレスドール・クーヤ(a40762)
星槎の航路・ウサギ(a47579)
王虎・アデル(a48929)
大地を歩みゆく者・ラング(a50721)
ノソ・リン(a50852)
深遠の月影・ヴィーナ(a51229)
虹色の羅針盤・シェリパ(a60767)


<リプレイ>

 静寂の中に幾つ者足音が響く。
 月明かりに照らされる緑種の中に動くものは殆ど居らず、冒険者達が移動する音だけが嫌に大きく聞こえた。
「遂にエンケロニとの決戦ですか」
 暫しの間その瞳を閉じて音に耳を澄ましていた、大地を歩み行く者・ラング(a50721)はゆっくり瞳を開くとそう切り出し、
「まさか、こんなに早くに、エンケロニが動き出すなんて……!」
 闇に踊るコッペリア・クーヤ(a40762)はラングに大きく頷く。エンケロニの成長は予想以上に早かったけれど、これ以上強くなられては堪らないのだ……クーヤはコトハと呼ぶ自身の術手袋に向かって、「……此処で眠らせてあげよう……」と語りかけた。
「エンケロニ……決着をつけないとなぁ〜ん!」
「あう、これが最後なのです!」
 炎に輝く優しき野性・リュリュ(a13969)と、星槎の航路・ウサギ(a47579)もまたクーヤと同じく決着を付けようとやる気満々だ。
「怖いけど綺麗な女王さま……ウサギたちは絶対に、負けませんですよ」
「今まで働けなかった分も含めて頑張って、何とかできるうちにエンケロニを倒すなぁ〜ん」
 植物達にとっては優しい母なのかもしれないが、それ以外の生物にとっては恐怖以外の何者でもないエンケロニを思い浮かべて、ウサギは両の手に持ったサーベルを握りなおし、王虎・アデル(a48929)も肩に担いだ斧を持つ手に力を込める。
 自分達が実際に相手にするのは青の眷族だけれども、それを押さえ切ることが何よりも重要な使命なのだ。各々が自分の役割を果たして初めて勝てる相手なのだから。
「ええ、かなり困難な仕事だけど、確りやり遂げないと」
 その使命はとても困難なものだろうけれど、絶対にやり遂げなければならないとラングは繰り返し、リュリュたちも同意するように頷いた。

「光注ぐ中での最終決戦。んー絵になるようだけど」
 遠くに見える、月を背負うように聳え立ち、自らも月に負けないくらいの光を放つエンケロニの勇士をエンケロニ見上げて、大地の鼓動・シェリパ(a60767)は呟く。
「……タンポポじゃなー」
 実際のところは蒲公英ではないが……何となく仄々とした印象が、戦意をそぐような気もする。
 だが、その生命力溢れる姿は緑種の女王の名に相応しいものだ。シェリパは頭を振って気合を入れなおすと、エンケロニに向かって一歩一歩近づいていった。

 光り輝くエンケロニの足元に群がる眷属達の姿を確認し、一行は足を止める。
 銀花小花・リン(a50852)はその中に向日葵たちの姿を確認すると、一旦視線を近くへ戻し周囲を見回す……周囲にある木々、その木々の殆どは何処からか蔦の生える眷属だ。
 以前の報告では、これほどまでに蔦付きの眷族は多くなかった筈なのだが……それほどまでに脅威が近づいていると言う証拠か……深緑の玉が無ければ最早エンケロニに近づく事も困難だろう。
 犬の尻尾を忙しなく揺らすリンを面白そうに見つめ、クーヤは体に炎を纏って行く。
 そして、アデルとシェリパが仲間達の鎧に強大な力を注ぎ込んでその形状を大きく変え、満ち足りた平凡・ウィンスィー(a21037)が仲間達の目の前にふわふわした羽の塊のような守護天使を呼び出した。
 最後に、リュリュが大棍棒に新たな外装を追加して……、
「それじゃ、行くなぁ〜ん!」
 準備が完了した事を確認すると、他の向日葵を担当する仲間達と歩調をあわせて一気に青の向日葵に向かって走り出した。

 リュリュたちの姿に気が付いた向日葵たちはそれぞれ動き始める。
 青の向日葵は大きく体を仰け反らせると……仰け反った反動を利用してそのまま人一人分の大きさはあろうかという花を地面に叩き付けた!
 ゴゥ! と風が吹き、次の瞬間砕かれた地面の破片が砂塵の波となって、前に出ていたウサギたちの体をふわふわの守護天使ごと呑み込む。
 体を圧迫する砂塵の波の中を、アデルは歯を食いしばってグランスティードの突進に身を任せて突き抜けると、九一式徹甲断の重さを生かした大岩を叩き割るほどの強烈な一撃を放つ!
 更に盾で砂塵の波をしのいだシェリパはアデルの一撃を受けて揺れる青の向日葵に向けて両腕に気を収束させ、「ぎゃーっす」と、一気に解き放った。
「青の眷属の花びらは……えぇっと……へにょへにょなぁ〜ん!」
 そして、砂塵の波に呑まれ後ろへ吹き飛ばされたリュリュは傷だらけの体で何とか立ち上がると少し上気した顔で発的な言葉で青の向日葵の怒りを誘うとするが……人の良さが言い回しに出たのか青の向日葵は見向きもしなかった。
「あう……痛いのです」
「……全く。此処まで来て無粋な邪魔をするのは頂けないね」
 リュリュと同じく吹き飛ばされたウサギが体を庇った時に負った左腕の傷を押さえながら、あらゆる攻撃を逸らす構えを作り。深遠の月影・ヴィーナ(a51229)はエンケロニを守る様に立つ青の向日葵に向けて溜息交じりに呟くと……気合に満ちた熱い歌声で仲間達の傷を癒し、ウィンスィーの癒しの光がそれを補助する。
「青の眷属の花びらは……へにょへにょ」
 ヴィーナたちの癒しで仲間達の傷が回復した事を確認したラングが、青の向日葵に指を突きつけリュリュのまねをして挑発すると、今度は青の向日葵は怒り狂うように体をグルグル回す。
「女王様を護る鉄壁も……これは、どうかしら?」
 激しく体を回す青の向日葵の体を、クーヤは虚無の力を紡ぎあげた手で握り締めるように掴む……虚無の手は青の向日葵の体を捕らえ、その体に絡みつく黄色い花の付いた蔦が一瞬割けるような幻影が見えた。

 ひらひらと舞う羽のような身のこなしで青の向日葵の左側に回りこみながら、リンは周囲を見回すと……、
『作戦開始!』
 不意に心に少女の声が響いた。予め決めていた合図だ、どうやら他の向日葵の対応を行っている班も巧くいっているらしい。リンはほっと息をついた後、大きく息を吸い込み……まだまだ戦いはこれからなのだと気合を入れなおした。

 怒りを沈め、緩やかな動きになった青の向日葵はエンケロニへと走った者達を追おうとするが……既に、エンケロニと青の向日葵との間にはアデルたちが陣取っており通り抜ける事はできなくなっていた。
 青の向日葵は一瞬迷うような動きを見せると、その青い花弁に周囲の闇から取り出すように青い光を集め始め、だんだんと青い輝きを増してゆく。そして、周囲にあふれるエンケロニの光よりも輝きが強くなると、青の向日葵はその輝きを一気に放出した!
「なぁ〜ん……」
 青い光を浴びたアデルたちの鎧が砂のようにぼろぼろと崩れ去る幻影が一瞬見える……瞬きをして再び自身の鎧へと視線を落とせば、先ほどまでとなんら変わらない姿だが……すでにその強度を失っていた。
 不思議な感覚……だが、その脅威は確実に彼等の体に刻まれたのだ。アデルは再び青の向日葵に向かって突撃すると斧の重さを利用した強烈な一撃を叩き込み、
「砕けろなあぁぁぁ〜ん!!」
 その後ろから追走していたリュリュもワイルドインパクトボーンを猛烈な勢いで振り下ろし、青の向日葵に纏わり付く蔦を無力化する。防御の緩んだ青の向日葵の根元へウサギが踏み込み鮮やかな黄色の剣と刃先に向かって橙色が濃くなってゆく剣を交互に振るって、その茎を切り裂いた。
 そして苦痛に体を捩る青の向日葵を確認しながらシェリパは自身を中心に心地よい風を起こす……と、仲間たちの鎧が再びその力を取り戻していった。
 シェリパが起こした風の余韻がラングの頬をやさしく撫ぜる……ラングは魔道書に両手を添えると、紋章の力で紡ぎあげられた七色の木の葉が青の向日葵の体を取り囲むように出現し、再び放たれたクーヤの虚無の手が掴んだ向日葵の茎を捕らえた。

 アデルたちと青の向日葵は一進一退の攻防を繰り広げていた。
 どちらも有効な手段を持たず、どちらも決め手に欠ける……その上、青の向日葵はその装甲の硬さに加えて体力も高いようで、倒れる様子がない。
 微妙なバランスの上に成り立っていた拮抗は、時間がたつにつれ冒険者に不利な方向へと傾き始めていっていた。
「此処で倒れるわけにはいかないから……皆、頑張って」
 だが、ここで倒れるわけにはいかないのだ、ヴィーナは柄に宝石が嵌め込まれた儀礼用の長剣を掲げると癒しの光を放って仲間たちの傷を癒す。自分たちが倒れれば先へ進んだ仲間たちが、今横で他の向日葵たちと戦っている仲間たちが危なくなってしまうかもしれないのだ、だから倒せないまでも、せめて彼等がエンケロニを倒すまで何が何でもこらえる必要があった。
 其処へ――
『赤の向日葵が倒れました!』
 と、少女の声が再び心に響く。赤の向日葵が倒れたのなら、すぐに仲間たちの救援が来るだろう……もう一息頑張れば希望がある。
 ヴィーナは隣にいたラングと頷き合うと、前線で戦うリュリュたちを支えることに神経を集中させた。

 砂塵の波で傷ついた足を引き摺りながら青の向日葵の懐に入り込んだシェリパは、その根を両手で掴むとシェリパの五倍はあろうかという向日葵の体を力任せに放り投げた!
 そして落ちた先に狙い済ましたように、ウサギがルータ・トーチリリーを高速に振りぬいて生み出した二筋の衝撃波がその体を刻んで――其処へさらに、いくつかの矢が突き刺さった!
 ヴィーナが矢が飛んできた方向を確認すれば、黄の向日葵を相手にしていた仲間たちが駆け寄ってきて……駆け寄る仲間たちの奥には既に動かなくなった黄の向日葵の姿が見えた。
「あと一息……」
 その様子にほっと息を吐くとヴィーナは再び癒しの光を放って仲間たちの傷を癒してゆき、ラングがTabula Rasaに両手を添えると頭上に火球が生まれる……。
 そして魔道書にそっとミレナリィドールが触れると、火球は七色の光へ変わり……ラングがそれを青の向日葵に叩きつけると向日葵は悶え苦しむように体を左右に揺らした。
「……私は、私に出来ることを全力で頑張る」
 激しく揺れる青の向日葵の体に軽く手を触れ、リンは呟く。自分に出来る事をと、彼女は何時でもそれを実行してきたのだ。それは彼女だけでなく多くの仲間たちも同じだっただろう……だから、
「絶対にやり遂げる」
 意識して強く言い切った言葉と同時に、爆発的な気を青の向日葵の体へ叩き込んだ! 青の向日葵は衝撃で後ろへ吹き飛び――
 そのまま二度と立ち上がることは無かった。

 はぁ……と息を吐いて、その場に座り込むとウサギは空を突き抜けるのではないかと言うほどに大きな、エンケロニの姿を見上げる。
「後は、彼等を待つだけ……ね」
 自分たちは自分たちに出来ることを成し遂げたのだ。
 クーヤはウサギと同じように空を見上げると、彼等の帰りを待つのだった。

【END】


マスター:八幡 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:8人
作成日:2007/08/16
得票数:冒険活劇19  戦闘10 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。