Right by your side〜ホワイトビーチの誘惑



<オープニング>


 葵桂の霊査士・アイ(a90289)と はじまりは・プルミエール(a90091)は、真夏の海岸、ホワイトビーチにでかけることになった。(「The BIG WAVE〜ホワイトビーチの誘惑」オープニング参照)

 準備をしながらアイがいう。
「ホワイトビーチといえば、昨年みた夕暮れの光景、あれはよかったな」
「そうですねー」
 とプルミエールもうっとりした。
 日が沈みはじめるとホワイトビーチは、幻想的な光景にかわるのだ。
 赤い夕陽が海にのみこまれるにつれ、空は青から橙、そしてまた宵闇の蒼へとゆっくり変化し、最後には満天の星空がベールのように降りてくる。それは、一日で一度だけのロマンティックな光景、手をとりあいこれを眺めた恋人たちは、かならず幸せになるといわれている。砂浜には椰子の木陰が多数あり、ふたりきりになれるスポットには困らないだろう。
「アイさん……夕方はどうします……」
「プルミーこそ、どうするんだ……」
 プルミエールとアイは視線をかわしあう。美しいあの光景はぜひ眺めてみたいものだが、独りものの女ふたり、というシチュエーションは寂しすぎる……。
 
 恋人や配偶者とともにこれを眺め、愛を語らってはどうだろう。なお、海岸沿いには宿泊施設も設置されるので、一八歳以上の冒険者同士であればそのまま夜をすごしてもいい。
 とはいえ、寂しいもの同士で夕陽に涙するのもオツかもしれない。たった独りで眺めるのだって悪くはないのだ。誰の上にも平等に夜は訪れよう。
 いずれにせよ夏のこの時期、一年でもっとも美しくなる海岸を、想い出として心にとどめてはいかがだろうか?

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参加者
NPC:葵桂の霊査士・アイ(a90289)



<リプレイ>

 陽が沈みはじめると、ホワイトビーチはその様相をかえた。
 昼間の騒がしさが嘘のよう、風をうけゆれる椰子の木々、その葉がこすれあう音すら聞こえる。

 染まりゆく空の下、シェリスとアールは背をならべ歩く。
「ドラゴン戦の日の約束、ようやく果たせますね」
 シェリスが優しくいうと、
「……きっと守ってくれると信じてた」
 アールは腕をシェリスに絡ませた。
 今日のアールは、黒いロングパレオの水着をまとっている。日ごろは見せぬ可憐な装い、自分のためにしてくれたのかと思うと、シェリスは胸が熱くなる。
「煌く波間も、潮風の香りも、漣(さざなみ)の音も、私には懐かしく愛おしい景色。貴方を海へ連れていこうと思ったのは、この景色を貴方がどう思うか知りたかったから」
 つぶやくようにシェリスはいった。綺麗ね、とアールはこたえる。
 この光景をともにできること、それがなによりの幸せ。

 夕焼け空にエマクは思う。
(「夕陽って本当暖かい色してて、見てるとすごく溜息つきたくなっちゃうんだぞ」)
 それにしてもチキチキータ遅いんだぞ、そう考えた瞬間だった。
 首筋に冷たい感触、飲み物を手にしたチキチキータだ。
「ごめんにゃ〜」
 素直にあやまって、チキチキータはエマクの横に腰を下ろした。だけどこの茶目っ気が、初デートの緊張感をやわらげたのも事実だ。
 身を寄せあい潮騒と景色を楽しむ。ふれあう肩に互いの体温を感じた。
「あのさ、エマク……よければオイラと」
 深呼吸して、チキチキータは告げた。
「オイラと一緒に暮らさないかにゃ?」
 
 涼しくなった海で泳ぎ、ヨハンとセラは椰子の木陰で憩(いこ)う。
 青い水着をきてきたが、見られるのがすこし恥ずかしく、セラは顔を伏せてつげる。
「飛ばされないように手をつないでいても……いい?」
 指をからめて手をにぎりあった。 
「綺麗だねえ」
 とヨハンがいったのは、海のことだろうかセラのことだろうか。
 安心と疲れ、幸福感で、セラはヨハンの肩に頭をあずけうとうとしはじめる。
「セラ、起きて。お願い。色々な意味で。セラ……」
 なかなかセラは目覚めない。
 ヨハンは理性をフル動員しつづけることになりそうだ……。 
 
 昼は男三人だったが、いまはセイカとデート中のレナートだ。
(「裏切り者といわれたけど気にしない〜」)
 木陰から眺める日没は絶景だ。
 でも、セイカはかすかに不満だった。
(「……レナートさん、また周りの可愛い女の子を見ちゃってる……?」)
 だがそれは彼女の誤解、すれちがったいくつかの、「お泊り」を意識したカップルを見て、レナートはすこし羨ましくなっていただけなのだ。
「君と出会えて良かったと思ってるよ」
 雑念を払いレナートは、素直な想いを口にした。おそるおそる肩を抱くとセイカはしたがい、しかも驚いたことにかれを見あげ、恥ずかしそうに、瞳を閉じた。
 そっと口づけたセイカの唇は、想像よりずっと甘い。

 フィーリスとフィリアの兄妹は夕暮れを鑑賞する。
 トロピカルドリンクのグラスはひとつ、ストローは二本だ。
「綺麗な夕陽だね。ゆっくりと眺めているといままでの戦いが嘘のようだ」
「ですわね……」
 フィリアは景色より兄に夢中だ。いつからだろうか、彼女は兄に、兄として以上の想いを抱くようになっていた。
(「告白のチャンスですわ」)
 自分を鼓舞しフィリアはいった。
「お兄様……わ、私、お兄様のこと」
 フィーリスは唇を噛んだ。大切な妹を悲しませるのが、こんなにつらいことだとは!
「フィリア……それ以上いっちゃ駄目だ……僕にはその資格はないんだ」
 本当に、ごめん、とフィーリスはいった。彼女を見ないですむよう目を伏せた。

 せっかくのデートなのに、プラチナは緊張してしまう。
「き、今日はよしなにの?」
 笑顔もどこかこわばる。だけどその緊張も、それだけユウヤを想っているしるし。
 ユウヤは、そんな彼女をときほぐすような笑顔をみせた。
「俺が冒険者になってから、ずっとのつきあいだよな。星凛祭や依頼、お前と一緒にすごすのは楽しかったよ、どんなことでもな」
 プラチナの両肩に手をかける。
「これからもお前と一緒ならずっと楽しいだろうさ。好きだよ、プラチナ」
 プラチナの上着が落ちた。肩が、そして水着が、あらわになる。
「う、嬉しいぞ」プラチナは真っ赤だ。「そのことば、またフォーナでも聞かせてくりゃれ?」
 ユウヤは彼女を抱きしめた。 

(「暮れなずむ浜辺、か。素敵で美麗な光景じゃないの」)
 ローザマリアはビーチパラソルの下、チェアに優雅に寝そべって、椰子の実のジュースを飲み昼間の余韻にひたる。
「それはそうとアイ、元気ないわよぅ? 昼間になんかあったの?」
 横にアイが座っている。なんとなくしょんぼりした様子だ。
「ある人にちょっと、迷惑をかけてしまって……」
「うーん、事情はわからないけど、だったらここで挽回すればいいんじゃない?」
 椰子の実でもどう? とローザマリアはアイを元気づけるのである。

 ガルスタは夕陽にようやく気づいた。一人になってはじめて、とまっていた時間がうごいたように思う。
「お待たせ〜♪」
 パラソルの下にペテネーラが戻ってきた。シャワーを浴び着替えて、昼間とはまたちがう魅力にあふれている。
「本当にきれいな夕陽ね……沈みゆく太陽が、この世界に別れを惜しんでいるようだわ」
 彼女の手には赤の発泡ワインがあった。
「ごめんなさいね。本当は恋人か奥さんとでもくるべきところに、ご一緒してもらって」
「そんなことないさ、楽しかった」
 ガルスタは微笑をかえし、香り高いブランデーをグラスに注いた。
「美しい景色と美しい女性(ひと)に乾杯だ」

 ネーヴェはギターの弦をつま弾く。その横で、膝をかかえ聴いているのはアストだった。
 ふと、ネーヴェは演奏をとめた。
「いいのか?」
 とアストに問う。
「なにが?」
 ネーヴェは直接それにこたえず、
「心にまで服を着せておかずとも良い、ということばがある」
「誰の格言?」
「私の」
 ネーヴェはまたギターを弾きはじめた。

「手……つないでいい、ですか?」
 リディアはアルタイルを見あげた。アルタイルの返答は微笑みと、そっと握った左手だった。
 ここ数ヶ月は死線の連続だった。それを越え、いまこうしてふたりで時間をすごせること、少し前なら奇蹟と思えるような状況だ。
 シルエットが影に同化してゆく。夜がはじまるのだ。
「目を閉じて?」
 アルタイルはいった。リディアは素直にまぶたをおろす。
 かすかなキスの音(ね)を、波音がそっとつつみこむ。

 海に遊びにくるのも初めてならデートも初めて、イナルナはサルサにおずおずと、
「変、じゃないですよねぇ?」
 と問う。彼女の水着は、赤の地色に赤いフリルつきのビキニ、腰にパレオを巻いていた。
「変なわけねーじゃん、最高!」
 彼女を背中から、サルサは両腕でぎゅっと抱く。サルサの長い冬は終わった。バンジーに祈った御利益か、念願の、『かぁいぃ』恋人があらわれたのだ!
 サルサは赤いカクテルを、グラスにそそいで彼女に渡す。
 甘いが体が熱くなる酒だった。イナルナは瞳をうるませた。
「夜はお泊まりしたいなぁ……なんていったら、はしたない?」
「うぉお! はしたなくなんかないなあぃっ!」
 ああこの幸せ――サルサは思う、夢ならどうか覚めないで。  

「ここだよ」
 プルミエールを見てゼロは手を振った。地図を渡してある。ここは海岸の隠れスポット、夕焼けが海とリンクし、朱く染まる波間を眺められる場所。
「日没を見ないか?」
「いいですね」
 プルミーはゼロのとなりにちょんと座った。彼女はまだ水着のままだ。
 肩を抱きたいと思ったものの、ゼロはそれをいいだせなかった。 

「時間は思い出を作り 消していく
 強き思い出は 記憶の欠片
 欠片は紡がれ、形となって糧となり その人を支える」
 ささやくようなシエラの歌声、ギルバートはその響きにひたった。
 間近にいることにはまだ慣れていない、胸が高鳴るギルバートだ。しかしかれの想いは胸からあふれ、ことばとなる。
「美しい歌です、芯が強いのもいい。私は貴女のすべてが愛しい。今後また、新たな一面が見えたとしても、それも貴女だと思えば、とても愛しく思います……」
 シエラは感謝と愛情を、頬へのキスで表現した。

 カインの胸をポンと叩き、カンナは悪戯っぽく笑った。
「ま、旅団では色々ゆうたけど堪忍したるわ」
 手を取りあい砂浜を歩く。やがてふたりは胸の内を明かした。
「お互い冒険者だから、すれちがいが多いよな」
「……そやね、カインのことが好きなジブンと冒険者のジブンが一緒にいてさ、不思議やねん。どちらもジブンやのに」
 事情は複雑だ、だけどカインは、このことだけは自信をもっていえる。
「なるべくそばにいてカンナの想いを受けとめるよ。俺、それくらいしかできないから」
 そしてカンナを抱きしめた。まじりけのない誠意がカンナには嬉しい。
「……うん、今夜は、このあとも付き合うで……」

 リルと夕陽を眺めているうち、アイもいくらか元気をとりもどしていた。
「綺麗……なぁ〜ん……」
 というリルに、
「そうだな。誘ってくれてありがとう」
 と笑みをかえす。
 アイを連れ出したときには、話したいことがいっぱいあったリルなのに、気がつけばもう、夜のベールがおりつつあった。
「幸せな時間ってあっという間にすぎてっちゃう……時間さえも平等じゃないのかもしれないけれど」
 といってリルはアイを見た。
「それって素敵なことだと思いませんか、なぁ〜ん?」
 アイの返事は、ここに書くまでもないだろう。
 
 宵闇の蒼い空、コハクとアラクナは、浜辺で乾杯した。
「これ以上ない景色じゃのう」
 コハクがいうと、
「こんなのも、悪くない」
 とアラクナはグラスを受けた。(「……ずっと、こんな時間が、続きますよう」 )と願掛けをして。
 そしてアラクナは、一息で杯をあけていう。
「酔った」
「え? それジュース……」
「雰囲気に、ね」
 アラクナはそういって、体重をかけコハクにもたれかかった。
 そんな彼女がコハクはたまらなく愛おしい。耳に口をよせてささやく。
「かわいいお姫様、あとで一緒に海でも?」
 せっかくの水着だ、星空の下で見せてもらうとしよう。

 ネレッセは岩場で火をおこし、ドラゴン襲撃で死んだ人たちの冥福を祈る。
(「こうして当たり前の時間を当たり前にすごせるのは、尊い犠牲があったからです。ありがとうございます」)
 さて、行動を起こすときがきた。

 今日のサシャクはひと味ちがう。赤い短パン水着、羽織るは白の上着、仮面もはずしている。
「ソフィアさん、浜辺を歩こうっす」
 声をかけると、プルミーと談笑していたソフィアはふり向いた。
 そのときちょうど、プルミーにネレッセが声をかけたのだ。

 サシャクとソフィアは浜辺を歩いた。なぜかサシャクの目には光がない。
 なにか悲しいことがあったの?、とソフィアは心配したが杞憂だった。サシャクは、木彫りのネックレスをソフィアに渡したのだ。
「上手く彫れなくてごめんっす」
 照れて、たはは、と笑う。モチーフはイルカだ。よくできている。
(「ちょっとだけ、肩に体を預けてもいいですか?」)
 喜びをこめて、ソフィアは視線で問う。
 サシャクは笑みと態度でこれに応じた。

(「異性を意識するたび鼻血を出すようでは、本家の血が絶えかねませんから……」)
 ネレッセはプルミエールを呼んだ。
「はい?」
 ソフィアと話していたプルミーが振り向く。肩のでた水着、小さいけどたしかな膨らみ……ネレッセは思わず鼻血を噴きそうになる。だが懸命にこらえて、
「なにか飲みませんか、一緒に」
「はい♪」
 と返事したプルミーが可憐すぎて、ネレッセはまた鼻血が出そうになった。

 この日すべてが支障なくすすんでいるのは、前日からフェイトが準備していたおかげだ。
 彼女は裏方に徹し、参加者にそれを悟らせない。いまも、沖にこぎだした小舟にネーヴェと乗り、なにかを用意中だ。
「Bardiche……Get, Set」
 漆黒の大剣を最大に変形させる。そしてフェイトは夜空に紋章の力をときはなった。空を照らす光だ。
「往こう、オートクレール……戦いではないがな」 
 ネーヴェもつづいた。ホーリーライトをつかって、さまざまな色の光を生み出す。
 夜を美しく彩ろう。

 グランスとノイエは寄り添い、はじめは夜空、そしていまは光がかもす幻想的な光景に息をのむ。
 綺麗だな、という意味のことをグランスは口にした。
「うん……本当に……こうして眺めているだけで満たされる」
 ノイエはグランスの肩に頭をあずけた。
「なんて事ないはずなのに、こんなに幸せ……怖いぐらい……」
 そして、不意打ち気味にノイエはキスした。
「なぁ〜ん!? ノ、ノイエ!?」
「グランスは、ずっと傍にいてくれるわよね……? 愛してる……」
 そしてふたりは二度目の、今度はもっと深く長いキスをかわした。

 星降るなか、ウルアはクローバーの手をにぎる。
 クローバーの心が歓びに震える。愛されている、とたしかに感じた。
「この綺麗な星空も、クローバーと一緒だから特別なのなぁ〜ん」
 ウルアがそういってくれたとき、クローバーは自分からも愛を示したくなった。
「……しばらく……こう、させて……なぁ〜ん」
 ぽふ、とウルアに体をあずける。ウルアは優しく抱きとめ、額にキスした。
 そのとき海上に光が舞い踊った。これをしばらく眺めてのち、
「……そろ、そろ……宿、戻ろうか……なぁ〜ん?」
 うるんだ瞳でクローバーはウルアを見あげた。
 ふたりの夜はまだ、はじまったばかりだ。

 ふたたび星の闇がおとずれる。
 抱きあげたプルミーを起こさぬよう、ジースリーはそっと宿への道を歩んだ。
 プルミーはすっかり夢心地だ。このところがんばっていたから、疲れがどっとでたのかもしれない。あくまで紳士的に、ジースリーは宿のローザマリアに彼女をあずけた。
「……ジースリーさぁん……」
 プルミーが呼んだのでふり返る。それが寝言だとわかると、ジースリーの目に笑みのようなものが浮かんだ。

 ふたりきり、静まりかえった浜辺を歩く。長い沈黙のすえ、
「その……」
 とアスト、
「あの……」
 とアイ、同時に話はじめてしまって、しばしまた逡巡する。
「昼は、迷惑をかけた……」
 アイはうつむき加減だった。アストはそんな彼女を、可愛いと思う。
「そんなことないさ、結果論だけど楽しかった」
 ネーヴェのことばが、アストの脳裏をよぎっていた。
「それだけじゃない。俺、星凛祭でも、ドラゴンとの戦いでも、このまえ服を買いに行ったときでも、アイと一緒にいると……ドキドキしてた」
「えっ?」
 アイは赤面した。上気してしまって冷静になれない。だから彼女は、これを口にするのがやっとだった。
「それは私も……だ」

(終)


マスター:桂木京介 紹介ページ
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作成日:2007/08/28
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