<リプレイ>
●バンチョーを求めて 古井戸に集うつわものありけり。 「モンスターが出たなぁ〜んね」 夏らしく怪談っぽい依頼にいざなわれやってきた森羅万象の野獣・グリュウ(a39510)がふむふむと、辺りを見回す。 「白いもっちり……どんな感触だろ?」 もっちり餅肌? 鱗の指をわきわきと妙にやる気なのは激烈方向音痴・マルクドゥ(a66351)。 ぴっとり、しっとり、それともすべらか? 面白いモンスターもいたもんだ。 「丸くて白くてもっちりで……ってなんか旨そうなぁ〜ん」 でも古井戸に生息なんてカビ臭いかなぁ〜ん……? 高らかに響く腹音・クルック(a58349)も白くてもっちりとしたその生態が興味深々。 「ふ、このぷりちー忍びな乙女である拙者の前で忍びを語るとは許せないでござる」 バンチョーというからには、普通は狂戦士とかそんなイメージがするのだがっ!! 黒くて詰襟、厳つく硬派、そんなイメージ。 そういう自身は武人なのに、何故か忍びを名乗る狐スト忍者の武人・アリエーテ(a57608)がまだ見ぬモンスターに対抗意識を燃やす。 「最近ようやく人生の春が来たのに、ハゲになんてなってたまるものか!」 自棄に必死の普通を愛するエルフの医術士・ハウマ(a54840)が召喚獣とおそろいの銀の長い鬘を被りせめてもの自衛手段を試みていた。 「古井戸なあ。あれだろ、髪の長い女がずるっと出てきたりするんだろ? 違ったっけか?」 ぷはーっと紫煙を燻らせる大禍打ち祓う旋風・エーベルハルト(a65393)。頭上の黄色のヘルメットに緑の十字と『安全第一』の4文字が今の心境を切実に表していた。 備えあれば憂い無し。 ヘルメットからはみ出しているくるりと大きく横カールの髪は、地毛ではなく此方も鬘。 「男性陣これだけいればきっとお好みの方がいるはずです」 一部男性陣の奮闘を目の当たりにして神術数姫・リューシャ(a57430)が微笑む。 若くピチピチした者、筋骨隆々な肉体派、少し方向を変えて燻し銀。実にバリエーションに飛んだ面子が揃っていた。モンスターが何を好むかの確立を計算してみるのも面白いかもしれない。 「とにかく倒す事。被害は……まぁ、さておいてね?」 陰りを含んだ目元を微かに緩ませ翠旋・フェリル(a66648)さり気なく刀の柄に手を添えた。 敵は古井戸に潜む忍びの力を秘めたもっちりモンスター、只一体。
●隠れて潜んで直ぐ後ろ 「あれ、誰も女装せぬでござるか。特に後衛はか弱いから、狙われないようにする方がいいと思うが」 被害者が出たという古井戸に向う途中。キョトンとした顔でアリエーテが男性陣を見回す。 「俺は絶対に似合わないから」 一番似合いそうだとめぼしをつけていたハウマが大きく首を振る。同盟の文化とか謎の理論に腕を突っぱねる。 「レナートならきっと似合うよ」 「ん〜遣らず嫌いは、体に毒だよ」 「おぉ、似合うでござるよ!」 ほらっと、横でやり取りをニコニコ聞いていたレナートがハウマの鬘に大きなリボンを結びつけた。 「髪とか服とか……恐ろしいなぁ〜ん」 体を出来る限り縮めふるふるとグリュウが脅えて見せる。 服なら新しい物に着替え、諦める事もできるが…… 「見た目によらず破廉恥なモンスターなぁ〜ん」 髪は剃られたら、元に戻すのに時間がかかるだろう。 青光りする坊主頭の鬘をぴったり頭につけたクルックも、なぁ〜んなぁ〜んと、同意する。 その精神的ダメージは目に見ることは出来ないが実に恐ろしい。 「数値に出せたら面白い結果になるかみしれません」 「三十歳の好青年として言わせてもらおう。もっちりはともかく、髪の毛だけは勘弁してくれ……」 三十路が青年の部類に入るかどうか……その辺は個人差があるとは思うが…… うっとりと算術の神秘に陶酔するリューシャに思わず、げっそりとエーベルハルトが突っ込んだ。 生え際の後退とか気になり始めたお年頃の男性にとって人生が掛かっているともいえた。 「おれは男じゃないもんな〜♪ がんばれ! オッサン」 「オッサン言うな!!」 げらげらと肩を叩き笑いながら脇を駆け抜けたマルクドゥに、条件反射で言い返すエーベルハルトであった。 「ひっしでひていするところをみると……じかくしてるのねー」 ふぉっくすにまで痛いところを疲れがっくりと膝をついた。 生ぬるい夜風が頬を撫でていく。 まだ目立って妖しい所は見えてこなかった。 見えてきた目標の古井戸の傍。ゆらり、ゆらゆらとぼんやりと青白く光る物があった。 「出たかなぁ〜ん」 「構えろ!」 背後を取らせるな。即座に体が反応する。 「………と、柳の枝ですね」 さやさやと夜風に撓り揺らぐ柳の枝があった。緊張は時に幻を見せる。 ほっと力を抜きかけた時、エーベルハルトの背後に迫る不穏な影。 「………無駄です……そんな可愛らしい容姿を見逃すとお思いですか」 「どわぁ!?」 エーベルハルトすれすれに業火が走った。
●バンチョー掃討大作戦 「いたぞっもっちりバンチョー!! 触らせろっ」 破壊力を増したタックルをそのままにマルクドゥが宙を舞う。 「ケチッ。触らせない気かッ!」 黒い詰襟の裾を颯爽と裁き、まるまるとした姿のモンスターはひらりとその攻撃を交わした。 更にその短い手から予想も出来ない速さで無数の皿が舞い、襲い掛かる。 「むむむ……忍びというだけあるでござるね」 その外見に似合わず動きが素早い。 なら…… 「力ずくで触ってやるゼッ!!」 鼻を鳴らし神経を逆撫でするように中指を立てて挑発を仕掛けた。 「可愛い外見だけど、騙されないなぁ〜ん! だ、騙されないなぁ〜ん!」 円らなまん丸な瞳と目が合い思わずキュンとした心を叱り付けクルックが太陽の模様が刻まれた斧を振りかざす。 「とにかく動じない事。見掛けに騙されちゃだめね?」 モーションを短く、手数の多さでフェリルが仕掛ける。 斬檄に押されたモンスターが、ぽーんっ。と、大きく弾み大きく宙返りしてフェリルの攻撃範囲から逃れでた。 「ぷりちーな外見をしてても、モンスターはモンスター……全力で倒すなぁ〜んっ!」 動きを読み待ち構えていた、グリュウが手にした斧をその白い体に叩き込む。 「うお、もっちりしてるなぁ〜ん!?」 ぼよ〜んっと、帰ってきたなじみの無い切れ味に、驚き体制を立て直す為に飛び退った。 「もちもちしてようがモンスターはモンスター! 悪いがぶっ飛ばす!」 うおらぁぁぁぁあ! 極限まで凝縮させた闘気を無骨な巨大剣に乗せ振り切る。文句なしに改心の一撃を与えた感触があた。殺ったか。 爆発が白いもっちり肌を焦がす。 もっちりしたものがでろーんと石畳に伸びる。 「結構あっけなかっ……」 「ハウマ!?」 閉じられていた瞳がパッチリと開く。 ガゴーンとハウマの脳天を巨大なたらいが直撃した。 「フェイクデスか!?」 厄介な。死んだ振りをしてやり過ごしたわけか。 「ハウマ殿は殺せないでござる!」 ウェポン・オーバードライブ! アリエーテ吼える。そう……彼ハウマこそ最終兵器彼氏。此処で失う訳には行かない。 猛攻にモンスターが後退する。それを追ったメンバーを無数の罠が襲った。 「だーー!」 「罠かっ」 足を取られ蹈鞴を踏む。 鋼鉄の顎が足元に無数に待ち構え、迂闊に踏みかえることも出来ない。 「え? なんか今、目が合った? 気のせい??」 くるりと向き直った愛くるしい瞳が、まるで獲物を見つけた可の様に邪悪に光ったと後でエーベルハルトは語った。 「やめろ寄るな触るな近寄るな!!お婿に行けなくなる……ぎゃあああああああ!!」 迂闊に動けない所に円らな瞳で近づいてくるモンスター。 まるで哀れな小ヤギかまな板の上の鯉になった気分であった。皿がまるで刃の様に飛び黄色いヘルメットに大きく傷が付く。 足元に無数のフォークが突き刺さる。 嬲ってる……誰の目にもそれは明らかであった。 つうか………鎧も切り刻んでひん剥いてくるんだろうか? 人前で素っ裸はちょっと遠慮したいと頭の片隅嫌な予感がぐるぐる回る。 「注意が逸れている隙に……ね?」 モンスターは確実にターゲットを絞っている。今がチャンスであった。 「ふ、拙者自身が愛くるしい存在ゆえ、そんな外見には惑わされないでござる!」 罠があるなら、閉まる前に動けば良い事。アリエーテが罠の地面の上を駆け抜ける。 「長びく前にとっとと倒してしまうなぁ〜ん!」 道が無いなら作るまで、グリュウの斧が地面を薙ぐ。 「覚悟、もっちりバンチョー!」 出来ればもっちり感を堪能したい所であったが……それは倒してからのお楽しみにとっておこう。 「とどめ、いくよ?」 絶え間なく繰り出される息のあった波状攻撃に思わず、モンスターもたじろぎを見せる。 畳み掛けるなら今だった。 「ふぉっくす殿、真エルフスパイラルの承認を!」 「先日投げられたばかりなのに、あんな可愛い物体にまで投げられてたまるか!」 ちょっとまて。 「白くて丸くてもっちりしてたって俺は騙されないぞ!」 痛めた頭の傷に癒しを施そうとしていたハウマがうろたえた。自分が投げられないようにレナートを引きずり込んだのに…… 「なんか勢い良くあたったら気持ちよさそうだなんてチラとも考えてなんか……ない!!」 ちょっともっちりしていい感じかもとか微塵も考えていない。 「最後の仕上げなぁ〜んね」 いそいそとクルックがハウマの襟首を取る。 「南南西の微風、視界良好」 ターゲット捕捉。 「えるふすぱいらる、はつどーしょーにん!」 「さあ、飛べハウマさん!当たって砕けてくるなぁ〜ん!」 「ちょっ、ま………!?」 静止の言葉には耳栓を。散り逝く盟友に惜しみない拍手を。 空中のハウマの脳裏を、硬いマッチョやでかいドラゴンよりはよっぽどマシとか、そんな諦め心がふっとよぎったとかなんとか…… 「エルフ・スパイラール! ……なぁ〜ん!」 是が同盟最強技。ドラゴンにすら挑んだ挑戦者の編み出す、究極奥義。もみ合う衝撃で外れた銀色の鬘を残しハウマは光になった。 「すげっマジはんぱねーっ超絶ミラクルっぽくねーっ?」 宙を矢の様に飛ぶ肉体が頭からモンスターに突き刺さった。 「……噂に聞こえた凄い奴……確かに拝見しました。南無」 同属としてそっと手を合わせた。 「ハウマ、安らかに眠れなぁ〜ん……」 ぐっと胸に拳をあて散った有志の姿にグリュウの目頭が熱いものがこみ上げる。 「若さだな」 生暖かく、投げられたハウマの方に視線を投げる。痙攣しているところを見ると生きていることは確かだ。 「いまの ひきょりがいまいちなのね」 すたすたすたと突き刺さったハウマに歩みよったふぉっくすが、投入角度ももっと鋭角的に、芸術的にと鬼のダメだし。 「二度も出来るかこんな事!」 体が持たないよ!! 一回でも既に傷だらけ。 「なんなら、愛の命の抱擁があるでござるよ?」 「ハウマには勿体無いから俺がもらおう」 天の救い、差し出された腕をありがたく取ろうと伸ばした横からさり気なくレナートが持っていく。 「ちょっとまて」 何処も怪我してないだろー! 「だいにしゃ とうてき ようい」 無情な腕によっこらよぃ、と担ぎあげられる。 「エルフスパイラル………奥義なぁ〜ん!!」 「ぎゃぁぁぁぁあ!」 絶叫は闇に何時までも木霊していた。
●もっちりひんやり 一先ず死んだ振りをされるのは癪なので、動かなくなったモンスターと全員ですりつぶした。 これが、また大変な作業。 「もちもち……だな。確かに」 「ごめん………ね?」 ぷにぷにと破片を突付くだけでも面白い。 触り出すと止まらない、止められない適度な弾力。 ひんやりとしていて是がまた気持ちいい。 「はぁ〜〜っもっちり感がばっちり、ウットリしっとり〜vv」 ごろごろと転がっているとたまらない。 「もっちりを枕にしたら涼しく寝れそう♪」 「もっちりなぁ〜ん」 戦いで火照った体を適度に冷やすのが心地よい。動かなくなった事をいい事にもっちり感を堪能する。 止めを刺す上で、もっちり餅肌の誘惑が一番厄介であった。 「味は………不味いなぁ〜ん」 甘そうな見かけに、端っこをこっそり齧ってぺぺっと吐き出す。可愛くて美味しそうな外見でもモンスターはやっぱりモンスター。 「……迂闊に残しておくと次はスケルトンが棲み着いたりしかねませんし…化けて出ませんよね?」 古井戸にモンスターの残骸を土塊の下僕に全て捨てさせ、その上から石を抱えて飛び込ませる。 「モンスターに勝てても仲間に勝てる日は来ないのか……?」 古井戸の中モンスターの残骸と瓦礫にまぎれて傷だらけの彼が涙していることにはあえて誰も触れずにいた。
「はうまがうわきしようとしていたの みんなのおしえるのね」 「ふぉっくす殿〜、ハウマ殿の恋人への垂れ込みは拙者もするでござる♪ 」 他人の不幸は蜜の味。 「じゃぁ、俺がその手紙を届けてあげよう」 若干一名の不幸はまだまだ終わりそうになかった。

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参加者:8人
作成日:2007/09/01
得票数:ほのぼの3
コメディ21
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冒険結果:成功!
重傷者:普通を愛するエルフの医術士・ハウマ(a54840)
死亡者:なし
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